2007年6月号
◎ 岩手県一関市/(有)一関ミート
自農場産豚肉をマイスターの技術で加工
技術研鑽と地域貢献重視の姿勢貫く
「いちのせきハム」ブランドのハム・ソーセージ・ベーコンなど約50品目、年間45トンを生産する(有)一関ミート(岩手県一関市、石川和宣社長)。
同社で使用する原料はすべて、市内で自ら経営する石川ファームから出荷される肉豚を使用する。
石川ファームは母豚100頭規模の一貫経営で、大ヨークシャー種(W)、ランドレース種(L)、デュロック種(D)、バークシャー種(B)の4品種から良質な豚肉が生産されるよう選抜・改良し、LWDやLWBの肉豚を生産。トウモロコシや大豆粕などの穀物を主原料に、栄養バランスのよい飼料を農場内の自家配合施設で発育段階別に製造、給与する。養豚場周辺は豚の成育には程よい冷涼な地域で、また豚舎は開放型でできるだけ自然の外気や太陽光を取り入れ、きめ細かな飼養管理と徹底した衛生管理を行う。密飼いをしないため豚はストレスがなく、非常に健康、良好で抗生物質などはほとんど使用しない。豚のふんをコンポストで好気性発酵させた良質なたい肥を生産しており、この有機質肥料を放肥して栽培した安全でおいしいお米(品種・ひとめぼれ)は例年、食味Aの評価を獲得している。
加工事業進出の際に石川さんが最も大切にしたのは「物づくりというのは技術が基本になるべきだ」という理念。技術を磨かなければ生産コストも下がらないと考え、製造加工ラインの見直し・改善を徹底的に行った。また、本場のハム・ソーセージ技術の習得のため、現在専務取締役を務める長男の聖浩(まさひろ)さんがドイツに留学。石川さんの姿勢は一貫して厳しく、「価格はお客さんが決めるもの。お客さんに選択されるようなものを作る技術があれば広告宣伝費はまったく必要ない」という通り、一関ミートの加工品には多くのファンがいる。
「一次産業の養豚生産、二次産業の加工、三次産業の流通販売、それら統合し六次産業として展開することが本当に足腰の強い産業になる」というのが石川さんのコンセプト。一関市内の団塊世代を対象にした「熟年帰農塾」の塾長に就任。また、農業や農産加工、職業教育や環境政策などについて学ぶため、これまでに十数回もドイツなどヨーロッパの研修ツアーを企画してきた。
「農業の生産者も金儲けだけでなく地域貢献を目指して脱皮しなければならなければ、地域社会の中で認知されない。養豚も同じで社会的に認知される動きをしておかないと、養豚業と地域社会が遊離してしまう」と石川さんは語る。
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