2008年12月号

◎(株)崎陽軒・横浜工場(神奈川県)
全国区のローカルブランド、 創業100年を迎えた「シウマイの崎陽軒」
〜高い透明性の経営を実践、『横浜の食文化の創造』に挑戦〜


シューマイ等の鉄道旅客用および一般食料品の製造加工・販売等を主業務とする(株)崎陽軒(本社・横浜市西区高島、野並直文取締役社長)は、2008年に創業100周年を迎えた老舗企業である。現在は「シウマイ事業」「弁当事業」「点心事業」「レストラン事業」「本店事業」を中心に事業を展開している。

1908年(明治41年)、横浜駅(現在のJR桜木町駅)の4代目駅長であった久保久行は、退職後、駅構内で「崎陽軒」の営業許可を受けた(崎陽軒の「崎陽」とは長崎県の別称で、久保久行が長崎県出身であったことから名付けられたといわれる)。 1928年、豚肉と帆立貝柱を練り合わせた、冷めてもおいしい「崎陽軒のシウマイ」が完成。1945年の横浜大空襲で、すべてを失った崎陽軒であったが、翌1946年には和洋食喫茶食堂「KY(KIYOKEN YOKOHAMA)食堂」をオープンして再出発。1954年にはシウマイ弁当の販売を開始、1967年には真空パックシウマイの販売を開始した。

「崎陽軒のシウマイ」の基本的なレシピは、開発当初からほとんど変わっていない。保存料や着色料などの添加物は一切使用せず、素材の旨味を十分に引き出す製法を継承し続けてきた。工場見学者の中には「本当に原材料は8種類だけですか?」と驚く人も多いという。同社シウマイ・点心事業部長の足立好康氏は「原材料の種類が少なく、化学調味料を使わないので、素材の味がそのままお客様に伝わる。そのため、厳格な工程管理が不可欠である。また、保存料も使用しないので、徹底した衛生管理も重要である。そうした厳しさが求められる一方、素朴でシンプルな味だからこそ、消費者から飽きられない商品であり続けているのだと思う」と説明する。原材料は国産にこだわっている。豚肉は関東近辺の生鮮豚肉を使用。トレーサビリティが確保された豚肉のみを使用しているので、「どの農場で育てられた豚か?」「どのように育てられた豚か?」といった情報は明確化されており、最近ではホームページ上での生産者情報の開示も始めている。帆立貝柱は北海道のオホーツク海で獲れた帆立貝を乾燥したものを取り寄せている。タマネギは北海道産が中心、グリーンピースはニュージーランド産を使用している。

「崎陽軒のシウマイ」は全国区で知られるブランドであるが、「横浜の崎陽軒」というローカルイメージも強い、地元に根付いた企業である。足立氏は「誠心誠意をもって、横浜のお客様に商品を提供し続けてきたことでローカルブランドとして定着できたのだと思う。ナショナルブランドを目指してきたわけではないが、ローカルに生き続けることで、ナショナルブランドとして認知されることもあるのかもしれない。これからも地元企業として誠実であり続けたいと思う」と語る。「消費者の要求は年々レベルが高くなっていく。そのような時代にあっては、『企業としてどこまでのことができるか?』をしっかりと考え、実現していく姿勢が重要だと思う。そして、透明性を高く保つことが大切になる。高い透明性の一環として、工場見学の受け入れなどを開始したが、工場を外部に見せるには「いつ見に来られても、同じ状態の管理を保っている」ということが大切である。また、外部の方々に見ていただくことで、忌憚のない意見をいただいたり、アドバイスをいただいたりして、さらなる向上、さらなる改善につなげていくこともできる。これからも『ローカルのトップ企業』を目指して、安全・安心の商品を提供し続けていきたい」とも語る。




 

2008年11月号

◎(株)愛知ヤクルト工場(愛知県)
最新鋭の検査装置を導入、徹底した“品質至上主義”を貫く
〜人材育成、教育・訓練も重視、地元市民に支持される企業を目指す〜


発酵乳製品「ヤクルト」「ヤクルト400」を製造している(株)愛知ヤクルト工場(落亨社長、愛知県日進市藤枝町)は、平成11年に総合衛生管理製造過程の承認を取得、HACCPに基づいた衛生管理を徹底している。さらに、本年3月には、品質の確保と設備の増強を図ることを目的に大規模な増改築、並びに最新鋭の検査装置の導入を行った。これは、ヤクルトグループが推進する国内工場の設備投資計画の一環として行われたものである。このたびの大規模改装により、生産能力は約2倍に増強され、日産100万本から190万本になった。

また、このたびの増改築に際して、最新鋭の検査装置が導入された。一例を挙げると、容器に傷やへこみがないかを検査する容器外観検査装置、充てん後の製品に異物がないかをチェックする液中異物検査装置の他、キャップ不良検査装置、インクジェットプリンター印字検査装置、金属異物検査装置などが全ラインに設置された。

(株)愛知ヤクルト工場の落亨社長は「ライン従事者全員が『ラインを止める権限』を持つ――これは私の工場管理における持論の一つでもある。ライン周りの複数箇所に、ラインの緊急停止ボタンが設置されているので、『何かおかしいのでは?』と感じた従事者は、いつでもラインを止めることができる(ただし、再スタートするには係長またはリーダーの許可を得なければならない)。」と語る。

また「食品企業は、お客様に安全と安心を提供し、信頼してもらえる商品を提供し続けなければならない。その使命がある以上、誰かが『おかしい』と感じることがあったら、それは1回たりとも見逃してならない。」とも語る。

「そのための教育は繰り返し行ってきた。(株)愛知ヤクルト工場の社長に就任してから約3年、「なぜ『おかしい』と思った時にラインを止めなければならないのか?」という理由も含めて繰り返し教育を行い、「安全・安心の提供には妥協してはならない」「『おかしい』と思った製品を市場に流通させてはならない」という意識の浸透を図ってきた。最近では、少しでも「おかしい」と思ったら、即座にラインが止められるようになっている。市場流通後に製品回収をする様な事態も起こしていない。教育の成果があらわれ始めているのだと思う。ラインを止められるということは、全員が「(株)愛知ヤクルト工場としての品質に対する考え方」を理解していることのあらわれだと思う。」と語る。

そして「当社は、工場理念として「我々は品質至上主義に徹して、お客様に満足いただける商品を提供する」「我々は品質至上主義に徹して、『良い会社ですね』と言ってもらえるように仕事をする」ということを掲げている。「良い会社ですね」というのは、わかりやすく言えば、地元に住む家族に「自分は(株)愛知ヤクルト工場に入社したい」「自分の子供は(株)愛知ヤクルト工場に入社させたい」と思ってもらえる会社にする、ということである。」とも語った。




 

2008年10月号

◎プリマハム株式会社
総合衛生管理製造過程で構築した衛生管理を基盤に
加工から流通までグループ全体でISO22000認証取得


ハム・ソーセージ、食肉および加工食品の製造・販売を主業務とするプリマハム(株)(本社・東京都品川区東品川、貴納順二社長)は、2006年5月からグループ内の製造工場でISO22000認証取得にキックオフ。グループ内では段階的にISO22000の構築・運用・維持管理を進めており、一年次には5工場、二年次には8事業会社および12物流センターで認証を取得した。

プリマハム(株)執行役員の鮫島忠博氏(品質保証本部部長)は「ISO22000の取り組みは当社社長のトップダウンで推進している。社長は基本的な考えとして『ISOは企業経営の免許証のようなもの』という認識を持っている。まず、ISO14001認証取得をし、ISOの考え方を従業員に周知させた。その後、ISOの基本的考え方にたってISO22000を展開した。当社は経営理念に『商品と品質はプリマの命』と掲げており、最も優先すべき品質である『食品安全』を担保する手法としてISO22000が有効であると判断して取組みを決めた。すでに総合衛生管理製造過程を運用しているハム・ソーセージ工場であれば、比較的ISO22000の構築・運用はスムーズに行くのではないかと考えた。まず、それらの工場でISO22000認証を取得できれば、そこで得られた経験や情報が『(認証や承認は取得していないが)HACCPの考え方を理解できている工場』や『これからHACCPに取り組もうとしている工場』におけるISO22000の取り組みに活かされるのではないかと期待した。総合衛生管理製造過程の承認を取得している工場では、今後はISO22000と総合衛生管理製造過程の両方を運用していく。『総合衛生管理製造過程は政府の承認制度』『ISOは民間機関による認証の仕組み』という違いはあるが、いずれも企業にとってのメリットがある。双方の良い点を上手く取り入れていくことができれば、それだけ企業として成長していけると思う。」と語る。

ISO22000に取り組んだ効果として、鮫島氏は「苦情の質が間違いなく変わってきた。苦情の発生要因は、施設由来、原材料由来、作業者のワークマンシップ由来等に分類されるが、そのうちワークマンシップに由来する苦情は間違いなく減っている。これは、従事者一人ひとりのISO22000に対する意識が高まっている証(あかし)ではないか。ISO22000をしっかりと継続していけば、現場のコミュニケーションも良くなる。一人ひとりの作業に対する意識や技術が向上すれば、自ずと作業のバラツキも小さくなる。その状態が定着すれば、例えば些細なバラツキが見つかったときに『このバラツキの原因はどこにあるのだろう?』と疑問を持ち、互いに議論し合うようになる。そのようなコミュニケーションを取り合うことで、意識や技術はさらに向上する。食品製造業のような労働集約型の業態では、たった一人が作業の質を落とすだけで、それがそのまま全ロットの質にダイレクトに影響する。作業の質の維持・向上に、ISO22000が貢献してくれると期待している。ISOという仕組みは、全員で取り組まなければ上手くいかない。食品安全を確保するためには、トップからパートタイマーまで、一人ひとりに役割と責任がある。その意識が浸透してきたことは、ISO22000に取り組んで得られた大きな変化だと思う。」とも語る。




 

2008年9月号

◎日本ホワイトファーム(株)(本社・青森県)
生産農場でSQF1000、加工場でSQF2000認証取得

日本ハムグループの一員として、農畜産物(主に鶏肉)の育成・処理・加工および販売、肥料の製造および販売を主業務としている日本ホワイトファーム(株)(本社・青森県上北郡横浜町)は、知床食品工場(北海道網走市)、札幌食品工場(北海道厚真町)、東北食品工場(青森県横浜町)、宮崎食品工場(宮崎県日向市)の4つの鶏肉処理加工場を稼動しており、すべての加工場でSQF2000認証を取得している。また、各加工場に原材料(生鳥)を供給している4つの生産農場(知床生産部、札幌生産部、東北生産部、宮崎生産部)では、SQF1000認証を取得している。

同社品質保証室の小牧信男氏は、以下のように語る。「当時の経営トップからプラクティショナーに『勉強して絶対に合格しろ』との激励があったことを思い出します。このような経営トップの思い入れは、SQFシステムの導入・維持に欠かせないものです。

当時、結成されたHACCP委員会(後に「SQF委員会」と改称)はプラクティショナー1名を含む約10名での構成でしたが、ほとんどは専門トレーニングを受けているわけではありません。最初にスケジュールを作りますが、リードする側と日常業務を遂行する作業現場では、自ずとズレが生じることは仕方ありません。そこで、それをフォローする専門家チームを(SQF委員会とは別に)配置しました。専門家チームはアドバイスをしますが、(SQF委員会の仕事を)代わって行うことはご法度です。苦労しながらでもSQF委員会が構築しなければ、システムの維持が難しくなります。フロー図に基づく各工程での危害分析も重要です。専門知識を持ったSQF委員会メンバーが詳細に分析を行いますが、危害を正確に洗い出し、管理措置を設定できなければ、危害が次工程に持ち越され、かつ拡大する危険性があります。『現状で問題がないのだから』という考えと、論理的な理想形の間で、打開策を議論したのも事実です。

これらを解決してSQFシステムを維持できているのは、経営トップの強い意志が社員全員に示されており、それを信じてSQF委員会が活動できていること、専門家チームによるフォロー体制が構築できたこと、日本ハムグループの幅広いサポートがあったことなどによります。」

「また、最近は食品の安全・安心という言葉が頻繁に使われています。その一方で、生鮮食品にゼロリスクを求めることは困難であることも周知の事実です。『メーカーとして管理できること』『流通過程で行うべきこと』『消費者にお願いすること』をきっちり伝えることはリスクコミュニケーションです。生鮮食品は潜在的な微生物リスクを備えており、最終加熱調理まで殺菌工程はありません。そのため、リスクの拡大は保存方法と相関するため、関わりを持つすべての人に、応分の管理義務が発生します。当社は、一次生産者や全食品産業向けに特化して開発された品質管理システムであるSQF/HACCPシステム(SQF1000およびSQF2000)を維持し、改善し、第三者機関の審査を受けて国際認証を継続していきます。客観的評価を得ることで顧客満足に貢献することを安全・安心の根拠の一つと考えて邁進してまいります。」とも語る。




 

2008年8月号

◎美濃酪農農業協同組合連合会・北濃事業所(岐阜県)
地元で愛される安全・安心の「ひるがの」ブランド
〜ISO22000認証取得で全社的な衛生意識が高まる〜


牛乳、乳飲料、発酵乳、菓子類等の製造販売を主事業とする美濃酪農農業協同組合連合会(本所および東濃事業所=岐阜県恵那市長島町永田、北濃事業所=岐阜県美濃市生櫛)は、平成14年に東濃工場で厚生労働省の総合衛生管理製造過程の承認を取得、さらに本年5月15日には北濃事業所でISO22000認証を取得した。

美濃酪連は昭和37年に設立され、現在は総合農協2会員、専門農協1会員で構成されている。酪農戸数は平成18年度実績で87戸、1戸当たり飼育頭数平均40頭(計3465頭)、生乳実績は同年実績で2万3218トン。製品売上の構成は、平成18年度実績で生協42%、学乳16%、宅配4%、PB24%、その他14%となっている。

代表理事会長の山下氏は「ISO22000の認証取得にキックオフした時は、今日ほど食品関連の不祥事が頻発していなかった。しかし、食の安全・安心に対する社会的な要求が確実に高まってきたことや、生協やスーパーと今後も安定した取引を継続していくために組織として何が必要かを考え、前会長がISO22000に取り組むことを決断した。

乳・乳製品の業界では、ISO22000認証を取得したメーカーは、まだそれほど多くないと聞いている。「早い時期に国際規格を取得しました」とPRできることも、今後の効果の一つとして期待している。」と語り、「ISO22000を取得したというだけで、商品の価格が上げられるわけではないし、急に販売量が伸びるわけではない。しかし、消費者は食の安全・安心を強く求めている。ISO22000認証を取得したことは、食品企業として生き延びていくための一つの手段になると思う。当連合会は岐阜県内の約半数の酪農家と取引をしているが、飼料価格の高騰や環境対応など、生産者の方々も大変な苦労をしている。酪農家の戸数は年々減少傾向にあり、酪農という産業に“夢”を持ちにくい時代になっている。まずは、これ以上の酪農家が廃業することがないよう、お互いに協力し合っていきたい。

多くの生産者が飼料のNon-GMOに取り組んだり、「生乳鮮度重視牛乳」を生産するなど、消費者に安全・安心の牛乳をお届けするためにさまざまな取り組みが行われている。生産者の“酪農に対するこだわり”や、我々の“牛乳に対する思い”を、しっかりと消費者の皆様に届けていきたい。」とも語る。




 

2008年7月号

◎スターゼン(株) 松尾工場(千葉県)
全社的なSQF2000認証取得を展開するスターゼングループ
〜内部監査の仕組みを充実、安全・安心・高品質のハンバーグを提供〜


食肉の加工・輸入・販売、食肉製品・食品の製造・販売等を主業務とするスターゼン(株)(本社・東京都港区港南、秋山律代表取締役社長)は、安全・安心の商品を提供するために、4年前から全社的なSQF2000認証取得に取り組んでおり、すでに41事業所でSQF2000認証を取得している(2008年5月末現在)。

1998年にハンバーグ製造工場として設立した同社・松尾工場(千葉県山武市松尾町富士見台)は2007年2月にSQF2000認証を取得した。スターゼンでは、企業としての将来を見据えたとき、安全性確保・品質管理を徹底し、消費者が求める「安全・安心」の商品を提供することが、きわめて重要な課題であると考えている。そのため、全社的にSQF認証を取得する取り組みを進めている。第一段階として営業所、第二段階としてカット工場、第三段階として加工工場――と順次、認証取得に取り組んでいる。松尾工場は(第三段階の加工工場として)約1年の構築期間を経て認証を取得した。

松尾工場の佐久間修工場長は「何らかの第三者認証(ISOやSQFなど)を取得していなければ、大手の量販店やコンビニエンスストア、ファミリーレストランチェーン等と取引できない時代が来ていると思う。すでに『食の安心・安全』は社会的な要求になっている。そのような時代にあっては、社内で決められたチェックや検査に合格した商品しか出荷することはできない。

最近は『スターゼンではこのようなチェックや検査を行っています。SQF2000認証取得企業の責任として、すべてのチェックに合格した商品しか出荷できません』ときちんと説明できる体制になっている。また、そのような姿勢が、流通業者の皆さんにも理解してもらえるようになってきた。また『スターゼンはSQF2000認証を取得しているので信頼できる』と言ってくれるバイヤーが増えてきている。 これまでのバイヤーは、どちらかと言えば『価格』を優先している印象もあったが、中国製ギョウザの問題をきっかけに『安全・安心』という目に見えない要素が、正当に評価されるようになっていると感じる。『安ければいい』というのは消費者の要求ではなく、むしろメーカー側のエゴイズムだと思う。今後もSQF2000をしっかりと運用し、継続的改善を怠らず、安全で美味しい商品を、適正な価格でお届けしていきたい。」と語っている。




 

2008年6月号

◎JA全農ミートフーズ(株)・鳥栖パックセンター(佐賀県)
SQF2000で安全・安心・信頼の全農ブランドを支える
〜CCP(食品安全確保)とCQP(品質管理)で顧客満足を徹底追求〜


JA全農ミートフーズ(株)(本社・東京都品川区北品川、岩佐肇三代表取締役社長)は平成18年9月、全国農業協同組合連合会全国本部の食肉販売事業の事業移管を受けるとともに、全農ミート(株)と合併し、食肉販売事業を開始した。

同社では平成16年1月に鳥栖パックセンターでSQF2000認証を取得。以降、同社ではSQF2000の水平展開を進め、福岡パックセンター(同17年3月取得)、小牧パックセンター(同17年12月取得)、八千代パックセンター(同18年12月取得)、摂津プロセスセンター(同19年11月取得)もすでに認証を取得している。神奈川工場および広島パックセンターでも認証取得に向けた取り組みを開始しており、早期取得を目指している。

鳥栖パックセンターの従業員数は約100人(パート・アルバイト・派遣社員等を含む)。原材料として生の食肉(牛肉、豚肉、鶏肉、ミンチ肉など)を受け入れ、カットやスライスなどの加工を行い、プラスティックトレー等にパックして出荷している。

SQF2000のキックオフは平成15年5月、認証取得は翌年1月。SQF2000に取り組む前から、現場にはすでに作業手順書やマニュアル等があった。SQF2000の構築に際しては、既存の文書を(SQF2000の)規格要求事項と照らし合わせて、すでに存在する文書については見直したり、必要に応じて作り直した。また、文書化されていなかったものについては、新規に作成した。JA全農ミートフーズの安部美智尋氏は「苦労した成果として、現場の衛生意識は格段に向上した。『自分たちの工場はSQF2000の認証取得工場である』という事実は、従業員一人ひとりに与えられた“勲章”である。一人ひとりが“勲章”の重みを自覚していれば、自ずとルールを遵守するようになる。このような自覚が芽生えたことは、第三者認証を取得した効果の一つと言える。」とも語る。




 

2008年5月号

◎(株)フードサービストーワ(静岡県)
お客様のために真心こめた「手作りの味」を提供
〜ISO22000認証取得、安全・安心の“オンリーワン企業”を目指す〜


事業所給食、委託給食、幼稚園給食、各種仕出し弁当等の製造販売を主業務とする(株)フードサービストーワ(野嶋利章社長、本社・浜松市南区若林町)は2007年11月16日、本社工場とライスセンターの2工場でISO22000認証を取得した。複数工場でISO22000認証を同時に取得したのは、弁当・給食サービス業では初めての事例である。
 浜松市にある本社工場は、HACCP手法支援法の認定工場として2002年から稼働。2005年5月から認証取得に向けて準備を開始、(株)フーズデザインの加藤光夫氏の構築支援の下、ISO22000認証取得を実現した。衛生管理のソフト運用を徹底する一方で、盛付室にはソックチリングシステムを採用して、常時20℃以下の室温、クラス10万の空気清浄度を維持するなど、ハード・ソフトの両面から食の安全・安心を支えている。
 野嶋社長は「認証取得が目的だったわけではない。認証取得にふさわしい企業体質でなければ、認証を持っている意味がない。これからも安全・安心の弁当・給食を提供し続けるためには、絶えずPDCAサイクルを回し続けなければならない。ISOは継続的改善が何よりも重要であると思う。認証取得が当社の新たなスタートラインである」と語る。

 食品安全チームリーダーの松本幹一常務取締役は、ISO22000に取り組んだ効果として「現場の従業員の衛生意識が大きく変化した。ISO22000ではソフトの運用面が非常に重要であるが、現場の一人ひとりが、自分たちの作業について『なぜその作業手順を守らなければならないのか?』『なぜ作業記録を付けなければならないのか?』といったことについて考える習慣が定着した。また、従業員の認識や意識が格段にレベルアップに伴い記録付けの習慣も定着した。きちんと記録が残されることで、後から検証・監査ができるようになった。内部監査ができるようになったことも、ISO22000に取り組んだ大きな成果だと思う。内部監査を的確に行わなければ、ISO22000という仕組みは形骸化してしまう」とも語った。
 「真心をこめた手作りの味」というコンセプトを掲げ、「カット野菜や添加物を使用しない」というこだわり。「カット野菜を使用すれば人件費の削減につながるかもしれない。しかし、自社の管理が及ばない部分が増える。下処理に人件費を掛けてでも、すべての工程を自社の管理下で行いたいと考えている。また事業所給食や仕出し弁当では、添加物が使用されているかどうか、どのような添加物が使われているかは、ほとんど情報が与えられていない。少なくとも添加物を使用していなければ、当社の弁当・給食は安心して食べていただける、安全な食品ですと言い切ることはできる」(野嶋社長)と語る。




 

2008年4月号

◎宮島醤油(株)宇都宮工場(栃木県)
「安全性」は最優先される品質―伝統の技術とSQF2000で新時代に挑戦!
〜明治創業の調味料製造業、将来を見据えてSQF2000認証取得〜


醤油や味噌、つゆ、たれ、各種スープ、スパイスなど、一般消費者向け・業務用の調味料等を製造している宮島醤油(株)(本社・佐賀県唐津市船宮町、宮島清一社長)は2005年(平成17年)、宇都宮工場でSQF2000の認証を取得した。

同社の歴史は、1882年(明治15年)に唐津市で醤油・味噌の醸造蔵を建てたことに始まる。現在は自社ブランド商品だけでなく、業務用加工食品・調味料、OEM生産も請け負っており、国内有名企業の商品も多数取り扱っている。そのいずれの分野も「常にマーケットの未来を見つめ、ユーザーのニーズに基づく積極的な製品づくりを進めていく」という、同社の伝統の基本理念がしっかりと息づいている。

同社では「安全性」を最重要課題として認識し、本社工場、妙見工場(いずれも唐津市)、宇都宮工場の3工場すべてで、HACCPの考え方を取り入れた管理を実施している。さらに徹底した品質管理と安全性確保を実現するために、HACCPの安全性確保の考え方と、ISO9001の品質管理の考え方を取り入れた規格である「SQF2000」に取り組み、2005年に認証取得した。

宇都宮工場の川上文男工場長は、SQF2000に取り組んだ時の経緯について「(SQFに取り組む以前から)すでにHACCPを運用していたので、現場では基準書や手順書が整備されていた。それら既存の基準や書類を、SQF2000の規格要求事項に照らし合わせながら整理していった。まったく新しいシステムを構築したというよりは、むしろ『既存のシステムのレベルアップを図った』という印象の方が強い。現場の従業員も、新しいシステムを導入したことで混乱や困惑が生じることはなかった」と振り返る。

今後の展開については「当面の目標として、工場の増設や新設ができるレベルまで売上を伸ばしていきたい。そのためには、とにかく従業員教育が欠かせないし、品質管理とHACCPに磨きをかけることも重要な課題である。SQF2000システムを遵守し、積極的に継続的改善を図ることで、お客様に安心してOEMを任せてもらえるよう努力していく」と語る。さらに「日本の冷凍食品やレトルト食品の生産技術は、世界的に見てもきわめて高いレベルにある。今後も、宮島醤油の伝統の中で培った技術の進化を図り、さらに幅広いニーズに対応できる総合食品メーカーとして成長していきたい」とも語った。




 

2008年3月号

◎日本誠食(株)(大阪府)
ISO9001・ISO22000認証を取得した給食製造業
〜徹底した顧客第一主義で、着実に事業規模を拡大〜


業務用弁当・惣菜・ケータリング食材の製造販売等を主業務とする日本誠食(株)(本社・大阪市平野区、山田雅浩社長)は、平成19年11月にISO22000認証を取得した。同社では、平成18年3月にすでにISO9001認証を取得している。どちらの規格も審査登録機関はビューローベリタスジャパン(株)システム認証事業部(BVQI)。今後は、これら2つの規格を同時に運用することで、さらに高いレベルでの顧客満足の実現を目指していく。今春には環境マネジメントシステム(ISO14001)にも取り組む予定。
 同社の歴史は昭和38年、山田繁一氏が東大阪市に給食会社を設立したことに始まる。最初は300食規模だったそうだが、高度経済成長期の弁当・給食に対する需要も高まりの中、さまざまな創意工夫により着実に事業規模を拡大してきた。当時のエピソードとして、業界のタブーに挑戦した「夏場の冷や奴の提供」などが挙げられる。この「常にお客様が求めるものを提供したい」という徹底した顧客第一主義の精神は、会社設立から40年以上を経た現在でも、しっかりと受け継がれている。
 時代が昭和から平静に移るころ、同社は通常のメニューに加えて、曜日ごとに「選べるメニュー」を提供することを始めた。今でこそ「弁当のメニューは選べて当然」だが、当時としては斬新な挑戦だった。効果的にアウトソーシングを取り入れて問題点をクリア、徐々に地元の取引先も増え、ビジネスも軌道に乗った。「顧客ニーズを最優先する企業姿勢」「既存の概念に縛られない柔軟かつ自由な発想」「発想を具体化する高い技術力」が、さまざまな挑戦を可能にしてきた。平成4年に、山田雅浩氏が代表取締役に就任、工場の製造能力も日産1万5000食まで拡大した。平成8年には北大阪支店、同12年には八尾工場を開設した。
 「食品の提供は、消費者の命を預かる仕事であり、食品企業には、安全性確保を最優先事項として、顧客第一主義の実現に取り組む責務がある。企業が成長するためには、常に顧客満足に応え続けなければならない。」と語る山田雅浩社長。顧客第一主義の一環として、国内では学校給食や高年齢を対象とした給食、透析患者を対象とした制限食など、高い技術レベルを要する分野への進出も始めている。常にチャレンジを続ける日本誠食の今後の展開に期待が持たれる。




 

2008年2月号

◎(株)きのした(東京都)
数年先の将来を見据えてISO22000認証取得
〜JITシステムやコスト削減など、さまざまな仕組み企業の成長を目指す〜


菓子原材料となる各種パフの製造を主業務とする(株)きのした(木下勝代表取締役、本社・東京都足立区)は、昭和6年におこし種の製造を主業務とする「木下商店」として東京都荒川区で創業(創業者・木下松吉氏)、昭和39年に(株)木下商店として設立、平成18年には「puffoods factory! (株)きのした」に社名変更した。
 平成17年に竣工した「群馬“しっかり”工場」は、衛生管理・安全性確保を最優先に設計され、平成19年8月にはISO22000認証を取得した(審査登録機関はJIA-QAセンター)。食品工場としては珍しいネーミングには「食品企業としての責任を“しっかり”と全うする」という決意と、「お客様から『“しっかり”した会社』と評価されたい」という目標が込められている。
 木下勝世志専務取締役は、ISO22000に取り組んだ経緯について「食品企業である以上、食品安全の確保こそが最優先課題である。衛生管理の強化や、安全性の確保を実現するためのツールとしてHACCPの導入が不可欠と考えていた。すでに平成12年に本社と群馬工場でISO9001認証を取得していたが、『食品安全』という観点で見るとISO9001だけでは“弱さ”を感じることもあったことから、ソフト面を効果的・効率的に強化するツールの一つとしてISO22000認証を取得することにした。ただし、認証取得が目的だったわけではない。会社としてさらに成長するためには衛生管理・安全性確保のさらなる向上が不可欠であり、これらをコアコンピタンスとするためのプロセスの一つとしてISO22000の認証取得に取り組んだ。ISO22000の認証取得に伴い、ISO9001は返上することにした。今後は、食品安全マネジメントシステムの中に、品質マネジメントの仕組みも組み込む形で運用していきたいと考えている」と語る。

 きのしたでは、ISO22000だけではなく、JIT(Just in Time)システムの導入や廃棄物の削減、原材料ロスの低減、環境問題への対応など、いくつかの新しい仕組みの構築を並行して進めている。木下専務は今後について「新しい仕組みを導入すれば、それだけ新たなコストは発生する。しかも、仕組みが現場に定着し、成果として実を結ぶまでには時間もかかる。導入した仕組みが、すぐに利益として跳ね返ってくることは、なかなか期待しにくい。正しいアプローチで取り組めば、今取り組んでいることは、必ず数年後に利益として返ってくる。」とも語っている。




 

2008年1月号

◎(株)千興ファーム(熊本県)
創業200有余年、伝統の馬刺し専門店
SQF2000認証取得工場で衛生的で新鮮な「鮮馬刺し」を提供
〜飼養段階、と畜、加工まで一貫してHACCP管理〜


馬刺しの加工を主業務とする(株)千興ファーム(熊本県佐世保上益城郡御船町、菅逸司社長)は、昭和62年(1987年)に「千興ファーム協業組合」として設立。平成16年(2004年)に(株)千興ファームに社名変更。同社の歴史は、寛政元年(1789年)創業の馬刺し専門店「菅乃屋」にまで遡る。200年以上の歴史の中で「菅乃屋ブランド」を築き上げてきた。平成14年5月にSQF2000認証とSGS HACCP認証を取得。「美味しい」「安全」「安心」そして「健康」な馬刺しの提供に努めている。生食用食肉でSQF2000を認証取得したのは、千興ファームが世界初である。
 品質保証部の内田雄治次長は「食品安全を確保するための仕組みを構築するにあたって『HACCPで安全性を担保し、ISOで仕組みの継続的改善ができれば理想的』と考えていた。SQF2000はその理想に合致した。ただし、SQF認証の取得が目的ではない。今後もSQFの仕組みを最大限に活用できるよう、絶えず継続的改善に努めなければならない」と語る。そのためには、内部監査によって「慣れ」を排除することが大切で「常に新鮮な気持で聞いてもらえなければ、教育・訓練の効果は半減する。慣れさせないためには、気付かせることが大切である。気付かせるためには、従業員から嫌われても構わないと、腹をくくって、常に現場で指摘し続けなければならない」とも語る。

   馬肉専門レストランも経営しており、現在、直営のレストランは熊本市内2店舗と西原村に1店舗。イメージの異なる3店舗は、いずれも連日県内外の客で賑わっている。今後は、福岡や東京での直営レストラン出店やフランチャイズ店の出店なども視野に入れている。また、観光・ビジネスによる地元店の拡充や全国有名デパート、大型スーパーなど既存店以外の新規開拓にも積極的に取り組んでおり、熊本名産「鮮馬刺し」の全国への普及拡大を目指している。最近では、沖縄の量販店や、全国展開の大手外食チェーンなどにも出荷しているという。
 「馬刺し」は、肥後の領主加藤清正の時代に「薬膳料理」として始まったといわれ、熊本県では長い歴史のある伝統の「文化」である。まだまだ可能性を秘めた、魅力的な食材あることから、千興ファームでは北海道に新しく牧場を設けるなど、頭数を増やす方向で取り組んでいる。千興ファームが業界トップクラスの衛生管理に取り組み、世界標準のSQF規格で安全・安心の馬刺し製造に取り組んでいることは、畜産業界の活性化につながるだけでなく、地場ブランドの保護・活性化にもつながるものと期待される。



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