2007年12月25日号

◎JAあいち経済連(愛知県)
昔ながらの味と生産方式で中高年層に好評
販売拡大を目指す「純系名古屋コーチン卵」


 全国的に圧倒的な知名度を誇る名古屋コーチン。最近では地鶏肉の偽装疑惑などで不名誉を被ったが、大多数の生産者・販売会社は真摯に信頼回復と普及拡大に努めている。JAあいち経済連(愛知県経済農業同組合連合会)が販売する「純系名古屋コーチン卵」もその一つである。名古屋コーチンは卵肉兼用種であるため、どうしても卵は肉を生産する過程での副産物という見方が強いが、JAあいち経済連は名古屋コーチンの採卵養鶏場と契約し安定した供給を行っている。  
 『純系名古屋コーチン卵』の生産農家、豊川市篠田町の田中養鶏場は1800羽を飼養し、日産1000個の卵をJAあいち経済連に販売している。昔ながらの開放鶏舎・二段ひな壇ケージで550日から600日飼養する。産卵率はピーク時で70%前後。名古屋コーチンは元来、卵肉兼用種であるため成績は決して良いとは言えない。田中養鶏場では卵用に選抜された名古屋コーチンではなく肉用の名古屋コーチンで卵を生産している。格外卵は肉用鶏の方が多くでるようだ。田中養鶏場では格外卵を鶏舎近くに設置した自動販売機でリーズナブルな価格で販売している。
 『純系名古屋コーチン卵』は、きれいな桜色をした卵殻が特徴。味は濃厚で甘味がある。舌触りが滑らかで「コク」のある味は「昔ながらの卵の味がする」と、特に中高年層に人気が高い。田中氏も「こだわりの飼料を使っているため、他の名古屋コーチンの卵とはおいしさが違う」と自信を見せる。
 名古屋コーチンの卵の需要について、田中氏は「過去、一時的に消費が落ち込んだこともあったが、ここ数年はまた需要が増えているような気がする。おそらく消費者の嗜好が変わってきたのが一番大きいと思う。安全性や味、栄養強化などのブランド卵全体の需要がここ数年高まってきており、その中で地鶏ブランドとして名高い名古屋コーチンの卵の需要も増えていることは間違いない。」
 JAあいち経済連の担当者も「当然のことだが、名古屋コーチンの卵を販売しているのは私たちだけではない。消費拡大のためには名古屋コーチン全体のブランドイメージを上げ、消費拡大に結びつけていくことも重要になってくる」と今後の普及拡大について語っていた。
 名古屋コーチンを採卵用としてのみ飼養することは、飼料が多く必要な上、産卵率も良いとは言いがたく、成績だけを追い求めると非常に難しい鶏ではあるが、それを補って余りあるブランド価値が最大の魅力である。逆境に負けない、名古屋コーチンの今後のさらなる飛躍に期待したい。



2007年11月25日号

◎(株)アグリテクノ(福島県伊達市)
海藻ミネラルたっぷり『植物DHA卵』
純植物性だから後味すっきり、コクがある


 欧米諸国で特殊卵といえば、「オメガ3」の商品名で知られるDHA(ドコサヘキサエン酸)強化卵が今や定番であろう。現在、日本国内で流通している多くのDHA強化卵がイワシやサバなどの青魚から抽出した動物性油脂を飼料添加しているのに対し、オメガ3は、海洋食物連鎖の大元(小魚が啄む)となる特定の珪藻類から抽出したサプリメント(オメガテック社製「DHAゴールド」)を原料に用いているのが大きな特徴だ。福島県伊達市の鶏卵生販会社、(株)アグリテクノ(本社梁川、三品清重社長)のPB商品『植物DHA卵』は、欧米の鶏卵市場に新風をもたらしたオメガ3のいわば日本バージョンで、一年以上のテスト期間を経て商品化に成功。2002年の発売開始からすでに5年が経過している。
 『植物DHA卵』のセールスポイントは、(1)植物性DHAサプリメントを使用しているため、酸化の心配がない、(2)鶏の軟・硬便が少なくなり、糞臭が減少、鶏卵の生臭みがない、(3)鶏の健康状態が向上し、奇形卵、肉斑・血斑が減少、(4)黄身にコクがあり、粘り気が強いが、後味がすっきりしている、(5)試食テストの結果、大多数が「最もおいしい」と答えた、(6)DHA成分が100グラム中230ミリグラム含まれ、1日1〜2個で必要量が賄える、(7)サプリメントは海藻が原料であるため、魚介類に蓄積・混入するPCBやダイオキシン、有機水銀など環境汚染物質の心配がない、(8)第三者研究機関による厳正な衛生管理、(9)原種鶏の国内導入段階からロットごとのトレーサビリティが可能──など盛り沢山である。
 アグリテクノは1961年、先代社長の故三品重治氏が(有)三品種鶏場として創業。64年に養鶏先進国の米国を視察し、最先端技術を導入、海外種鶏の特約孵化場として孵卵・育雛・育成を中心に南関東一円に事業拡大した。84年には当時専務の三品社長が採卵農場を持つ特性を活かし、卵豆腐、茶碗蒸し、温泉たまごなどの加工食品を製造、首都圏のスーパーマーケットやコンビニエンスストアに販売する(株)しのぶ食品を設立。91年のCI導入に伴い、会社名をアグリテクノに変更、93年には三品氏が社長に就任した。現在、同社の成鶏飼養羽数は4農場合計で約70万羽。採卵養鶏のほか、ビデオソフトの制作プロデュースなど多彩な事業を展開している。
 ブランド卵の取り組みでは、大手量販店のPB商品やレギュラー卵プラスαの商品を数多く手掛けている。独自ブランドとしては、永田農法『健菜卵』、漫画家のやくみつるさんが描いた野口英世のロゴマークを付けた『アグリのたまご』(白玉)が人気だが、現在、飼料にハーブを加えたワンランク上の『アグリのたまごプレミアム』(赤玉)を開発中で、「年末か来年早々には発売したい」としている。




 

2007年10月25日号

◎マルイ農業協同組合(鹿児島県出水市)
農場から流通まで一貫のHACCP管理
“マルイブランドとはマルイそのもの”


 マルイ農業協同組合(高松智興代表理事組合長)は今年で創立50周年を迎えた。10年前からマルイ商品のブランド化に取り組み、鶏肉では「南国元気鶏」、「いずみ鶏」、鶏卵では「卵・茶々茶」、「マルイ元気たまご」、「リ・ビューのたまご」などなど他にも数多くのブランド化を実現し、品揃えを充実してきたが「目先の商品構成ではない、マルイそのものがマルイブランドである」と高松組合長は強調する。
マルイグループの最大の特徴は、185戸の組合員がすべて、まったく同じ仕様のひな、飼料、飼養管理を行っていること。それを保証するために飼料配合から種鶏の飼育、ひなの孵化・育成、加工または包装、流通、販売の一部までフードチェーンを一貫した安全・安心の商品供給体制を作り上げている。今やありふれた言葉となった「安全・安心」という言葉を使い始めたのが20年以上前のこと。1974年に大阪いずみ市民生協との取引を開始し、その後生協をメイン取引先としたことが食の安全に取り組むきっかけとなった。「常に厳しい目で見ていただける生協を、パートナーとしてきたことで安全・安心は当たり前というコンプライアンスが確立されていた。その中でISOやHACCP、トレーサビリティなども慌てる必要もなく自然に取り組むことができた」(高松組合長)。

 マルイ農協の完全子会社であるマルイ農協ファーム(株)(御領満代表取締役社長)では平成8年からいち早く、農場段階のHACCPに取り組んでいる。衛生管理は当初、サルモネラ対策に焦点を当てていたが、現在は鶏の衛生管理、人の衛生管理、人畜共通感染症の衛生管理と従来にない広範囲な衛生対策を実施。その運用においてはISO9001を活用している。御領社長は「外部コンサルタントは使わず、社員たちが一から勉強して、現場からプログラムを作り上げた。17年10月にISO9001:2000を認証取得したときは社員たちも泣いて喜ぶのを見て、本当にうれしかった」と語る。
 社是である「心に豊かさを、未来に夢を」は「規模拡大を意味するものではない。逆にいつまでも、何十年も、たとえば百年先も、組合が継続してみながきちっと生活できることこそがわれわれの夢である。これまでやってきたことを、方向を誤らず進め続けること。安全・安心・おいしさをモットーに、それを追い求めながら事業量を維持していく。安定供給の義務をきちっと果たしていく。特に、安心・安全の意識は中国を始め世界各国に広がりを見せている。食の安全性を保証できることは、今後ますます重要となるだろう。そのときにマルイブランドを海外に輸出できる状況が仮にあるとすれば、それこそが最も重要な付加価値となるだろう」と高松組合長は強く語った。




 

2007年9月25日号

◎ 愛媛東予養鶏農業組合(愛媛県西条市)
伊予のこだわり『媛っ娘みかんたまご』
地域特産ブランドは全国、アジアを視野に


 地域の未利用資源を有効活用し、付加価値の高いブランド畜産物を開発できないか─。1980年代前半に愛媛県の養鶏専門農協が県、農業試験場と検討に着手した商品開発の取り組みは約3年前、県の特産品である温州みかんの果皮を鶏に与えたブランド卵『媛っ娘みかんたまご』として結実した。『媛っ娘みかんたまご』の製造・発売元である愛媛東予養鶏農業協同組合(徳永博昭組合長)によれば、温州みかんの果皮には発ガン抑制効果があるといわれるβ‐クリプトキサンチンがオレンジの100倍含まれている。この果皮を西条市に近い伯方島のみかんジュース工場から譲り受け、粉砕・乾燥して専用飼料に添加し、日本養鶏農業協同組合連合会(日鶏連)が開発した天然ミネラル豊富な風化造礁サンゴ「コーラルパワー」を配合、抗酸化作用があるビタミンEも通常卵の約七倍含有させたのが『媛っ娘みかんたまご』である。
 『媛っ娘みかんたまご』の最大の魅力はそのネーミングで、みかんの清涼感と郷愁が何とも言えない親しみを消費者に感じさせ、卵売場で見つけると、誰もが一度は手に取ってみたくなる。末端売価は四国島内が6個158〜168円、関西圏は同198円、東京圏は同250円と、輸送距離に応じてキロ10円程度の格差を設けた。生産ロットは現在4万5000〜5万羽。安全・安心面では農場、GPセンターにHACCPをいち早く導入し、バーコードによるトレーサビリティシステムを確立。東予地区は日本百名山の一つ、西日本最高峰の石鎚山(標高1982メートル)の麓に位置し、豊富な地下水に恵まれているが、日本百泉にも選ばれた“うちぬきの水”をマイナスイオン化し、農場では飲水と環境浄化に、GPセンターでは処理水に用いているのも特徴である。

生産者は西条市内の河原津養鶏団地で成鶏約12万羽を飼養する、農協組合員の飯尾さん兄弟((有)ハロー・エッグ)。弟の飯尾範夫さんは「自動販売機の直売ではラベルも何も付けていないのだが、一度食べた人は買い続けている。『うちの子は、今まで卵かけごはんをしたことがなかったけど、これ(みかんたまご)を出したら食べるようになった』という声をお母さんからよく聞く」と話す。また、人気の理由として飯尾さんは「温州みかんに含まれるβ‐クリプトキサンチンだろうね。もう一つは、人間見た目で判断すると言うけれど、割ったときの黄身の色、白身の盛り上がりが他の卵とは全然違う。実際、卵かけごはんで食べてみると、コクがあっておいしい」と説明する。




 

2007年8月25日号

◎ (農)香川ランチ(宮崎県児湯郡川南町)
生みたて鮮度そのまま食卓「鮮々生々」
炭酸ガスで“違いがわかるもっこり感”


 30万羽規模で採卵養鶏場を営む(農)香川ランチ(香川憲一代表理事)は、販売数特殊卵比率50%超を実現している。多数ある自社ブランド卵の中で、ひときわ注目を集めているのが鶏卵パックに炭酸ガスを充填し、生みたての鮮度を食卓まで維持できる「鮮々生々」(せんせん・なまなま)を販売している。
 昨年9月の販売開始以降、「鮮々生々」は販売数を順調に伸ばし、現在は一日最低でも500パックが売れている。卵白に含まれる炭酸ガスが卵殻から漏出することで起きる鶏卵の鮮度低下は業界ではよく知られていることだが、同社では鶏卵を袋詰めする際に炭酸ガス発生剤を入れ、ピロー包装により初めて製品実用化した。製法は非常にシンプルで、グループ内企業の宮崎デリカフーズ(株)で用いていた茶碗蒸しや玉子豆腐をパックするピロー包装機を転用した。密閉包装内にガスが充満し、卵白内の炭酸ガスが漏出しなくなることで、産卵14日後の卵でもまるで産みたて卵のようなハリとツヤである。香川代表は「父親(現会長)に、世に出回る1000種類もの差別化卵に対抗するには四角い卵でも売るしかない、と言われたのがきっかけ。目で見てはっきりわかる差別化卵を作ろうと試行錯誤した」という。
 鶏種はすべてピンク卵で、ハウユニットが高く卵質のバランスの取れた「コーラル」を(株)山形種鶏場から導入。また飼料では、伊藤忠飼料(株)の配合により全日齢で飼料添加物「カルスポリン」を使用して、枯草菌の整腸作用により鶏の健康状態を良好にし、安心・安全な卵を生産している。また特に210日齢から400日齢のロットに限定して混合飼料NB−81を添加。ハウユニットが高くてコクのある、鮮やかな黄身のおいしい卵を生産している。


 同社のブランド戦略の特徴は、商品戦略だけではない。実はグループ全体で取り組んでいる販路戦略がその重要な鍵である。殻付卵の(農)香川ランチ、卵加工品の宮崎デリカフーズ(株)、炭火焼き鳥の(有)美国フーズの数あるブランドを、通常の卵問屋を通さない、食品問屋での流通に乗せる。これによりトラック一台いくらの取引から、商品一個いくらの取引に切り替えたのである。「私の造語かもしれないが、小口混載物流にチャレンジしている。少量納品だと初めから断念してしまう異業種メーカーも、私とこで集約してまとめた太いパイプで問屋さんに納品すれば、メーカー側も荷受側も喜ぶ。一店舗、ワンパックでも流通に載せられる仕組みである」(香川代表)。商談展示会にも頻繁に出展し、トレンドにあわせて新商品を発表するなどきめ細かいフットワークで食品問屋への積極的なアプローチを展開している。現在は宮崎県産や同県の東国原知事のブランドイメージを前面に出すなど工夫しているという。今後は、すでに展開しているグループ全体のブランドを、創業者で祖父の名前にあやかった“善太郎”ブランドに統一して再構成することで「飼料コスト高騰など、さらなる高コスト時代にも対応できる価格体系に切り替えていく」のが目標である。




 

2007年7月25日号

◎ ゴールドエッグ(株) (大阪府吹田市)
おいしさ・安全の学術的なTおすみつきU
ネッカ卵『わが家のおすみつき』の特色


 関西圏でネッカリッチ卵『ひまわり』を20年以上にわたって販売し、好評を博しているゴールドエッグ(株)(本社吹田市、富田治社長)が満を持して全国販売したネッカリッチ卵『わが家のおすみつき』。販売から5年が経過し、順調に販売数量を伸ばしている。
 ゴールドエッグが販売する特殊卵に共通するコンセプトは「ネッカリッチによるおいしさと安全の両立」。ネッカリッチは現在、農畜産分野で広く利用されているが、採卵鶏の飼料に添加すると卵のくさみを抑え、コクと旨味が格段に増すことが学術的に証明されている。さらに、サルモネラなどの病原菌を排除するため、きわめて衛生的な鶏卵の生産が可能になる。
 『わが家のおすみつき』という商品名は、衛生面、おいしさに対する科学的な「おすみつき」がついたことに加え、ネッカリッチの原料である「炭」に由来するもの。「ネッカリッチ自体あまり一般の消費者に知られていないため、ネッカ卵の商品名には『炭』という言葉を入れるようにしている。炭の浄化作用が見直されている昨今、消費者の目に留まりやすく、ひいてはネッカリッチを知ってもらうきっかけにもなる」と富田社長。さらに「卵はあくまで食品。いくら安全でもおいしくなければ売れない。そして卵のおいしさは、いかにくさみを抑えるかという点にかかっているとも考える。いくらコクや旨味があろうとも、鶏卵特有のくさみがあるとおいしいと感じない。そういった意味でもネッカリッチは非常に優れている」とネッカリッチの効果を評価する。

 ネッカリッチによるサルモネラ排出効果に加え、生産農場およびGPセンターの各段階ではHACCPに基づいた徹底的な衛生管理を実施。卵パック中に細菌抑制効果のある辛味成分(アリルイソチオシアネート)を染み込ませたラベルを入れるなど、出荷後の卵殻表面のサルモネラ対策にも配慮している。また、従来パックに比べ密閉度が高く防虫効果に優れ、何度でも開け閉めできる構造のスナッピーパックを採用し、パックのまま冷蔵庫に保管する上での利便性も追及した。さらに、商品に記載されているトレーサビリティコードを同社ホームページ上で入力すると、生産農場、飼料、GPセンターでの生産履歴情報の閲覧も可能。ネッカリッチによるサルモネラ排出効果に加え、生産農場およびGPセンターの各段階ではHACCPに基づいた徹底的な衛生管理を実施。卵パック中に細菌抑制効果のある辛味成分(アリルイソチオシアネート)を染み込ませたラベルを入れるなど、出荷後の卵殻表面のサルモネラ対策にも配慮している。また、従来パックに比べ密閉度が高く防虫効果に優れ、何度でも開け閉めできる構造のスナッピーパックを採用し、パックのまま冷蔵庫に保管する上での利便性も追及した。さらに、商品に記載されているトレーサビリティコードを同社ホームページ上で入力すると、生産農場、飼料、GPセンターでの生産履歴情報の閲覧も可能。

 『わが家のおすみつき』を使った温泉卵も好調である。富田社長は、飼料価格の高騰による生産コストの増加について「ここ1、2年は生産者にとっては辛い時期になると思う。販売する我々から見ると、相場で仕入れ固定価格で販売する『わが家のおすみつき』のリスクは高く、今後は臨機応変な対応が必要になるだろう。しかし、卵の値段が高水準で安定したとしても、それで卵が極端に売れなくなることが果たしてあるだろうか。楽観はできないが、卵ほど安価で多種の食品が摂取できる食品は他にない。本来、鶏卵は現在の販売価格に比べて、もっと価値のあるものだと考えている。価値のあるものを適正な価格で販売していくことが重要である」と話す。




 

2007年6月25日号

◎日本配合飼料(株)(神奈川県横浜市)
天然素材マリーゴールドで鮮やかな卵黄色
視覚と味覚に訴える『黄味自慢』の独自性


飼料畜産のパイオニアから総合食品企業へ──。大手飼料メーカーの日本配合飼料(株)(本社横浜、吉田和臣社長)が、フードビジネスの核となるブランド畜水産食品の開発・普及に全社を挙げて取り組んでいる。その先駆けとなったのが、消費者にとって「最も身近な食品である鶏卵」。鶏卵事業部を設置し、関係農場の生産・販売支援と、中央研究所、畜産飼料部が一体となったブランド卵の開発に本格的に乗り出したのが1995年。それから約10年、同社の基幹ブランド『緑茶カテキン卵』(赤玉6個)に続く、新たなブランド卵として『黄味自慢』(白玉10個)を開発、2005年3月に関東エリアで発売を開始した。「当時は鳥インフルエンザ騒ぎの後で、一番相場が高い時期。今思えば想定外だったが、開発した以上は販売しようと、卵がどこにもない時期にあえて発売に踏み切った」という。

『黄味自慢』は、(1)天然素材のマリーゴールド(花弁粉末)とトウモロコシで卵黄色を鮮やかな黄色に仕上げた、(2)生卵の状態では変化しないが、加熱調理後も卵黄色の退色が抑制され、鮮やかな黄色が保たれる、(3)栄養機能食品の表示をすべく、ビタミンDを通常卵の三倍(120IU)移行させた──が商品開発の基本コンセプト。特定の栄養成分強化を謳った従来の特殊卵とは一線を画して、よりシンプルでわかりやすい、視覚(鮮やかな卵黄色)と味覚(おいしさ)による違いを前面に打ち出している。商品名の「黄味」(“黄身”ではない)も、その商品特性を明確に表わすもので、「自慢」という言葉には、見た目やおいしさだけではなく、品質、安全性、環境保全の面からも「自信を持って供給したい」とする同社の思いが込められている。

生産農場では、同社独自のノウハウで配合設計した専用飼料を給与するほか、採卵期間を145〜550日齢に限定、強制換羽は一切実施していない。鶏種はハイラインマリアを主体に飼育し、卵殻強度が高く、破卵率が低い鶏卵の生産に努めている。初生雛、飼料原料まで遡ることができる厳格なトレーサビリティも、飼料会社ならではのこだわりといえるだろう。

卵黄色については、赤身が強いカラーファン13〜14のブランド卵が増える中、あえて11〜12に設定した。「卵黄を崩すと鮮やかな黄色いエキスが現れる。お客様からは『きれいな黄色ですね』と評価の声をいただいている。『黄味自慢』なら料理の彩りは一層鮮やかになるし、作る人にも食べる人にも喜んでもらえるのではないか」と小川氏。販売先は今のところ量販店が中心だが、『黄味自慢』の商品特性を活かせる市場として、素材にこだわるカステラメーカーなど、加工関係との取引も徐々に拡大したい考えだ。小川課長代理は「地に足を着けて取り組みたい」と話す。




2007年5月25日号

◎(株)後藤孵卵場(岐阜県岐阜市)
“種”という根本からの付加価値ブランド
純国産鶏卵『さくらたまご』『もみじたまご』


 (株)後藤孵卵場(日比野義人社長)が長年開発・普及に取り組んできた『さくらたまご』『もみじたまご』は、業界の趨勢とは明確に一線を画し、種鶏による付加価値、国産の意義を全国の生産者、消費者に問い続けてきた。『さくらたまご』『もみじたまご』の独自性とは、純国産鶏が産んだ卵であることに集約される。純国産の鶏が産んだ卵であることは、それだけで他にはない付加価値・差別化になり得る。“根本からの付加価値”こそ創業以来の同社の方針である。
 「さくら」と「もみじ」は、国内で品種改良を行っているため、日本の気候風土・ニーズに合った改良、産卵性がよく抗病性に優れた遺伝資源の維持と確保、実用鶏の安定供給が可能で、海外悪性伝染病(病原体)を持たない清浄なひなを自助努力で作出できる。また、フィールドの情報を正確かつ迅速に得ることができることから、顧客とのタイムラグも外国種鶏に比べると格段に少ない。何らかの理由で海外からの輸入が止まったときも、ひなの安定供給が可能であり、さらに原々種、原種、種鶏と数世代にわたって、一連の流れを完璧にトレースできる。これらは純国産鶏の大きなメリットであると考えられる。自国内で種を持つことによって、日本の養鶏の自主性、自立性を高め、現在40% といわれる食料自給率を種のレベルから引き上げることに大きく寄与する――このテーマを、後藤孵卵場は理想で終わらせることなく、企業理念の柱であり核として体現している。


「契約農場の多くは、鶏の成績云々ではなく『売れる卵』を欲している。生産レベルの問題よりも、どれだけ商品価値をつけやすいか、売りやすい卵を生産できるかという点で、やはり『さくら』と『もみじ』は高い評価を得ている」と同社の販売部販売促進課長の下村勝氏は語る。養鶏場での直売も盛んで「農家の顔の見える卵」として自ら販売に取り組み、かなりの利益を上げている中小規模の生産者も少なくないという。同社の鶏卵事業本部取締役本部長の桑原氏は「日本人の国産志向をバネに、純国産の卵がどこにでも置いてあることが当然となるように活動を強化したい」と、さらなる拡販に意欲を見せる。




2007年4月25日号

◎丸紅エッグ(株)(東京都中央区築地)
健康志向に応えた『栄養バランスたまご』
農場、GPのフランチャイズ展開も視野に


 多種多様なブランド卵が市場に現れては消え、開発テーマはもはや出尽くしたともいわれる昨今、丸紅エッグ(本社東京、島田博社長)のPB商品『栄養バランス卵』は販売以来、好調に販売拡大を続けている。綿密なマーケットリサーチに基づき、消費者が真に求めるブランド卵の価値を追求。鶏卵が本来持つ4つの栄養成分(DHA、ビタミンD、ビタミンE、α−リノレン酸)をバランスよく強化し、子どもから高齢者まであらゆる年齢層をターゲットに商品化した。
 島田社長は、開発動機となった市場環境を(1)食に対する健康志向の高まり(高齢化、健康不安)(2)鳥インフルエンザの不安(風評被害、供給不安)(3)トレーサビリティの必要性(産地の明確化)(4)特殊卵、ブランド卵曖昧表示の禁止(誇大な訴求、特徴のない卵への消費者の不信感)(5)不安定な相場(先の見えない相場動向)と説明。これらの問題を解決する商品コンセプトとして、「栄養素をバランス良く強化した身体にうれしい卵」「2農場、2GPセンターでの製造を原則とし、万一の事態でも製造補完可能な供給システム」「定価販売により低卵価時への対応」を提案している。


 専用飼料は複数の飼料メーカーに製造を委託しているが、同社が“健康の四角形”と呼ぶ4つの栄養成分が間違いなく鶏卵に移行していることを保証するため、四半期ごとに含有成分の外部検査を実施。飼料メーカー側でも、鶏の食下量に合わせて季節ごとに配合設計を調整、原料卵や市販卵の自主検査を実施するなど、厳格な品質管理体制が敷かれている。
 販売開始は2005年10月。当初は関東エリアのみでの販売であったが、その後関西、九州エリアでも販売を開始した。主な販売先は全国チェーンの大手量販店や地域スーパーなど。2006年度の販売実績は、4個・6個・10個パックの合計で380万パック、数量ベースでも年間2000トンを超えた。末端販売価格は白玉10個258円、6個168円、4個138円。いずれもMSからLLまでの定量包装で、関東の一部のスーパーでは赤玉の販売も開始した。ちなみに、卵黄色は白玉、赤玉ともにカラーファン12.5〜13が基準となっている。
 同社では、栄養バランスたまごの当面の販売目標を「1000万パック」に置いている。今年度は販促キャンペーンの実施期間を延長し、消費者のさらなる認知度アップを図る考えだ。また、新たに北海道への進出も計画中で、需要拡大に合わせて農場、GPセンターのフランチャイズ展開を進めたいとしている。




2007年3月25日号

◎全国地養卵協会(千葉県市原市・(株)エムイーシーフーズ内)
卵の王様を目指す全国ブランド『地養卵』
ネットからパック、加工品まで多彩に展開


特殊卵、ブランド卵は星の数ほどあるが、全国展開のナショナルブランドとして、文字通り全国の消費者、バイヤーに広く認知され、生産・販売の仕組み作りに成功した商品は数少ないのが実情だ。『地養卵』は、全国地養卵協会(早川秀夫会長)を始めとする各グループが主体となって取り組んだ貴重な成功例の一つ。ここ数年はテーブルエッグだけでなく、業務・加工、海外市場など多種多様なマーケットに販路を拡大。販売数量は全体で200万パックに達し、ネットからパック、多彩な加工品の開発と、地養卵は時代のニーズに合わせて進化を遂げ、“卵の王様”を目指して飛躍を続けている。
 地養卵は、地養素の供給源である農研テクノ(株)の故・永井明社長が中心となって昭和40年代からブランド確立への取り組みを行ってきたが、販売が急拡大したのは全国地養卵協会発足(1994年11月)の2年ほど前。首都圏のスーパーや小売店に褐色卵をネットで包んだ『ネット地養卵』が出現し、消費者の注目を集めた。そのユニークな包装形態と、ネーミングが持つ自然卵のイメージ、コクと甘みがあて生臭さがない卵自体のおいしさが人気を呼び、発売からわずか数年間で月間100万パックに迫る一大ブームを巻き起こした。量販店との取り引きが増える中、割れの問題、特売対応などの問題からネット卵の供給数は半減したものの、減少分はパック卵へと切り替わり、さらに数量を伸ばしている。


 販売価格はネット、パックともに赤玉10個入り330円(税込み)。LLからMSまでの定重量包装で、販売開始以来、年間一本の定価販売を貫いてきた。「今年も前年比2〜3%の伸びを予想している。地養卵が全国に普及した結果、特殊卵価格は300円台が基準になった。バイヤーさんの頭にも地養卵の価格がインプットされており、競合各社も商売がしやすくなったはずだ」と早川会長。
 全国地養卵協会の会員数は、発足当初の24社から現在33社に拡大。日齢制限や卵黄色(カラーファン13)、ハウユニット、サルモネラ検査など厳しい基準をクリアした、協会が指定する生産農場は全国70数カ所に及ぶ。また、地養卵に特長でもあるコクと甘みの指標となる還元糖値やコレステロール値を農場ごとに定期的に測定。還元糖は一般卵よりも平均15〜20%高く、コレステロールは10〜20%低い結果が出ている。




2007年2月25日号

◎京都府京都市・(株)ファーマフーズ
女性のための栄養機能食品“葉酸たまご”
胎児の正常な発育と赤血球形成助ける


 (株)ファーマフーズ(京都府京都市西京区御陵大原町、金武祚代表取締役社長)が販売する『葉酸たまご』は、赤血球の形成を助け、胎児の正常な発育に寄与する葉酸を一定以上含有した栄養機能食品である。平成17年8月から関西圏で販売をはじめ、現在は阪急グループ全店に出荷。昨年12月からは中部地方にも販売を開始。また関東への販売も検討するなど全国展開を目指している。
 もともとホウレンソウなどの野菜類に豊富なビタミンB群の栄養素である葉酸(Folic Acid)を、プレミックスの「ファーマバイオミックス」を配合して家きんに給与する。継続的に給与すれば三週目からは、鶏卵一個当り約70マイクログラム(卵黄100グラム当り約400マイクログラム)の葉酸を安定して含有する卵を生産できる。
 葉酸は悪性貧血を予防し、動脈硬化の予防効果も認められていて、成人に必要な葉酸摂取量は一日240六マイクログラムとされている。さらに近年問題になっているのが妊娠した女性の葉酸不足である。厚生労働省は十二年に妊娠可能年齢にある女性については一日400マイクログラムの葉酸摂取を勧告している。葉酸が足りないと胎児の成長に悪影響が出て、脳や脊髄がうまく形成されず、神経管閉鎖障害を引き起こしてしまう。二分脊椎と呼ばれる下肢の麻痺や歩行障害、また脳瘤や無脳症などがある。


 葉酸は水溶性のビタミンB群であるため、ホウレンソウをおひたしや鍋にするために茹でてしまうと80%以上が溶出してしまう。一方、卵の葉酸は、加熱後も80%以上がそのまま残る。卵一個の葉酸量は茹でたホウレンソウのおひたし約四皿分に匹敵する計算になる。生で食べれば一日一個か二個で必要摂取量の四分の一か半分以上を摂取することができるわけだ。
 ファーマフーズは加熱しても分解されにくい葉酸たまごの機能性を活かし、女性が毎日の生活の中で楽しく手軽に、自然においしく葉酸を摂取できる社会作りを目指す。上野竹生常務取締役総務部長は「このブランドを大事に、かつ早急に全国に拡げて行きたい。しかし、全国展開するに当たっては、まず葉酸たまごという商品の価値を理解し、生産から末端商品まで責任を持っていただける関係を築けること。そんなパートナーシップを目指して行きたい」と語った。




2007年1月25日号

◎愛知県知多市・中部飼料(株)
HACCPによる鶏卵衛生管理の先駆け
ゴマそのものを飼料とした『ごまたまご』


 中部地方、特に名古屋周辺のスーパーマーケットでは扱っていない店舗を探すことが困難なほどの高配荷率を誇る中部飼料(株)の『ごまたまご』。耳当たりのよいネーミングも手伝って、現在全国で月間100万パック近くを出荷している。2005年秋からは、赤玉10個入りパックだけでなく、6個入りパック、さらには白玉の6個入り、10個入りのパックの販売も開始し、ますます好調である。
 同製品の開発のきっかけとなったのは、椙山女学園大学の山下かなへ教授による、ゴマの成分を卵に移行させるという研究。ゴマを飼料に配合することで、抗酸化物質の一つであるセサミンが鶏卵中に効果的に移行することが判明し、セサミンを強化した「ごまたまご」の開発に中部飼料が着手したのが7年前のことであった。同社の山田一成鶏卵事業部長は「販売に当たっては、ターゲット層は特に定めなかった。『ごまたまご』では、あらゆる世代の消費者に、安全・安心でおいしい卵を提供することを目的とした」と語る。


 セサミンは、肝機能増強効果、制ガン作用、活性酸素除去効果、血圧降下作用、コレステロール抑制作用などの効能を持つ、ゴマリグナン物質に属する抗酸化物質の一つで、同時にビタミンEを強化している「ごまたまご」は、「ゴマリグナン物質とビタミンE類の強化卵、強化卵の製造法、および強化卵に基づく健康食品」として特許を取得している。
 同社では10年前から鶏卵の衛生管理にHACCPを導入している。当時はHACCPという言葉だけが一人歩きし、ハード偏重の衛生管理をしている企業が多い中、本来のHACCPに則ったソフト面での衛生管理を実施した同社が業界に与えた影響は大きい。反面、取り組みの手本となるものが少なく、手探りの状態で苦労した点も多かったという。
今後の展開について、山田部長は「農場段階においてもHACCPを推進し、農場の衛生管理の強化を計画している。徐々にレベルアップを図り、より安全・安心なたまごを目指す。また販売については、3年後の2010年までには現在の倍の200万パック販売を目標にしている。そのために中部地方だけでなく、関東、関西の各スーパーさんに『売れる商品である』ことを認知してもらい、販売を強化していく」と語った。



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