日本海に面する福井県は、全国でも屈指の良質な米の生産を中心に、地域特産物や畜産の複合化を図っている。米の品種で有名なコシヒカリは、もともと福井県で開発されたものであることは意外に知られていない。
「ふくいポーク」は、福井県養豚協会と福井県、福井県経済連が一丸となって開発に取り組み、2002年に誕生した。福井県養豚協会を中心に生産者側からも、地元で消費される県産ブランドを掲げるアイデアが生まれ、生産者・行政双方の意向が重なったことも「ふくいポーク」誕生のきっかけとなった。
肉質については、昨今の消費者の好みに合わせて、くさみがなく柔らかい、さっぱりとした脂身と肉質を作ることを目標に掲げ、豚の品種だけでなく、飼料についてもさまざまな試験を繰り返し、肉質への影響や豚の嗜好性・食い込みが慎重に吟味された。
JA全農西日本組合飼料(株)の配合飼料をベースに、ハーブの一種であるオレガノを添加した「ふくいポーク」専用飼料が完成。できあがった豚肉は生産農家や畜産試験場の職員らが食味試験を行い、目標の肉質を作り上げることに成功した。
こうして誕生した「ふくいポーク」は、すべてが県内で消費され、福井市や坂井市のスーパーマーケット、精肉店、レストランで取り扱われている。小売店等での販売価格は、通常の国産豚肉と大きな差はないが、肉特有の獣臭がなく、さっぱりしているが旨味は強いと一般消費者からの評価は高いほか、有名ホテルや外食店からも商材として取引希望の声が後を絶たないという。
「ふくいポーク」生産農家のひとつであり、越前市の郊外で養豚業を営む相馬養豚場。先代を継ぐ形で養豚業を始めた相馬秀夫さんはこの道30年のベテランで、奥さん・両親とともに母豚80頭前後の一貫経営を行っており、現在は福井県養豚協会会長も務めている。相馬養豚場では分娩豚舎・離乳豚舎を奥さん、肥育豚舎やたい肥処理や種付けなどを相馬さんが担当している。肥育後期には「ふくいポーク」専用飼料に切り替え、肉質を整える。出荷日齢は平均185日というペースをキープしながら1頭1頭丁寧に育てることを心掛けている。
福井県は現在、豚肉の年間消費量が頭数換算で約3万頭分であるが、「ふくいポーク」の年間出荷頭数は3000頭と、県の消費量の10%しか生産できていないのが現状で、スーパーに並ぶ豚肉といえばほとんどが東北や九州から運ばれた国産豚肉や輸入品である。相馬さんは「せっかく地元に養豚農家があるのだから、もっとたくさんの人に「ふくいポーク」を知ってほしいという気持ちがある。
今後の展開について「昔から長く取り扱ってくれている精肉店から等、肉そのものについては定評をいただいている。経済連にはよく取引を求める声がかかるようだ。ただ、生産量が少ないのがネックで、ニーズに応えきれないのが問題。現在の取引先に対しても十分なニーズに応えられない時もある。大幅な増頭は難しいが、今後少しずつでも増やしていければ」と相馬さん。「ふくいポーク」を求める声に少しでも応えていきたいと考えている。 現在も各地でさまざまなブランド豚肉が生産され、地元での消費だけでなく全国への流通を展開するものも少ないが、「ふくいポーク」は福井県の特産品として、さらなる品質を追求している。