鶏卵肉情報 進化するブランド

2016年12月25日号

◎(有)あぶくま鶏卵
一つひとつが「まえむきなたまご」
どんな人も安心して食べられる卵


「あぶくま高原みのり」「黄味との絆」「あぶくまのおいしいたまご」……。飼料にオリゴ糖や枯草菌、乳酸菌を配合し、飲水にも植物性乳酸菌を加えたブランド卵のアイテムを持つ(有)あぶくま鶏卵(福島県いわき市、齋藤実社長)だが、その企業姿勢を最も端的に示しているのが「まえむきなたまご」だ。

「毎日の食生活に欠くことのできない卵だからこそ、安全で安心、そして何より『おいしい』をお客様へお届けすることが私たちの使命」という齋藤社長の考えの下、「ただ卵という製品をお届けするだけでなく、製品を通してどのようにお客様に満足していただけるかを追い求める会社」として、一つひとつの業務に前向きに取り組む姿勢がそこには込められている。

製品化率が92%を超えるなど、業界では高い技術力で知られている。飼養管理では「良いエサ、良い雛、良い水、良い換気」をポイントに掲げ、雛は初生で導入し自社で育雛・育成。サルモネラを中心に定期的な検査を行うなど、農場段階での衛生管理を徹底している。



2016年11月25日号

◎築上鶏卵(株)
若鶏だけの放し飼い卵「かぐやひめ」
地養素を配合し濃厚でまろやかな味に


もともと鶏卵の卸・販売を営んでいた築上鶏卵(株)(福岡県築上郡上毛町)が「うちにしかない卵」を目指して100羽の放し飼い生産に着手したのは1998年だった。

先代の古野啓蔵氏は「鶏が元気なら生まれてくる卵もおいしい」が口癖で、大きなイチジクの木がある運動場や巣箱は手作り。集卵も人の手に頼るなどコストも労力もかかる飼い方だが、「自分が鶏ならどういうところで生活したいか」という啓蔵氏の考えを引き継ぎ、飼料会社勤務を経て後を継いだ古野庄一郎社長も今は1200羽規模まで拡大したものの、「一羽一羽に目の届く範囲での生産」を続けている。

470〜500日齢までの若鶏だけに限定し、飼料に地養素を自家配合するなど、独自の飼養法で開発したブランド卵「かぐやひめ」は濃く甘く、コクがあってまろやかという味が支持されて、ネット販売でも月150〜200件が売れているという。



2016年10月25日号

◎農業生産法人(株)耕す 木更津農場
雑味がなくピュアなのにコクがある
「耕す 木更津農場の平飼いたまご」


千葉県木更津市は今年3月に策定した「木更津市まち・ひと・しごと創生総合戦略」の中で、新たに「オーガニックなまちづくり」という視点を掲げた。「自然に配慮した農業」を奨励するとして、そのモデル農場となっているのが農業生産法人(株)耕す 木更津農場(豊増洋右代表)だ。

耕すは「自然エネルギーの循環」を掲げ、農場内に太陽光発電システム「木更津SOLAR FARM」を設置。電気は土壌づくりにも生かし、6ヘクタールの有機JAS認証農場でプチヴェールなど年間15種類の野菜を生産している。

採卵養鶏も同様に、微生物の力を借りた発酵飼料を導入。輸入飼料は使わず、飼料用米を中心に農場の有機野菜や地域の未利用資源を循環資源として活用するなど、自然養鶏を実践している。

ただ、同社が行っている方法は一般的に考えられている有機農業や自然養鶏というイメージとは異なる。養鶏担当の高庭幸子氏は「有機農業というとコストを度外視した一種スピリチャルなものと思われがち」と苦笑するが、商売として成り立つようなビジネスモデルを確立している。



2016年9月25日号

◎(株)eggg
黄金の黄身と元気な白身の「幸せたまご」
純国産鶏もみじを独自の飼料で平飼いに


gが一つ多い「eggg(えぐぅ〜)」という社名は、誤植ではない。“E"からはじまる3つの“G"には、eat:幸せの基本は食べることから。good price:良いものを買いやすい値段で。good choice:確かな目をもって商品を提供する。good smile:お客様の笑顔のために頑張ります。という意味が込められている。

純国産鶏のもみじを低密度で平飼いし、独自の飼料を与えた「幸せたまご」は、白身がぷりぷりで弾力があり、黄身には濃厚なコクがある。egggでは「卵かけごはんでシンプルにおいしさの違いを味わって」と呼び掛けている。

「幸せたまご」の名前は「(1)自由にのびのび暮らしているニワトリさんって幸せ (2)お口でとろけるコクと甘味 おいしいって幸せ (3)身体もよろこぶおいしいたまご みんな健康って幸せ」という「3つの幸せ」に由来している。

白鳥氏は「まったくの素人からのスタートだったので、はじめは大変だった。生き物相手で365日いつも気を抜けないし、会社を立ち上げた当初は卵も全然売れなかった」と振り返る。しかし、手間ひまかけた管理を実直に続けた結果、その味を支持するファンが徐々に増え、今では伊勢丹などにも販路を拡大。羽数が足りなくなったため、現在は増羽に向けて新しい鶏舎の建設を進めている。



2016年8月25日号

◎(株)卵娘庵
平飼いの「ひよらん」と「ひよりこ」
雑味がなく甘みと弾力のある卵に


「生産効率を突き詰めない」という特異な理念に基づき10年前から平飼いを始め、「ひよこさんちの直売所」も運営する岡山市の(株)卵娘庵(らんこあん)。代表の藤井美佐氏は農林水産省の農業女子プロジェクトのメンバーとして、鶏を“女子社員”と呼ぶなど女子力重視の経営を展開している。社名も「卵」の「娘」の「庵」で卵娘庵。今年の新入社員2人もともに女性だ。

「大きな卵は白身が大きいので加工向き、小さな卵はお弁当向きなど、サイズに合った用途を伝えられるのも使う側の女性ならではの視線があってこそ」

生産効率よりも安全・安心を求めて平飼いにしているのも、女性の視線に基づいている。現代的な養鶏と異なり平飼いは手間ひまが掛かるが「一日に2〜3回手集卵することで、鶏の様子をチェックすることもできる。生き物の命を育てはぐくむのにも、女性の力が欠かせない」という。

たっぷり運動してたくさんエサを食べたストレスのない鶏が生む「ひよらん」と「ひよりこ」は臭みがなくあっさりとした味で、雑味がないため卵白にも甘みがある。冷めても弾力があるため、加工メーカーからは「差別化できる素材」として高く評価されている。



2016年7月25日号

◎(有)鈴木農場
エンリッチドケージの「シンデレラン」
アミノ酸バランスを重視した飼料設計に


平成26年2月に関東地方を襲った豪雪で成鶏舎が倒壊した(有)鈴木農場(埼玉県川島町)。建て替えに当たり、「当たり前のことはしたくない」という鈴木洋平マネージャの主導で昨年9月、ビッグダッチマン社のアニマルウェルフェア(AW)対応ケージシステムであるエンリッチドケージを導入した。鈴木氏は「建屋だけでなく鶏舎内も壊れていたので更新が必要だったが、建屋が従来型の開放鶏舎なのに中身が最新式の直立型ではギャップが生じる」として、ウインドウレス鶏舎の新しいシステムへの投資に踏み切った。

その最新設備から生まれたのがブランド卵「シンデレラン」だ。シンデレランはCPを重視した従来の飼料設計ではなく、アミノ酸バランスを重視し、ヤシ油粕やカボチャ種子、フィターゼなどを配合。カラーファンを13〜14に設定した濃い目の卵黄色ながらさっぱりとした味わいで“洋”をイメージしている。さらに魚粉などの動物性タンパク質を多めに配合することで、甘みも強くなっている。

設備の導入とともに開発した特殊卵についても「飼料メーカーに新しくつくってもらった飼料の価格が高いとしても、売れる自信があれば売価で吸収できるはず」と、攻めの姿勢をみせる。



2016年6月25日号

◎(株)太田ファーム
鮮やかな濃い黄身の「ファフィ卵」
発酵飼料とアルカリ水で鶏を健康に


「ファフィ卵」の特徴は、純国産鶏のもみじと、発酵飼料、ファフィア酵母、そしてFFCウォーターという水の4本柱だ。 おからは栄養に富む一方、安定的な調達や水分調整が難しいなどの理由で使いたくても使えないという生産者が多い中、ファフィ卵を生産する(株)太田ファーム(北海道江別市、高橋眞奈美社長)は特殊な発酵装置を導入し、米ぬかやおからを発酵させることで飼料化に成功。黄身と白身のしっかりした卵と鶏の健康増進に役立てている。

代表の高橋氏は「未利用資源を活用することで社員の気持ちも違ってくるし、お客さんの反応もいい。飼料価格が高止まりしている中、CPを下げることでコストも削減できる。北海道では初めての導入だったが、紹介してくれた方や機械メーカーに熱心に面倒をみていただき、感謝している」という。

ファフィ卵の飼料にはアスタキサンチンも配合し、カラーファンは「16を目指している」。しかし、「お客さんの中には卵黄色が濃い方が好きな人もいればそうでない人もいる。卵の用途も、卵かけご飯や玉子焼き、お菓子などさまざまなので、それぞれ使い分けができるように」と、羽数的には小規模ながら「キチン卵」、「ココットレッド」と、給与する飼料によって3種類のブランド卵を提供している。

発酵飼料と特殊な水で、夏場でも高いハウユニットを保っているファフィ卵。卵を買いに来ていた主婦は「102歳になる祖母は口が肥えていて、スーパーで買ってきた卵は食べないけれど、ここの卵で作った茶わん蒸しは食べてくれる」と、笑顔で話してくれた。



2016年5月25日号

◎(有)竹鶏ファーム
飼料と水に竹を使った「竹鶏たまご」
竹炭と愛情で元気と笑顔の源に


飼料と水に竹を使った、その名も「竹鶏たまご」。竹炭を粉砕して飼料に混合することで鶏の消化吸収を助けるほか、飲水には竹でろ過した水を給与。竹を炭化させる際に発生する煙を冷却してできた竹酢液はGPセンターで洗卵に使用、さらに鶏舎周りに竹炭を置くことで舎内に入る空気も浄化するなど、飼料と水と空気に竹をフル活用している。

生産する(有)竹鶏ファーム(宮城県白石市、志村浩幸社長)は農場が交通量の多い国道沿いにあるため、「においの問題を解決したかった」という。その志村社長が竹炭と出会い、自社専用の炭窯を建てたのが平成6年。相場スライドからの脱却を目指し、翌年には飲料水と混合飼料についての特許を取得。竹の持つ健康効果という付加価値で特殊卵「竹鶏物語」(現在は「竹鶏たまご」)として販売を開始すると、直売所のお客さんから「味が変わった。おいしくなった」という声が上がるようになった。鶏の腸内環境を整え鶏ふんのにおいも軽減されるなど、当初の目的だった悪臭対策の面でも竹炭は効果を発揮した。

竹鶏たまごは鶏の健康維持だけでなく、人の血糖値を下げるインスリン様物質を含むことや、DHAの吸収を高める物質が含まれていることも検証されているという。

その品質が評価され、2002年には宮城県農業コンクール農業賞を、03年には全国農業コンクール優秀賞を受賞している。



2016年4月25日号

◎奈良養鶏園
自然の旨味を引き出した「奈良たまごF」
酵素を添加し品質と飼養環境の向上図る


10個700円という高価格ながら、東武百貨店船橋店や京葉道路幕張パーキングエリアなどで最も売れている卵のひとつが「奈良たまごF」だ。生産する奈良養鶏園(千葉県船橋市)の代表・奈良 五十八(いそはち)氏は、消費の2極化が進む現在の50年以上も前から「これからは品質の時代」と考え、飼料の研究を重ねてきた。

その飼料は、non-GMOのトウモロコシを中心に、木酢液や食酢、発酵飼料などを自家配合している。特に発酵飼料は60種類を超える植物からエキスを抽出し、腸内細菌叢を整えることで鶏の健康をサポートし、鶏が本来持っている自然の力を引き出している。

この発酵飼料を添加してからは「卵のコクが増し、驚くほどおいしくなった」という。卵独特の臭みもなく、後引くコクと自然の旨みを引き出した「奈良たまごF」はそれ以降、直売所でもデパートでも人気商品になった。

発酵飼料は卵の品質だけでなく、農場の環境改善にもつながった。「都市部で養鶏をしている以上、においやハエの問題は避けては通れない。しかし、発酵飼料を使い始めてからは鶏ふんのにおいもなくなり、ハエもいなくなった」という。

もう一つの看板商品である「アロウカナF」は「産卵率が5割を切ることもある(笑)」ほどで成績は決して良くないものの、直売所で撮影をしているそばから次々と売れていくように、こちらもヒット商品になっている。



2016年3月25日号

◎赤城養鶏牧場(有)
後引くコクと旨みたっぷりの「姫黄味」
「ファーストクラス」の飼養環境を整備


最大6万5000羽の収容能力がありながら、代表の村圭介氏自身が「ファーストクラス」と表現するほど余裕のある薄飼いを実践している赤城養鶏牧場(群馬県前橋市)。現在2.5万羽という薄飼いは、鶏のストレスを軽減し、おいしい卵を生んでもらうことと同時に、「鶏への感謝」を忘れない村氏の理念にも基づいている。

村氏は「収容可能羽数と快適羽数は違う。鶏が病気になる最大の原因はストレスで、飼養環境の良し悪しが卵の味に直結する」という。そこで同社では、開放鶏舎で空気の自然の流れを呼び込むとともに、鶏のストレス軽減のため収容可能羽数の半分以下という薄飼いを行っている。

飼料には、ぜいたくに思えるほどの高い割合で魚粉を配合している。村氏は「卵にコクを出すためには、魚粉が欠かせない。卵の品質のためなら原材料は高くても構わない」と、材料費の価格よりも卵の味を優先する。

広々としたケージで良質な飼料を豊富に食べた鶏が暮らす環境は、正にファーストクラスのようだ。そんな鶏が生む「姫黄味」は強気の価格設定にも関わらず、後引くコクと旨みで、根強いファン層に支えられている。



2016年2月25日号

◎日向野農園
卵黄が黄色い菜の花色の「自然卵」
低密度の平飼いで飼料は小麦中心に


「昔ながらの庭先養鶏をしたい」という日向野農園(栃木県小山市)の日向野昇氏は、東京の会社勤めから脱サラし、平成元年に養鶏を始めた。

鶏が自由に動き回り、日光浴や砂浴びができるよう、鶏舎はすべて南向きの4面開放型。雌雄混飼の平飼いで、1平方メートル当たり3羽という薄飼いに。鶏舎の隣には運動場も設けている。

飼料には、地元産の小麦を中心に地域の資源を自家配合。自身の田畑で刈った草や地域の農家から出る規格外の野菜など、緑餌も大量に給与する。

こうした環境から生まれる「自然卵」は「卵殻が丈夫で、コクがあっておいしい」卵になっている。特に、卵白の強さは菓子店など料理の専門家から高く評価されているという。

卵黄色は、飼料がトウモロコシではなく小麦中心のため、白味が強めの「黄色い菜の花色」。しかも、季節によって給与する緑餌の種類が異なることから、季節ごとにも変化する。

「昔の農家が庭先で鶏を飼っていた頃は、子どもも日常的に鶏と接していた。その方が鶏の面倒をみようという気になるし、規模を拡大したり効率を求めるのも性に合わない。今のやり方は大変だけれど、これからも今のままで続けていきたい」



2016年1月25日号

◎吉越養鶏場
風味のしっかりとした「菜の花みゆき卵」
元気で健康な鶏のため自家育雛・育成


長野県飯山市で、市内唯一の採卵養鶏場として1万4000羽を飼養する吉越養鶏場。生産する「菜の花みゆき卵」の販路の9割は全農への卸で残りは民宿などの個人客だが、吉越洋治代表への取材中にも何人ものお客さんが数十個単位で卵を買いに来ていた。

「菜の花みゆき卵」は長野県養鶏部会協議会鶏卵品質共励会では2005年の初開催以降、白色系で毎年入賞するなど、専門家の間でも品質を高く評価されている。

こうした品質の高さを背景に、市内外の和菓子・洋菓子といった専門店でも「菜の花みゆき卵を使っています」という謳い文句を掲げる店が多い。楽天がネットサイトで行った「朝ごはんフェスティバル2014」では、湯田中温泉の旅館「あぶらや燈千」が、調理人が客室に出向いて菜の花みゆき卵の出し巻き卵を焼くというサービスを展開した。

そのおいしさは口コミで広がり、1万4000羽という規模ながら定期的な個人客は20〜30件まで増えている。

飼料には地元の飼料用米を自家配合。水には名水「弁天清水」(べんてんしみず)を使うなど、地元の食材を活用する。しかし、吉越氏が最も重視しているのは「元気で健康な鶏」。そのため、雛は初生から導入し、(株)小松種鶏場の獣医師の指導の下で自家育雛・育成を行っている。



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