月刊養豚情報   シリーズ ブランド豚を追う
 

2009年12月号

◎三重県いなべ市/(有)松葉ピッグファーム
精肉・加工品を問わず地元を中心に大人気
愛情と感謝をこめて育てる「さくらポーク」


三重県いなべ市の北部、養老山脈に連なる小高い山奥にある(有)松葉ピッグファームは、昭和30年頃より先代が肥育経営で養豚業を始めたが、その後一貫経営に移行。松葉氏が就農したのは昭和48年で、順次施設の整備や規模拡大を進め、平成9年には有限会社として発足した。現在はさくらポーク生産農家の代表も務めている。

養老山脈の湧水はミネラルが豊富で天然水として評価が高いが、「人にとっておいしい水であれば、豚に与えることで良い結果を得られるだろう」と考え近くを流れる養老山脈の山河の水を与えているのも松葉氏のこだわりの一つ。こうして育った豚は体重116キログラム、出荷日齢180日で出荷される。

さくらポークの特徴は、脂身の甘みと赤みのうまみのバランスが良いこと。見た目ではサシの量は控えめだが、口にすると風味が広がり、柔らかく食べやすい。松葉氏は「全国で銘柄豚肉の食べ歩きをしているが、うちの豚肉がいちばんおいしいと自信を持って言える。消費者からも、なぜこんなにおいしいんだと言われるほど。そういった声があるおかげで自分たちの仕事にも自信が持てるし、自分にとって最高の豚肉だと思っている」と「さくらポーク」に確かな自信を見せる。

「さくらポーク」の精肉や加工品を取り扱うサンショクは三重県伊賀市に本社を置き、食肉卸業、食肉加工品の製造・販売を主業務としている。同社では、全国的に有名な和牛である「松阪牛」や、地元を中心に非常に高い評価を得ている「伊賀牛」とともに、国産豚肉として「さくらポーク」を大々的に販売。「さくらポーク」を原料とするボンレスハムは本場ドイツのコンテストDLG(国際品質競技大会)にて金メダルを獲得するなど、そのおいしさは世界的にも認められている。サンショクでは毎年、東京・大阪で開催されているアグリフードEXPOといった展示会に積極的に出展、「さくらポーク」の試食を展開しそのおいしさをアピールしている。

サンショク営業部の中野和彦氏は「「さくらポーク」は消費者からの反応が非常に良く、そのおいしさは食べてもらえば必ず伝わるはず。自信を持っておすすめしている。今後は、生産量の兼ね合いもあるが、新しい加工品の販売も行い、より多くの人に「さくらポーク」のおいしさを知ってもらいたい」と話す。

松葉氏は生産を続ける上で「我々の産業は、消費者、地域の理解があってこそ成り立つものだと考えている。」と語る。農場が県道沿いに建っていることもあり、臭気対策として密閉式のコンポストを整備したり、草花を植えて農場の景観を保ったりと、環境保全について努力を重ねている。また、ホームページでは豚に与えている飼料の内容や生産現場の写真を掲載したり、豚肉を使ったオススメ料理のレシピも紹介している。

「豚の命で自分たちの命をつないでいるという気持ちを忘れてはいけない。豚にとって気持ちの良い環境を作ってやることが、命を育てるということにつながるはずだ。命を生み、命を育み、命をつなぐ。そのために豚には大きな愛情を持って接するべきだ」と松葉氏は語る。設備投資は豚に対する恩返しで、当然のことだと考える松葉氏は、今後は豚舎を増築することで豚舎ごとのオールインオールアウトができるようにしていきたいと話す。地域貢献と豚への愛情をモットーに「さくらポーク」の生産は続いていく。


 

2009年11月号

◎熊本県上天草市/天草梅肉ポーク(株)
梅肉エキスを添加し独自の肉質を作り上げる
健康な豚の生産にこだわった「天草梅肉ポーク」


九州地方は黒豚の生産地として、業界だけでなく一般消費者にも広く認知されている。そんな中、天草梅肉ポークはSPF(Specific Pathogen Free、特定病原菌不在豚)豚を用いた安心・安全の豚肉を生産し続けている。「天草梅肉ポーク」は、天草梅肉ポーク(株)代表取締役の浦中一雄さんが平成3年にスタートさせたブランド豚肉。飼料に梅肉のエキスを添加し高品質な白豚を生産している。

経営を続ける中で、通常の国産豚を生産しているだけでは今後生き残っていけないのではないかといった危機感や、農場独自の豚肉を生産していきたいと考えブランドの設立を決意。「ブランド販売を始めた当時は、現在と同じように豚価が低迷し、ブランド化を成功させることでしか生き残りをはかれないと感じた。いろいろと悩んだ結果、地元には身近なものである梅肉エキスを与えることで、豚の発育面や、できあがる肉質に良好な結果を持たせることができた」と浦中さんは当時を振り返る。

梅肉エキスの添加に手応えを感じた浦中さんは、本格的に梅肉エキスの導入を決意。青梅と黒砂糖を混ぜて漬け込み、3カ月ほど発酵させたオリジナルのエキスを開発した。浦中さんは、「改良した梅肉エキスを与えることで、豚の食欲が増して飼料の食い込みが良くなり、発育が良くなった」と話す。また、最大の特徴として抗生物質や殺菌剤を投与する必要がなくなったのだという。また、豚のストレスを抑える効果もあり、豚同士で尻尾のかじり合いなどの行動がみられなくなった。

抗生物質ゼロを掲げる「天草梅肉ポーク」では当然飼料にもこだわり、抗生物質や添加剤を一切使用しないものを与えている。この飼料に、ステージ別に量を調整しながら、1週間に一度農場で梅肉エキスを添加した飼料を給餌している。梅肉エキスは全ステージの豚に与えられているが、離乳期の子豚に与えすぎると下痢になる場合があるので、添加する量やタイミングを調整している。出荷日齢は7カ月210日齢と、通常より1カ月ほど時間をかけている。と畜された豚肉は全量を天草梅肉ポークで一度引き取った後、各流通業者に販売される。

こうして生産される「天草梅肉ポーク」は、きれいなピンク色の赤身と、キメ細かいサシが多く入った、黒豚に匹敵する霜降り肉に仕上がっている。脂・赤身ともに甘み、旨みが濃厚で、非常にドリップが少ないのも魅力のひとつ。また、脂肪融点が高いため歯切れや舌触りが良く、脂肪そのものにクセがない。消費者からの評価も高く、こんなにおいしい豚肉は食べたことがないとの声も多いとか。高品質な豚肉は発売当初から注目を集め、平成13年度の農林水産大臣賞を受賞するなど、そのおいしさと品質の高さは折り紙つきだ。

「ウチの豚肉がいちばんおいしいと自信があるし、食べてもらえば実感してもらえるはず。今後も、健康な豚を育てるということを大前提として生産に取り組んでいきたい」と浦中さん。販売ルートが増えれば増頭も視野に入れていくとも話す。今後も確かな品質をキープしながら、さらなる規模拡大を目指している。


 

2009年10月号

◎三重県志摩市/(有)河井ファーム肉よし
安定した品質で生産される「パールポーク」
「夢やまびこ豚」としての販売も視野に


三重県の志摩半島に農場と直営店を構える(有)河井ファーム肉よしは、2002年にやまびこ会(稲吉弘之会長)に参加。直営店のみの販売となる銘柄豚「パールポーク」を生産しながら、「夢やまびこ豚」としての販売も行っていた。2009年9月現在、取引は休止となっているものの、現在も新しい展開に向けて準備を進めている。

2年前に河井さんの奥さんが分娩豚舎と離乳豚舎の担当として農場に入るようになり、現在の従業員は河井さん、奥さん、両親、叔父、従業員1名の計6名。「以前は、私が繁殖豚舎から肥育豚舎までの主な作業を掛け持ちでこなしていた。そのせいで、分娩豚舎の管理や離乳期の子豚に対してはケアが足りない部分もあったと思うが、妻が専属でやってくれるようになってから、分娩豚舎とともに種付が安定し、産子数の成績が良くなってきた」と河井さんは話す。成果は上々のようで、同農場は6月のやまびこ会総会で、成績向上者として評価された。

やまびこ会の魅力の一つである、オリジナルの配合飼料は見た目も良く、河井さん自身おいしそうと感じるほど。実際に豚の食い込みが良く、肥育成績やできあがる肉質がぐっと向上したという。出荷日齢は180日前後、出荷体重115キログラムをキープしている。できあがる肉質は、脂身にくどさがなく、甘みを持っていることが特徴。また、赤身は柔らかく食べやすい。

河井ファーム肉よしでは、JA全農みえの紹介の元、大手小売店で「夢やまびこ豚」を販売していた。「もともと三重県が進めていた地産地消の取り組みの一環として小売店に要望があり、そこで私の農場の豚肉が選ばれた。JAの人と小売店のバイヤーにも農場にも来てもらい、取り扱いが決まった」と河井氏。河井ファーム肉よしの「パールポーク」は、出荷段階で雌豚に限定し、特にできの良いものが月産頭数の8%ほど選抜されるが、同じ環境で育った豚の品質はどれも高く、「「夢やまびこ豚」としての販売と「パールポーク」に大きな差があるとは感じていない。どちらも自信を持って提供できる肉質になっている」と河井さんは肉質に対する自信を見せる。現在は「夢やまびこ豚」の販売は休止しているが、今後はパールポークとともに販売を展開していきたいとしている。

河井さんは就農以来、地元に愛される豚肉、地元で消費される豚肉を目指し生産を続けている。志摩で買える豚肉は、すべて自身の農場から供給するというのが河井さんの目標である。「私が目指しているのは、生まれ育った故郷に貢献できる産業であること。養豚業は臭いの問題など、近隣の理解なくしては立ちいかない。最近は農場の近くにも民家が立ち並ぶようになり、厳しいことを言われることもある。これは私の農場だけでなく、全国をみても同じ状況の仲間がたくさんいることだろう。飼料の高止まり、豚価は安値と、経営も非常に厳しい。このままでは本当に養豚業は廃れていってしまうのではないか。こんな時代だからこそ、地域に感謝し、貢献をしていければと考えている。自分は脱サラして農家になったが、養豚業1本で来なかった自分だからこそ、できることもあるはず。日々の仕事やJPPA(日本養豚生産者協議会)の活動にも自分ならではの感覚を生かしていきたい」と河井さんは話す。

地元に根差した活動を心掛けている点は、河井さんだけでなく、やまびこ会会員のテーマとも言える。「パールポーク」「夢やまびこ豚」が地元で愛される豚肉となるよう、河井さんは今日も努力を続けている。


 

2009年9月号

◎愛知県幡豆郡吉良町・(有)アクティブピッグ
やまびこ会独自の飼料とこだわりによって誕生
「夢やまびこ豚」が満を持して販売開始


東海・北陸地方の中小規模27養豚農家で構成されるやまびこ会は、1998年6月に発足。飼料の共同購入や、技術や情報の共有を目指し積極的な勉強会の開催など活発な活動を展開している。やまびこ会結成当時からのメンバーの一人である、山本孝徳氏が社長を務めるアクティブピッグは平成14年に法人化。愛知県の西三河、吉良町の海辺にほど近い場所にたたずみ、母豚400頭の一貫経営を行っている。

先代の山本一義氏が養豚業を始めたのは昭和38年のこと。山本氏はもともと養豚業を継ぐ考えで東京農業大学に進学、卒業後はアメリカでの1年間の研修を経て平成3年に就農した。当時は母豚180頭一貫経営で、山本氏の両親だけで切り盛りしていたが、休みの取り方もわからないほど忙しかったという。研修先は母豚1100頭一貫経営の農場で、そこでウイークリー管理等のノウハウを勉強し、帰国後すぐに自身の農場にフィードバック。まずは離乳を週1回にまとめるところから始め、徐々に業務内容を整理していった。

豚は3週齢で離乳を終えた後、平均出荷体重114キロ、190日のペースで出荷される。出荷先は豊田市や名古屋市、神奈川県厚木市の市場など4カ所。名古屋市中央卸市場南部市場で毎年行われる枝肉共励会では、2年連続で優秀賞としてアクティブピッグが表彰されるなど、その肉質のできには買参人からの評価も高い。

「夢やまびこ豚」は、愛知県の三河地方を中心に30店舗以上を展開するスーパー、ドミーで販売されている。アクティブピッグの肉はもともと愛知県西尾市の小売・卸店で扱いがあったが、一般豚として販売していたため、銘柄豚としての販売はドミーでの取り扱いが初となる。

「夢やまびこ豚」の肉質は脂に甘みを持ち、火を通しても硬くならない柔らかな肉質が特長。山本氏も「自分でもおいしいと思う、納得のでき。他の肉と食べくらべても違いがわかる」と太鼓判を押す。肉本来の旨みがたっぷりとふくまれているので、調理の際の味付けも、焼き肉ならシンプルに塩コショウだけで十分とのこと。

販売価格は国産豚にくらべると少々値が張るが、消費者から非常に人気があるという。また、売り場には昨年のやまびこ会10周年記念総会で披露され話題を呼んだ「やまびこソング」が流れていて、小さな子供からの反応が良いという。「歌を子供が気に入ったのでCDはないか」と消費者から問い合わせがあるなど、販促効果は上々だ。

いくつかの課題を抱えながらも、目標を達成してきたアクティブピッグだが、今後は農場成績の向上を第一に、まず分娩率の改善を目標にしている。「増頭してから成績が落ち込んでいたが、ようやく母豚1頭につき20頭出荷のペースに戻すことができた。今の時代では、24、25頭といった数字を出していかないと採算をとることも難しい。やまびこ会のメンバーの中には同じ飼料、種豚で良い成績を出している人がいるので、自分の農場でも同じかそれ以上の成績を上げることは十分可能。若い従業員の成長も含めて、まだまだ伸び代があるはずだ。ブランド展開については、まずはドミー全店での販売が目標。外食店の取り扱いも増えていってほしい」と山本氏。やまびこ会の活発な動きと併せ、アクティブピッグは今後も高品質な豚肉の生産を進めていく。


 

2009年8月号

8年ぶりの開催に沸く、新製品も多数出品
国際養鶏養豚総合展「IPPS JAPAN 2009」



8年ぶりの開催とあって1万5000人超の来場者で賑わったIPPS

2009年7月8〜10日、ポートメッセ名古屋(名古屋市国際展示場)で「IPPS JAPAN 2009」が開催され115の出展企業(団体)により養豚・養鶏関連の世界最先端かつ最新鋭の施設・機械器具・資材・技術が一堂に展示されるとともに、養鶏・養豚特別講演会(6演題)や最新資材・技術のプレゼンテーション(23テーマ)が行われた。国内外での口蹄疫や鳥インフルエンザの発生などにより幾度となく開催中止を余儀なくされ、8年ぶりの開催となったこともあり、2001年開催時の延べ1万1974名を超える1万5904名の来場者で賑わった。

展示期間中、本誌取材にご協力いただいた出展企業名は以下の通り(50音順)。なお、各社出展商品の特長などは、本誌グラビアにて紹介。

  • アキレス(株)(東京都)
  • アグリシステム(株)(神奈川県)
  • (株)アズマ・コーポレーション(静岡県)
  • (株)イーアニマル(岐阜県)
  • イワタニ・ケンボロ一(株)(東京都)
  • (株)インターベット(東京都)
  • (株)WEDA Japan(愛知県)
  • (株)大宮製作所(京都府)
  • (株)岡田製作所(群馬県)
  • カルピス(株)(東京都)
  • 関越技研(株)(群馬県)
  • 協和発酵バイオ(株)(東京都)
  • (株)源麹研究所(鹿児島県)
  • (株)光洋商会(東京都)
  • コーキン化学(株)(大阪府)
  • (株)コバヤシ商事(茨城県)
  • 三洋貿易(株)(東京都)
  • (株)シムコ(東京都)
  • ジャステック(株)(神奈川県)
  • (株)セキネ(埼玉県)
  • JA全農グループ・全農畜産サービス(株)(東京都)
  • (株)ダイヤ(秋田県)
  • 中部エコテック(株)(愛知県)
  • 東海理化販売(株)(愛知県)
  • 豊田通商(株)(愛知県)
  • (株)中嶋製作所(長野県)
  • 長野クリエート(株)(長野県)
  • (株)新原産業(宮崎県)
  • 日環エンジニアリング(株)(宮城県)
  • (株)日工機械(埼玉県)
  • 日生研(株)(東京都)
  • 日本ニュートリション(株)(東京都)
  • 日本配合飼料(株)(神奈川県)
  • 日本微生物化学(株)(群馬県)
  • バイエル薬品(株)(東京都)
  • (株)ハイテム(岐阜県)
  • (株)濱田製作所(広島県)
  • (株)ピィアイシィ・バイオ(東京都)
  • フジ化成(株)(熊本県)
  • (株)ブライト(京都府)
  • (株)フロンティアインターナショナル(神奈川県)
  • ミヤリサン製薬(株)(東京都)

 

2009年7月号

◎福井県越前市・相馬養豚場
消費者に確かな安心と品質を届ける
地域密着型生産の「ふくいポーク」


日本海に面する福井県は、全国でも屈指の良質な米の生産を中心に、地域特産物や畜産の複合化を図っている。米の品種で有名なコシヒカリは、もともと福井県で開発されたものであることは意外に知られていない。

「ふくいポーク」は、福井県養豚協会と福井県、福井県経済連が一丸となって開発に取り組み、2002年に誕生した。福井県養豚協会を中心に生産者側からも、地元で消費される県産ブランドを掲げるアイデアが生まれ、生産者・行政双方の意向が重なったことも「ふくいポーク」誕生のきっかけとなった。

肉質については、昨今の消費者の好みに合わせて、くさみがなく柔らかい、さっぱりとした脂身と肉質を作ることを目標に掲げ、豚の品種だけでなく、飼料についてもさまざまな試験を繰り返し、肉質への影響や豚の嗜好性・食い込みが慎重に吟味された。

JA全農西日本組合飼料(株)の配合飼料をベースに、ハーブの一種であるオレガノを添加した「ふくいポーク」専用飼料が完成。できあがった豚肉は生産農家や畜産試験場の職員らが食味試験を行い、目標の肉質を作り上げることに成功した。

こうして誕生した「ふくいポーク」は、すべてが県内で消費され、福井市や坂井市のスーパーマーケット、精肉店、レストランで取り扱われている。小売店等での販売価格は、通常の国産豚肉と大きな差はないが、肉特有の獣臭がなく、さっぱりしているが旨味は強いと一般消費者からの評価は高いほか、有名ホテルや外食店からも商材として取引希望の声が後を絶たないという。

「ふくいポーク」生産農家のひとつであり、越前市の郊外で養豚業を営む相馬養豚場。先代を継ぐ形で養豚業を始めた相馬秀夫さんはこの道30年のベテランで、奥さん・両親とともに母豚80頭前後の一貫経営を行っており、現在は福井県養豚協会会長も務めている。相馬養豚場では分娩豚舎・離乳豚舎を奥さん、肥育豚舎やたい肥処理や種付けなどを相馬さんが担当している。肥育後期には「ふくいポーク」専用飼料に切り替え、肉質を整える。出荷日齢は平均185日というペースをキープしながら1頭1頭丁寧に育てることを心掛けている。

福井県は現在、豚肉の年間消費量が頭数換算で約3万頭分であるが、「ふくいポーク」の年間出荷頭数は3000頭と、県の消費量の10%しか生産できていないのが現状で、スーパーに並ぶ豚肉といえばほとんどが東北や九州から運ばれた国産豚肉や輸入品である。相馬さんは「せっかく地元に養豚農家があるのだから、もっとたくさんの人に「ふくいポーク」を知ってほしいという気持ちがある。

今後の展開について「昔から長く取り扱ってくれている精肉店から等、肉そのものについては定評をいただいている。経済連にはよく取引を求める声がかかるようだ。ただ、生産量が少ないのがネックで、ニーズに応えきれないのが問題。現在の取引先に対しても十分なニーズに応えられない時もある。大幅な増頭は難しいが、今後少しずつでも増やしていければ」と相馬さん。「ふくいポーク」を求める声に少しでも応えていきたいと考えている。 現在も各地でさまざまなブランド豚肉が生産され、地元での消費だけでなく全国への流通を展開するものも少ないが、「ふくいポーク」は福井県の特産品として、さらなる品質を追求している。


 

2009年6月号

◎神奈川県平塚市・(株)フリーデン
内臓肉も含めた一頭丸ごとの商品政策
「やまと豚」の加工品・総菜も人気上昇中


「やまと豚」でお馴染みの(株)フリーデン(本社・神奈川県平塚市、八日市屋敏雄社長)は、直営農場を5カ所、提携農場として5カ所を有し、現在ほぼ年間27万頭の肉豚を生産・出荷する。また同社は、早くから豚肉加工を中心とする食品加工事業にも力を入れるとともに、「豚肉創作料理『やまと』」を出店するなど外食事業にも積極的に乗り出し、生産から加工、流通、そして消費者をつなぐ総合食品企業へと発展を遂げている。

同社は、「生命の環(いのちのわ)」をテーマに「循環型農業の実現」を目指し、日本農業への貢献を常に念頭に置いてきた。その取り組みの一つが飼料米の生産であり、それを給与し新ブランド「やまと豚米(まい)らぶ」を生産することである。「やまと豚米(まい)らぶ」はすでに年間2500頭程出荷され、関西の高級スーパーとの取引も始めている。さらに循環型農業の取り組みとして、神奈川県平塚市を地盤とする「スーパーしまむら」と共同出資で「フリーデンファーム」を立ち上げ、フリーデンの畜産部門から出る堆肥を生かし、自分たちの手で小松菜などの野菜を栽培している。

加工品のアイテム数はすでに500を超え、それらのおいしさと品質が高く評価されて、2004年から6年連続でドイツ農業協会(DLG)食品競技会の金賞を受賞している。

「これから養豚の生産頭数も増え精肉供給が拡大するのに合わせ、時代とともに需要が高まっている加工品の供給量も拡大していく予定です。『倭・しゅうまい』など日本人の味覚に合った総菜類も増やしていきたいと思っています」と常務取締役流通本部長の小俣勝彦氏はいう。

通常スーパーなどで売られている豚肉加工品や総菜は、コスト面などから輸入原料が使われる場面が少なくないが、フリーデンの加工品や総菜は、自社農場豚肉をぜいたくに使用している。加工品などに国産豚肉を使っただけでもコスト高となり、小売価格が高くなってしまい、日常的に消費者が買えるものではなくなってしまうが、フリーデンの商品は例外である。品質や安全性が高く、おいしければ、それを支持する消費者=ファンは着実に増えていく。フリーデンはまさにそのことを実現しており、「ファンの方々に支えられているので、景気にも左右されず、販売数量は決して落ちません。食品に関するさまざまな事件が起こり、消費者がより安全で安心なものを求め、さまざまな商品に対して国産志向を強めているという背景がありますが、当社は創業当時より、合成保存料などに依存しない安全でおいしく、『豚に失礼の無いよう、肉を大事にしたハム・ソーセージを作る』ということが経営方針でもあり、その価値を認めていただけるようになったと思っています」と小俣氏。

小俣氏はまた、「『フードチェーン』というコンセプトで、我々の思いを消費者に向かって発信し、それに合わせて末端の小売部門が提案型の売り場を作っていく。そして消費者の方々にそこから我々の思いを感じ取っていただくというような流れをさらに作り上げていきたいと思っています」と消費者とのつながりを前提に事業拡大を目指す。


 

2009年5月号

◎全農畜産サービス(株) 種豚事業部
ハイコープSPF肉豚の枝肉調査と肉質調査

全農グループは「ハイコープSPF種豚」という種豚のブランドを擁し、長年に渡り育種改良と増殖・普及を実施してきた。現在、年間約2万頭のハイコープSPF・F1♀種豚と約1200頭のデュロック雄豚および30万ドースを超えるAI用精液を全国のCM農場に販売している。また、種豚の品質管理の一環として、全農グループでは毎年ハイコープSPF肉豚の大規模な枝肉調査および肉質調査を実施している。

枝肉の調査項目としては、(1)枝肉重量(2)屠体長(3)背腰長II(4)胸腰椎数(5)背脂肪の厚さ(肩、背、腰および3部位平均)、枝肉規格(6)子豚用および仕上げ用飼料の6点を基本としている。

肉質調査の調査項目は、・屠殺後48時間のpH、・肉色、・脂肪色、・粗脂肪割合、・保水性、・伸展率、・ドリップロス、・ロース面積、・クッキングロス、肉の硬さ(剪断力)、・融点、・脂肪酸組成、・食味試験、・筋肉の組織検査、である。

これらの枝肉調査と肉質調査の結果は、ハイコープSPF種豚の育種改良方針に反映されている。

◎農研テクノ(株)
「地養豚」をカレーで味わう「ザ地養豚カレー」好評発売中

農研テクノ(株)(本社・東京都新宿区、石原達也社長)が製造・販売する混合飼料「地養素」を与え生産されているブランドとしてお馴染みの「地養豚」は国産志向が強まる昨今、ますます消費者の人気を集めている。

今年2月、同社の加工食品分野への新たなチャレンジとして、「地養豚」をふんだんに使った「ザ地養豚カレー」の発売に踏み切った。「地養素」の主成分である「木酢液」は消臭効果があり豚肉特有の臭みを取り、体質のアルカリ化を促し活力のある豚にする働きがある。さらに海草やヨモギも配合されており、それらの豊富なアミノ酸やミネラルにより肉に旨みが増す。

「地養豚」をふんだんに使い、具材に北海道上富良野産じゃがいもやたまねぎとじっくり煮込んで作った「ザ地養豚カレー」。「地養豚」の旨みに野菜の甘みが加わり旨さはもちろん、マイルドであっさり、まろやかな辛さで飽きの来ない味に仕上がっている。。


 

2009年4月号

◎群馬県渋川市・(有)横野畜産
「コスモエナジー」でブランド化実現
肥育経営で「いやしろぽーく」に専念


(有)横野畜産(群馬県渋川市赤城町)の社長、斉藤健さん(34)は祖父の代から続く養豚経営を平成14年から引き継ぐことを決意した。27歳にして他業種からの転職だったが、母豚150頭の一貫経営は決して楽なものではなかった。「特に苦しめられたのは豚の病気です」と斉藤さんは当時を振り返る。横野畜産は畜産団地の中にあり「養豚過密地帯」に位置していることもあって、さまざまな病気が経営を圧迫した。ワクチンや薬剤の種類は増えるばかりで病気は一向に解消せず、出口の見えない試行錯誤が続いた。

このように辛い時期を過ごしてきた横野畜産だが、「米ぬか発酵飼料」との出会いが同社をがらりと変えたのである。半信半疑で、農場の豚に「米ぬか発酵飼料」を与えたところ1カ月後には驚くほどの結果が出ていた。症状が見る見る回復し、農場の事故率が今までない低水準になり、事故率ゼロの月もあった。

「腸内の菌が強くなったのか、その代謝物が効いているのか、その両方かはわからないが、消化・吸収が良くなり豚が健康で強くなることができました。強くなることで、また消化・吸収の良い体になるのだと思います」と、斉藤さんは成果を強調する。消化・吸収の改善により、さらに「におい」の問題が一気に解決した。このことは取材に伺って十分に実感することができた。豚舎内には豚がいるとは思えないほどにおいがなく、肉豚はピンク色で健康そのものである。排せつしたばかりのふんもにおいが極めて少なく、数日後には土のようなにおいになってしまう。現在では近所からの悪臭苦情はまったくなくなった。たい肥についても良いものができ、野菜の成長は格段に違うという。「昨年は特に里芋が大きくなってびっくりしました」と斉藤さんは笑顔で語る。

この4年間で斉藤さんは、「米ぬか発酵飼料」に対して種々の試みを繰り返した。現在は『米ぬか発酵飼料コスモエナジー』という商品を使用しているが、今ではこの「コスモエナジー」を斉藤さん自ら製造し安定して生産できるようになり、最近では地元の養鶏場にも「コスモエナジー」を紹介した。豚の健康が促進された結果、斉藤さんはこれまでの母豚150頭の一貫経営に終止符を打ち、肥育専門経営に転換した。現在は県内の養豚農家から、30〜40キロの子豚を月に約150頭購入し、150頭の肉豚を出荷するという形で、常時飼養頭数500頭ほどの経営をお母さんと2人で切り盛りしている。

「『米ぬか発酵飼料』との出会いで最高の肉豚を生産していける自信がつきました。労力のかかる繁殖管理をやめたいということもありましたが、自分の豚をブランド化して付加価値をつけて販売したいという夢をかなえるために、肉豚の生産と販売に専念しようと思い踏み切りました」と斉藤さんは、本格的なブランド販売のために決断したのである。

こうしてさまざまな試行錯誤の結果得た確信により、夢であった独自ブランド「いやしろぽーく」の販売に踏み切ることとなった。「いやしろぽーく」のネーミングは、船井幸雄氏の著書で話題になった「イヤシロチ」からとったものである。「イヤシロチ」とは、ほとんどの動植物が癒される土地という意味で、「弥盛地」または「癒しろ地」と記述される。環境により、人を含めた動植物の状況が良くなるという考え方である。自信が確信に変わり、さらなる発展を横野畜産は目指している。


 

2009年3月号

◎千葉県富里市・堀江ファーム
コクのある旨みと脂質の白さが輝きを放つ
「ダイヤモンドポーク」


宝石の最高峰ダイヤモンドに因み命名された「ダイヤモンドポーク」――今ではほとんど見られることがない中ヨークシャー(中ヨーク)の純粋種である。中ヨークの肉の美味しさはすでに広く知られている事実であるが、きめ細かくやわらかな肉質で、脂肪は厚いが脂の融点が低いため口の中でとろけ、さっぱりとして甘みがあり、特にろうのように白く硬い脂身は臭みもほとんど感じられないことが特徴。日本では明治39年にイギリスから輸入され、昭和30年代には全国の飼養種豚の80パーセントを占めていたが、昭和36年にランドレースをはじめとした大型種が続々と輸入されたこと、産肉性や発育性が劣ることなどを理由に飼養頭数が減少。現在ではほとんど見かけられなくなった幻の品種であった。

千葉県内でも昭和30年頃には9万戸の農家が飼養する約11万頭の豚のうち、そのほとんどを中ヨークが占めており「千葉ヨーク」として全国的にも知られていた。しかし、その生産効率の低さからLWD三元交雑豚などの生産へと切り替える農家が増加。県内でも趣味的に飼育されるだけとなっていたが、平成に入り、中ヨークの生産を求める声が上がったことが復活のきっかけとなった。

千葉県の北総台地のほぼ中央に位置する富里市で、一貫経営を行う堀江ファーム・堀江光洋氏の農場では、飼養頭数のうち15%ほどを「ダイヤモンドポーク」となる中ヨークが占める。堀江氏は「おいしい豚肉を作るには、豚にストレスを与えないゆとりある飼育方法と血統が大事。脂肪が良質であれば肉全体のうまみが増す」と独自のこだわりを見せる。中ヨーク生産に取り組むからには中ヨーク本来の豚肉の味にこだわりたいと、給与飼料にも気を遣う。堀江ファームではエコフィードによる飼育を行っているが、肥育期以外の期間でも通常飼料にデンプン質である餃子の皮が主原料となるエコフィードを3割混ぜて給与。さらに「繊維質を欲しがるので育成期や肥育期に牧草を与えている。こうすることで母豚が分娩舎へ入ったときの食下量の低下を防ぐことができる。この取り組みをしている養豚農家は少ないのではないか」と説明する。

「ダイヤモンドポーク」は、千葉県内では販売日を限定して、そごう千葉店(月末の金・土・日曜日)、JA千葉みらい農作物直売所「しょいか〜ご」(毎週土・日曜日)、伊勢丹松戸店(毎月第1水曜日)で販売。また、都内では大田区グランデュオ蒲田の「匠房小川」にて毎日購入することができる。販売価格は一般の国産豚肉より割高感があるが、そごうや伊勢丹ではリピーターがわざわざ予約してまで購入するほどの人気で売れ行きは好調だ。ちなみに、「ダイヤモンドポーク」の肉の旨味をよく知る堀江氏のおすすめは、バラ肉のしゃぶしゃぶ。「ダイヤモンドポークは脂身の旨みに特徴があり、特にバラ肉で味わうことができる。また、他の部位も脂身を付けたまま調理するとより旨みが増す」という。

千葉ヨーク振興協議会は今後も「ダイヤモンドポーク」の増産体制を整え、いずれは「鹿児島県といえば黒豚」のように「千葉県といえば中ヨーク」と周知されることを目指していく。


 

2009年2月号

◎福島県福島市/福島県農業総合センター畜産研究所
農家からの要望が高かったデュロック種に着手
「フクシマD桃太郎」誕生


福島県農業総合センター畜産研究所(福島県福島市)は種豚を独自に開発した。

これは、平成16年度から県内生産者に供給しているランドレース種の系統豚「フクシマL2」に続いて4年ぶり、2品種目となる。今回開発されたのは、福島県内では初となる「デュロック種」。一般的な国産肉豚はデュロック種を止め豚として使用している三元交雑豚が大半だが、種豚生産農場の減少や家畜防疫の面から、県内生産者は種豚を安定的に確保することが年々難しくなってきた。そのため、安定供給に向け、福島県が開発に着手した。 県名とデュロック種(Duroc)の頭文字、そして、県の代表的な果物である桃から、健康ですくすく育つイメージを持ち、力強さの象徴である「桃太郎」を基に印象的な愛称として「フクシマD桃太郎」と命名された。

「フクシマD桃太郎」は、雄7頭雌22頭という比較的少ない繁殖集団で維持しており、繁殖集団の大きさが認定基準に満たないため、系統豚としての認定は受けられないが、産肉能力については家畜改良増殖目的や豚遺伝的能力評価などの客観的な指標に対しても遜色のない成績を得ることができた。 また、遺伝的観点から近交係数や血縁係数の推移を見ても、一般的な系統豚と同等の高い遺伝的斉一性を得ることができた。このように「フクシマD桃太郎」は、1日平均増体重などの産肉能力に優れているとともに、強健性に優れているため、導入後の長期間の利用が期待できる。

「フクシマD桃太郎」の供給は、平成20年11月27日より開始され、原則として福島県内の約150戸の養豚農家、公的な試験研究機関を対象に、生体と精液による供給を行っている。

同種豚は、年間に雄20頭、雌36頭を生産し、おおむね5〜8カ月齢で譲渡される。譲渡に当たっては、子豚登記書、オーエスキー病・PRRS抗体検査陰性証明、ワクチン・駆虫剤接種歴を併せて渡している。また、精液の供給の際にも活力、奇形率などの検査を実施し、有効精子数50億を100ミリリットルに希釈して精液証明書を添付し、譲渡を行っている。繁殖集団の拡大については、同研究所肉畜科の宮本拓平氏は頭数を増やす予定はないとコメントしている。

今後の系統の維持については、閉鎖群で維持していくと、近交退化が早く進行することが考えられる。そのため、完全な閉鎖群ではなく、定期的に外部からの種豚導入を行う一部開放型による維持方法を検討している。

「フクシマD桃太郎」は生殖能力が高く、肉付きが良い豚の安定的な生産が見込まれ、発育成績も良いため、飼料高騰に苦しむ農家にとって飼料コストの低減が期待されている。


 

2009年1月号

◎千葉県旭市/旭食肉協同組合
生産、流通が強い連携で育て上げる「千葉県産いもぶた」
高度な飼養管理といも類50%配合で抜群の味に


千葉県旭市と匝瑳市の5軒の養豚農家と流通会社ががっちりタッグを組み作り上げているブランドの評判がますます高まっている。その名も「千葉県産いもぶた」。「千葉県産いもぶた」の生産基準は、LWDの三元交配肉豚に中部飼料の「千葉県産いもぶた」専用飼料を肥育期後期に平均70日間給与し、出荷日齢は平均190日齢、出荷体重は114〜120キロを目安としている。専用飼料には、サツマイモが30%、タピオカが20%と、いも類が5割も配合されている(トウモロコシ、大豆粕はともに約10%)。いも類を50%給与することで豚は良質のデンプンを多量に摂取でき、旨味成分であるアミノ酸が多く含まれた肉になる。またビタミンEも配合しているため、ドリップが少なく旨味を逃がさずジューシーな味わいを保てるのも大きな特長である。

「販売は我々が直接販売する場合もあれば、加工メーカーさんを通して販売している場合もありますが、いずれも流通ルートを明確にすることでトレーサビリティを確立し、お客様に喜んでいただける豚肉の開発に取り組んで来ました。我々は鹿児島黒豚をターゲットとしてきましたが、黒豚と比べてLWDというのは非常に一般的な豚なので、それを飼料によって高い付加価値を付け多くのチャンスを得ようと考えてきました。しかし、それは生半可なものでは通用せず、我々はとことん味にこだわり、とにかく、おいしくないと引き取らないというポリシーを貫くことにしました。生産者の方にもそのことを理解していただいており、『いもぶた』はとにかく『おいしさ』を一番の評価基準としています。そのため余計な広告は一切しません。味が広告なのです。味にこだわり、生産者の方々と徹底的に議論しています」と旭食肉協同組合部長代理の橋本彰人さんはいう。

味の良さにさらに磨きをかける「いもぶた」は、その評判はますます高まり、今では有名レストランや一流ホテルで使われるようになった。大手スーパーなどからの引き合いも着実に増えてきている。

「サツマイモの嗜好性も良く、豚が食べすぎてしまうのですが、その割には成長しない。しかも軟便が続くとか、当初は色々な問題がありました」と久保田さん。試行錯誤の末に配合割合など確立したとはいえ、「今でも技術力のある生産者でなければ、その飼料を使いこなせない面もあります」と橋本さんは説明する。繊維質が多く豚の健康にも非常に良い飼料ではあるが、豚の状態を見て、給餌量などを微妙に調整していくなどのきめ細かな管理をしないと、適切な肥育状態が保てない。

「生産者や我々が付加価値を強調しても、末端の消費者に評価してもらえなければ、絵に描いた餅になってしまいます。だからこそ味にこだわっているのです。スーパーさんなどは実際に店頭に置いてみてリピート率が高ければ、ロスが少なくなり、利益が得られる。我々も定番として売り場をいただければ安定的な販売ができる。生産者の方々にもそのへんの状況を見た上で、定時・定量を心がけてもらっています。『味』と『定時・定量』があってこそ、初めて付加価値が生まれます。付加価値というのは消費者が決めるもので、消費者に評価されたら少し高くても買ってもらえると思っています」と越川さん。

枝肉相場にも左右されず、安定した取引と販売が実現できており、豚肉そのものの付加価値とともに、豚肉流通の面でも生産者と流通・販売業者が納得のいく流れが作り上げられている。「おいしいものを食卓に届けるという同じ思いを持った生産者の方々と一緒に盛り上げていきたい」(橋本さん)との熱い思いがブランドをさらに育て上げていくものと期待する。


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