2008年12月25日号

◎京都食品(株)(京都府亀岡市)
「丹波篠山」名産の黒大豆を飼料に添加
 京都の奥座敷・亀岡発の『くろ丹波』―


愛宕山を望む、自然豊かな京都府亀岡市で50年にわたり養鶏業を営んできた京都食品(株)(中澤伸広社長)。同社は京都・洛西から山陰街道老ノ坂峠を越えた「京都の奥座敷・亀岡」の澄んだ空気ときれいな水の自然に恵まれた環境にあり、その豊かな自然環境の中、30数万羽の採卵鶏を飼養している。丹波黒大豆を飼料に添加した『くろ丹波』をはじめ、『亀岡発、丹波の赤たまご』『丹の国平飼いたまご』など数々の安全で新鮮な卵を市場へ供給している。

一昨年の10月に販売開始した『くろ丹波』のコンセプトは“地産地消”。栄養強化などの付加価値ではなく、京都食品でしかできないことを追求した結果、地元「丹波篠山」名産の黒大豆を飼料に添加するという付加価値にたどり着いたという。

中澤社長は「弊社ならではの卵というテーマで新商品を考えている時に、大豆由来の納豆菌を飼料に添加すると卵にまろやかさが出るという話を聞いた。また、豚の飼料にきな粉を出荷2週間前に給餌すると脂身が甘く、やわらかくなると聞き、これは卵にも応用できるのではないかと考え、地元名産の黒大豆を飼料に添加した。その結果、臭みがなく、後味のよい卵が出来上がった。本来、高級品である黒大豆を採算のとれる価格での仕入れルートが確保できた。関係者の方にはとても感謝している」と開発当時を振り返る。

また、直売場では『黒豆たまご』という名称で販売しており、こちらも非常に好評のようだ。

直売場では当初、2L等の格外卵を中心に「農場直売の赤たまご」という形で販売をしていたが、黒豆たまごを始めてからはこだわりを持った卵であることを前面に打ち出して販売している。消費者の評判も上々で「臭みがなくあっさりして甘味が分かる卵」との評価を受け、売り上げも順調に伸びているようだ。

『くろ丹波』の現在の生産量は、羽数ベースで約2万羽。生産拡大も視野に入れているというが、原料の黒大豆は収穫が年に1度で、大量入手が難しい。安定した飼料原料の確保も生産量を増やす上では解決していかなくてはならない課題だという。

今後の事業展開について中澤社長は「地域の特色をさらにアピールしていく方針だ。今後は直売商品に限らず“丹波”という名称をどんどん使っていこうと考えている」と話す。




 

2008年11月25日号

◎一宮市浮野養鶏農業協同組合(愛知県一宮市)
地産地消をモットーに好評博す『尾張の卵』
栄養強化でなく、おいしさと安全が最重要


一宮市浮野養鶏農業協同組合(愛知県一宮市、岩田益憲組合長)が長年地元の信頼を得て生産している『尾張の卵』は、地産地消をモットーに販売を続けている。生産される卵は生食することを主眼にすべて設計されている。その理由について「生食でおいしいなら、ほかのどんな調理法でもおいしく食べられるからだ。鶏卵の生産では食べておいしいということが一番大事だと思う。おいしい卵を作るにはどうしたらよいかと試行錯誤した」と岩田組合長は語る。

しかし、最初から満足のいく卵が生産できたわけではない。岩田組合長は「『尾張の卵』は消費者のクレームによって進化してきた」とし、「最初に指摘されたのが卵黄色の問題で、食味には直接関係しないが、やはり消費者にとっては一番気になるところのようだ。次にヒビ卵や肉斑、血斑の問題。これらそれぞれを消費者の声を吸い上げて解決してきた」と振り返る。


直売所で販売されている「卵掛定食」

またその売価についても「消費者の信頼を勝ち取るためには、絶えず消費者に利益を与え続けなくてはならない。そのため品質以上の価格はつけてはならないと考えている。現状、世間にはかなり高価格な卵もあるが、その値段の根拠がしっかりないといけないと思う。売上げを上げようとして卵の価格を上げると、利益は逆に下がってしまい、売れるものまで売れなくなってしまう。 また、機能面でビタミン強化などさまざまなタイプの特殊卵が世に出てきているが、多くの栄養を卵からとる必要はまったくないと私は考えている。そのような付加価値で売価を上げるよりも、卵の本筋である食品のおいしさや、安全面を追求していくことの方が大事なのではないか。ブランド卵もイメージ先行で販売しているところが多い。それではいずれお客さんは離れていってしまう。食品としての本筋を外さず、お客様への感謝の気持ちをもつことが重要だ」と語った。




 

2008年10月25日号

◎(有)アイシン産業(静岡県三島市)
食べてわかる本物の卵『日の出たまご』
小規模養鶏のモデルとなる循環型農業目指す


養鶏をはじめ養豚、たい肥の販売、エコフィードの製造と幅広い取り組みを行っている(有)アイシン産業(金子久人社長)。同社が取り扱う、日の出の太陽のような鮮やかな橙色の卵黄が特徴の『日の出たまご』は、箱根のミネラル分を豊富に含んだ赤土に坪当たり16〜17羽と非常に薄い状態で平飼いされている。

今後の展望について金子社長は「鳥インフルエンザの問題があるので、野鳥対策と危険分散という意味で、鶏舎を分散させていく予定だ。鳥インフルエンザ対策としては最もポピュラーなウインドウレス鶏舎ではやはり健康な卵はとれないと私は考える。鶏舎にはパンチングメタルを使用し野鳥対策をしている。鶏舎が清潔に保たれていれば野鳥は来ない」と語る。

また、「富士屋ホテル(創業130年を誇る箱根の老舗ホテル)で商品のプレゼンをして以来、FAXなどでの注文も増え、売り先にはまったく困っていない。農場分散の際にはある程度の増羽も考えている。ただ、ホテルとの取引がはじまると定量を確実に入れなくてはならなくなる。今後も質を落とさないように良いものを生産していく。ゆくゆくはインターネットを通じた通販も始めていきたい」と語り、
「これからの小規模養鶏は付加価値を付けて利益率の高い経営をしていかなければ生き残れない。そのためには、本物を作り続けることが重要だ。一回きりのお客さんではなく、継続して卵を買ってもらうには、食べてわかる本物が必要だと思う。卵を拾いに鶏舎に入った時に、自分で卵かけごはんが食べたいなと思えるような卵を作っていかなくてはならない。日本の養鶏業界は、小さい規模のところはやめざるを得ない。そういった中で鶏ふんの販売等までこなす循環型農業のシステムをモデルとして示していきたい」とも語る。




 

2008年9月25日号

◎(有)サカイフーズ(福島県石川郡浅川町)
原種発見から21年、種鶏・孵化場も完成―
「会津地鶏」ブランドの安定供給を目指して


幻の地鶏「会津地鶏」の卵や肉を地域の特産ブランドとして確立しようと、昨年2月に福島県の支援の下、会津養鶏協会会員の生産・流通業者や、民間研究機関の(株)ピーピーキューシー研究所、(財)猪苗代町振興公社などの出資で設立された農業生産法人、(株)会津地鶏ネット(本社会津若松)。需要の拡大に対応するため、今年春には同社が一元管理する種鶏舎と孵化場が二本松市に、育成場が猪苗代町に完成した。

原種の発見から21年、民間主導による「会津地鶏」のブランド展開がいよいよ本格化する。会津地鶏ネットの代表を務める(有)サカイフーズの酒井毅社長は、兄弟会社の(有)酒井養鶏場社長で実弟の裕之氏と力を合わせ、阿武隈山麓の豊かな自然に恵まれた霊山町、浅川町、松川町などで成鶏27万〜28万羽規模の採卵事業を展開。安全性はもちろん、品質とおいしさにこだわった特殊卵を中心に、育雛・育成から生産、販売まで一貫して取り組む若手経営者である。

酒井社長によると、会津地鶏の詳しい由来は定かではないが、平家の落人が愛玩用に持ち込んだ鶏が同地に広がったとの説が有力だ。少なくとも450年以上も前から会津地方にのみ生息していた地鶏であるとされている。会津地方は元々鶏の飼育が盛んではなく、そのために他品種との交配が行われず純粋種が維持されてきたと考えられている。

酒井社長は「会津地鶏と出会ったのは15年以上も前。福島県の養鶏生産者は当時、養鶏試験場とまったく交流がなかった。何かを教わろうとは思わなかったし、期待もしていなかった。加藤先生曰く『試験場には優秀な頭脳が集まっている。なぜ利用しないのか』。生産者の意見を試験研究に反映してもらおうと、年に一度、試験場と交流の場を持つようになった。その第1回目か第2回目の交流会で、一年間の研究成果を聞いた後、F1の会津地鶏の肉を鍋にして食べた。これが実においしかった」とも振り返る。




 

2008年8月25日号

◎倉持産業(株)(茨城県常総市)
ほんものの安全・安心『放し飼いたまご』
基本的な衛生管理徹底し、よいたまご提供


茨城県常総市にある本社を中心に、契約農場をあわせて150万羽規模を展開する倉持産業(株)(倉持一彦代表取締役)は、独自のブランド展開を進め『筑波の黄味じまん』や『平飼いたまご』、『温泉たまご』に力を入れている。

クラモチたまごの考え方は、徹底して「基本を大事にする」こと。契約農家も含めて農場の基本的な衛生管理の基準を定め、品質管理課の指導により20万羽の農場も3万羽の農場も同じ基準で衛生管理を行っている。原卵から出荷まで温度管理を徹底、モニタリングと微生物検査による独立したチェックを行う。「もうすこし文書化してHACCP認証の取得は進めたい。しかし、認証が目的化してしまっては意味がない。まず『もの』ありき、『たまご』ありきで、よいものを作ることにこだわりたい。普通卵さえきちっと作れないところが、中身だけいじって特殊卵などやっても意味がない」と倉持社長は語る。

昨年から始めた『平飼いたまご』は最新平飼い専用鶏舎を用いている。鶏舎内は完全放し飼いで止まり木もあり、自然に近い状態で飼育されている。一方、衛生管理にも徹底した配慮がされていて、セミウインドウレスであるため野鳥などの侵入の心配がないほか、鶏の足もとがすべて網目状のスラットになっており、鶏ふんは下に落ちるためふんとの接触が一切ない。「放し飼いでも衛生的な環境でやれば成績はよくなる」という。

同社の特殊卵は、地養卵をベースにしたものが多い。それにビタミンEを加えるくらいで、添加物による付加価値は目指していない。「添加物で付加価値をつけるような、中身をいじりすぎたような特殊卵はあまた出ている。むしろ基本に帰った衛生管理や飼養方法、農場の管理といった方向に向いて行かないと難しいのではないか。」とも倉持社長は語る。




 

2008年7月25日号

◎(有)仁光園(富山県高岡市)
農場HACCPの第三者認証取得で信頼アップ
安全とおいしさを両立した『なまたまGOOD!α』


富山県小矢部市の宮島峡に農場を展開する(有)仁光園(本社高岡市、島哲雄社長)は、「安心・安全とおいしさ」を社是に鶏卵生産を行ってきた。今年6月10日、国際的認証機関の日本法人であるSGSジャパン(株)(本社横浜)による『農場HACCP』の認証を取得した。

第三者認証取得について、島社長は「鶏卵で最大のハザードはサルモネラ菌。サルモネラフリーであるということは採卵企業にとって絶対必要条件であると考えている。安全性や信頼というものは揺らいではいけない。サルモネラ菌を『入れない』『増やさない』『拡げない』ということを念頭に、この10年間、衛生管理に取り組んできた。認証取得前も衛生管理は徹底しているが、今回SGSの認証を受けたことによって、第三者に科学的なデータの裏付けのもとに行うシスティマティックな農場HACCPの当社の取り組みが認められたことの意義は大きい」と語る。

同社の看板商品『なまたまGOOD!α』は、開放鶏舎でのひな二段ケージで一坪当り30羽強と薄飼いされた250〜400日齢の鶏の卵のみを使用している。飼料は原料指定配合で完全NONーGMOかつ、PHFのとうもろこし、大豆かすを使用。肉骨粉などは一切使っていない。さらにビタミンEを強化し、通常の五倍以上の含有量を誇る。

同社の販売するブランド卵のパッケージには「生食」あるいは「生でお召し上がりください」という一文が必ず表記されており、生食へのこだわりと品質に対する確かな自信が感じられる。

最近、食の安心を揺るがす偽装事件なども度々起きているが、「衛生管理でも同じことが言えると思う。一度でもごまかしをしてしまうとそれが常態化してしまう。企業のトップがやはり決意を持って厳格に推し進めることが重要であると実感している」と島社長は言う。




 

2008年6月25日号

◎とりっこ倶楽部“ホシノ”(静岡県島田市)
太陽の恵みを受けた生命力の強い鶏の卵―
効率追求ではなく、味や品質に最重点を置く


とりっこ倶楽部“ホシノ”(星野雅史代表)は「たくさん卵を産む鶏」ではなく「元気で丈夫な鶏」を目指し、「おいしさ・安全・旬・ほんもの」をキーワードに鶏づくりを進めている。同社では現在10種類以上の鶏種を扱っており、そのすべてに共通するのは効率を追求するのではなく、卵の味や品質に重点を置いて選抜・作出された鶏であるということである。

自社交配の鶏種を使うことについて星野代表は「私は“種のない国の養鶏は滅びてしまう”を信念に鶏づくりを行ってきた。合理性の観点からみると成績は良くないが、味や栄養などは非常に優れている」とし「メラニン色素の強い鶏ほどおいしい卵、生命力にあふれた卵を産卵する。タンパク質や脂質はもちろん、ミネラル、亜鉛、マグネシウム、アミノ酸、セレンなどを豊富に含むことがわかっている」と語る。

また、自家生産の烏骨鶏、島田地鶏の卵を使って自ら健康補助食品の製造・販売も手掛けている。「自社農場で飼養している健康な鶏が産んだ新鮮な卵だけを使い、カプセル詰めなどの一部の工程を除いてほとんど手づくりで製造している。そのため価格はやや高めだが、品質は確かであると自負している」と星野代表が語るように烏骨鶏の卵黄油は、一般卵から作るものに比べて各成分を豊富に含み、ある種のビタミンEなどは2500倍にもなるという。

星野氏自身もこの健康補助食品を愛用しており「毎朝、烏骨鶏の血粉を一グラム飲んで玄米と烏骨鶏の目玉焼きを食べる。食後に牛乳と酢卵を飲む。私の健康な姿が何よりの効果の証明だ」とも語った。

合理的な生産を追求するだけではなく、自然に沿った形で生産を続けるとりっこ倶楽部“ホシノ”。原油高、飼料高が進む中、農業の基本に立ち返った生産方式が、今後見直される時代が来るのかもしれない。




 

2008年5月25日号

◎(有)久保田養鶏園(神奈川県秦野市)
丹沢山麓の清涼な空気、名水百選の湧水―
探し求めた付加価値は自らの足元にあった


小田急線の特急ロマンスカーで新宿から小一時間。タバコと落花生の産地として全国に名を馳せた神奈川県秦野市は、今や東京、横浜など大都市圏に通勤するサラリーマンのベッドタウンと化している。長閑な田園地帯には宅地化の波が押し寄せ、幹線道路を望む、緑豊かな丘陵地にも真新しい建売住宅やマンションが迫り来ている。そんな同市内に唯一残った養鶏場が、(有)久保田養鶏園(久保田泰義社長)である。

オーナーの久保田さんは“こだわり卵”の生産者として、全国ネットのテレビ番組にも度々登場する有名人である。「はなまるカフェとか、お父さんのためのワイドショー講座とか、ずいぶん出ました。警察に場所を聞いて訪ねて来る人や、東京から電車を乗り継いで来た人もいて、びっくりしました」と久保田社長。

「飼料に何か混ぜると、こんな卵ができるというのは、昔は珍しくて、私も夢中になってやったけれども、だんだんこれでいいのかなと。漢方、DHA、コレステロールとネーミングが違うだけで、飼料の中身を変えることは誰にもできる。しかし、それだけでは味の違いがはっきりと出ない。私はうちの卵が一番おいしいと思っている。プロの卵屋さんにも“素晴らしい”と言ってくれた。やはり鶏が毎日飲んでいる水、空気が違うのだろう。これは誰にも真似できない、うちだけの付加価値ではないかと考えるようになった」とも語る。

丹沢名水とアスタキサンチン含有を謳った独自ブランド『湘南美人』(赤玉6個入り)、近隣のゴルフ場で販売している化粧箱入りの『丹沢名水地玉子』(2L、MSなど30個)も、実は隠れた人気商品だ。丹沢山麓の清涼な空気と、名水百選に認定された秦野盆地湧水群の一つ「春嶽湧水」。生き物が最も快適に過ごせる海抜200メートル前後の南向き斜面で飼育されている鶏たち。久保田社長の足元には、お金では決して買うことができない宝物が眠っていたのである。




 

2008年4月25日号

◎(株)こっこハウス(愛知県田原市)
純国産鶏もみじから生まれる『究極の卵』
飼料原料から鶏ふん堆肥までの地産地消


愛知県田原市にある(株)こっこハウス(冨田弘司社長)は(株)後藤孵卵場の純国産鶏「もみじ」を使用し、雛からの一貫生産。その卵を『究極の卵』と銘打ち販売している。

そのこだわりは、飼料原料からである。同社が使用している自家配合飼料は、自社で発酵させた天然酵母や乳酸菌添加剤「バイオバランス」、NON-GMO・IPのトウモロコシ、さらには地元の食品工場から、国産大豆粕などの飼料原料を仕入れて使用している。可能な限り飼料原料を地元で調達し、より安全な餌づくりをしていくという経営方針で生産を行っており、飼料原料一つひとつについてトレーサビリティが可能だ。「海外の飼料原料に依存した餌づくりのままでは今後良いものはできないだろう」と冨田社長は語る。

消費者は1個50円の価格を上回る満足感や価値を『究極の卵』に見い出している。

「当社の顧客は食品に関心が高く、独自に勉強をしている方が多いようだ。食の安全・安心に関する知識を持った消費者が、納得して買える卵を今後も生産していく。毎日消費者と会う機会があるので、日々襟を正してきちんとものづくりをしていかなくてはならないと感じる」と,冨田社長。

冨田社長は、乳酸菌発酵技術に20年以上取り組んでいる。今後、中小規模の農家が生き残っていく条件について「乳酸菌は養鶏だけでなく、農業全体において重要な要素になってくるのは間違いない」とし「現在の養鶏業界を見ると、鶏ふん堆肥の流通がうまくいっていないように感じる。鶏ふん堆肥の流通システム構築が必要ではないか。鶏ふん堆肥を使った安全な野菜が作られ、またその作物が消費者にしっかり消費されるというサイクルが確立されないと、真の意味での循環型農業ではないと考えている」とも話す。

「不自然なものを使うと、やはりうま味がでない。大量生産ではなく、一つひとつこだわった卵でおいしいものを生産していくことによって、安全性を含めたものづくりを評価していただけるのではないか」と自信を見せた。




2008年3月25日号

◎(農)東富士養鶏場(静岡県御殿場市)
より良いものを地元供給することが使命
東富士ブランドの中核商品『御殿たまご』


こだわりの鶏卵、鶏肉、環境対策資材『ピービオー2』の製造・販売まで、養鶏をベースに多角的な事業を展開するP・Bio・Fujiグループ(本社御殿場市、石田九市代表)。同グループの母体、(農)農東富士養鶏場は“地産地消”の概念が一般に認知される遙か以前から地元での生産・消費に取り組み、現在も生産量の9割以上を地場販売している。その製品は御殿場観光ガイドなどにも掲載されており、地場産品としての確固たる地位を築いている。

東富士養鶏場が15年以上前から販売している『御殿たまご』はいわゆる特殊卵とレギュラー卵の中間層を狙った商品で、1パック278円の定価販売が行われている。発売当初は白玉であったが、スーパーなど取引先からレギュラー卵との差別化を明確にしてほしいとの要望があり、赤玉を使うようになったという。

『御殿たまご』はヨードを添加しているが、大々的にその情報を公開してはいない。その理由を、東富士農産(株)の石田史社長は「卵というものは本来、何らかの栄養素を強化した特殊卵ではなく、より安全・安心なものを消費者に届けることの方が重要だ。そのためには極力在庫を抱えずに新鮮なものを常に供給できる体制を作ることが、自社ブランドの付加価値となる」と説明する。

石田社長の言葉を借りれば、東富士ブランドの最大の特徴は「販売量に合せて自ら生産調整をし、常にフレッシュな状態で安定供給している点」にある。特売には対応できないが、安全で新鮮な鶏卵を供給しているため、長年取引のある地元の小売店や消費者からの信頼は厚い。

最近では駿河しゃも、黄斑プリマスロック、名古屋コーチンなどブランド鶏卵肉の生産・販売も手掛けており、中小規模ならではの小回りの利く経営方針で大手の大ロット生産とは一線を画している。

今後の事業展開について、石田社長は「生産者の立場ではなく消費者の立場で物事を見ることが今後ますます重要になってくる。ブランド力をいかに高めるかが最大のテーマだ。かつてのように規模拡大を推し進めて、シェアを取った取られたという時代ではない。P・Bio・Fujiグループ全体で『ピービオー2』を核とした環境重視、資源循環型のシステムを完成させた後には、東富士養鶏場をモデル農場に、『ピービオー2』の仲間を全国に増やしていきたい。我々の地道な努力が、評価される時代がようやく来たのではないか」と話している。




2008年2月25日号

◎(農)緒川村養鶏組合(茨城県常陸大宮市)
産地ブランドの王道を行く『奥久慈卵』
飼料にこだわり、昔の庭先養鶏の味を再現


 栃木県境に近い旧緒川村、茨城県常陸大宮市大岩の山間に造成された約6町歩の敷地に(農)緒川村養鶏組合(根本正文代表理事)はある。設立は昭和55年(1980年)12月、村議会議員を長年務めた先代の故根本行雄氏が「鶏ふん問題を解決するには一カ所に集約する必要がある」と、国や県に働きかけて農事組合法人を設立、近隣の5軒の農家と養鶏団地を建設したのが始まりである。
 折しも第二次オイルショックで飼料価格が高騰。個々の農家がこれまで通り、農協への原卵出荷を続けていたのでは「いずれ経営が立ち行かなくなる」と、生産者が自ら製品化し、独自販売する道を選んだ。
 組合設立から農場用地の造成、鶏舎・設備の完成まで3年、昭和58年には現在と同規模の飼育・生産体制を確立した。原卵出荷の数年間を経て、62年4月に念願のGPセンターを建設し『奥久慈卵』のブランド販売を開始。当初『奥久慈卵』は白玉の特殊卵として商品化したが「実際やってみると、そう甘くはない。相場よりキロ5円高く売るのが精一杯だった」。平成5年には「昔の庭先で飼われていた鶏のコクのある味を蘇らせたい」と『奥久慈卵』の赤玉を開発。強制換羽をやめ、卵黄色をそれまでのカラーファン10〜11から13に高めた(現在は13.5)ことが評判を呼び、オープン価格での定価販売が可能になった。

 東京鶏卵事業協同組合の新海英一理事長は「組合員の中には当初、高い卵は売れないという慎重論もあったが、産地との直接取引、特殊卵であることに興味を持った。サンプルを取り寄せると、明らかに今までの卵とは違う。見るからにうまそうだった。我々の要望にも誠実に対応してくれた」と話している。地道な営業活動の結果、事業組の取扱量は年々増加し、都内の有名料理店や洋菓子店などの固定客を掴んだ。赤玉の発売開始から数年後、テレビのグルメ番組で『奥久慈卵』がこだわり食材の一つとして紹介されると、知名度は一気に高まった。
 同組合鶏卵部の根本茂幸部長は「飼料メーカー任せではいけない。我々生産者が満足できる飼料を作ってもらい、環境問題への対応を含め、自信を持って販売できる卵を作れば絶対に負けない。生産者が自らパック詰めし、品質検査まで行い、鮮度の良い状態で出していけば、それに勝るものはないのではないか」と語る。




2008年1月25日号

◎(有)丸一養鶏場(埼玉県大里郡寄居町)
アニマルウェルフェアとHACCPの融合
新市場見据えた放し飼いたまご「エコッコ」


 埼玉県の(有)丸一養鶏場(一柳光政社長)では、ヨーロッパの動物愛護(アニマルウェルフェア)に準拠した放し飼いたまご「エコッコ」(ecocco)のブランド確立に取り組んでいる。ヨーロッパでは従来の鶏のケージ飼育が規制されており、2012年からは全面禁止となる。「日本にも遠からずアニマルウェルフェアの波はやってくる。日本では企業養鶏で舎外への放し飼いまでやろうとする養鶏家はまだいないだろう。いないからこそやってみたかった」と一柳憲隆専務は語る。
 特殊卵の生産のために、'06年8月に採用したのがビッグダッチマン社の「ナチュラ・ノバ」多段平飼いシステム。新たに購入した敷地に建設し「ナチュラ・ファーム」と名づけた。鶏舎内は給餌飲水エリア、休息エリア(止まり木)、産卵エリア、舎内運動エリアと大きく4つのエリアに分けられ、鶏が自由に行き来できるようになっている。また舎外にも出入り口が設けられて自然に近い状態で飼育(防疫管理上から屋根と金網で囲んだ屋内)がされている。


 「エコッコ」の生産におけるこだわりは、アニマルウェルフェア、農場段階のHACCP、飼料栄養が大きな三本柱である。従来の放し飼い養鶏は外界にさらされているため、防鳥・防その管理ができず、結果としてサルモネラやトリインフルエンザなどの微生物的危害に対しては無防備であった。「ナチュラ・ファーム」は通常のウインドウレス鶏舎よりさらに徹底して隙間をなくし、外部環境との接触は屋内運動エリアの金網に限られている。環境モニタリングでも「サルモネラ陰性、ワクモの被害もなく、ネズミの侵入もほとんどない」という。日本では卵を生で喫食するため、同社はGPセンターだけでなく'04年から農場段階のHACCPに取り組んできた。生産環境の衛生管理、鶏・卵の衛生管理、従事者の衛生管理の基準を設定し、必要な文書化、記録化を行って管理している。「GPセンターはハード面でできる部分が多く簡単だが、農場段階はほとんどソフト、何より人に尽きる。それには教育と意識の徹底である。HACCPにはゴールはない。常に問題点を分析し、衛生管理の改善に努めている」(一柳専務)。飼料栄養では最適なビタミン栄養バランスを考慮してブレンドした飼料を自家配合している。また販売先の要望から、ノンGMO飼料を使用している。
 「従来の放し飼い鶏卵市場は、企業養鶏の市場ではなかった。小売・流通にも自然イコール安全というイメージが先行していて、正しい食品安全性の理解がされてこなかった。しかしトリインフルエンザが日本でも発生し、サルモネラなどの問題が出てくる中で、ようやく販売先の意識も変わりつつあるようだ。アニマルウェルフェアの波は必ず日本にも来る。HACCPをしっかり動かして販売していきたい」と一柳専務は語る。



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