月刊養豚情報   シリーズ ブランド豚を追う
 

2008年12月号

◎京都府京都市/京都府養豚協議会
観光地ならではの名産品を目指し
「京都ぽーく」が規模拡大を開始


京都ぽーくは、綾部市にある京都府畜産技術センターが維持・増殖した豚を用いた、三元交配によるLWDまたはWLD豚。仕上げ期には大麦を給与して、肉質の良いものに仕上げた豚肉である。

京都ぽーくの歴史がスタートしたのは昭和58年。京都府の京都ハイブリッド豚造成事業による国の系統豚を利用した三元交配豚の造成が始まり、昭和63年に「京都ぽーく」が誕生した。現在、京都府では系統豚の造成は行っていないが、京都府畜産技術センターでランドレース種(シンシュウL)、大ヨークシャー種(ナガラヨーク)、デュロック種(サクラ203)を利用した系統豚を飼養しており、これらの豚を導入した農家が生産した豚肉が京都ぽーくとして流通している。

京都ぽーくを生産する養豚農家、加工業者などで構成される京都府養豚協議会の本部である(社)京都府畜産振興協会の田中浩文氏は「もともとは京都府が元となる豚を所有して供給してくれていたが、京都府の養豚事業がストップし、京都府養豚協議会が直接買い入れる形になったため、畜産技術センターと相談し、いろいろな品種を試している」と話す。近年では造成豚の血が濃くなってきて成績が落ちてきたこともあり、愛知県のアイリスや、(農)富士農場サービスから導入した精液によるAI、宮崎県のユメザクラの導入も検討するなど、より良い京都ぽーくの豚肉生産を目指して試行錯誤の段階である。このような経緯のもと、新たに京都ぽーく推進協議会を設立、京都ぽーくの規約を制定した。京都府養豚協議会には現在7戸の養豚農家が参加しており、全体の月出荷量は1200〜1300頭となっている。そのうち京都ぽーくを生産しているのは2戸で、流通しているのは200頭前後だが、すべては加工品に回されるため、精肉の流通はほとんどない状態である。しかし昨年頃から、養豚協議会の参加農家みんなで京都ぽーくを作っていこうという気運が高まってきたという。

京都ぽーくは現在、ハム・ソーセージなどの加工品として(有)農業法人京都特産ぽーくが生産、販売している。商品は京都府、大阪府、兵庫県、滋賀県、奈良県、岡山県、広島県といった関西エリアのほか、東京都や愛知県といった主要都市の百貨店や大手スーパーで販売されている。また京都特産ぽーくのホームページから通販による注文も可能である。精肉ではなく加工品での販売を選んだきっかけについて、以前は養豚農協に勤務していたという田中氏は「農協が取り扱っていた当時は、例えば格落ちやテーブルミートに向かない部位により値段が下がるよりも、加工品として利用することで付加価値を得ようとした」と話す。現在、加工品の生産量は月間6トン。加工品を販売している各店舗からの反応も上々で固定客も多い。また増産の要望も絶えないため、今後は豚肉の増産体制が整い次第、月間9トンにまで増やしたいとも考えている。

京都ぽーくの肉質は柔らかく、サシを多く入れることで肉の旨み・甘みを存分に楽しめる。また脂肪がさっぱりとしており、たくさん食べても胃もたれしないという。「流通業者や食肉市場には京都産の豚肉はないのかと問い合わせが入ることが多いらしい。関東で催される京都フェアといったイベントなどでも必要になることが多いようだ。また、バイヤーは安心・安全でしっかりした品質の商品を求めている。そのような中で要望に応え得るものにはなっているのではないか」と田中氏。すでに業界内では高い注目・評価を集める京都ぽーくだが、精肉の生産体制が整った後は、やはり地元で肉の良さを認めてもらいたいと考えており、まずは京都府内での流通に力を入れていく方針だ。


 

2008年11月号

◎千葉県香取市/(株)ファームネットジャパン
豚肉加工品などのネット販売中心に急成長
「農業支援」への思い、妥協許さぬ加工技術に託す


「今も気持ちは農業青年」と自称するのは(株)ファームネットジャパン(本社・千葉県香取市高野、//www.farmnet.info/)代表取締役の高木邦彦さん(50)。養豚業界ではご存知の方も多いと思うが、高木さんは(有)サンライズの名で養豚業を営んできた人で、養豚業を営んでいた頃の様子は本誌1996年6月号の現地ルポでご紹介させていただいているが、趣味で始めたハム・ソーセージの加工が後に本業となり、今やネット販売を中心に年間11億円超の売上げを誇る企業のオーナーである。

「田んぼの真ん中に工房を造って友達と3人ぐらいでハム作りを始めました。最初は利益率が低い卸売りでもある程度生産量を増やしていけばコストも下がって利益が出ると思っていましたが、卸というものがいかに利益率の低いものかを思い知らされ、利益率を上げるために直接、個人のお客様に販売しようと考えたのです。しかし、直売をするにも決して立地条件が良いわけではなく、人手も少なかったので、インターネットでの販売を始めることにしたのです。ハム・ソーセージの加工を始めた時もそうでしたが、インターネット販売を始めた時も、『そんなので物が売れるわけがない』と後ろ指を指されていました。ところがネット販売を開始して1カ月後には、ネット販売だけで月商500万円、トータル1500万円ほどの月商を上げてしまったのです。すごくうれしかったのを覚えていますが、当時は今のような受注システムなどありませんでしたし、生産や出荷が間に合わなくなるなど四苦八苦していました」と高木さんは当時を振り返る。

高木さんは地元の人たちをはじめ、とにかく「お客様第一主義」を貫くが、その信念は経営理念などとは別に掲げられている「サンライズファーム憲章」に込められている。「食品の偽装問題などを見ても、それは常に作る側の都合で判断基準が決められているからです。納入先からこれだけの値段で持ってこいと言われたら、逆算していかにコストを抑えるかといったことに終始してしまいます。しかし提供する食品の判断基準というのは何かと言えば、やはり『家族に食べさせたいものなのかどうか』が絶対条件。それを当社の『サンライズ憲章』で謳っており、当社のハム作りにおいては、自分も食べたい、そして家族に食べさせたい、その延長線上にお客様がいるのです。お客様、お客様という表現をされますが、お客様とは基本的に自分であり、家族であり、それを支えてくれている方々です。家族に食べさせたいと思えるものだから、お客様にも販売させていただくということが判断基準でなければならないと思います」目覚ましい発展を遂げてきたファームネットジャパンだが、「農業支援」という基本理念は今も変わらない。

その中で現在、事業の拡大を考えているのが、全国の豚肉をハム・ソーセージを注文に応じて受託加工するというもの。「ハムやソーセージの味の研究は散々やりましたが、一つの味を作り出すのは並大抵のことではありません。もちろん素材というのはかけがえのないものですが、その後はうまさを引きだすレシピ、あとは手間をかけるということ。手間をかけないでうまいものは作れません」と「ハムの食いしん坊」を自負する高木さんは自分のこれまでの経験などから加工品製造の厳しさを改めて強調する。 一切の妥協を許さないその高いハム作りの技術を「農業支援」に生かそうというわけである。

.ハム作りを通じ全国の養豚家とのネットワークもどんどん広げていこうという思いに燃える高木さん。その実現のためには互いが真剣勝負で臨まなければならないという気持ちがしっかり伝わってくる。


 

2008年10月号

◎“アグリフードEXPO2008”
18銘柄が美味しさ安全・安心をアピール


循環型農業に熱い思いを貫く(株)フリーデン社長の八日市屋敏雄さん

8 月28日、29日の2日間、東京都江東区・有明の東京ビッグサイトで「アグリフードEXPO2008」が開催された。国産農畜産物の販路拡大を促進し生産者を支援することを目的に農林漁業金融公庫が主催するこの展示会は今年が3回目の開催で、昨今の食の安全性に関する事件発生などから改めて安全な国産物への関心が高まり、来場者は2日間 で1万641名と昨年の9675名を上回った。


LYB豚(ルイビトン)などを紹介する(農)富士農場サービス代表の桑原康さん(左)

お馴染みの「館ケ森高原豚」などを紹介する(株)アーク専務取締役の橋本晋栄さん
●本誌関連の出展者および出展品(順不同)
  • 館ケ森アーク牧場/(有)アーク(岩手県):「館ケ森高原豚」「風と土と太陽の豚」
  • 常盤村養鶏農業協同組合/トキワ養鶏(青森県):「トキワの豚肉」
  • (有)敬友農場(山形県):「敬華豚」
  • ポークランドグループ(秋田県):「十和田高原ポーク『桃豚』」
  • 全国地養豚協会(茨城県):「地養豚」
  • かながわ夢ポーク推進協議会/(株)高座豚手づくりハム(神奈川県)「かながわ夢ポーク」
  • 伊藤忠飼料(株)(東京ほか):「燦然」(さんぜん)
  • (株)幻霜ファーム(広島県):「幻霜スペシャルポーク」
  • 大田産商(株)/(株)菅与(山形県・秋田県):「エコの森『笑子豚(えこぶー)』」
  • (有)江原養豚(群馬県):「えばらハーブ豚 未来」
  • 富士農場サービスグループ(静岡県):「LYB豚(ルイビトン)」
  • マーガレットポーク研究会(千葉県):「マーガレットポーク」
  • 旭食肉協同組合(千葉県):「いもぶた」
  • (株)フリーデン(神奈川県ほか):「やまと豚」
  • 群馬県食肉品質向上対策協議会(群馬県):「上州麦豚」
  • (有)伊豆沼農産(宮城県):「伊達の純粋赤豚」
  • (株)大里ミートセンター(三重県):「大里ぱくぱくポーク」
  • (株)サンショク(三重県):「さくらポーク」
  • 全国直売所研究会(東京ほか)

 

2008年9月号

◎(社)学術・文化・産業ネットワーク多摩/TOKYO X−Association
「TOKYO X」が教育プロジェクトに参加
多摩地区の子供たちが農業体験や枝肉解体を見学


夏真っ盛りの8月7日、8日の2日間、東京都立川市の国営昭和記念公園・緑の文化ゾーンで、(社)学術・文化・産業ネットワーク多摩(事務局・明星大学(東京都日野市)内、会長・永井和之中央大学総長・学長)が企画・運営するプロジェクト「それいけ!たまレンジャー! 第5回体験型環境教育プロジェクト」のイベントとして「発見!おいしいごはんの舞台ウラ」が開かれ(共催:国営昭和記念公園事務所、(財)公園緑地管理財団昭和管理センター)、2日目には東京都の銘柄豚「TOKYO X」の枝肉解体の見学や、その肉と多摩地区でとれた野菜を使った焼きそば作りなどに、稲城市、立川市、多摩市、八王子市、羽村市、日野市などの小学生40人が参加した。

今回のプロジェクトは2部構成になっており、第1部が8月7日の農業体験と8日の「TOKYO X」の枝肉解体見学、それを用いた焼きそば作りで、その体験を通じ小学生に多摩地域の自然の現状や、食に対する気づき、理解を促すことが狙い。第2部は「『食』と『地球』にできること」をテーマに、第1部を経て得た考えや、各々が問題意識を持って実行してきた取り組みの発表・意見交換を行い、またグローバルな視点を身につけるために横田基地の子供たちとの交流も企画されている。今年11月1日には中央大学多摩キャンパスで開催が予定されている。

8月8日のイベントでは、40人の小学生とスタッフの学生ら総勢約120名がホールに集まり、多摩地区の農業や「TOKYO X」などについての説明会が開かれた。プロジェクトの代表者である中央大学大学院、公共政策研究科委員長の細野助博教授の開会のあいさつに続いて、JA東京みどりの吉澤専務が、イベントで使う野菜などが多摩地区でとれたものであることや、都内で畑の面積が最も広いのは立川市で350ヘクタールもあることなどを説明した。そして(株)ミートコンパニオンが事務局を務める「TOKYO X−Association」の植村光一郎会長(ミートコンパニオン)が「TOKYO X」の説明とともに「命をいただくことに感謝をしてほしい」と子供たちに呼びかけた。

北京黒豚、イギリス系黒豚、デュロック種を交配させて作出した「TOKYO X」は、上質の赤身と脂肪がほどよく混ざった肉質が特徴。平成11年秋から出荷が始まり、現在、都内12戸、都外14戸(群馬1戸、茨城5戸、山梨2戸、長野2戸、静岡1戸、宮城3戸)の養豚農家によって、「安全性(Safety)」「生命力学(Biotics)」「動物福祉(Animal welfare)」「品質(Quality)」の4つの理念を持つ「東京Sa BAQ」の考え方に基づき飼育され、年間約7000頭が出荷されており、さらに原種豚の他県への配布も始め増産体制を整えている。

枝肉解体見学では長野県松本市の桃井佐門さんが生産した「TOKYO X」の半丸(約40キロ)が用意され、(株)日本カイハツミートの中川誠さんが、見事な手さばきで脱骨の様子など披露すると、子供たちは「それはどこの骨?」「頭はどっち?」などと興味深げに質問していた。解体された枝肉はさらに細かくスライスされ、子供たちが刻んだ多摩地区の野菜も入れて作った焼きそばを子供たちは口いっぱいにほお張っていた。


 

2008年8月号

◎(有)鏑木ピックファーム/(株)プレコフーズ
SPF豚認定農場が丹精込め育てた新ブランド
生産から販売まで一貫管理で提供する「総州三元豚『白王』」


鶏肉・豚肉・牛肉などの食肉加工販売企業で、都内7000軒の飲食店に納入する(株)プレコフーズ(高波幸夫社長、本社・東京都大田区)が今年7月1日、オリジナルブランド銘柄豚「総州三元豚『白王』(はくおう)」の販売を開始した。

創業以来、いわゆる「町の鶏肉屋さん」として営業してきた鳥利商店は、1994年の(株)プレコフーズへの組織変更を転機に、「総合食品卸企業」へと転身するべく、さまざまな改革を遂げた。 また、「安全」「品質」「鮮度」という企業理念を実現するために、2004年にはISO9001認証を取得。 2007年4月27日には、本社配送センターと東東京配送センターが(財)日本品質保証機構(JQA)のISO9001-HACCP認証企業として登録された。ISO9001-HACCPの登録範囲は「鶏肉製品、豚肉製品、牛肉製品、その他家きん畜肉製品の企画、製造及び配送」。昨秋には西東京配送センターでも認証を取得した。ISO9001-HACCPの導入は「『安全』『品質』『鮮度』を何よりも大事に考えているから」とその理由を説明する同社社長室の小林治室長。

「白王」は千葉県にある母豚1000頭規模のSPF豚農場、(有)鏑木ピッグファーム(千葉県旭市鏑木、岩岡喜久男社長)で生産されており、選び抜かれた種豚((株)シムコ)や、ライ麦やイソマルトオリコ糖などを配合した専用飼料、そしてSPF豚協会認定農場として徹底して行われる衛生管理などにより、疾病やストレスがなく、健康で元気な豚に育てられている。

「種」「飼料」「環境」の三拍子揃った「白王」は、脂がきれいな白色で、旨みが濃く口の中でとろける美味しさ。きめ細かな肉質は保水性に富み、みずみずしさを保ちドリップロスが少なく、調理しても肉汁を逃がさない。おまけに子豚期である約40キロ以降は無薬の配合飼料を使用しており、安全性にも万全を期している。

「白王」は、日本畜産振興(株)(茨城県取手市、安藤貴子社長、と畜能力1200頭/日・カット処理能力850頭)でと畜処理、カット処理されているが、ISO9001-HACCPの認証を取得し安全性や品質を重視しているプレコフーズの厳格な衛生管理規定などが取り交わされており、日本畜産振興の施設内においても衛生管理や鮮度管理はかなり厳密に行われている。しかも、と畜からカット段階まで他の豚肉と混ざらないように1頭ずつ完ぺきに管理され、トレーサビリティも確立している。

取引のあった流通業者からの薦めが「白王」を取り扱うきっかけとなったが、「納入先の店舗ではとくに脂が美味しいと大変好評です。お店では『白王』のブランド名をメニューに明記していただいています」と東東京配送センター取締役センター長の水口透氏は説明する。脂が白く質が良く、まさに豚肉の王様というのが「白王」のネーミングの所以でもあり、顧客から評価も上々だという。

養豚生産者が丹精込め育てた豚肉が衛生的な施設で処理・加工、販売されるのは、まさに理想的な姿。「白王」はその代表格であり、7月に販売を始めたばかりだが、すでに評判も上々で、今後はユーザーの要望にも応え販売量も徐々に増やしていく計画だ。


 

2008年7月号

◎ 岐阜県下呂市/堀田農産(有)
地元特産品としての定着を目指して
こだわりを持って作られる「飛騨けんとん」


堀田農産代表の堀田秀行氏は精肉店勤務等を経て、23年前に先代の後を継ぐ形で就農した。下呂地区の養豚農家の代表として、岐阜県養豚協会の理事を務めていた経緯から「飛騨けんとん・美濃けんとん普及推進協議会」に参加、2002年には有限会社として法人化し、現在に至っている。

堀田農産の「飛騨けんとん」は元々、系統造成豚「ナガラヨーク」の誕生をきっかけに、「岐阜県ならではの豚肉の普及をアピールしていこう」ということで岐阜県畜産研究所や岐阜県養豚協会が中心になって平成10年に立ち上げた「飛騨けんとん・美濃けんとん普及推進協議会」(事務局は全農岐阜県本部畜産販売課内)に参加する養豚農家8戸によって生産される銘柄豚肉「飛騨けんとん・美濃けんとん」のひとつ。「ナガラヨーク」を種豚に用いた三元交雑豚で、健康な豚肉=けんとんと生産地名にちなんで名付けられた。

「飛騨けんとん・美濃けんとん」は、その高品質で統一された豚の中でも格付け「中」以上のものが「けんとん」とされ、味だけでなく品質も追求し、仕上げ期には飼料への添加物としてヨモギを配合することで飼料に対する豚の嗜好性を高め食欲減退時の食い込みを改善している他、肉の獣臭さを抑える効果もある。また、栄養成分として強化されているビタミンEは脂肪の酸化を抑え鮮度保持の効果があり、ドリップを出にくくして肉の旨みをキープするなどの取り組みがなされており、岐阜県健康こだわり食材のひとつとしても認定されている。

現在「飛騨けんとん・美濃けんとん」岐阜県全域で54店舗、愛知県1店舗で販売しており、販売店舗には推進協議会から「飛騨けんとん・美濃けんとん指定店認定証」が置かれている。

堀田農産は現在、母豚85頭の一貫経営を行っており、山間の傾斜面を切り開いて建てられた農場には堀田秀行さんと奥さん、従業員2名の計4名が勤務している。「規模拡大の欲もないわけではないが、基本的に農場の隅々まで、自分の目の届く範囲で経営をしていきたい」と考え、平均175日齢・115キロ、週30〜35頭の出荷ペースでの生産を続けている。

「飛騨けんとん・美濃けんとんの考え方でもあるが、やはり健康に育った豚はおいしい豚肉になる。そのため豚の健康には非常に気を遣っている」と話す堀田さん。 最近の銘柄豚は、その味の良さや品質を売りにして大手スーパーと提携した大規模販売や、インターネット等を利用した通信販売によって全国どこでも手に入るといった展開が増えているが、堀田さんはあくまで「下呂市に来てもらったからこそ食べられる、この地域ならではの特産品にできれば」と、ブランド展開参加当初から一貫して地元での消費に特化した販売を行っている。「生産地で食べてもらうことで、その食品に物語ができる。温泉街の旅館でもうちの飛騨けんとんを出してもらっているが、お客さんに出す時には農場の場所や肉へのこだわりの説明をしてくれている。そうすることで、お客さんの中でもイメージが浮かびやすく、旅行の思い出のひとつとして記憶に残ってくれるのではないか」とも話す。


 

2008年6月号

◎ 茨城県土浦市/(有)行方畜産
長年追い求めた理想の純粋黒豚
“味”にこだわる黒豚に高い評価


茨城県土浦市で母豚90頭規模の純粋黒豚の一貫経営を営む(有)行方畜産の行方恒夫さん(76)。行方さんは若い頃、新潟県から上京ししばらく東京・足立区で精肉卸業を営んでいたが、24歳のとき養鶏を始めようと立川市で土地を購入した。しかしその直後、生家の事情で新潟に戻ることになり、4年後再び上京、いよいよ養鶏を始めようとしたが、以前購入した土地の周りには住宅が建ち始め、もはや養鶏ができる環境ではなくなっていた。そこで行方さんは思い切って、精肉卸業を営んでいた頃から惚れ込んでいたという黒豚を自らの手で生産しようと、昭和36年に茨城県土浦市に移り住み養豚経営を始めた。

鹿児島から純粋黒豚を導入し選抜を行ってきたが、「長細い顔ではなく、口がしゃくれた、鼻ぺしゃタイプの黒豚は体型に幅があります」というのが行方さんのこだわり。理想のタイプにするのに8年かかったという。行方さんが追い続ける黒豚はいわゆる、「鼻ぺしゃバークシャー」といわれる黒豚で、鼻は短く上に大きくしゃくれ、とくに下顎の方が上顎より長く、頭骨は短く、下顎の幅があり、強健性のある黒豚といわれている。

しかし、今は自分が理想とするその黒豚が少なくなったという理由で、導入は止め、自家生産を行っている。その中には「入間(いるま)黒豚」の血が入っている豚もいるというという。行方さんが飼っている黒豚の中には総産子数が13頭というのもいるというが、それは農場内にわずかに残る顔長タイプの黒豚で、行方さんが理想とする鼻ぺしゃタイプの黒豚は産子数は少ない。

黒豚にとことんこだわる行方さんの並々ならぬ黒豚への情熱と、美味しい肉をつくる卓越した技は、種の面だけでなく、飼料へのこだわりによってももたらされている。トウモロコシ、大豆粕を中心にパン粉や、さらには砂糖も添加している。「大麦を使うと脂が硬すぎて旨み、甘みがありません。うちは糖分で締めるようにしていて、そのせいで脂がねっとりしています」と行方さんは説明する。

現在、主に地元のと畜場に出荷し茨城県内の流通業者を通じて販売されているが、半年ほど前から週に20頭程度、東京食肉市場に出荷しているが、大貫まで含め東京食肉市場の上物加重価格の40円〜50円高で取引されているという。

東京食肉市場には現在も鹿児島黒豚が月に一回出荷されているが、茨城県から黒豚を出荷しているのは行方さんただ一人。「うちの豚は上物に格付けされたものより中物の方が相場が高いのです。そういうユーザーは味を買ってくれているし、独自配合の飼料の影響があるようだが、「うちの豚はしゃぶしゃぶをしたときでも脂肪の大きな塊ができず、霧が吹いたような感じになる。それは脂肪の融点が低いからで、『こんな融点が低い豚は初めて』といわれる」のも特長だ。とにかく「味」にこだわり、さらに「味」を追求していきたいと行方さんは意欲に燃える。


 

2008年5月号

◎ 三重県津市/(有)OK牧場
飼料にこだわり純粋においしい豚肉を追求
OK牧場の新ブランド「大里ぱくぱくポーク」


(有)OK牧場では創業以来、同社グループの精肉加工・販売会社である(株)大里ミートセンターとともに、食品の安心・安全といった消費者の関心が高い事項について積極的な取り組みを行ってきた。2005年には日清丸紅飼料(株)のトレーサビリティシステム「豚歴Web」を導入。このシステムは自社農場の給餌や予防治療履歴、移動の経緯などの情報をグループ農場が共有することで在庫の管理を含め統括的に全農場の管理ができる。同社は2007年11月より新しい銘柄豚「大里ぱくぱくポーク」の販売を開始、地元消費者から高い注目を集めている。

本農場(三重県津市)に入ると、まず臭いがほとんどないことに驚かされる。直売店に来る消費者も、まさか100メートル先に豚舎があるとは気付かないだろう。本農場手前に建つ大里ミートセンターには、と畜された枝肉を保管・処理するカット工場、ハムやソーセージ等加工品の製造工場、スライス・パック工場のほか品質管理のための検査室も備え、最終的な商品である豚肉の販売を管理する。現在は食品の品質規格であるISO22000取得に向けて社内一丸となって食品安全のさらなる確立に取り組んでいる。

「大里ぱくぱくポーク」が生まれるきっかけになったのは一昨年のこと。OK牧場の山内義広常務取締役は「銘柄豚としてオリジナルの商品を生産・販売する以上、量販店に並んでいる国産豚肉と同じものを作っても仕方がないし、他の肉と食べ比べた時に明確な違いを感じられるような豚肉を作りたいと考えていた。そして商品として、単純に顧客においしいと言ってもらえる豚肉を目指している」と話す。また「ブランド肉の作り方としては、昨今主流となっている添加物を用いて栄養価を高める方法ではなく、豚の品種・飼料・環境の3点のバランスを取りながら作り上げている」と言う。

配合飼料メーカーに依頼して作られるオリジナル指定配合飼料は、主成分にトウモロコシではなくマイロを用いていることと、パン粉や小麦といった麦類を25%配合していることが山内氏のこだわり。この配合にすることで肉付きや脂のつき具合が良く、食べた際にも脂身がくどくなく旨みを感じることができ、また柔らかく食べやすい肉質になるのだという。ブランドとしてはまだはじまったばかりの「大里ぱくぱくポーク」であるが、地元の名産品として認識されるのも遠い話ではないだろう。


 

2008年4月号

◎ 愛知県豊橋市/豊橋飼料(株)
国産豚肉の良さを前面に押しだし展開
飼料会社が生み出した銘柄ポーク「秀麗豚」


 愛知県の東側に位置する渥美半島は国内でも有数の農産地として知られるが、豊橋飼料(株)(愛知県豊橋市、石黒達士社長)は昭和6年に創立、マルトマークの配合飼料を生産し続ける、畜産用配合飼料の総合メーカーである。また、グループ企業と総合畜産食品企業群のマルトグループを形成している。その事業の一環として2002年に発表された銘柄ポークが「秀麗豚」である。2006年に大阪で開催された食肉産業展では、全国銘柄ポーク好感度コンテストで最優秀賞を獲得するなど、その高い品質が注目されている。
 秀麗豚は豊橋飼料の商標登録でもある銘柄ポーク。一般豚よりワンランク上のおいしい豚肉を目指して作っていくことを目的に、同社と提携農家が一丸となって生産に取り組んでいる。秀麗豚誕生について、同社中部営業部副部長の西郷幸司氏は「我々は配合飼料を作って畜産農家の皆様に提供していますが、お客様と売買の関係で終わるのではなく、双方が発展していけるようにと考え、銘柄豚の生産に乗り出した」と語る。
 秀麗豚はLWD(またはWLD)の三元交配により作られる豚肉で、母豚には豊橋飼料が生産するサーティー(LWまたはWL)を用いること、飼料には同社のオリジナル混合飼料「秀麗」を用いることの2つの条件が定められている。また、止め雄にも同社農場で生産・選別されたデュロックを使っているほか、補助的な条件として休薬期間は80日以上を目安としている。。
 サーティーは豊橋飼料グループで生産される肉豚生産用の優良母豚で、抗病性に優れた深みのある体躯と明瞭な乳器、高い泌乳能力を有する。また多産系で柔軟な肢蹄を持ち、耐用年数が長く経済性が高いことも特長。給与飼料にも当然こだわっており、肥育段階では同社配合飼料肥育用「エコフィードC」をベースに、あわせて混合飼料「秀麗」が用いられる。こうして作られた健康な豚肉は軟らかくジューシーな肉質で、不飽和脂肪酸(オレイン酸)を多く含み、コクと旨みに優れている。西郷氏は「母豚の系統的にも甘くてソフトな肉質になる傾向を持たせている。やはり健康な豚はおいしい豚肉になる」と胸を張る。
 秀麗豚は現在、愛知県豊橋市を中心に三河地方、静岡県浜松市などの大手スーパー・中堅スーパーの一部店舗で販売されているほか、豊橋飼料が食品の通信販売や店舗販売を展開する食品販売事業「アイドルシェフ」において「秀麗焼き豚」「秀麗豚のスライス肉」といったギフトフーズとしても販売を展開している。
 種豚から給与飼料、生産履歴に至るまで徹底してこだわった展開をみせる秀麗豚であるが、西郷氏は「管理の内容や豚が食べている飼料の内容も把握できるようになることで、生産者や農場を身近に感じることができるのではないか。また、すぐに反映というわけにはいかないが、消費者や流通業者、バイヤーの意向を生産に生かしやすいことも挙げられる」と国産であることのメリットを強調する。今後は契約農場の規模拡大や新規契約農家の増加も計画中とのこと。高品質で安心・安全な国産豚肉のさらなる躍進が期待される。


 

2008年2月号

◎米国スミスフィールド社/住商フーズ(株)
日本市場に定着、海外ブランドポークの雄
安全・安心でおいしいナチュラルポーク「自然豚」
人と人の信頼が産む「都築ポーク」


 1994年、「安全・安心でおいしいナチュラルポーク『自然豚』を日本の消費者に食べてもらい、一人でも多くのファンをつくっていきたい」と、住友商事(株)がアメリカ東海岸のバージニア州スミスフィールドに本部を置くスミスフィールド社と豚肉販売の独占代理店契約を結んだ。
 住友商事はそれまでに、主に台湾やデンマークなどの食肉加工メーカー向けの原料を購入していたが、価格訴求ではなく価値訴求の商品を提供していくという考えのもと新しいマーケティングを開始した。輸入は住友商事で行い、販売は100%子会社である住商フーズが受け持つという役割分担のもと、自らが扱う商品は責任を持ってお客様にお届けする「川上から川下まで」という発想に転換したのである。
 垂直統合により農場生産からパッキング・流通・販売までを一括管理し、高い安全性と品質を保証するスミスフィールドの取り組みは、今まで輸入品では類を見なかった。今でこそトレーサビリティは当たり前になったが、スミスフィールドの垂直統合体制によりそれを実現したのは輸入品ではおそらく初めてと思われる。その優位性をいち早く理解し日本での販売に着手したのが、住友商事の子会社「サミット」と、豚カツ専門店「いなば和幸」であった。
 スミスフィールド社は2007年現在、122万7000頭の母豚を有し、そのうちメキシコに9万6000頭、ポーランドに7万6000頭、ルーマニアに5万1000頭を保有。年間の売上高は100億ドルを優に超す。米国養豚業界の全国組織である全米豚肉生産者協議会(NPPC)では、独自にHACCPの考え方に沿った「豚肉品質保証(PQA)プログラム」を策定し、豚の疾病を予防し、抗生物質や注射針の残留防止などが徹底されている。また食肉の処理加工段階においては、米国農務省(USDA)食品安全検査局(FSIS)の管理下でHACCP管理が義務化されている。
 スミスフィールド社は日本人の嗜好に合わせるため、WLD(大ヨークシャー×ランドレース×デュロック)の三元交配による肉豚生産プログラムを開発。とくにデュロック種は筋肉内脂肪(サシ)が多く出るものを育種・選抜し、柔らかく旨みのある肉を作り出している。その肉の価値を一番先に認めたのが、豚カツ専門店チェーンの「いなば和幸」。会長の稲葉武氏がその肉に惚れ込み1994年11月から導入となった。次いで、スーパーマーケットの「サミット」が「自然豚」を取り扱った。3つのS(「サミット」、共同開発者の「住友商事」、「セーフティ」の頭文字)をあわせて「スリーエスポーク」と銘々し、95年1月より販売を開始。これらの取り引きがきっかけとなり、量販店・外食・中食・メーカーなど販路が広がっていった。
 国産物と輸入物の棲み分けができているとはいえ、輸入量は依然として漸増している。その背景には、安全・安心、美味しさを大前提とし、日本市場のニーズに迅速かつきめ細かく対応するための弛まぬ努力をしている海外ミートパッカーの姿がある。


 

2008年1月号

◎ (株)知多ピッグ(愛知県常滑市)
地元に愛される豚肉を目指して
人と人の信頼が産む「都築ポーク」


  愛知県常滑市は昔から農業の盛んな土地で、都築周典さんもその1人。地元密着型の豚肉販売を目指し、都築ポークを生産している。都築さんが養豚業を始めたのは昭和46年。もともと実家が稲作農家であったため、たい肥供給を目的として始めたのがきっかけだった。子取り専門からキャリアをスタートさせ、5年後には母豚20頭での一貫経営を始めた。平成10年ごろから愛知県農業総合試験場畜産研究所が造成した系統豚「アイリスL2」を導入した。現在はアイリスW2(大ヨーク)×アイリスL2(ランドレース)に同じく県の系統豚サクラ(デュロック)を掛け合わせた高品質な豚肉を生産している。最終的にアイリスを選んだ理由について、都築さんは「地元である愛知県で常に安定した品質で導入することができ、また疾病もなく信用できることから切り換えた」と話す。今後は2007年に発表された系統豚のアイリスナガラ(愛知県と岐阜県の共同開発)も導入予定。2006年からはAIの試験導入をはじめ、現在は本交が4割、AIが6割を占めているという。都築さんは「作業効率の面も考えて、今後はAI導入の割合を100%にしていきたい」と話す。
 生産された豚はすべて名古屋市中央卸売市場南部市場に運ばれ、出荷頭数の6割が銘柄豚として販売され、4割はセリにかけられる。「出荷時は体重115キロ、180日齢を目標にしており、195日齢までで必ず出荷する。160日齢、170日齢での出荷も技術としては可能だが、これらの肉質を分析にかけると、やはり違う。早めの日齢で出荷したものの中でも特に厚脂で発育の良いものは、水分含有率が高いことがわかった。ということは、例えば焼き肉にすると絶対に縮む。またショーケースに並べてもドリップが出やすい。これは要するに未熟ということだろう。肉質にこだわりと自信を持って自分の名前を付けて売ろうと思うと、ブランド豚としてよくいわれる、やはり180日が、いろいろな分析を見てもベストな時期だと思う。もちろん多少のズレは発生するので、そういった豚は銘柄豚としてでなく通常の国産豚として、市場でセリにかけてもらう」と都築さん。
 都築さんは現在までにも何度かブランド名をつけて販売していたことがあったが、販売店が農場から遠く、近隣の消費者からは「都築さんの農場の豚肉はどこで買えるの?」と聞かれることが多かった。そのため「自分の地元で、自分達の豚肉が売っている店を作りたかった」と振り返る。そんな折、名古屋市中央卸売市場高畑市場(現在は南部市場に移転)で都築さんが生産する豚肉の品質が高評価を受け、ある農業関連団体が銘柄豚として流通させたいと提案。2006年から銘柄豚「都築ポーク」の販売をスタートし、現在はスーパーマーケット・ダイエーの愛知県内の全店舗で販売されている。
都築ポークは、獣臭が少なく甘みのある脂が特徴。都築さんが「焼き肉よりはしゃぶしゃぶ用の肉質を目指している」という通り、肉質が柔らかく後味がさっぱりしていると評判である。また、飼料に添加されたビタミンEの含有率が他の豚肉に比べて高く、健康面でもポイントが高い。銘柄豚の販売について都築さんは「地元で販売することで、店舗に足を運んで精肉売り場の状況や実際の売れ行き、実際にパックを手にとってドリップが出ていないか、といったことを自分自身で確認することができる。また『常滑市の都築ポーク』として紹介してもらうことで、愛知県在住の人であれば簡単に知多半島や常滑市の位置を思い浮かべることができるだろう。すると、単純に国内産豚肉と表記されるよりも、消費者にとってより身近な存在として気に入ってもらえる」と、地元で販売することの利点を強調する。また、スーパーに並んでいる都築ポークをみて他の中堅・大手スーパーからも取引を望む声や注文が殺到し、対応できない状態だという。


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