月刊養豚情報   シリーズ ブランド豚を追う

 

2006年12月号

◎ 大分県竹田市/(有)藤野屋商店
“ハーブ豚×BB”の新ブランド生産開始
国内初の取り組みでさらなる販路拡大目指す


 (有)藤野屋商店は、日本有数の雄大さを誇る阿蘇・九重連山、原生林の残る祖母山系の大自然の中、標高600メートルの高原地帯で養豚経営を行っている。同社の創業はなんと文禄2年。ローソクの商いに始まり、精米業、製粉業、家畜飼料の取り扱いなどさまざまな事業を展開、増資を重ねてきた。養豚業については昭和58年に(有)大地農場(母豚200頭一貫経営)を開設。その後、久住分場と清川分場を開設し規模を拡大、平成9年3月からはこれら3農場において「久住高原ハーブ豚」の生産を開始した。
 大地農場は国内で最初に「ハーブ豚」を生産した、いわばハーブ豚の発祥地で、現在3農場の規模は母豚530頭。清涼な環境のもと、換気や衛生管理を徹底して健康な豚を育てている。ハーブミックス(オレガノ、シナモン、ジンジャー、ナツメグ)を配合し、天然植物性原料のみを使用した日清丸紅飼料(株)の専用飼料を、体重70キロを超えた段階から与えている。


 同社の清川分場では、これまで使用してきたLWDやWLDのハーブ豚に加え、(有)黒豚新興エージェンシー(大分県清川町、山下哲生代表)のブリティッシュ・バークシャー(BB)を交配させた「LWBB」のハーブ豚の生産が開始されている。この取り組みはまた始まったばかりだが、清川分場の場長で同社の第三営業部長の内那英章さんは「少し脂が厚めだが、味は抜群。肉も非常においしく、ハーブ豚とBB両方の特徴がうまく出ている」とまずまずの手応えを感じている。繁殖成績にもまったく問題はない。
 「ハーブ豚」の生産と販売では10年近くの実績を持ち、九州地域で多くの顧客を抱える同社は、BBという貴重な遺伝子を生かした「新生ハーブ豚」に大きな期待を寄せている。今後は、さななる飼料の研究とともに、販路開拓を積極的に進めていく。




 

2006年11月号

◎ 広島県安佐町/(株)幻霜ファーム
「幻霜スペシャルポーク」続報!!
相次ぐ大手流通企業との商談、着々と進む増産体制
高級ブランドのみならず社会貢献にも高い評価


 本誌2005年8月号で紹介した「幻霜ポーク」。今年8月8日、9日の両日に東京ビッグサイトで行われた本邦初の展示会「アグリフード2006」大々的に出展し、大手スーパーや外食企業などからの商談が相次いでいる。ネーミングも「幻霜スペシャルファーム」にリニューアル、組織も(株)大栄ファームから(株)幻霜ファームに改組された。
 現在の出荷数は月間500頭。年内には月間1000頭まで、さらには2000頭までに拡大するべく、現在は契約農場を増やしている最中である。パン屑を粉砕したものにトウモロコシや大豆粕、数種類の菌を混ぜた独自開発の専用飼料を食べて育つ幻霜スペシャルポークは、脂肪の色が白く、ロースのみならず肩やモモの筋肉内にまで細かく均等にサシが入るのが特徴で「もはや他の豚と比べる豚肉ではない。松坂牛などの高級豚肉と比べなければならない代物だ」と同社の社長は豪語する。また、時間が経つと色が変わりドリップが出てしまう普通の豚肉に比べ、幻霜スペシャルポークは色が変わらずドリップが出ないなど、日持ちの良さにも驚かされるという。


 現在、枝肉は相対取引で買価を640円/kgで設定している。正肉はセット販売を基本とし、セット価格は1100〜1300円/kg。生産者と流通業者が平等に利益を得られるのも幻霜スペシャルポークの特徴の一つ。自分たちの目で評価し、互いの利益を確保しながら最高級の豚肉を届けることの重要性を強調する。さらに、リサイクル飼料を利用し病気もほとんどないことから、飼料費や衛生費が低く抑えられることから、幻霜スペシャルポークの利益率は60%にもなる。
 テレビ番組でもよく取り上げられ、今後は広島県の特産物とすることも検討されている幻霜スペシャルポーク。今後のブランド展開が期待される。  




 

2006年10月号

◎ 大分県清川町/(有)黒豚振興エージェンシー
純粋英国バークシャーの肉がついに日本の食卓へ
種豚・精液の全国供給が順調にスタート


 ピッグスペシャリスト、養豚塾主宰としてお馴染みの山下哲郎氏は、本格的な純粋英国黒豚(ブリティッシュ・バークシャー=BB)の生産に乗り出すため、2004〜2005年にかけて三度、純粋黒豚の選抜のため英国に渡り、合計13頭(雄種豚9頭、雌4頭)を輸入し大分県の清川BBファームに導入した。
 日本の黒豚産業においては、急速な規模拡大が災いして、品質の低下や近親交配により成績の低下が進んでいるという実情がある。山下氏は、規模拡大によるスケールメリットは決して追及せず、大分県の豊かな自然の中で良い系統の精液と種豚の販売、最高品質の肉豚の生産を行っている。


 英国で登録されているバークシャーの数は300頭程度。山下氏が輸入したのはその中の選りすぐりの13頭である。「バークシャーの産子数が少ないというのは固定観念」と言う山下氏。山下氏の農場では、総産子数10.6頭、75日齢で30キログラム到達という驚異的な数字を記録しているほか、黒豚を飼養している他農場においても、BBの単独精液を用いた2回交配のみで種付分娩率85%、哺乳開始数も1.5 頭程度改善され、離乳しても元気な強くしっかりした子豚が生まれると評判を得ている。BBの肉豚の出荷も試験的に始まっている。筋肉繊維のしっかりした歯ざわりの良い肉質、さっぱりした赤みと脂肪の質の高さが好評を得ている。
「“造り易い”豚は概して変化に弱い」。山下氏は育種の重要性を唱える。脂肪が厚めでも抗病性があり、足腰も強いというBBの特徴は、英国で数百年にわたり育てられた成果。BBの血液を入れることは、日本の養豚業界の『下支え』である。それこそがBBファームの信念である。




 

2006年9月号

「農」と「食」をつなぐ本邦初の展示会開催
◎ 「アグリフード EXPO2006」にブランドポーク19銘柄出展


 食の安心・安全に対する消費者の関心が高まるにつれ、国内産業、国産農作物が注目され、農業者自らが生産した農作物やその加工品の販売に乗り出す ケースも増えてきている。
 そうした中、今回「農」と「食」をつなぐ橋渡しの場として企画され、東京・有明の東京ビッグサイトで開催されたのが「アグリフード EXPO2006」。本邦初のこの展示会は農林漁業金融公庫主催によるもので、農畜産物の生産者や加工業者、関連技術者など多数の企業や団体が出展し、8月8日、9日に訪れた流通業者や外食・中食業者、食品加工業者らは4941名に上った。また、大手スーパーや外食産業、農産物生産企業の代表者による農産物のニーズ、農産物輸出の可能性などをテーマとした講演会も大きな関心を集めた。
 今回の展示会では豚肉や鶏肉、鶏卵など畜産物の出展が目立ち、種畜や飼料、飼養管理などに特徴のある差別化商品の数々に関係者は高い関心を示し、商談を交わす姿があちこちで見られた。中でも豚肉は昨今の豚肉ブームもあり、全国から19銘柄のブランドポークが出品され、それぞれ熱のこもったPRを繰り広げた。


● 出展されたブランドポーク(順不同)
「夢味ポーク」(有)中野目畜産・自家精肉・手づくりハムレーベル(福島県)
「かながわ夢ポーク」(農)高座豚手造りハム(神奈川県)
「十勝野ポーク」(有)ポークランドなかさつ・(株)ヒュース(北海道)
「奥久慈ポーク」(有)久慈ピッグファーム(茨城県)
「味麗(みらい)」味麗生産者グループ(茨城県、埼玉県)
「やまと豚」(株)フリーデン(神奈川県)
「幻霜ポーク」(株)幻霜ファーム(広島県)
(株)中津ミート(神奈川県)
「霧島黒豚」林兼産業(株)(鹿児島県)
「かごしま黒豚」(農)南州農場(鹿児島県)
「味彩豚」・「梅肉ポーク」ジャパンミート(株)(宮崎県)
「えばらハーブ豚 未来」(有)江原養豚(群馬県)
「黄金豚(こがねぶた)」(有)牧家(北海道)
「みちのく高原ポーク」伊藤忠飼料(株)(東京)
「桃豚」(有)ポークランド・有)十和田湖高原ファーム(秋田県)
「LYB豚(ルイビトン)(農)富士農場サービス(静岡県)
「雲仙スーパーポーク」(有)長崎アグリランド(長崎県)
「伊達の純粋赤豚」(有)伊豆沼農産(宮城県)
「あじ豚」あじ豚生産グループ/(株)フレッシュ・ワン(宮崎県)




 

2006年8月号

◎群馬県高崎市/(有)江原養豚
究極の安全・安心を目指し、苦難乗り越え、
抗生物質・合成抗菌剤を一切使用しない養豚を実現
生産情報公表JASも取得した「えばらハーブ豚 未来」


高崎市上滝町にある母豚150頭規模の江原養豚では、平成12年より抗生物質、合成抗菌剤を一切与えない養豚の確立を試み、「えばらハーブ豚 未来」を生産している。「大規模農場は規模拡大によるスケールメリットを享受できる。規模を拡大せず夫婦で養豚を続けていくためには、何らかの“差別化”が必要である」と模索を続けた正治さんが出した結論が、「抗生物質、合成抗菌剤不使用による養豚の確立」であった。

現在は正治さんと奥さんの美津子さん、その他従業員一名で切り盛りしながら、抗菌性飼料添加物を含まず、数種のハーブや有機酸、乳酸菌、ビタミン類を配合した日清丸紅飼料(株)の専用飼料「ASFシリーズ」を餌付け段階からすべてのステージで給与し、治療用抗生剤注射なども一切行わない養豚を続けている。使用するのは、80日齢での豚丹毒ワクチン、畜舎・器具の消毒の際の逆性石鹸、去勢時の消毒のためのヨード剤と鉄剤のみ。約5年半が経過した現在では、「えばらハーブ豚 未来」の割合は出荷豚全体の8割までになった。治療を施された残り2割の豚については、「えばらハーブ豚 未来」との混在を完全に防ぐため「保護豚」として管理し、「保護豚エリア」で隔離飼育され出荷されている。

江原養豚では、1群を100頭とし、1群ごとに耳標を色分け、1色ごとに100番までの番号を付して1頭ごとの生産管理上の記録を日々台帳に記録するという個体識別管理を以前から実施していたこともあり、「えばらハーブ豚 未来」は容易に「生産情報公表JAS」の認定も取得した。また、豚トレーサビリティソフト「豚歴Web版」とも連動し、生産履歴の記録と管理を徹底している。

「えばらハーブ豚 未来」と「保護豚」を合わせた江原養豚の出荷頭数は、年間3000頭。江原養豚の肉豚を一手に処理・加工・販売する群馬ミート(株)(群馬県前橋市)の大井隆営業部長は、「『えばらハーブ豚 未来』は通常の豚肉とはまったく違う。江原さんが懸命に生産した、きちんとしたものをお客様に届けるのが私たちの使命であり、江原さんの思いを十分に理解し継承してくれるところに売りたい」と、慎重な拡販を図っていくという。

「誰にもできないことをやっている気はさらさらない。こういう養豚を国内に広げていきたい」と語る正治さん。江原養豚では、今後「ノンGMO」の飼料の利用も計画しており、将来的には「抗生物質・合成抗菌剤不使用+特定JAS+ノンGMO」という大きな三本柱が備わることになる。




 

2006年7月号

◎滋賀県蒲生郡日野町・(有)蔵尾ポーク
雄大な自然と自家配合飼料が醸す極上ランクの「蔵尾ポーク」

 四方を山々に囲まれ、昔ながらの佇まいが多く残る滋賀県日野町は、昔から近江牛の飼育や農業が盛んな土地。この雄大な自然の中で、(有)蔵尾ポーク四代目の蔵尾忠さんは、奥さんの裕美さんと後継者の息子・誠さん(20歳)を含め、約6人のスタッフとともに愛情を込めて蔵尾ポークの飼育を行っている。
 蔵尾ポークの大きな特徴は、きれいに入ったきめ細かな霜降りと、弾力があり柔らかい肉質、そして脂部分の甘さ。LWDの肉豚に、選りすぐりのデュロックを止め雄として交配することで、絶妙なサシの入り具合と独特の肉の甘みが実現したという。この極上ランクの豚肉のさらなる秘密は、植物性食品残さを有効利用した飼料にある。この飼料は、グループ会社である(有)蔵尾ファーム(大阪府枚方市)で製造される、小麦粉やパン粉、滋賀県の老舗和菓子屋「たねや」から提供されたバームクーヘンの切れ端などを中心にバランスよく配合したオリジナル。「エサも水も人間が美味しいと思えるものを」と、農場内の水にはすべてマイナスイオン水を使用する。
 現在の年間出荷頭数は約4000頭。蔵尾ポークの人気はうなぎ登りである一方、直売店やオンラインショップでも常に品薄状態で、供給が追いつかない状態にある。「豚舎の収容能力をあと1000頭分ほど増やしたいし、蔵尾ポークの販路拡大も計画している。蔵尾ポークをおいしいと言ってくださる方や、もう一度食べたいとリピーターになってくださる方がいる限り、『裏切らない養豚』を続けていきたい」と蔵尾さんは話す。



 

2006年6月号

◎長野県上田市・金子養豚場
タマネギ飼料がもたらした自然の姿
“純粋な豚肉”を目指して作られる「絹味豚」


 長野県上田市の山間に位置する金子養豚場で、絹味豚は作られている。
 金子養豚場は年間出荷頭数700〜800頭という小規模経営で、金子保さんが一人で切り盛りし、山羊やチャボも飼っている。
 金子養豚場のスタイルは、豚があくまで「自然に生き自然に死ぬ環境を作ること」。経営をはじめてから今までワクチンさえ一度も使ったことがない。毎月の出荷頭数にはバラツキがあるが、「そもそも自然の生き物のコントロールは絶対にできない。生まれてから出荷するまで余計な手をかけない」のが金子さんのモットーなのである。
 さらに特徴的なのが堆肥。金子養豚場の堆肥は臭いがほとんどなく、堆肥場には夏でもハエがたからない。農場はすべて踏み込み式。豚舎の中で堆肥が腐敗ではなく発酵している。堆肥の発酵熱が冬は暖房のかわりになり、夏には蒸気となって豚舎内の空気の流れを生む。さらに屋根に換気用のすき間を設け、手動開閉のカーテンを取り付け換気を調整している。堆肥は肥料として非常に好評で、あちこちの農家から提供を求める声が絶えない。
 この臭いのない豚舎と健康な豚づくりに大きく貢献しているのが、にゅう豚倶楽部と(株)ヤマウラが開発した、タマネギの外皮を乾燥破砕して作られた機能性飼料「にゅうとん倶楽部」である。そもそも絹味豚誕生のきっかけは、このタマネギの外皮を用いた飼料の導入であった。
この製品は純粋にタマネギの外皮だけを乾燥破砕した粉末。普段我々が口にしているタマネギの可食部分の何倍もの栄養が摂取できることが県の畜産試験場の実験結果でも証明されている。参加者を募って普通豚と食べ比べ調査を実施したところ、断然に絹味豚の方が評価が高かったのである。



 

2006年5月号

◎宮崎県都城市/アベル黒豚牧場(有)
特徴的な骨格と専用飼料で肉質・味に大差
究極の黒豚「アベル黒豚」


さらに選りすぐりの「六白」を求めて
 「奄美島豚をベースにした在来の黒豚に、英国バークシャー種を掛け合わせ、明治時代から薩摩バークシャーとして、100年以上改良を重ねて築き上げた伝統の「六白」を継承した鹿児島黒豚の中で、産肉性が高く肉のきめが細かく美味しい系統だけを何年もかけて集め育種した純粋な黒豚群で希少性の高い究極の黒豚」――これこそが「アベル黒豚」。松浦動物病院(宮崎県都城市早水町)の院長で、アベル黒豚牧場(有)の社長である松浦榮次氏は、長年、その選抜・育種に情熱を傾け、最高の肉質と味を実現している。
 「アベル黒豚」は、従来の黒豚に比べ、肋張り、幅があり、椎骨が2つほど多く体長が長い。しかも、背骨の突起物といわれる棘突起(きょくとっき)と横突起(おうとっき)が大きい。そのことで、「棘突起と横突起の上にロースが乗るので、それらが大きいということは、肋骨が張るわけで、ロース芯が大きく、バラ肉の厚みと三枚肉が赤身ときれいになる」(松浦氏)のである。
 霧島連山の麓で澄み切った空気と霧島山系からわき出るミネラル豊富な良質な水と、サツマイモ、トウモロコシ(丸粒を使用)、小麦、大麦、海藻・コンブ類、緑茶のほか、オレガノエキス・シナモンエキス・パプリカエキスといったハーブなど、植物性原料をブレンドした専用飼料が肉質と味にさらに磨きをかける。
 「仕上げにマイロを使わず、丸粒のトウモロコシを30〜35%与えることで、脂肪の融点が下がり、冷と体でも少し(脂肪が)べたつくが、柔らかくカットがしやすいし、食べるとき厚く切っても柔らかくて美味しい」



 

2006年4月号

◎愛知県半田市板山町/(有)石川養豚場 
“ミートフロー”を考えながら作られる「あいぽーく」

 知多半島道路の半田インターを降りて5分もすると、風見鶏を冠した三角屋根に白壁とレンガを組み合わせた欧風の建物が見えてくる。ここは(有)石川養豚場の経営する直販所「ファーマーズマーケット・BRIO(ブリオ)」だ。このブリオを拠点に「あいぽーく」ブランドを発信しているのが(有)石川養豚場代表取締役の石川安俊さん(56)。ブリオを奥さんのアイ子さん(52)、加工を息子さんの嘉納さん(27)、農場を弟の浩三さん(51)にそれぞれ任せ、ご自身はあいぽーくのトータルな流れ(石川さんは「ミートフロー」と呼ぶ)を統括しながら指示を出したり、外部への対応を担当している。
 では、あいぽーくとはどんな豚肉なのだろうか。大きな特徴は次の3つ。一つ目は肉がやわらかいこと。これはただ若い豚を出しているのではない。風味や味がしっかり出てくるタイミングをプロの目で見極めて出荷している。だいたい180日齢弱で出すことにしているそうだ。二つ目はあっさりとしたマイルドな味わいであること。これは飼料(中部飼料(株)の指定配合飼料)に秘密がある。7割がトウモロコシと大豆粕で、あとの3割が小麦、キャッサバ、マイロ、パン粉という純植物性飼料。トウモロコシの多給によりオレイン酸が豊富になり脂身がしつこく感じられなくなる効果があるという。三つ目はドリップ・退色がないということ。ビタミンEやミネラルが強化されている。また、あいぽーくは抗生物質の使用も極力抑えているため、昨今の消費者の安全・安心嗜好にもアピールする豚肉となっている。



 

2006年3月号

◎静岡県富士宮市・(農)富士農場サービス 
おいしさを追求した豚肉「LYB豚(ルイビトン)」

 広大な富士山裾の南西域に広がる富士地域は、昭和初頭において富士豚として県内一の豚の産地であった(富士豚とは、富士地域で飼養されている多くの銘柄の総称である)。そして現在では日本国内のSPF豚や黒豚、中ヨークシャー、改良種の原々種豚の供給基地として全国はもちろん、海外にも広く認識されている。
 この富士地域で、「消費者に喜ばれる豚肉を創る」をキーワードに、常に品種改良・改善を心がけ、遺伝的に健康で美味しい豚肉の安心提供を目指す(農)富士農場サービスの桑原康さんが平成11年に作出したのがLYB豚(ルイビトン)である。
 このユニークな名前は、親豚のランドレース(L)・ヨークシャー(Y)・バークシャー(B)の頭文字を取って付けられたもの。最初は「自分で食べても、うまいと感じる豚肉をつくってみたい。美味しければ消費者も喜ぶ」と遊び感覚で飼養していたが、食べた人から「おいしい」との評判が上がるにつれて平成13年から本格的な生産に取り組み始めた。
 LYB豚は、10カ所ある桑原農場のうち2農場を含む5農場で飼養され、年間週10頭のLYB豚を出荷、静岡県内にある伊勢丹デパートや食肉専門店などをはじめ、全国8カ所の取引先と相対取引を行っている。
 現在は年間500頭出荷が目標だが、近い将来には1000頭出荷を目指しているという。
 静岡市城東町の住宅街の中に店舗を構えるミート&デリ花城(花城畜産(株))の商品は、全てが手造り。徹底して「素材」と「技術」にこだわり、常に新しい事にチャレンジしている。
 花城光康さんは以前から放牧豚を取り扱っていたが、桑原さんから紹介されたLYB豚のおいしさに感動し、平成11年からLYB豚の取り扱いを始めた。そのほかにもLYB豚を使ったハムやソーセージといった食肉加工品も販売している。
 花城さんはLYB豚の魅力を「LYB豚は豚肉自体に甘みがあって、さっぱりとしておいしい。また食べたくなるおいしさ」と話す。加工品だけではなく、LYB豚肉も人気が高く、ロースは100g当たり278円、ヒレは100g当たり360円で販売されている。  



 

2006年2月号

◎福島県富岡町/太平洋牧場  
WBDの組み合わせで最上級の味・肉質を実現
緻密なデータ分析から生まれる「恵味の豚」


 豚肉のおいしさを左右する大きな要因の一つとして品種(血統)がある。 「恵味(めぐみ)の豚」は、「大ヨークシャー種(W)」と肉質に優れている「バークシャー 種(B)」、「デュロック種(D)」の3品種の良さを最大限に引き出し最上級の味・肉質に仕上げたブランドポークだ。味、肉質にとことんこだわった、この“WBD”の三元交配豚「恵味の豚」を生産するのは、プリマハム(株)の100%子会社である太平洋ブリーディング(株)の農場の一つ、太平洋牧場(福島県富岡町)で、1500頭の母豚を保有する大規模農場である。
 育種価の積み重ねが効率的な改良であり、見た目だけでの選抜では、改良のスピードは遅いというのが高城さんの考えで、“BLUP”という世界中で使われている統計手法を用い、そのデータをベースにして能力の高い豚を選抜している。それを現在は繁殖成績を中心に行っているが、今後は産肉成績にも適用していく計画だ。そのことによって、より均一な高品質豚肉が提供できるわけである。10年ほど前から「自分たちが食べたい美味しい豚肉を作ろう」と本格的な取り組みに着手し、最終的にWBDの組み合わせに決めた。飼料中の穀物は100%トウモロコシを使用し、その一部はNON−GMO。さらに大麦圧ペンを使うことによって脂肪の質を高めており、遺伝、飼料、さらに飼養環境という各要素に万全を期し「恵味の豚」が作られているのである。
 さらに「恵味の豚」の特長は、いわゆるトレサビJASである「生産情報公表豚肉のJAS規格」の取り組みである。牧場としては2005年末にその認証を受けた。
 現在、豚の耳に装着したICタグの利用により血統、飼料、投薬状況、生産者、生年月日、出荷日等の生産情報を、日清丸紅飼料(株)開発ソフト「豚暦」を利用してパソコン上で管理し、情報は店頭のパックに貼り付ける、店頭に表示する、あるいはホームページ上で公開する等の方法により、消費者が商品の生産履歴情報を知ることが出来るシステムの開発試験を行っている。
 ICタグの利用は当面「恵味の豚」を対象にしているが、将来的には全国展開も視野に入れている。



 

2006年1月号

◎茨城県大子町/(有)常陸牧場  
奥久慈の豊かな自然と湧水が育むSPF豚
兄弟力を合わせ丹誠込め作る「ぶなぶた(ぶなぶた)」


SPF豚ならではの柔らかさと美味しさ
 (有)共立養豚と(有)常陸牧場の2農場を立ち上げ、東日本養豚協会会長を務めるなど、養豚業界のリーダー役として活躍してきた矢吹省一さんの意志を引き継ぎ、現在二人の息子さんが常陸牧場を切り盛りしている。
 常陸牧場は平成3年、日本SPF豚協会認定のCM農場に登録された由緒正しいSPF豚農場で、農場の規模は母豚550頭、代表取締役を務める矢吹和人さん(42)と専務取締役の浩人(39)さんが兄弟力を合わせ、健康で美味しく、高品質の豚肉の生産に日夜励んでいる。

独自の育成法と豊かな自然環境の中で
 常陸牧場の場所は、茨城県の奥久慈の山あいで、この地はブランド鶏肉「奥久慈しゃも」でも有名なところ。山間地に位置し他の養豚場と隣接していないという立地条件にも恵まれた上、さらに厳重な衛生管理のもと丹誠込めて豚を育てている。その名も「ぶなぶた」(ぶなぶた)。この名は、常陸牧場の中にある一本の古木に由来するもので、牧場のシンボルでもある。
 また「ぶな」は「環境指針木」としても知られ、自然環境の変化などを判断する上で重要な木で、まさに常陸牧場の環境の良さを示すもの。またこの木の下には、豊かな清流が生まれると古来から言われているが、常陸牧場のぶなの木の下にも水量豊かで清らかな湧水が流れ、「ぶなぶた」にはこの湧水を与えている。
 肉質は柔らかく脂肪質が見た目に白いのが「ぶなぶた」の特徴で、独自の育成法と豊かな自然環境の中で衛生的に育成されたため臭みも一切ない。
 実は「ぶなぶた」のブランド名に正式に統一したのは今年3月。それまでは「常陸のSPF豚」や「無菌豚」などのネーミングで店頭販売されたり、レストランなどで素材として使用されてきた。
 すでに東京食肉市場でも「ぶなぶた」ブランドが定着し、非常に高く評価されているという。東京食肉市場(株)小動物事業部で常陸牧場の豚を担当する早瀬政貴さんと鈴木秀行さんは、「まずはSPFという点が大きな売り。それから環境の良いところで湧水を使って飼育しているということで、とにかく肉質や脂肪の質が良く、肉色が浅く、市場での評価が高い。矢吹さんのところの豚は昔から人気があったが、さらにお客さんが増え売れ行きもかなり良い」と説明する。


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