2006年8月号
◎群馬県高崎市/(有)江原養豚
究極の安全・安心を目指し、苦難乗り越え、
抗生物質・合成抗菌剤を一切使用しない養豚を実現
生産情報公表JASも取得した「えばらハーブ豚 未来」
高崎市上滝町にある母豚150頭規模の江原養豚では、平成12年より抗生物質、合成抗菌剤を一切与えない養豚の確立を試み、「えばらハーブ豚 未来」を生産している。「大規模農場は規模拡大によるスケールメリットを享受できる。規模を拡大せず夫婦で養豚を続けていくためには、何らかの“差別化”が必要である」と模索を続けた正治さんが出した結論が、「抗生物質、合成抗菌剤不使用による養豚の確立」であった。
現在は正治さんと奥さんの美津子さん、その他従業員一名で切り盛りしながら、抗菌性飼料添加物を含まず、数種のハーブや有機酸、乳酸菌、ビタミン類を配合した日清丸紅飼料(株)の専用飼料「ASFシリーズ」を餌付け段階からすべてのステージで給与し、治療用抗生剤注射なども一切行わない養豚を続けている。使用するのは、80日齢での豚丹毒ワクチン、畜舎・器具の消毒の際の逆性石鹸、去勢時の消毒のためのヨード剤と鉄剤のみ。約5年半が経過した現在では、「えばらハーブ豚 未来」の割合は出荷豚全体の8割までになった。治療を施された残り2割の豚については、「えばらハーブ豚 未来」との混在を完全に防ぐため「保護豚」として管理し、「保護豚エリア」で隔離飼育され出荷されている。
江原養豚では、1群を100頭とし、1群ごとに耳標を色分け、1色ごとに100番までの番号を付して1頭ごとの生産管理上の記録を日々台帳に記録するという個体識別管理を以前から実施していたこともあり、「えばらハーブ豚 未来」は容易に「生産情報公表JAS」の認定も取得した。また、豚トレーサビリティソフト「豚歴Web版」とも連動し、生産履歴の記録と管理を徹底している。
「えばらハーブ豚 未来」と「保護豚」を合わせた江原養豚の出荷頭数は、年間3000頭。江原養豚の肉豚を一手に処理・加工・販売する群馬ミート(株)(群馬県前橋市)の大井隆営業部長は、「『えばらハーブ豚 未来』は通常の豚肉とはまったく違う。江原さんが懸命に生産した、きちんとしたものをお客様に届けるのが私たちの使命であり、江原さんの思いを十分に理解し継承してくれるところに売りたい」と、慎重な拡販を図っていくという。
「誰にもできないことをやっている気はさらさらない。こういう養豚を国内に広げていきたい」と語る正治さん。江原養豚では、今後「ノンGMO」の飼料の利用も計画しており、将来的には「抗生物質・合成抗菌剤不使用+特定JAS+ノンGMO」という大きな三本柱が備わることになる。
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