2004年12月号

◎群馬県勢多郡北橘村・グローバルピッグファーム(株)
日本人の食生活に合ったテーブルミート「和豚もちぶた」

銘柄豚に特別なストーリーはいらない

大規模経営に負けない家族養豚を実現
日本人の食生活に合ったテーブルミート。「和豚もちぶた」が目指すのは美味しくて高品質、新鮮で安定かつ安い豚肉である。種豚3農場、肉豚85農場で母トン約2万頭、出荷頭数が年間約37万頭(昨年実績)で日本ハムに次ぐ全国2位の出荷量を誇る。単一の豚肉ブランドとしては日本最大の販売量である。グループを束ねるグローバルピッグファーム(株)(群馬県勢多郡北橘村大字上箱田800、赤地勝美代表取締役)は和豚もちぶたの販売を一括して手掛けるほか、飼料配合の設計や原種の供給を行い、各農場の生産および財務のデータをチェックしてコンサルティングを行うなど農家をサポートしている。
銘柄化は会社設立のコンセプトでもある。もともと群馬と新潟の1部の養豚仲間で「日本一美味しい豚肉を作ろう」と昭和53年に自家配銘柄豚研究会を発足。全国展開になって法人化し同社を設立したのが22年前の昭和58年のこと。家族経営の養豚農家が大規模経営に負けないで生き残っていく体制を構築するための切り札の一つが銘柄化だった。赤地社長は「日本人の手で日本人の豚を作ること。豚肉は経済動物であることを忘れてはいけない。銘柄化はいろいろだが大衆商品でありニッチマーケットを目指して高く販売しても消費者がそれを望んでいるとは限らない。より良いものをより安く販売できる体制を作らなければならない」と語る…。


2004年10月号

◎宮崎県都城市・キリシマドリームファーム
黒豚の中の黒豚、最高級黒豚を志向する霧島黒豚

霧島黒豚は100%!
英国系バークシャー


 20年前、ブランド豚といえば黒豚、特殊豚の時代であった。ところが現在では、餌や飼い方、系統造成などによる多種多様なブランド豚が現れ、全国のスーパーで激しい戦いが起きている。そんな中、「黒豚だけで売っていていいのか、黒豚にもブランド戦略があっていいのではないか」と立ち上がったのが、宮崎県都城市のキリシマドリームファーム(株)((株)永晋代表取締役社長)である。
 同社は飼料から食品販売まで幅広く展開する林兼産業(株)(山口県下関市大和町、澤田修文社長)が100%出資している。従業員数70名で母豚が4500〜4600頭。すべて100%純粋の英国バークシャーである。同社は昭和36年に林兼畜産としてブロイラーや種鶏の生産からスタート、現在は養豚に事業を絞っている。養豚事業としての始まりは昭和43年のこと。当初は一般的な白い豚を飼っていたが、昭和56年に初めてイギリスからバークシャー種を直輸入した。黒豚(バークシャー種)は一般の豚と比べ肉のキメが細かく味が良いことが知られているが、その中でもイギリス産は筋繊維や保水性、肉の硬さが良好で、脂肪の融点が高く脂質も良く肉質的に優れていたため、その後、直輸入を4回行い、多くの系統を入れた。完全に100%純粋の英国バークシャーで出荷できるようになったのは平成13年4月からのことである。
 (株)永社長は「黒豚は肉質がいいというので、当社では早くから黒豚に関する研究を進めていた。平成11年くらいに黒豚の定義ができて、純粋種の価値が認められるようになった。それならば純粋の黒豚だけで勝負しようと、それも最も美味しいとされるイギリスのバークシャー種で純粋物を作り上げて、それを強みにして販売していくことにした」という。イギリスバークシャーは鹿児島黒豚に比較して体形質で背脂肪が厚く、ロース断面積が小さいといわれる。実際、「生体で100キロ前後で枝が64キロを前後するくらい。小さくて歩留まりが悪い。鹿児島黒豚のほうは枝で70キロくらいだろうか。そうすると1割近くもの大きさの違いになる。黒豚というと他に産肉性の良いアメリカバークシャーがあるが、これはキメが粗いというので日本ではあまり好まれていない。わが社は生産性で不利になるが肉質重視の方針を貫きイギリスバークシャーにこだわり、黒豚の中の黒豚を目指した」((株)永社長)。より差別化を鮮明にできる、品質の高い豚肉を志向しているのだ。


2004年9月号

◎岐阜県加茂郡七宗町・かぶち山里ハム/亀山ファーム
美濃ヘルシーポーク100%、かぶち山里ハム

 年間出荷頭数、約1万3000頭。岐阜県内においても自然に恵まれた環境の中で、経験豊富な優れた生産者によって育てられ、厳しい審査基準により吟味し厳選された肉だけが「美濃ヘルシーポーク」として市場流通することが許される。
 美濃ヘルシーポークは、全国に誇れる特徴ある豚肉の生産を目的に、平成2年に誕生したブランドポーク。JA全農が技術を結集、長年の育種改良の末に生まれた「ハイコープ豚」を親に、ビタミンや穀類、EM菌を豊富に含んだ純植物性の専用飼料と豊かな自然環境の下で大切に育てられた美濃ヘルシーポークは、うま味の濃い味わいとあっさりした脂が人気を呼び、地元岐阜県においても恒常的な品薄状態が続いている。
 その美濃ヘルシーポークを贅沢に使い、手作りによりさらにうま味を引き立てた最高級の手作りハム・ソーセージを産み出すのが「かぶち山里ハム」(亀山大介代表)である。
 かぶち山里ハムが位置する岐阜県加茂郡七宗町神渕(かぶち)は、周りを深い山が囲み、両側を緑の田畑に挟まれた清らかな清流が流れ、真夏日でも山風と谷風が暑さを和らげる、まさに山里と呼ぶにふさわしい豊かな環境だ。
 亀山大介さんは地元の工業高校を卒業後、社会勉強を兼ねてサラリーマンを経験。群馬の全国食肉学校で食肉加工の基本を学び、帰郷して実家近くに加工所兼販売所の「腸詰屋かぶち山里ハム」を2000年5月にオープンした。実は食肉学校卒業後、大手ハムソー工場に在籍していたのだが、「加工品一つひとつに自分の知識と工夫を反映させたい」という想いが募り、不況の時勢の中、一念発起して自分で食肉加工施設の開店に至った。
 大介さんのこだわりは、良い素材の味を最高に引き出すこと。使用する材料も厳選したミネラル豊富な自然塩や自然食材を、豚肉本来の味を邪魔することのない程度に加えるだけで、保存料、合成添加物などは一切使用しない。もちろん、増量剤も使用しないから長時間かけて熟成するベーコンなど”目減り“するものもあるのだが、価格帯も安価に抑え、決して肩肘を張らない、多くの意味で”食べる人に優しい”ハム・ソーセージを提供する。


2004年8月号

◎秋田県山本郡山本町・かわい農場
小規模だからこそできるこだわりと面白さ

手作りハム・ソーセージブームに陰り見える中での船出

 山本町は大潟村の北部に位置し、人口は1万人にも満たない小さな町である。そんな町に宣伝を一切行わないのに美味しさとこだわりによって客が客を呼び、年々売上げを伸ばしている精肉店がある。
 その精肉店の名前は、かわい農場。母豚35頭一貫農場の養豚場から精肉店まで同一の名前である。かわい農場の川井博さんは元々は稲作農家。堆肥をとるために養豚経営を始め、コメ・野菜・養豚と複合経営を営んできた。そして大きな転機が訪れる。平成3年4月の牛肉自由化だ。「牛肉が自由化されたら、牛肉需要が増加し、豚肉の需要が激減する」という危機感から周りの養豚家のほとんどは廃業を決めた。川井さんも養豚の規模拡大を図るか、コメづくりに全面転換しようかと思い悩むが、コメの価格も今後期待できないという見通しと昭和56年に手作りハム・ソーセージづくりを学んでいたこともあって、精肉店のオープンを決意する。
 精肉店・かわい農場がオープンしたのはそれから4年後の平成7年11月。しかしその頃は、一時全国的に盛り上がった手作りハム・ソーセージブームも陰りを見せ始めていた頃であり、精肉店は順調な滑り出しとはいえなかった。「私は農業一筋で勤めたことがない。野菜をやって、養豚をやって、次はハム、と来た。だから次に店を始めた時もレジが必要だということに気づかなかった(笑)」と川井さんは振り返る。だが、「これくらいがちょうど良かった。自分たちが直売に慣れるのとお客さんの増えるペースがちょうど良かったのかも…。最初の頃はスライスにも手間取っていたから、たくさん来られても困ってしまう。ちょうど店の売上げと自分たちの技術が比例して増えていった」と言う。当初は「ダメだったらやめればいい…」と夫婦2人で始めた精肉店も、「やっぱり途中でやめたらカッコ悪い」と夫婦の意地と努力、そして家族の協力の下、現在では従業員を2人抱えるまでになっている。


2004年7月号

◎宮崎県児湯郡川南町・(農)尾鈴豚友会
商系販売力活かし展開するブランド「地養豚」
“地養素”でヘルシー・美味しい・安定生産を実現


獣臭なくあっさりした脂  旨味を逃がさない肉質

 「健康な豚を育てれば美味しい豚肉になる」――農研テクノ(株)(永井明代表取締役)が独自に開発した混合飼料「地養素」。これを添加して育てた「地養卵」「地養鳥」は、すでに全国で販売されている畜産物の有名ブランドである。養豚でもこれまで「地養豚」の名で伊藤ハムにより東北、九州を中心に、またプリマハムにより北海道で販売されていたが、このたび、いよいよ全国展開を開始すべく関東地区での生産者育成とPRを開始した。
 「地養素」とは木酢精製液、海藻、ヨモギ、ゼオライトを原料とした混合飼料である。木酢液に含まれる有機酸は疲労物質である乳酸の発生を抑え、活力の源であるブドウ糖の生成を促進する。豚の体を健康体に保ち、またアンモニアや肉の獣臭など消臭作用があり、環境改善や体質改善に高い効果を持っている。
 その効果としては、(1)木酢液の有機酸や海藻のグルタミン酸などによる働きで豚肉の還元糖値が上昇することで甘味とコクが生まれる、(2)アンモニア・アミンなどの脂肪酸類を分解し豚肉特有の臭みを取る、(3)木酢液によるクエン酸回路活性化の促進と海藻中の粘液多糖類の作用によりコレステロールが減少傾向となる、C筋肉組織の結合が木酢液による体質改善効果や海藻に含まれる成分によって強化され、旨味成分が肉から逃げにくくなるため、一般の豚に比べ変色の発生を遅らせドリップが出にくくなる。また同じ理由でアクも出にくくなる。
 肉中に含まれる脂肪の酸化度を示すPOVを一般の豚と比較すると、地養豚は生の状態での酸化値が低く、調理を想定した過熱後の測定でも酸化が抑えられている。旨味成分の試験でも優位性が確認されている。


2004年6月号

◎静岡県富士宮市・富士朝霧放牧豚研究会
「原種」「放牧」など説得力あるこだわり
「富士には豚がよく似合う」その訳とは…


環境に優しい放牧養豚

 かつて太宰治は『富嶽百景』の中で「富士には月見草がよく似合う」と言った。だが、今では「富士には豚がよく似合う」という言葉が関係者に浸透してきている。
 富士の麓で放牧豚飼育がスタートしたのは6年前の1998年。今日まで『放牧』という一目でわかる説得力あるこだわりが消費者を魅了し続け、今年2月には日本テレビ製作による報道特番『食の安心への挑戦者たち』でも取り上げられるほどになった。
 だが、放牧という飼養形態だけがこだわりなのではなく、その奥は深い。まず飼料はポストハーベストフリー、Non−GMOのトウモロコシに大麦25%、マイロ35%添加という関係者も驚くハイグレード飼料。飼養期間中に抗生物質は一切使わない。飼養スペースは1頭当たり20坪と人もうらやむひろびろ空間。そこで走り回る豚たちはバークシャー(黒豚)、中ヨークシャーという純粋種も多い。これらのこだわりの根底にあるのは、日々愛情を注ぎながら飼養管理を行う富士朝霧放牧 豚研究会代表の松澤文人さん、放牧豚のコンセプトや飼育基準を制定し飼料供給や出荷などバックアップする富士開拓農協、そして子豚の供給や管理獣医師としてサポートする(農)富士農場サービスの桑原康代表らのチームワークと本物のこだわりへのあくなきチャレンジ精神である。
 桑原代表が地元の養豚場から強健性が高くて特定疾病フリーの子豚を選抜し、およそ75日齢・35キロで放牧場に導入。20日から1カ月間は放牧場に設置してあるコンテナ内で育て、その後の約3カ月間、放牧飼育している。普通の豚の100〜200倍の運動量のため出荷は二百日齢と長めだが、脂肪も筋肉も締まり、程よく食感があって味も濃い。ただし放牧期間が3カ月を超えると逆に肉が硬くなり過ぎてしまうそうだ。
 放牧場は豚を出荷した後、寄生虫などの予防のため消石灰で土壌消毒し、牧草などを植えて土壌の窒素・リンを吸着させるという土に優しい環境保全型養豚である。将来的には有機野菜栽培の展望もあるという。


2004年5月号

◎茨城県真壁郡協和町/(株)キングポーク
豚肉の王様“キングポーク(宝食)”

肉質の決め手は毛並みともち肌

 ポークの王様とは何だろうか。“キングポーク(宝食)”は茨城県(13名)、栃木県(1名)、千葉県(3名)の生産者が集まって作るキングポーク研究会(茨城県真壁郡協和町小栗3487−2)の産直ポークだ。同研究会は徹底した素豚の改良と毎月第2土曜日の定期勉強会でその名前に恥じない豚肉を作りあげている。
 キングポークの最大の特徴は肉質の弾力と細胞のキメの細かさ。これがパン生地を噛むようなほど良い食感と、甘味があって口の中で脂肪がとろける風味豊かな味わいを作っている。肉色はツヤのあるピンク色。赤肉と脂肪が整ったマーブリングを形成しながらも、きちんとサシが入っている。バラに無駄な脂肪厚(厚脂)がなく、サシの入った豚にありがちなカット歩留りの悪さがキングポークにはほとんどない。脂肪質も良く、臭みがない。日持ちが良く肉汁がほとんど出ない。
 同研究会代表で原種豚を生産する北斗養豚(株)の小菅忠一社長は語る。
 「弾力のあるキメの細かい豚肉は素豚の系統で決まり、飼料の調整では実現できるものではない。共進会の全盛期の頃、きれいな豚、見せる豚で肉質や強健性は重視されていなかった。特に美味しい豚肉という点では程遠い豚でしかなかった。生産側にとっても多頭飼育の中で呼吸器系などいろいろな疾病にかかり抗生物質の多量の添加につながって大きな問題になってしまった。これでは生産者も倒産するし消費者も安心して豚肉が食べられないと思い、米国から柔らかいデュロックを導入してさまざまな角度から改良選抜をしてみた」。
 強健性の遺伝子と柔らかでキメの細やかな遺伝子で、徹底した素豚の改良を何世代にもかけて行い、ランドレース、大ヨーク、デュロックの3品種を同じ筋肉に統一することに成功した。小菅代表は「改良をしていく中で気づいたのは、強健性と肉質が比例すること。それには一つの特徴がある。美味しい豚は毛並みのツヤが違う。毛が細く短いこと。これは肌が薄くもち肌であることを示している。“もち豚”とよくいわれるが、その意味は『もち肌の豚』である。その見分け方は素豚が茶毛なら硬く黒毛なら柔らかい。肌は血の赤が透き通ってピンク色になる。そして足腰の丈夫で病気に負けない、健康で美味しい豚ができ上がった」と語る。


2004年4月号

◎青森県三沢市・(農)三沢農場
純植物性飼料で最高の美味と肉質に仕上げる
徹底した安全性も「やまざきポーク」ならでは


 青森県三沢市にある(農)三沢農場(山崎伸組合長)は国内有数の企業養豚で、平成十年から「やまざきポーク」のネーミングでブランドポークの生産を行っている。
 「消費者の方々に安全で美味しく、高品質な豚肉を安価に提供できるよう生産コストをさらに低減させなければならないが、そのためには一定の規模が必要だと思うし、同時に生産の仕組み、構造を変えて様々な要素をトータルに改善していく必要がある」という山崎さんの考え方がその根底にある。
 種豚は、イワタニ・ケンボロー(株)(本社・東京、石川卓社長)が供給するアメリカPIC社の高能力系統造成ハイブリッド豚、ケンボロー−22(種雌豚)と、種雄豚にはPIC社のバークシャー種(黒豚)が用いられている。このバークシャー種を生産するイワタニ・ケンボローの東北原々種豚農場(岩手県住田町)は(社)日本種豚登録協会から「黒豚生産農場指定」を受けている。
 豚に給与されている飼料は、HACCP対応の飼料工場で高温高圧殺菌加工されている「やまざきポーク」専用飼料で、魚粉・肉骨粉・動物性脂肪を一切使用しない純植物性飼料。抗酸化作用もあるビタミンEが配合されており、豚肉中のビタミンE含量は通常の豚肉に比べ7倍。ビタミンEの効果で、肉に締まりがあり、しかも日持ちが良く、ドリップロスが少ない。
 もちろん農場での安全性管理には万全を期し、通常は生後百日前後まで疾病予防を目的に飼料に抗生物質が添加されているが、「やまざきポーク」はそれも生後70日までとし、子豚の時点から出荷まで一切抗生物質は使用していない。さらにHACCP方式の安全性管理を取り入れ、抗生物質や注射針の使用管理などを徹底している。
 肉豚に50%黒豚の血液を移行することにより、肉質が良く、肉色は安定しており鮮やか。先述のようにドリップロスが少なく(保水性が高い)、肉と脂肪に旨味と締まりがあり、しかも柔らかい。
 「いくらいい物を出荷してもと場の段階で商品価値を落としてはまったく意味がない」という山崎さんらの強い要望を反映し、と場である三沢畜産公社での衛生管理レベルは非常に高く維持されている。


2004年3月号

◎鹿児島・渡辺バークシャー牧場
Odakyu OXと紡ぐ黒豚販売十八年の歴史


 首都圏に23店舗を構えるスーパー『OdakyuOX(オーエックス)』。その精肉コーナーには、昭和62年から現在まで18年間、一度も途切れることなく鹿児島渡辺バークシャー牧場の黒豚が陳列され続けている。
 OdakyuOXは、23店舗中22店舗が、小田原と新宿を結ぶ私鉄・小田急線の沿線に位置する。高座豚の産地として知られるこの場所で、なぜこの肉が受け入れられたのか。“世界一高価な豚肉”とも言われる渡辺黒豚の人気の秘密は? 世田谷区経堂にある小田急商事を訪ねた。

着実にリピーターを獲得
 OdakyuOXが渡辺バークシャーの黒豚を扱い始めたのは今から18年前、昭和62年のことである。当時のバイヤーが「本当に良いもの」を追い求め全国行脚する中で辿り着いたのが、鹿児島・霧島にある渡辺バークシャー牧場だった。
 渡辺バークシャー牧場の渡辺近男社長は、その頃のエピソードをこう振り返る。
「本当にこだわりの強かった当時の社長さんが、うちの黒豚を気に入って、鹿児島まで来てくれました。利用者の意識が高いといわれる成城店に専用の立派な棚を作ってくれて、嬉しかったですよ。小田急線沿線の消費者は高座豚を食べ慣れており、もともと舌が肥えていた。だからこの味が受け入れられたんでしょうね」。
 精肉担当者たちは、取り扱いを始めた当初から売り場に生産地、飼養方法、商標登録証等の情報を開示。黒豚の名が今ほど一般的でなかったこともあり、パッケージ、POPなどを定期的にリニューアルしながら、その味をPRし続けた。地元の消費者の間で「OXには美味しい黒豚がある」と認知されるまでに、そう時間はかからなかったという。
 精肉全体の売り上げが落ちる中で、黒豚の売り上げは過去十年間横這い。数年前のニセ黒豚騒動のときも混乱はなかった。価格は白豚の1.5倍以上だが、着実にリピーターを取り込み、精肉コーナーでの位置づけは、盤石なものとなっている。


2004年2月号

◎岩手県東磐井郡藤沢町・(株)バブコックスワイン・ジャパン
"バブポーク"をナショナル・ブランド化
ユーザー絶賛、TV番組でも特選素材に


高能力種豚から産出される絶品

 "バブポーク"でお馴染みの(株)バブコックスワイン・ジャパン(本社・岩手県東磐井郡藤沢町、並木眞一社長)の豚肉が、新たな統一ブランド名を付しナショナル・ブランドを目指すことになった。
 同社の創業は20年前にさかのぼる。原種豚農場が昭和58年5月に完成し、米国ミネソタ州のバブコック・スワイン社から原種豚、原々種豚770頭が初輸入され第一原種豚場に導入された。その後、同規模の第二原種豚場が設置され、以来、バブコック種豚の供給を続けている。
 バブコックの肉豚の特長は、まず離乳時の体重は20日齢でほぼ5.5キロだが、強健性が高く離乳以後の成長速度、特に肥育終盤の増体が早い。市場への平均出荷日齢は140〜170日の範囲におさまる。しかも飼料要求率2.8〜3.1(農場要求率)と優れている。
 産肉性や肉質については、枝肉格付けが60〜70%と高率で、対枝肉の精肉歩留まりは76%と高い。無駄な脂肪がなく、背脂肪はきちんと乗る。ロースの太さは太く重くて比較的均一、小売段階で非常に使いやすいとの評価を受けている。バラ肉は三枚肉がしっかりと入り充実しているのも"バブポーク"の特長である。肉色は鮮やかなピンク色で光沢があり非常にきれい。筋繊維が細かく、食味に優れている。
 美味しさや歯ごたえはバイヤーも絶賛する代物で、精肉小売業者の悩みの種である肉のドリップをなくすべく、RNジーンフリーも実現した。
 「国際競争が激化する中でいかに国産豚肉が勝ち残っていくかということに関しては、生産コストが最重要な要素ではあるが、コストで対等に勝負することは当面は困難であろう。その意味からも、やはり品質における差別化が必要である。例えば肉質は、飼料によっても変化し、麦や芋などの配合するといった工夫は以前からよく見受けられるが、半分以上は遺伝的な要素である。いかに肉質に優れた種豚を使うかがポイントとなる」と種豚の能力の重要性をバブコックスワイン・ジャパンの並木社長は説明する。


2004年1月号

◎山梨県塩山市上萩原・晦日正一さん
ワイントンで山梨ブランドの豚目指す

 勝沼インターを下り、ブドウ畑やワイン直売所の連なる田園地帯を進むこと約20分、養豚業を営む晦日正一さんのお宅と農場にたどり着いた。晦日さんはこの地でプラムや桃などの果樹園(一町歩)を営みながら13年前からは養豚も手掛けている。そして昨年の8月からは「ワイントン」というブランド豚の生産・販売を本格的にスタートさせた。ワイントンの美味しさから反響が大きく、一挙に注文が入ったが対応しきれない。そこで3月に山梨、神奈川、静岡などの養豚農家12人と「ワイントン生産普及組合」を設立し、登録商標や飼育法の特許を取得。ワイントンの完成まで時間をかけて確立した技術をマニュアル化し組合員に伝授した。ワイントンをつくるのに大事なことは次の2つ。
 1つが餌。50キロまでに大麦の圧ペンを使うこと。割合としてはトウモロコシよりもかなり多めに使う。50キロまでに肉にサシが入る体質を作ることがポイントで、ここまでで大体決まってしまうそうだが、加熱してアルファ化した大麦をやると肉に甘みが出て脂質もよくなるという。餌は自家配合するが兼松飼料?にも委託配合している。
 もう一つはこのブランドの特徴であるワインを給与すること。50〜115キロすぎの出荷まで1頭に15リットルを飲ませる。ワインは県下最大手のワイン会社・マンズワイン(株)の白ワインを使用。これは豚用の低級品というわけではなく人間が飲んでも安全面で全く問題のないものだ。実際、少し口にしてみたがクセがなく大変飲みやすい。とりわけ女性に受けそうなテイストだ。


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