2010年12月25日号

◎(有)畠中育雛場
雛場発の特殊卵『げんきタマゴん』が好評
自然豊かな福岡で産まれる美味しく安全な卵


(有)畠中育雛場(本社飯塚市、畠中五恵子社長)は1971年に育雛場として創業。81年には有限会社として法人化し、来年には創業40年を迎える。同社が約30前に販売を開始した『げんきタマゴん』は1994年に商標を取得。現在ではインターネット等を通して全国に名を知られるまでになった。現在、育雛は自社で使うものも含めて年間25万〜30万羽程度を出荷。成鶏飼養羽数はおよそ6〜7万羽。うち半分が自社で販売し、もう半分をグリーンコープ生協に出荷している。

卵の販売について畠中社長は「やはり育雛場の顧客には気を遣っている。直売を始めた当時、ほとんどの顧客はGPセンターに原卵として出荷していた。顧客と同じ売り方をしては問題があるし、より高い価格で売らなければならなかった。そのため付加価値をつけて高い値段でも良いと言ってくれる人に販売を行うことにした」とし、「当時、卵の直売自体がまだまだ珍しく、ノウハウを独自に構築しながら営業を続けるうちに時代とともに周囲の養鶏場も直売を始めるようになった。直売を開始する際に相談がきたりするので、ノウハウの共有やなどをし、これまでの顧客と良好な関係を保ってきた」と育雛場ならではの経験を語る。そのためか全国的にみてもこの地域はかなり卵の直売場が集中しているという。

『げんきタマゴん』は飼料による差別化はもちろんだが、飼い方、育て方にこだわりがをもって生産されている。畠中社長は「具体的に何か特別なものを飼料に添加しているだとか、良い水を使っているとなると消費者にわかりやすくPRすることは簡単だが、一番重要なのは目配り、気配り。このPRが一番難しい。今後の展開としては末端消費者向けに直接売る量を増やして、個人客にも配送をしていく予定だ」と語った。




 

2010年11月25日号

◎山田養鶏場(岐阜県山県市)
こだわりの飼料でコクのある卵を生産
純国産鶏こそが直売に最も適した鶏である


山田養鶏場(山県市、山田勝茂代表)は1961年、山田代表の祖父と、知人数人とで養鶏を始めたのがそもそもの始まり。「一人また一人と辞めていき祖父だけになってしまったが、父と母も仕事に加わり徐々に規模を拡大してきた。1976年には岐阜県史上最悪の水害といわれる『九・一二豪雨災害』で、養鶏場も鶏舎内に大量の土砂が流れ込むなどといった大きな被害を受けたが、努力の末なんとか乗り切ることができた」と山田代表は振り返る。

現在の飼養羽数は、成鶏1万8000羽。育成2600羽。特殊卵として販売しているのは季節によって違うが1万羽前後だという。創業当時から後藤孵卵場の純国産鶏を一貫して飼養しており、後藤孵卵場の雛について山田代表は「もみじは卵形・卵内容質が非常に良く、黄身の色・盛り上がりに優れた卵を産む。現在の日本国内の卵用鶏市場で、原種・親鶏とも海外に依存していない国産鶏の割合は僅か7%。鳥インフルエンザなどの鶏病により、海外の鶏の輸入停止という不測の事態に備える意味でも、当養鶏場では安心・安全な後藤孵卵場産の国産鶏を100%飼育している。過去に一度、酷暑で大量のへい死を出した際に、外国鶏を少数羽導入してみたが、卵殻色はよいものの、もみじに比べて血卵が多くクレームが出てしまった。国産鶏は卵を生食する日本人の嗜好に最適な選抜がされているのだということをこの時初めて実感した。直売をするならやはり国産鶏でないとうまくいかないと思う。雛の値段は多少高いが、成績も最近では外国産鶏に追いついてきているし、雛の値段以上の付加価値をつけることができる」と語る。

同養鶏場では、特殊卵については自家配合で、トウモロコシ、魚粉(イワシ)、EM菌入ボカシ、カキ殻、おから発酵飼料、昆布、パプリカ、胡麻などの原料を十分に吟味して配合。特に魚粉はCP65%以上の良質な物を使用しており、夏場で7.5%、今の時期で5.3%ほど添加している。

「自家配合を始めた当初の昭和50年ごろは、当時トン当たりで安かったせいもあるが魚粉を15%ほど入れていた。今は魚粉は高いので少し減らすことも検討したが、成分分析表を公表しており、DHAをはじめとした値が違ってくると困るので、現状のままで今後もやっていくつもりだ。また、おから発酵飼料を添加するとアミノ酸が増加して卵の旨味が増し、魚粉と併せることで非常にコクのある卵に仕上がっていると自負している」(山田代表)さらにパプリカを添加し、カラーファンは14〜15を基準としており、非常に鮮やかな卵黄が魅力的である。

山田代表は「飼育上の特別なこだわりは特にない。強いていえば病気を出さないようにしっかりとワクチン接種は心がけている。いい餌でいい鶏を作るということが一番基本的だが、重要なことだ」と語った。

同社のさらなる飛躍が期待される。




 

2010年10月25日号

◎(有)北海道種鶏農場(北海道白老町)
農場から食卓へ。めんどりたちのたまご
おいしさそのまま「たまごの里マザーズ」


北海道白老町にある(有)北海道種鶏農場の直売店「白老たまごの里マザーズ」は、平成22年4月より2号店の札幌上野幌店をオープン。両店で1カ月に35〜40トンを売り上げる人気店となっている。

マザーズの名称は、平成10年に始めた卵自動販売機小屋で“めんどりたちのたまご”という意味でつけた愛称だった。地元のお客さんが着実に増え、それならばと15年にシュークリームなどの焼き菓子と卵の直接販売の店舗を併設。スイーツがおいしいと口コミが広がり、登別温泉や日帰り温泉の観光客や札幌からドライブ客も来店するようになり、18年には卵の販売を別棟にした「たまご館」を設立。従来店舗はスイーツ専門の「スイーツマザーズ」とした。そして22年には札幌上野幌店を出店するなど3〜5年ごとに新たな展開をしている。

川上一弘社長は「最初はこんなになるとは思っていなかった。養鶏農家だというので地元の人に卵を買いたいといわれて自販機を置いて、お客様が増えてきたからシュークリームを、せっかくならおいしいのをやろうとなって、スイーツが人気になり卵を買いに来る人がゆったりできるよう、たまご館を作って、札幌からの購入客も多いので札幌に出店した。別に特別なこと、新しいことをしているわけじゃなく、みんな先に誰かがやっていたことさ」という。顧客のニーズに率直に耳を傾け確実に行動してきたことが、これまでの成果につながっているのかもしれない。

店舗はグリーンを基調にした無駄のないシンプルで落ち着いたデザイン。屋外席もあり、居心地の良さか、まったりと長時間を過ごす来客者も。スイーツマザーズの一番人気はシュークリーム。クッキーシュー、カスタードシュー、ミックスシューは、祝休日になると販売時間待ちの客が並ぶほどだという。このほかにもたまごプリン、たまごロール、たまごアイスとメニューは充実。またカフェ・ラテ、カプチーノなど本格的なカフェメニューが楽しめる。

すぐ隣のたまご館では殻付卵の販売のほかに、ランチコーナーが設けてあり、たまごかけご飯のほか、阿波尾鶏を使った地鶏親子丼と、純和鶏親子丼、親子バーガーなどが楽しめる。殻付卵は、ゴトウのさくら、もみじが主体。このほかに平飼い有精卵と平飼い亜麻仁卵が販売されている。驚くのは一箱3キロで45〜50個入りのファミリーボックスを購入するお客様の多さ。「温泉の帰りにお友達やご近所への“おみやげたまご”として買う人が多い。ボリュームと値ごろ感でみやげ品としてマッチングしたのかも。だから30トン以上、白老の店舗だけでも日に1トン以上という販売量につながっている」(川上社長)。

ホクレン向けの白玉を生産する64万羽規模の白老農場GPセンターでは、HACCPの第三者認証を取得。一方でマザーズ専用の社台農場では3万羽規模でピンク卵、赤玉を生産し、ヨーロッパの平飼い、立体型放し飼いにもチャレンジ。「マザーズと北海道種鶏農場のイメージがリンクする人は少ないと思う。札幌上野幌店の向かいにはコープルミネがあって卵も売っている。向かいの店舗ではどこよりも高い卵を売っている。客層は違うし用途が違うのかもしれない。それはそれで良い。どちらも作っているのだから。理想的には、もっと生産工程をコストも含めてもっとオープンにして、良い所も悪い所も見てもらい、それで消費者に選択してもらう。嫌なら買わなければいいし、良ければ買うし、というのが理想。放し飼いにしてもHACCPにしても、それ自体が目的なのではなくて、最終消費者に納得してもらうだけの説明ができるかどうか。それが大事なのさ」と、川上社長は語る。“農場から食卓へ。”それがマザーズの一貫したポリシーなのだ。




 

2010年8月25日号

◎(有)清水養鶏場(静岡県静岡市)
鶏の健康を第一に考えた自家配合飼料
美しい卵黄を持つブランド卵『美黄卵』


昭和20年から静岡県で養鶏業を営む(有)清水養鶏場(本社静岡市、清水茂社長)。先代の清水利朗氏が600羽の庭先養鶏から始めた同社は、現在成鶏1万4000羽、育成鶏4000羽を飼養。平成5年に有限会社化し、100%自社での販売を行っている。

同社は平成元年にこだわりの特殊卵『美黄卵』の販売を開始し、好評を博している。(株)後藤孵卵場の純国産鶏「もみじ」「さくら」から生産される『美黄卵』は飼料にこだわり、健康な鶏から高品質の卵が生まれることを基本とし、こだわりの原料を使用した自家配合飼料に研究を重ねている。カラーファンは12〜13で名前に恥じぬ非常に美しい卵黄が特徴だ。

平成8年には全国優良畜産経営管理技術発表会に静岡県の代表として参加し、中小家畜部門で最高賞の「農林水産大臣賞」と「中央畜産会最優秀賞」を受賞している。

飼料原料のトウモロコシはNon-GMOかつポストハーベストフリーのものを自社粉砕して使用している。また、国産魚粉や消化酵素の一種であるセルラーゼ、有機酸などをバランス良く配合。配合割合は季節や気温に合わせ、専門の獣医に確認して製造しているという。

飼料へのこだわりを清水社長は「一つ栄養素を強化した高い価格の卵ではなく、たくさんの消費者に毎日食べてもらえるような購入しやすい価格の高品質卵を目指して取り組んでいる。卵の質を追求して生産しているため、初産後約一年の飼養でアウトし、強制換羽はかけない。入雛、淘汰、アウトそれぞれの記録をとり、しっかりと管理している」と語る。

その他にも、サルモネラ対策として「しずおか農水産物認証」に沿った生産で、毎月卵の細菌検査を実施し、専門業者へネズミの駆除の依頼、サルモネラ菌を押さえるマンノースオリゴ糖を飼料に添加するなど十分な対策がとられている。静岡県では農水産物に対する県民の安心と信頼を確保することを目的に、生産者の安全・安心への取り組みを認証する「しずおか農水産物認証制度」を制定し、認証申請の受付を平成18年より開始。同社もこの制度に申請し、静岡県では養鶏で第1号となり、同年12月に正式に認証された。

今後の展開について清水社長は「立地などの条件から増羽できる環境にない。ケージに現在3羽飼いしているので4羽飼いにすれば飼養羽数を増やすことはできるが、それはしない。現在の羽数でどれだけ良い利益を上げるかが今後、努力すべきところである」と述べている。




 

2010年7月25日号

◎垣善フレッグ(株)(三重県北牟婁郡紀北町)
健康な鶏から生まれる健康な卵を生産・販売
カラダうれしい! Fァクターエッグシリーズ


「良い卵は良い鶏から産まれる」との信念の下、世界遺産・熊野古道の玄関口、自然豊かな紀伊長島で育雛から販売までの一貫経営を営む垣善フレッグ(株)(本社北牟婁郡、垣内善通社長)。同社は志を同じくする農場とFァクターグループ(ファクターグループ)を設立し、全国の消費者、バイヤーに広く認知されている『地養卵』をはじめとした特殊卵の生産を中部、近畿を中心として行っている。

同社が販売する『地養卵』『純卵』『紀伊の鶏』にはすべてこだわりの飼料「クロスジェイ」が添加されている。これは地養卵最大の特徴である地養素(木酢液、ゼオライト、海藻、ヨモギなど)に桑の葉を加えたもので、桑の葉を加えることによってハウユニットを向上させることに成功している。

現在グループ全体で約60万羽を飼養し、特殊卵の生産比率は80%にのぼり、レギュラー卵に関しては地元紀伊半島周辺のみでの販売。『地養卵』『純卵』『紀伊の鶏』は全国的にスーパーマーケットで販売されている。さらにタウリンを卵に移行させ、コレステロールをコントロールすることで、消費拡大を目指した新たなブランド卵『善玉タウリ』を2010年8月より発売する。

2010年2月には直売場『卵卵ふわぁ〜む』がオープン。卵を使った洋菓子や、『純どり』と名付けた廃鶏を加工して販売している。純どりについては今後、廃鶏のすべてを販売することを目指して取り組みが進められている。同社の垣内伸介氏は「この直売場はあくまでも卵を販売することを目的としており、洋菓子やたまごかけご飯などを主力商品とする直売場とは一線を画している。周辺は人口も少ないため万事順調とはいえないが、今後集客力を高めるような取り組みを行っていく」と話す。

同社は2003年にISO14001の認証を取得。さらに2007年にはISO22000をグループ農場、GPセンターおよび温泉玉子製造部門、各営業所で取得した。認証取得のきっかけについて垣内氏は「消費者の要求が高まってきたということもあるが、やはり『良い卵は良い鶏から産まれる』という、Fァクターグループの基本理念に沿って管理するのに適したシステムとは何かと考えた時にISOにたどり着いた。当社としてはISO22000は最低限の基準であると考えている。本当に良いものを生産し、販売するためにはさらに上のレベルが必要だ。鶏卵を扱う上では畜産物から食品への転換が今後ますます重要な要素になってくるだろう」とも語った。




 

2010年6月25日号

◎(有)勝栄:中村農場(山梨県北杜市)
日本で唯一の「甲州地どり卵」を生産
飼料にこだわり、最高品質の卵目指す


山梨県北部に位置する中村農場(北杜市、中村努社長)は北に八ヶ岳、西に南アルプス、南に富士山と山に囲まれた標高1050メートルの素晴らしい環境で養鶏を営んでいる。同社は平成10年に創業。元々は野菜の直売場として営業していたが、ペットショップを始めることになり、近所の方からもらった烏骨鶏のつがいを飼い始めたのがきっかけで養鶏を始めることになった。養鶏事業を拡大していく中で、畜産試験場に連絡を取ったところ、地元山梨の甲州地どりの存在を知り導入。その他にも横斑プリマスロックやアローカナ、名古屋コーチン、ロードアイランドレッドなどを飼養している。この10年で卵用鶏・肉用鶏合わせて3万羽まで飼養羽数を増やした。育雛・処理・販売まですべて自社で行っており、現在生産量のほぼ100%を直売場とインターネットでの通信販売で売り上げている。

「養鶏を始めた当初は経営がかなり厳しい状況であったが、口コミで徐々に客数が増加し、著名人の方々もうちの商品を気に入ってくださって長いおつきあいをさせていただき、軌道に乗ってきた。やはり口コミが一番宣伝効果があると感じる。冬場に客足が衰える傾向があるので、地元でのPRを今後は積極的に行っていく」と中村社長。顧客は県外が圧倒的に多く、最近ようやく県内の顧客がついてきたとのことである。

中村農場の卵の主力商品は「甲州地どり卵」と「八ヶ岳卵」の2種。「八ヶ岳卵」は横斑プリマスロックの卵を使用。10個入りでの販売だ。「甲州地どり」の卵は、日本で唯一中村農場のみが生産を行っている。本来は肉用鶏種のため、生産性には当然劣るが、濃厚でコクのある味と評判。特に生食や半熟で食べるには適しているが、加熱しすぎるとパサつく傾向があるという。飼料にはウコン等の天然ハーブを添加している。

中村社長は、「飼料は全量が完全指定配。一般的に良いとされているものはほとんど試した。良かったものについてはそのまま入れているので飼料原価も非常に高い。原価率は50%以上だと思う。素人だからこそ、ここまで試行錯誤してこれたとも思う。魚粉でうまみを出しつつ、どう臭みを出さないようにするかが問題だ。食べ物は十人が十人良いというものは作れない。半分良いと言ってくれたら成功だと思う。そこが非常にむつかしい。今でも試行錯誤を続け、より良いものへ挑戦し続けている。」と語る。また、肉用と飼料を明確に分け、廃鶏については精肉としての販売はせず、スープやミンチ加工品として販売している。このことについては「廃鶏は肉として売ろうとして売れないことはないと思うが、やはり肉用に育てた鶏と比べると品質に納得がいかない面があるので販売はしていない。常に最高のものを販売していきたいと思っている」とも語った。




 

2010年4月25日号

◎内藤養鶏(愛知県半田市)
植物性の飼料原料で生臭さをカット
地元で愛されるブランド卵『うまみ卵』


知多半島の中心都市である愛知県半田市で、養鶏業を営む内藤養鶏(内藤克彦代表)が2003年から生産するブランド卵『うまみ卵』は、植物性主体の飼料原料で、魚粉を添加しないことにより、生臭さを抑えてこそ味わうことができる、卵本来の「コク」と「うまみ」にこだわって作られている。消費者からの評判も上々で「生で食べてもおいしい」と、圧倒的な支持を得ている。

現在のメイン鶏種はジュリア。その他にボリス・ブラウンで赤玉を生産し、農場での直売を行っている。『うまみ卵』は、愛知県に本社を持つヤマナカの高級スーパーマーケット「フランテ」「アルテ」を中心に販売されている。 クセがなく、どんな菓子・料理にも利用できる『うまみ卵』は、カラーファンも13と鮮やかな黄色を維持しており、スーパーでの販売だけでなく、地元・半田市内のレストラン・料理店で好評を博している。

また小規模ながらネット販売も手掛けており、売れ筋の商品は、二黄卵や初たまご(初産卵)、大寒たまごなどだという。「先日、テレビで豊橋の農場の二黄卵が紹介された時、その放送時間帯に注文が殺到した。今の消費者はテレビを見てほしいと思うと、その場でインターネットで探すようだ。

また定期的に買ってくれている居酒屋では、たまごかけご飯に二黄卵を使用して、一種の売りにしている。いずれにしろ普通にGPセンターに出荷すると、二黄卵は検卵時にはねられ、安く買いたたかれるので、必要としている方がいるならば、それは自社で販売しようということで取り扱っている。

飼養している鶏は全量、同一の飼料を使っているため、どうしても飼料代がかさむ。2Lをはじめとした格外卵を、自分でしっかり捌かないと厳しい面がある。飲食店も生き残るために、さまざまな取り組みをしており、その中でうちの格外卵を使ってもらって、お互いに生き残っていければと思う。そういう人を一人でも多く見つけていきたい」と内藤代表は語る。

今後の新しい展開として「名古屋コーチンの導入も考えており、とりあえず5月に40羽導入してみる予定だ。拡大するのは単価も高いことだし、売り先を確保してからになるだろう。大手企業養鶏が、100万羽単位で飼養羽数を伸ばしている今、5万羽が10万羽になっても、問屋やスーパーに対する立場は変わらず、結局売り先が確保できていないと意味がない。相場価格にも期待が持てない現在では、直売率を現在の20%から将来的には50%程まで伸ばし、安定した供給を続けていきたいと思う」とも語った。




 

2010年3月25日号

◎JA全農たまご(株)
健康、食育、環境―社会貢献コンセプトに
ブランド卵の新たな機能・可能性を求めて


出口の見えない消費不況が続く中、鶏卵販売最大手のJA全農たまご(株)(本社東京、都能正紀社長)が自社ブランドの商品力向上と、新製品の開発・普及に取り組んでいる。同社は2008年9月に、基幹商品『しんたまご』のリニューアルを発表。2009年5月には売上の一部が自然保護NGOの活動に使われる『みんなの環』、9月には食育を前面に打ち出した栄養強化卵『アンパンマンたまご』を相次いで発売し、社会貢献をコンセプトに、ブランド卵の新たな可能性を追求している。

『しんたまご』は、発売開始以来のおいしさと、安全・安心・品質をそのままに、ビタミンB群の一種である葉酸を強化し、リニューアルを図った。葉酸は細胞の組成や造血に関わる重要な役割を果たすとされ、特に胎児の新しい細胞が作られる妊娠初期や授乳中の女性にとっては必須の栄養素。ほうれんそう、ブロッコリーなどの緑黄色野菜、レバー、豆類などに多く含まれるが、水溶性ビタミンのため調理過程で損失しやすく、不足しがちになる。

日本は葉酸の摂取率が先進国の中では最も低く、胎児の先天性異常である神経管閉鎖障害の発症率が高い。妊娠中の女性が摂取する葉酸量が充実すれば発症リスクは約7割低下するといわれる。『しんたまご』には、この葉酸が可食部100グラム当たり80マイクログラム(一般卵43マイクログラム)含まれている。しかも「鶏卵に含まれる葉酸は加熱調理をしても残存率が高いのが特長で、生のままでも調理をしても、効率的に葉酸が摂取できる」という。

昨年9月発売の『アンパンマンたまご』は、人気アニメ番組「それいけ!アンパンマン」のキャラクターをパックラベルや豆シールに配したJA全農たまごのナショナルブランド。単なるキャラクター商品ではなく、子どもに親しみ深いアンパンマンが登場することで、「栄養価が高く手軽に摂取できる鶏卵を子どものうちから好きになってもらいたい」との願いを込めて商品化した。

『アンパンマンたまご』は、カルシウムの吸収を促進し、骨格形成を助けるビタミンDを可食部100グラム当たり4.5マイクログラム(一般卵0.9マイクログラム)含んでおり、カルシウムが豊富な牛乳・乳製品との相性も抜群。専用ホームページにアクセスし、パッケージの生産者紹介コードを入力すると、生産農場、GPセンターが確認できる。

全農グループが経営理念の一つに掲げる地球環境保全への積極的な取り組み≠、鶏卵を通じて具体的な形にしたのが、2009年5月に新発売した『みんなの環』。消費者が1パック10個入りの同製品(オープン価格)を購入するごとに2円が世界最大の自然保護NGO、WWF(世界自然保護基金)ネットワークの日本事務局であるWWFジャパンへ寄付され、自然保護活動に活用される。パックには化石資源の節約や地球温暖化防止に役立つ植物原料由来のバイオマスプラスチックを採用。鶏ふん処理はもちろん、環境保全に十分配慮した国内の優良産地数カ所が生産を担っている。寄付金の管理はJA全農たまごが『みんなの環』の生産者に代行して行う仕組みで、寄付金額の合計は同社のホームページで確認できる(毎月1回月末に更新)。

「消費者の反応は悪くない。先日出展したスーパーマーケット・トレードショーでも、今までにない商品であると、バイヤーの皆さんは予想以上の興味を持たれていた。すべてのお客様がこの商品を選ぶとは思わないが、一部の人でも興味を持ち、手に取ってもらえれば成功ではないか」と東日本営業本部営業企画部の入澤和弘課長は話している。




 

2010年2月25日号

◎京都生活協同組合
特殊卵でなく日常的な卵として定着図る
京都生協『さくらこめたまご』を限定販売



飼料に米を10%配合して生産された『さくらこめたまご』

食の安全の基礎である農業、農村の危機が深まる中、わが国の食料自給率は40%前後という水準で低迷している。全国で39万ヘクタールにものぼる耕作放棄田はいまもなお毎年1万ヘクタールずつ拡大しつつあるといわれる。

このような情勢下、京都生活協同組合では2009年6月に『商品政策』を改定し、「農業・農村の再生、食料自給率の向上、地産地消の推進に貢献していくこと」を目指した新たな取り組みを開始した。

その具体化の一つとして、京都府下の京丹後市、京丹波町、亀岡市の3地域で「京都府の休耕田、耕作放棄田を活用して飼料米を生産し、その飼料米を京都の採卵鶏に給与して卵を生産し、京都の消費者に供給する」という新たな取り組みについての実証試験を開始した。


カラーファンも通常のものとほとんど変わらない

『さくらこめたまご』は、(1)食料自給率の向上を目指す生協としての積極的な関与と地産地消の推進、(2)循環型農業の推進・環境の保全への生協としての積極的関与と支援、(3)安全・信頼・健康、(4)普段の品質、普段の価格――の4つをコンセプトに開発された。

2009年度の実証試験の規模は、府下3カ所、5.3ヘクタールの水田で生産された飼料米24トンを、府下3カ所で飼養された「純国産鶏さくら」に10%、2週間給与し、約7万パックの『さくらこめたまご』を試験供給するという枠組みで、無店舗では2月1日、店舗でも2月6日から3週間販売した。

『さくらこめたまご』は「飼料米だけで育てた特別な卵」という付加価値を追求するのではなく、飼料米の配合率を10%に抑えることで、通常の『さくらたまご』と食味や色合いがほとんど変わらない卵を目指した。飼料米の生産者、鶏卵生産者、生協の三者が「納得できる価格」を模索しながら、同時に、生協組合員にとっても利用しやすい「普段の価格」を追求し、価格を以前から販売している『さくらたまご』よりも10円高く設定した。

京都府産のすべての『さくらたまご』に飼料米を1年間10%給与するには、水田約330ヘクタール、飼料米約2000トンが必要となる。その他にも乾燥・調製・保管の問題、特に夏場の保管や、飼料会社からの協力をどの程度仰げるか、などが今後の課題だ。今後は通年での安定的な供給を目指し、徐々に規模を拡大させていく方針だ。飼料米を使った鶏卵生産の新たな方向を示すものとして今後の展開に注目が集まる。




 

2010年1月25日号

◎(有)ハルラン
人と自然を結ぶ完全循環型≠フ養鶏経営
安心、安全、おいしさ―大地の恵みを食卓へ


ハルランの創業は1961年。先代の父、萩原芳雄氏が埼玉県児玉郡上里町で養鶏業を営んでいたが、今から20年前、たまごの国(有)を設立、法人経営に転じた。「上里町ではGPも手掛けていたが、10年先を見た時に、原卵出荷ではやはり限界があった。これからは重量よりもパック卵主体の相場形成になるだろう。時代の変化に対応するにはパック卵をやらなければならないが、最低20万羽くらいの規模がないと、スケールメリットはとれない。20万羽規模でGPセンターが作れる場所はないかと探していた」という。

1994年には最後の公団事業といわれた農用地整備公団の利根吾妻畜産基地造成事業に参加。翌95年、現住所にハルランを設立し、98年には育雛舎とGPセンターを併設した大谷沢農場が完成した。2000年には上里町のたまごの国を解散、ハルランへの経営移転が完了すると、2002年からは古賀良農場の造成を開始し、2004年3月までに鶏舎などの設備がすべて完成。飼養規模は移転前の成鶏8万〜10万羽から4倍増の約40万羽に拡大していた。同年7月、当時専務だった萩原勲氏が代表取締役に就任。2005年11月1日、1個100円の高級ブランド卵『榛名紅(はるなべに)』の発売開始と同時に、直売所「モアザン(More Than)」が吾妻郡中之条町にオープンしている。

看板商品の『榛名紅』は採卵期間を300日齢までに限定。今や入手が困難になりつつあるIPハンドリングのNON―GMトウモロコシと大豆を贅沢に給与し、色や形の整った赤玉を厳選、洗卵をせずに一つひとつ手作業で磨き上げた1日50〜60個限定の極上品である。自社ブランドには他に、徹底した安全・衛生管理の下で育まれた赤玉『みのり』、白玉『あがつま』、24時間以内に店頭に並ぶ『とれたて新鮮たまご直送便/あんじゃぁねぇ』などもあるが、いずれもハルランが鶏ふんを有機肥料として農地に還元し、自ら小麦、大豆、そばなどを栽培する中で実践、志向してきた「人と自然を結ぶ“完全循環型”の養鶏経営」が基本にあることは言うまでもない。

大谷沢農場、古賀良農場、現在は別会社として奥様の泉さんが経営するモアザン(地産地消カフェ「ぷくぷく」など)で培った地元住民や農家との信頼関係、社会に巣立ち始めた子どもたち、家族との固い絆がハルランの次の展開――More Than(今よりも、もっと)を支えるベースとなっているようだ。萩原社長によると、ハルランの社名は、(1)榛名のたまご(2)父親の芳雄氏が創業時、最初にひなを餌付けしたのが節分(立春)だったことに由来している。



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