月刊HACCP シリーズ伸びる企業の安全確保・品質管理

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2014年12月号

特別解説
恒例「GFSIジャパン・フード・セーフティ・デー2014」開催
国際的な有識者が最新のトピックス「食品偽装(フード・フラウド)」などをテーマに講演!

The Consumer Goods Forum主催による恒例行事「ジャパン・フード・セーフティ・デー」(JAPAN Food Safety Day 2014)が10月30日、東京・港区のTHE GRAND HALL品川において開催された。今年で第7回を迎える本イベントは、今回は「One For All, All for One〜食品安全を最大化するために〜」をメインテーマに掲げ、GFSI(Global Food Safety Initiative、世界食品安全イニシアチブ)のベンチマークスキームがもたらす効果をはじめ、食品偽装(Food Fraud)や食品防御(Food Defense)などのトピック、官民協働がもたらす食品安全、アジアの食品安全の近況など、バラエティに富んだ内容で構成された。今回のプログラムは以下のとおりである(敬称略)。

〔GFSI最新情報〕
▽「GFSIの成果とこれから」ジェンク・グロル(イオン(株))、イブ・レイ(ダノン)▽「GFSIの日本での成果とこれから〜グローバル・マーケット・プログラムへの挑戦〜」徳屋邦彦((合)西友)、菅谷則雄((株)石井大一商店)吉澤恒治(メトロキャッシュアンドキャリージャパン(株))

〔フードフラウド(食品偽装)&フードディフェンス〕
▽「食品偽装シンクタンクについて」ぺトラ・ウィッセンバーグ(ダノン)▽「食品偽装の効果的な検出および抑止戦略」ミッシェル・リー(ユーロフィンズ)▽「テクノロジーができること」中村豪志(日立造船(株))▽「日本における食品防御の現状と課題」今村知明(奈良県立医科大学)▽「食品企業におけるリスクコミュニケーション」西澤真理子(リテラジャパン)

〔官民協働がもたらす食品安全〕
▽「厚生労働省におけるHACCP推進の取り組み」滝本浩司(厚生労働省)▽「食品の国際標準戦略の展開の方向性」横田美香(農林水産省)▽「輸出に向けた鳥取県の取り組み」木嶋哲人(鳥取県市場開拓局)

〔食品産業振興と食品安全〕
▽「帯広畜産大学でのFSSC22000認証取得手順および将来の展望」村上文朗(帯広畜産大学)▽「国際的に戦う日本農業の実現」松本武((株)ファーム・アライアンス・マネジメント)▽「FSSC22000の活用とコミュニケーション」古川哲也((株)高コ海産)▽「SQF認証取得への取り組みと運用」北島進((株)ヤマタネ)

〔世界の食品安全〕
▽「アセアンの食品安全」ベブ・ポストマ(Food Industry Asia)▽「中国の食品安全」ツァオティアン・ワン(COFCOコーポレーション(中糧集団有限公司))▽「韓国の食品安全」サンヒョン・パク(ロッテ中央研究所)▽「GFSI理事メンバーからのメッセージ」ジョン・カーター(メトロキャッシュアンドキャリー)

※本号では「フードフラウド(食品偽装)&フードディフェンス」セッションにおけるペトラ・ウィッセンバーグ氏(ダノン)とミッシェル・リー氏(ユーロフィンズ)の講演の要旨を中心に紹介している。



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2014年11月号

◎(株)合食・函館工場(北海道)
大日本水産会のHACCP認定をベースにISO22000認証を取得・運用
〜取引先の要求に対し、これまで以上にしっかり対応できる仕組みが構築できた〜

水産商社・加工食品メーカーの(株)合食(砂川雄一代表取締役、神戸本社:兵庫県神戸市兵庫区中之島1‐1‐1、東京本社:東京都中央区日本橋小網町6‐7)は、昭和23年に(株)兵庫県合同食品として創業(昭和44年に現社名の(株)合食に社名変更)。現在は、主に(1)水産事業部、(2)おつまみ事業部、(3)水産加工事業部、(4)物流事業部の4つの事業を展開している。また、最近では、水産物に限らず食全般の「高い調達力」や「斬新な商品開発力」の強化を図るとともに、世界中に食のネットワーク拠点を広げた「食ビジネス」の展開を目指している。

同社は、北海道の函館工場、青森県の八戸工場、広島県の呉工場の3工場を運営しており、すべての工場においてISO22000認証を取得している(審査登録機関は(一財)日本科学技術連盟審査登録センター)。そのうち函館工場では、水産加工品(主に乾燥珍味:さきいか、あたりめ)と惣菜加工品(鮭フレーク、イカの塩辛など)を製造している。

同社・加工水産事業部加工水産製造部長の四戸正光執行役員は、ISO22000に取り組んだきっかけや構築の経緯について、「当社は北海道・函館工場、青森県・八戸工場、広島県・呉工場の3工場を運営しており、最初に八戸工場でISO22000認証を取得しました。ISO22000認証を取得した背景の一つとしては、八戸工場で大手食品メーカーの商品を製造していたことが挙げられます。そのメーカーでは、2008年に発生した中国産冷凍ギョウザにメタミドホスが混入していた事件をきっかけに、自社工場でISO22000認証取得の取り組みを始めました。その際、取引先の工場にもISO22000などの認証取得に取り組むよう要請がありました。当社としても、以前からFDA(米国食品医薬品局)のHACCPに取り組んでおり、大日本水産会によるHACCP認定の取得準備をしていましたが、食の安全・安心を揺るがすような事件(先ほど挙げた中国産冷凍ギョウザの問題など)が起きたことをきっかけに、「HACCPに取り組むだけではなく、ISO22000など食品安全マネジメントシステムの国際規格に取り組む必要があるのではないか?」と考えるようになりました。その後、八戸工場の(ISO22000の)取り組みを水平展開する形で、呉工場および函館工場でもISO22000認証を取得しました」と語る。

また、ISO22000構築時、あるいは現在の運用時の経験について、技術本部品質保証部函館グループの松田匡人グループ長は「さまざまな課題に直面していますが、特に『人の教育』が難しいと感じています。食品工場に勤務している人は、当然、『衛生管理が大切だ』ということは理解しています。しかしながら、ISO22000の(それぞれの規格要求事項の)内容や目的などについて十分に理解できているとはいえません。一つひとつの作業について、『なぜ、この作業が必要なのか?』という“根拠”の部分を、もっと教育していかなければならないと感じています」と語る。

また、松田氏は「『品質管理の向上』と『作業効率の向上』は、どうしても相反する部分があるので、品質管理部門のスタッフが現場に入り、現場と意見を交わしながら(HACCPやISO22000以外にも)さまざまな活動を行うことで、『品質の向上を図る』と『作業効率を上げる』の両立を目指して取り組んでいるところです」とも語った。



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2014年10月号

◎道南食品(株)(北海道)
明治グループの品質管理基準をベースにFSSC22000認証取得
〜将来的には「北海道らしさ」が感じられる自社ブランドの強化・拡充も視野に!〜

キャラメル・チョコレートの製造・販売を主業務とする道南食品(株)の社史は、戦前の大正8年に「函館菓子製造(株)」として設立したことに始まる。その後、昭和11年に明治製菓・函館工場として発足し、明治製菓の北海道・東北地区における主力工場としての役割を担ってきた。昭和55年からは、(株)明治の100%出資関連会社として、現在の「道南食品」として、キャラメル・チョコレートの製造を行ってきた。

平成9年にはチョコレート棟を新築、さらに平成23年にはキャラメル棟を新設するなど、製造設備の充実を図り、現在はサイコロキャラメル、クリームキャラメル、チョコレート製品などを製造。明治ブランド商品だけではなく、明治グループの優れた技術支援を基に、「北海道の企業」としての特徴も活かした自社ブランド製品の開発・生産にも努めている。また、「北海道を元気にしよう!」の合言葉の下、北海道内の企業((株)宇治園、(株)もりもと(菓子工房もりもと)など)との連携の下、「北海道ならではのコラボレーション商品」も製造している。

同社は本年5月、FSSC22000認証を取得した。同社の石原良太郎社長は、このたびの認証取得の効果や影響について「最近のバイヤーは皆さん、『取引先(サプライヤー)が“安全・安心の商品”を出荷できているか?』ということを、非常に気にかけています。バイヤーが『信頼できるサプライヤーかどうか?』ということを確認・評価する際に、『(FSSC22000などの)国際規格を取得している』ということは、大きな信頼感につながっているようです。実際、認証取得以降、当社を訪問された方々の反応が、非常に良くなったと感じています」「もちろん、品質管理や安全性確保の充実を図ったり、認証取得に取り組めば、それだけコストもかかるので、その分は商品の価格に反映せざるを得ません。しかし、そうした事情については、バイヤーの皆さんも理解して、評価してくださっています。当社の場合は、FSSC22000に取り組んで以降、新規の取引先も増えています。そうした意味では、(FSSC22000に)投資したコストは、確実に収益として反映されています。ちなみに、道南地区でFSSC22000認証を取得している企業は、まだ10施設くらいだそうです。そういう意味でも、地元では『先進的な取り組み』であり、当社の90年近い歴史の中でもエポックメイキングといえる挑戦になったと思います。地元新聞からの取材も受けるなど、多くの関係者に関心も持っていただいているようです」と語る。

認証取得の経緯や体験について、同社・企画グループ長の木村史宏氏は「(明治グループでは)製造工場が遵守しなければならない品質管理のルールが定められているので、以前から、そのルールに準じた管理は徹底していました。そうした以前からの取り組みによって、FSSC22000のPRP(Prerequisite Program、前提条件プログラム)に該当する部分は、すでに詳細に決められていました。そのため、『PRPをイチから組み立てる』という状況ではなかったので、構築に向けた作業は進めやすかったと思います。はじめは『既存の仕組み』と『ISO/TS22002-1の規格要求事項』を比較して、そのギャップ(不足している部分など)を補う作業を行いました。ただし、(PRPの部分については、ある程度できていましたが)HACCPの部分についてはまったくの素人でした。そのため、まずは『HACCPを工場の共通言語にする』というレベルに持っていくまでが大変でしたね」と振り返る。

また、石原社長は、今後の事業展望について「希望をいえば、『北海道の土産物』をもっと生産できるようになりたいです。今後、営業活動をさらに展開していく上で、『美味しい』だけではなく、『安全・安心である』ということも、消費者にPRする際の重要なポイントになります。このたびのFSSC22000認証取得が、『安全』『安心』を伝えるための効果的なツールとなってくれることに期待しています」と語っている。



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2014年9月号

特別解説
食品取扱い施設のペストコントロールで考慮すべき昆虫とは?
(「食肉加工施設で問題になる昆虫類とその基本的対策」イカリ消毒(株)CLT研究所/尾野一雄氏)

食品取扱い施設において、ペストコントロールによって「昆虫やそ族のいない工場環境」を維持することは「永遠の課題」の一つである。ペストコントロールでは、まず工場環境の「現状調査」を行い、工場内に存在するペストの種類や数をデータとして把握する必要がある。そして、現状調査の結果を分析し、侵入経路や発生源を特定し、対策を講じる(工場内への侵入やまん延がないよう効果的なコントロール方法を検討する)ことになる。

食品企業が、外部の専門業者にペストコントロール業務を委託するケースは多いが、外部委託を活用する場合においても、「食品施設の運用者が担うべき役割」と「PCOが担うべき役割」がある。食品施設の運用者は、自分たちの施設に侵入・まん延する可能性があるペスト(有害小動物)について最低限の知識(ペストの種類や生態、基本的な予防対策など)を有しておくべきであろう。

近年、食品の衛生管理に関する要求はどんどん高まっている。それに伴い昆虫類の異物混入防止にも力を入れなくてはいけない状況にある。本号では、ペストコントロールにおいて豊富な現場実績を有するイカリ消毒(株)CLT研究所の尾野一雄氏に、「食肉加工施設で問題になる昆虫類とその基本的対策」をテーマとした解説記事をご寄稿いただいた。

今回は、著者が実際に食肉加工施設で経験した内容を基に、食肉加工施設で問題になる昆虫類の種類と特徴、最低限行っておくべき対策について解説していただいた。同氏は「少しでも残さが残ると、食肉は腐敗し、さらに昆虫類を誘引してしまう」「(対策を講じる際には、施設の)構造や外周環境によって、工場ごとに異なる昆虫類の問題が起こる可能性があり、その場合には工場に合った対策が必要である。しかしながら、まずは基本的な対策を実施することが、昆虫類に混入防止のための第一歩である」と述べている。



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2014年8月号

◎錦町農産加工(株)(山口県)
日本の伝統食『こんにゃく』を妥協のない品質管理・安全確保で提供
〜ISO9001-HACCPからISO22000、さらにFSSC22000へ進化〜

ナチュラルミネラルウォーター、こんにゃく製品などの設計・開発、製造および販売などを主業務とする錦町農産加工(株)は、製品の品質管理および安全性確保にも妥協なく取り組んでいる。その一環として、2002年(平成14年)にはISO9001-HACCP認証を取得した。その後、2005年には、当時発行した直後であるISO22000認証を取得。さらに2013年12月13日付でFSSC22000認証を取得した。FSSC22000の登録活動範囲は「清涼飲料水(ナチュラルミネラルウォーター、水素水等)、こんにゃく製品、ところてんおよびくずきりの設計・開発および製造」。

同社は1905年(明治38年)にこんにゃく玉・こんにゃく粉問屋である『廣兼民五郎商店』として創業(1983年(昭和58年)に錦町農産加工(株)設立)。1984年より、商品の安定化を図るため、原料のこんにゃく芋の栽培を開始。1994年(平成6年)に本社および本社工場を新築するとともに、ミネラルウォーター『にしきのおいしい水』の販売を開始した(2001年にナチュラルミネラルウォーター工場を竣工)。

山口県・錦町は古くからこんにゃく芋栽培が盛んに行われてきた地域で、同社では伝統的な製法・技法を守りながらも、常に新しい商品の開発に挑戦し続けてきた。こんにゃく芋は、国内の自社農場や契約農家で、植え付けから収穫まで3〜4年をかけて、手間隙を惜しまずに栽培された『生芋』を使用。ミネラルウォーターやこんにゃく、ところてん、くずきりで使用する水は、全国名水百選「寂地川」を源流の一つとする錦川水系から汲み上げた地下天然水を使用している。「にしきのおいしい水」は2010年にモンドセレクション金賞を受賞するなど、注目を集めている。

同社の廣兼一昭代表取締役社長は、これまで10年以上にわたり、食品安全規格の認証取得や運用、維持管理に取り組んできた経緯について、「ISO9001-HACCPに取り組み始める以前は、まだHACCPは(今ほど)一般的ではありませんでした。しかしながら、私は当時から、経営に携わる立場として『ISO9001(品質管理)もHACCP(安全性確保)も取り組んで当たり前』という考えを持っていました(私は、ISO9001-HACCPやISO22000の認証取得に取り組み始めた頃は、常務取締役の役職でした)。そこで認証取得に取り組むことを決め、HACCP・AJVC(危害分析重要管理点対策共同事業センター)に現状調査を依頼しました。結果として『ISO9001やHACCPの認証取得に必要な管理はできている』と判断し、キックオフから約6カ月で認証取得できました」と振り返る。

また、HACCPやISO、FSSC22000に取り組んできた効果については、「(ISO9001-HACCPに取り組み始めた)当時は、現場では『新しい仕組みを運用しなければならない』『何をすればよいか、よくわからない』という戸惑いもありましたが、今となれば『記録をつけるのは当たり前』『ISOの考え方は当たり前』という感覚になっています。『安全・安心の製品を提供するために必要な仕組み』の大部分は、ISO9001-HACCPを構築した時に、ほぼできあがったように思います。ISO9001-HACCP構築の際に『何を、どこまで管理しなければならないか?』『どのような手順でやらなければならないか?』『その科学的根拠は何か?』ということを整理しました。ISO22000やFSSC22000に移行したところで、それが大きく変わったとは思いません」「私は以前から『ISOやHACCPは取り組んで当たり前』と言い続けてきましたが、最近、ようやく現場が『ISOの本質』に目を向けるようになってきた――と感じています。そうした意味では、ようやく『スタートライン』に立ったのかもしれません。よく『ISOは経営者のための仕組み』といわれますが、まさにそのとおりだと思います。ISOが動くようになってきてからは、経営者があれこれ言わなくても、現場が率先して改善に取り組むようになっています。今になって振り返れば『(ISOやHACCPに)取り組んできて良かった』という思いしかありません」と語る。



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2014年7月号

◎アース環境サービス(株)、東洋製罐グループ・ホールディングス(株)(東京都)
特別解説
DNAチップを用いたカビ検査システム「ジェノゲート」をバージョンアップ!
〜衛生検査・衛生点検を現場改善に効果的に活かすための考え方とは〜

アース環境サービス(株)は、2008年より製品の微生物汚染源を迅速に推定できるシステム「Rapicom(ラピコム)」を実用化し、多くの食品工場などで導入実績を上げている(Rapicom は、Rapidly Detect a Contaminated Origin by Microfloraの略。「ミクロフローラ解析により汚染源を迅速に見つける」という意味)。同システムは、埼玉県産業技術総合センター、コージンバイオ(株)と共同開発されたもので、これまでに衛生指標菌としての大腸菌群、変敗の原因菌としての乳酸菌群、耐熱性菌群を対象とした検出培地が開発され、実用化されてきた。Rapicomシステムは、対象細菌群ごとに4種類の培地を1セットとする専用培地キットで、製品や原材料はもとより、施設内のさまざまな箇所でガーゼによるふき取り検査を実施し、増菌培養した後、専用培地で接種培養することによって、施設内の各所において、検査対象とする微生物が「どのようなフローラパターン(構成比)で存在しているのか?」を把握できる。さらに、フローラパターンを統計的に解析する(製品のフローラパターンと近似している箇所はどこか?)ことで、製品の汚染源や汚染経路を短時間で推定したり、その結果をもとに工場内の「汚染マップ」を作成することができる。

また、東洋製罐グループ・ホールディングス(株)では、DNAチップを利用した遺伝子検査システム「GENOGATE(ジェノゲート)」を開発しており、このほどカビを対象としたその検査の新しいバージョン(Ver.2.3)が開発された。「ジェノゲート」システムは、カビの性質ごとに遺伝子配列が異なることを利用して、複数のカビを一括に分類・検出できるシステムで、アース環境サービスでは「短時間・低コスト・高精度で、複数のカビを性質ごとに分類して一括に分類・検出できる」という特徴を有していることから、食品取扱い施設に対してインスペクション(検査)を行う際に、スクリーニング手法の一つとして採用している。

このたび、「ジェノゲート」カビ検査用のバージョンアップを図った背景について、アース環境サービスの猪野毅氏(総合分析センター長)は「アース環境サービスでは、多くの食品工場や医薬品工場、化粧品工場などから衛生検査や衛生点検・指導(インスペクション)の依頼を受けています。さまざまな業種・業態の工場でインスペクションを行っていますが、最近はカビの問題に困っている事業所が増えてきました。以前から、カビ検査の手法の一つとして『ジェノゲート』カビ検査用を活用していましたが、前バージョンの『ジェノゲート』カビ検査用は主に“ドライな環境”を対象とした設計になっており、検出対象とするカビのカテゴリーは、好乾性や耐乾性といった乾性カビ、カビ毒産生カビ、空気中に多く存在するカビなどが中心でした。しかしながら、食品工場はドライ環境ばかりではありません。むしろ、ウェット環境の工場の方が多いため、複数のお客様から「自分たちの事業所で問題となっているカビが、『ジェノゲート』の対象カビに含まれていない」といった声が寄せられていました。我々としても「お客様の要望に応えるようなバージョンアップを図らなければならない」という使命感を持っていたので、「検出対象のカテゴリーを拡大する必要がある」ということは考えていました」と説明する。

また、東洋製罐グループ・ホールディングスの田辺卓氏(新規事業推進室・GENOGATEリーダー)は「このたびのバージョンアップでは、そうしたお客様からのご意見やご要望などを参考にしました。ただし、自然界に存在するカビの種類は膨大で、すべての種類のカビを『ジェノゲート』カビ検査用として検出対象にはできません。また、DNAチップに搭載できるカビの数にも限界があります。そこで、アース環境サービスと「技術交流会」という場を設けて、『食品でよく問題・クレームとなるカビは何か』『食品工場で考慮しなければならないカビは何か?』『食品工場で“検出対象としたい”という要望が多いカビは何か?』といった観点から、新バージョンで対象とするカビの種類の優先順位をつけていきました」と説明する。

このたびの主なバージョンアップされた点は、

  1. カテゴリーを13から32に増やし、対象カビは363種から637種に拡大
  2. 湿度特性はそのままで、分類を2段階表記に変更
  3. 前バージョンの好乾性カビU類・耐乾性カビU類・好湿性W類を細分化した
  4. 12カテゴリーを新規開発(耐熱性カビ、好冷性カビなどを追加)
  5. Byssochlamys fulva(耐乾性、耐熱性を有するカビ)も対象に追加

――など。

本号では、「ジェノゲート」の開発の経緯や、改良された「ジェノゲート」の特徴、およびアース環境サービスが「ジェノゲート」や「ラピコム」を活用して食品取扱い現場のインスペクションを行う際の考え方や着眼点についてうかがった。



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2014年6月号

◎(株)ヤマタネ・岩槻精米工場(埼玉県)
CCPで「食品安全」、CQPで「品質」を徹底管理
SQF認証取得でさらなる顧客満足向上を目指す精米工場

米の卸売販売などを主業務とする(株)ヤマタネ(本社・東京都江東区、山﨑元裕社長)は、大正13年(1924年)に回米問屋「山﨑種二商店」として創業した、約90年の歴史を有する企業である。

同社は、現在、昭和63年に竣工した東京精米工場と、平成13年に竣工した岩槻精米工場の2カ所で精米業務を行っている。品質管理に関しては平成11年にISO9001認証を取得。さらに、東京精米工場では2月17日付、岩槻精米工場では本年2月24日付で、SQF認証を取得した。

岩槻精米工場におけるSQF認証取得のきっかけや経緯について、同社・食品本部生産部長の北島進部長は「(認証取得に取り組んだ)きっかけの一つとしては、ある取引先との間で『GFSI承認規格のSQF認証を取得しなければ、今後の取引を継続することが難しくなる』という可能性が生じてきたことが挙げられます。当社は平成11年に、すでに食品本部においてISO9001認証を取得していたので、『ISO9001を土台に、HACCPを組み立てて上乗せしていけばよいのではないか』というイメージを持って取り組みました。(実際のSQF構築に際しては)以前から、取引先の監査などを通じて、HACCPの考え方は取り入れていたので、新たにCQP(SQFに特有の品質管理の考え方/Critical Quality Point、重要品質点)の概念を取り入れたり、より強固な検証体制を構築するなどの取り組みを行いました」と語る。

SQF構築に際しての苦労としては「文書の作成や管理での苦労がありました。まずは(SQF認証取得のために)必要な文書が何であるかを整理し、当社の現状を鑑みて『すでにできている文書』『まだできていない文書』を明確にしていきました。その際、ISO9001の文書やマニュアルを、そのまま使えたわけではありません。(ISO9001の文書は)SQFで使うにはフィットしない部分もあったので、かなり作り直しました。また、新たに前提条件プログラムやHACCPに関する文書やマニュアルを整備しなければならなかったので、その作業には時間がかかりました」と振り返る。最近、社会的問題となりつつある「フードディフェンス」(食品防御、食品テロ対策)の構築に関しては、例えば「米を袋詰めする直前」の工程など、「米がむき出しになる箇所」を“特に警戒するべき箇所”と認識して、施設内の何カ所に監視カメラを設置したとのこと。その一方で、北島氏は「フードディフェンスに関しては『どれだけ対策を講じても、きりがない』『悪意の第三者を完璧に防ぐのは、きわめて難しい』という思いもあります。どれだけ監視カメラを増設したところで、それだけで『フードディフェンスが堅牢になった』とは言い切れないと思います」「工場で働く者の立場でいえば、現場を“性悪説的な見方”で見られるのは、正直、不本意な気持ちがあるものです。とりわけ我々のように少人数で運営している工場では、他人を疑いながら仕事をするのは、本来は望ましい状況ではないでしょう。現場の不平や不満をなくすためには、『いかに現場の声を聞くか?』『いかにコミュニケーションを充実させるか?』を考えることも重要なことではないでしょうか」と述べる。

SQFの運用に関する今後の課題については「継続的改善を続けて、SQFを形骸化させないこと」と「(認証を取得したことを)もっと“営業ツール”として効果的に活用すること」を挙げている。「現場が一体となってSQF認証を取得したので、会社全体として、もっと『SQF認証を取得した意義や価値』について理解や認識を共有し、今後の効果的なPRにつなげていければと考えています」(北島氏)とのこと。



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2014年5月号

◎三幸食品工業(株)(広島県)
創業80年の飲料製造工場がISO22000・FSSC22000認証取得
既存のハード・ソフトを最大限に活かし、受託製造・自社ブランドの「安全・安心」を徹底追求

三幸食品工業(株)(所在地・広島県東広島市安芸津町、佐藤陽吾社長)は、1933年(昭和8年)に「佐藤缶詰所」として創業以来、80年に及ぶ歴史を有する(会社設立は昭和22年)。創業当初は、地元・安芸津町の名産品あるミカンやビワなどを用いた缶詰製造を主業務していた。その後、主業務を飲料製造へとシフトしていき、昭和49年には上島珈琲(株)と技術提携して、缶コーヒーの製造を開始した。2000年(平成12年)には酒類リキュール免許を取得してビン入りおよび缶入りリキュールの製造を開始、2002年には酒類スピリッツ免許を取得して缶入りスピリッツ製品の製造を開始。アルコール飲料は現在、三幸食品工業にとって主力商品の一つとなっている。

現在の取扱い品目はコーヒー類、炭酸飲料、茶系飲料、果実飲料、乳性飲料、リキュール、スピリッツ、炭酸入り日本酒など多岐にわたる。同社は、主に大手飲料メーカーや大手流通の受託製造を請け負っている企業である。最近では自社ブランド製品の開発・販売にも乗り出しており、本年3月には新商品として広島県産レモンを使用した「瀬戸内檸檬チューハイ」、ワールドカップやオリンピックの開催に合わせ、ブラジルで親しまれているガラナのエキスを使用した「ゴールデンガラナドリンク」の販売を開始したところである。

同社は2012年1月にISO22000認証、2014年1月にはFSSC22000認証を取得した(審査登録機関はISO22000・FSSC22000ともに(一財)日本品質保証機構(JQA))、登録範囲は「清涼飲料水、酒類飲料の設計・開発および製造」)。ISO22000・FSSC22000の認証取得に取り組んだ目的や経緯について、同社の佐藤陽吾社長は「(認証取得の)最大の目的は、取引先や消費者を含めた、すべてのお客様に「安全・安心の飲料」を提供することです。ISO22000やFSSC2000といった国際規格の認証取得は、製品の安全性を確保するだけでなく、お客様に「安心」を提供し、信頼される企業としてのブランドを確立する基盤となると考えています(もちろん、経営者の視点でいえば、『安全・安心』を実現した上で、売上を伸ばすことや利益を確保することも考えていかなければなりませんが)。2012年にISO22000、2014年にFSSC22000認証を取得しましたが、それだけで『安全・安心』を提供できるとは思っていません。実際問題、昨年末にはISO22000認証を取得していた工場の製品から農薬が検出されるという事件が起きました。この事件の報道を聞いた時、我々としては『認証を取得するだけではいけない。ISOは常に進化させていかなければいけない』ということを強く感じました。例えば、当社はFSSC22000認証を取得しているので、フードディフェンスの仕組みは構築できていましたが、改めて『食品テロを防ぐためにはどうしたらよいか?』ということを考え直す機会になりました」と説明する。

FSSC22000構築の経緯について、製造技術チームの青木鉄夫氏は「『FSSC22000はコストをかけなくても構築できる』を合い言葉に取り組みました。実際、ハード面に関しては、それほど大幅な改修などは行っていません。むしろ『ハード面に過剰なコストはかけずに、5Sを中心としたソフト運用で衛生管理を徹底する』という考え方です。ハード面での変更があったのは、主にフードディフェンスの部分ですが、これはPLの観点から必要な資源の投下であったと思われます」と振り返る。

今後の課題については、佐藤社長は「お客様に『安全・安心』の飲料を提供するためには、やはりFSSC22000の継続的改善が大切なことでしょう。FSSC22000に『これで終わり』というゴールはありませんし、お客様のニーズも絶えず変化していくでしょう。ISO22000やFSSC22000などの『仕組み』は、常に進化させていかなければなりません。そして、仕組みを進化させるためには、仕組みを動かす我々自身も、絶えず進化していかなければならない――そのことを強く感じています」と語る。



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2014年4月号

◎佐藤長八商事(株)(山形屋)幕張事業所 「サラム フーズ プロセッシング」(千葉県)
「安全・安心の食品」「アレルギーの心配がない食品」を提供したい――
「ハラール食」の専用加工施設を竣工、FSSC22000認証取得も進行中

近年、世界規模でのイスラム教徒の人口規模の大きさ、海外から来日するイスラム教徒の人口増加などを背景に、食品製造や飲食店経営などの関係者の間で「ハラール食」への関心が急速に高まりつつある。直近の話題としては、2020年のオリンピック・パラリンピックの開催地が東京都に決定したこともあり、国内の宿泊施設や飲食店の関係者などにとって「ハラール対応」は喫緊の課題となることが予測される。

佐藤長八商事(株)(通称:山形屋、本社・東京都台東区、佐藤敏彦社長)は昨年1月より「ハラール食」を提供するための専用施設として「サラム フーズ プロセッシング」を稼働している。同施設は、以前は「ホテルスプリングス幕張」(山形屋グループが経営するホテル)のセントラルキッチンであったが、このほど「ハラール食」専用の加工施設として全面改装が施された。施設名の「サラム(SALAM)」は、アラビア語で「平安」「平和」という意味のほか、「安全・安心」という意味もある。

同施設が設立された経緯や現状について、佐藤長八商事・企画経営グループの町田頼弘氏は「昨今、食に関する問題や事件が、絶えることなく世間を騒がしています。また、それ以前から『アレルギー体質の子供が多くなってきている』ということもいわれています。当社の社長(佐藤敏彦氏)は、こうした状況を見るたびに『昔は、このような状況ではなかった。食事は“自然食”が主流で、食品添加物なども使用されていなかった。食の安全・安心を確保するために、我々にできることは何だろうか?』と考えていました。そのようなことを考えていた時、『イスラム圏の旅行者が来日した際、安心して食べられる食事がない』ということを知り、『ハラール食』の存在も知りました。ハラール食に関心を持って調べていくと、ハラール食とは『食品添加物を極力使用しない“自然食”のことであり、それは(日本人はもとより)世界中の誰もが安心して食べられる食品である』と確信するに至りました。世間では“ハラール食=豚肉やアルコールを摂取しない食事”という認識を持っている方も多いようですが、それは正確な理解ではありません。我々は“ハラール食=誰もが食べられる『安全・安心な食』”という認識を持っています。そこで、かつてセントラルキッチンであった施設を全面的に改装して、ハラール食の専門加工施設を竣工することに踏み切りました。大規模な改装ではありましたが、山形屋グループとしての「志」(こころざし)が凝縮された施設であると思っています」と説明する。なお、同社では現在、「安全・安心な食=ハラール食」を提供することを目的として、FSSC22000認証の取得を目指して取り組んでいるところである。

町田氏は今後の販路の可能性について「自ずと海外向けの商品が多くなってくるとは思います。ただし、海外においてハラール食は、必ずしも特別なものではありません。そこで差別化になるのが“Made in Japan”ということだと思います。例えば、魚や野菜もハラール食になり得ます。『ハラール認証を取得した“築地の魚”』といった商品があれば、海外では歓迎されるのではないでしょうか」と海外輸出の可能性について語るとともに、「ハラール食は『イスラム法上で食べられる食品』のことですが、これは“自然食”や“オーガニック”といった最近の食のトレンドにも合致していると思います。ハラールはイスラム教徒の専用の食事ではありません。『安心・安全の食』や「アレルギー体質の方でも安心して食べられる食』を求めている消費者の方にも、当社のような商品があることを知っていただきたいですね」と国内需要の可能性についても語っている。



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2014年3月号

◎清水冷販(株)(静岡県)
◎日本HACCPトレーニングセンター(東京都)
FSSC22000認証取得を目指し、HACCPに取り組む水産加工施設
〜中小規模施設におけるHACCP維持管理のカギは「経営者のコミットメント」!〜

本稿は日本HACCPトレーニングセンター(浦上弘理事長、事務局所在地・東京都新宿区)が1月28日に東京・中野区のサンプラザで開催した第22回「HACCPフォローアップセミナー」において、同センターに登録されたリード・インストラクター(HACCP指導者)であるFarm to Forkの前田亜妃子代表が「水産加工施設におけるHACCP導入事例」と題して行った講演内容の要旨である。

講演では、静岡県でマグロ加工などを主業務とする清水冷販(株)(岩崎倫明代表取締役社長、所在地・静岡県静岡市)におけるHACCP導入に係る取り組み事例が紹介された。

清水冷販(株)は2工場体制(第1工場および第2工場)で、主にマグロの加工品(ロイン、柵、スライス、切落し、ネギトロ)や冷凍品などを取り扱っている。HACCPの取り組みについては、2012年12月〜13年10月にかけて農林水産省の平成24年度補助事業「食品産業品質管理・信頼性向上支援事業」を活用しており、最終目標としては「GFSIベンチマーク規格の認証取得(具体的にはFSSC22000認証の取得)ができるレベルまでの食品安全マネジメントシステムの構築」ということを掲げている(現在は、支援途中で新工場を立ち上げる計画が浮上し、新工場の稼働後、新しいメンバーを含めた形で支援を続行することとなっている)。

前田氏によると、同社のHACCP導入支援に際しては、まず経営者自ら「顧客に対して安全で、信頼の得られるマグロ加工品の提供、関係法令の遵守、従業員の食品安全に関する教育訓練の強化、従業員一丸になってクレームをゼロにしていく」という企業としての方針を明確に掲げた上で、前提条件プログラムやHACCPプログラムの構築などが進められた。主な取り組みの経緯は以下のとおりである。

〔前提条件プログラムの構築〕

工場で実施している前提条件プログラムの内容を洗い出し、コーデックス委員会の「食品衛生の一般原則」(General Principles of Food Hygiene, CAC/RCP 1-1969)に基づいて、「どのような管理が足りないのか?」「足りない場合は、どのように管理していくか?」を検討していった。前提条件プログラムに関する手順化および記録の必要性については、それぞれの管理項目ごとにISO/TS22002-1の規格要求事項、またはSQFコードのモジュール11(食品安全の基礎:食品製品の加工処理の適正製造規範)の規格要求事項を参考に検討していった。

〔HACCPプログラムの構築〕

8人で食品安全チームの結成をする中で、5人がHACCPに関する外部研修会(3日間コース)を受講し、HACCPに関する知識を習得した。そのため、製品特性の記述や用途、そしてハザード分析、HACCPプランの構築は、順調に実施することができた。

〔文書化および記録づけ〕

前提条件プログラムおよびHACCPプログラムを維持していく中で重要なことは、「ルールの文書化により、従事者が統一された方法で管理をすること」と「『決められたルールを順守した』という記録、および『ルールが滞りなく実施されたことを確認した』という検証の記録」である。当初、清水冷飯には「特定の作業は、特定の従事者が実施している」という状況があり、「ルールの文書化」や「衛生管理に関する記録づけ」は、ほとんどなされていなかった。しかし、各作業の手順が明確になったことで、「適切な方法や頻度で作業を実施しているか?」という確認ができるようになった。

〔従事者の教育・訓練〕

清水冷飯の工場には、長年従事している人が多く、当初は「管理側が意図する方法でないやり方」「各人が習慣化したやり方」で管理を行っている現状も散見された。しかしながら、経営者自らHACCPの構築・運用・維持管理に対するコミットメントを示したことで、従事者の衛生意識に変化が見られるようになった。

前田氏は、今後の課題として

  1. 今回構築したシステムの良好な維持
  2. 新工場での食品安全チームの再結成
  3. (新工場を稼働させた時の)社長からの再度のコミットメント
  4. 現手順と新工場でのオペレーションの摺り合わせ
  5. それを基にした従事者の再教育および訓練
  6. ISO/TS22002-1要求事項との適合性
  7. 検証の実施確認およびその評価
  8. 有効な内部監査の実施

――などを挙げている。



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2014年2月号

◎紅梅食品工業(株)栃木工場(栃木県)
ISO22000に準じた仕組みで「モスバーガー」にハンバーガーパティを供給
〜モスフードサービスの監査事項も活かし、常に「衛生管理の継続的改善」を目指す!〜

ハンバーガーパティ、ソースなどの製造を主業務とする紅梅食品工業(株)(本社所在地・東京都練馬区石神井町、堀口友宏代表取締役社長)は、大手ファストフードチェーン「モスバーガー」を運営する(株)モスフードサービス(本社・東京都品川区大崎、櫻田厚代表取締役社長)にハンバーガーパティやソースなどを供給しているサプライヤー企業の一つである。紅梅食品工業は、モスフードサービスが設立された昭和47年からハンバーガーパティやミートソースの供給を開始している。

同社は昭和23年に「紅梅食品工業(有)」として東京都練馬区石神井町に設立、当時は果実ジャムの製造を主業務としていた(昭和40年より「紅梅食品工業」(株)に商号変更)。その後、昭和25年からピーナッツクリーム、同35年からあんみつ、同36年から羊かんの製造などを開始。昭和51年からは埼玉県・所沢工場でソースの製造、同54年からは栃木県・今市工場でハンバーガーパティの製造を開始。現在は、栃木県内で3工場を運営している(所沢工場は平成3年に閉鎖)。

紅梅食品工業の堀口悦宏専務取締役は、工場における衛生管理の取り組みについて「モスフードサービスさんがISO22000認証を取得しているので、当社の工場でもISO22000に準じた食品安全の仕組みを構築し、運用しています。ISO22000の構築や運用の仕方について、いろいろなことを教わりながら、改善や試行錯誤を重ねているところです。食品メーカーとして『絶対にクレームを出さない』という目標がありますが、それを実現するためには、現場でさまざまな工夫やアイデアを出していくことが必要です。自分たちだけで考えるのではなく、モスフードサービスさんとも一緒に考えることで、常に『もっと良いやり方はないか?』と模索しています」と語るとともに、「モスバーガー用ハンバーガーパティを製造する工場は、昭和63年から稼働しています。そのため、ハード面では多少の老朽化が見られるので、施設・設備に由来する異物が混入しないよう、メンテナンスには気を遣っています(例えば、気になる箇所があれば、速やかに補修するようにしています)」と語った。

また、モスフードサービスのCSR推進室・品質保証グループの永井康貴チーフリーダーは、紅梅食品工業における食品安全・品質管理の取り組みについて「当社では、いくつかの食品企業に食材の供給を委託していますが、紅梅食品工業さんは、その中でも『しっかりとした衛生管理・品質管理』が徹底されている会社の一つです。しっかりした衛生管理が行き届いているので、食中毒の原因となり得る「微生物学的なハザード」については、ほとんど問題ないと考えています。実際に工場監査で指摘する項目としては、微生物に関する指摘よりも、異物混入の可能性を考慮した指摘の方が多いです。その指摘も、起こる可能性がごくごく低いような、『“万が一”に備えて指摘しておく』というものです」と述べている。

今後の事業展開に関する考えとして、紅梅食品工業・堀口氏は「やはり『クレームをゼロにしたい』ということが課題です。また、これまで製造できなかった品目を製造できるようにして、新しい事業に挑んでみたいですね。お客様の要望はどんどん変化していくでしょうから、そうした変化にきちんと対応していけるよう準備を進めていきたいです」「海外に製造拠点や委託先を置くことも考えていきたいです。単に『業績を伸ばしたい』という目的だけではありません。自分たちが勤務する工場以外にも生産拠点があれば、当社のスタッフが、その工場を見にいくことができます。他の工場を見ることによって、スタッフの視野や知見はますます広がり、多彩なアイデアが出せるようになると期待できます。そうした人材育成の意味でも、海外進出は目指していきたいです」と述べている。



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2014年1月号

◎マリンハーベストジャパン(株)成田工場(千葉県)
独自のグローバル規定に則り、日本工場においてもSQF認証取得
〜サーモン養殖・加工の世界企業における食品安全・品質管理への取り組み〜

ノルウェーを拠点に養殖サーモンや養殖加工サーモンの加工販売などを主業務とする「マリンハーベスト社」は1954年に創立。その後、2006年に、Marine Harvest N.V. ,Panfish ASA、Fjord Seafood ASAの3社が合併した、新たな「マリンハーベストグループ」として生まれ変わった。同グループは、世界6カ国(ノルウェー、カナダ、チリ、スコットランド、アイルランド、フェロー諸島)に生産拠点、12カ国に加工・販売拠点を持つ、世界最大規模の養殖会社である。日本では、1995年にマリンハーベストジャパン(株)(本社・東京都中央区築地、チャールズ・シン・チ・ウー代表取締役)が設立された。当初はアトランティックサーモンの流通・販売を手掛けていたが、その後、日本の消費者のニーズに応えた加工ができるよう、成田工場と関西工場を竣工した。

マリンハーベストグループでは、グループ全体として企業理念や品質管理方針などが明確に規定されており、世界各地のグループ会社がそれを遵守している。品質管理方針については、(1)食の安全、(2)食の品質、(3)健やかな魚の成長のために、(4)環境への責任、(5)社会的責任、(6)質の保証――という6つの「戦略的領域」から構成される「Qmarine」という概念が示されている。Qmarineが示すとおり、マリンハーベストグループにとって、安全性確保および品質管理はきわめて重要視されている。その方針を受けて、現在は「加工施設ではGFSI承認規格を取得すること」という方針を打ち出している。この方針を受けて、成田工場は本年(2013年)、SQF認証を取得した(審査登録機関はテュフズードジャパン(株))。来年には関西工場でもSQF認証を取得できるよう準備を進めているところである。

SQF構築時の経緯や苦労について、同社品質管理スーパーバイザーの吉岡哲氏は、「HACCPだけを運用している頃は、『CCPの管理』に集中していればよかったのですが、SQFを取得してからは、CCPの管理だけでなく、CQP(Critical Quality Point、重要品質点)の管理も行わなければなりません。そのため、CQP管理のための知識や意識を身につけてもらうための教育・訓練の仕組みも必要でした。そうしたSQFを運用するための『組織作り』には苦労がありました」「また、文書の作成や整理にも苦労はありました。当工場には、すでに大日本水産会のHACCP認証を取得する際に作成した文書がありました。そのため、それらをSQF関連文書のベースとして使うことができたので、多少は(文書作成に係る)作業負担は軽減できたと思います。しかし、『大日本水産会のHACCP認証に基づく文書』から『SQF規格に基づく文書』へ移行させたり、(これら2つの異なる文書の)融合を図るのは、なかなかの困難を伴いました。現在も、まだブラッシュアップしている最中――という段階です。基本的には『小さな会社なので、できるだけ(SQFの仕組みも)コンパクトにまとめよう』という考え方で、作業を進めています」と振り返る。

また、今後の課題などについて、同氏は「SQFについては、まだ運用を始めたばかりなので、改善したい課題は数多くあります。例えば、先ほど述べたように、『以前の大日本水産会のHACCP文書』と『SQF規格に基づく文書』の間で、もっと整合性をとっていく必要などがあります。また、現在は(成田工場の経験を基に)関西工場でもSQFの構築を進めています。関西工場でSQFのブラッシュアップを図ることは、必然的に成田工場のブラッシュアップを図ることにもつながります。今後は、成田工場と関西工場の風通しをさらに良くして、緊密なコミュニケーションを図ることで、お互いに良い工場にしていきたいと思っています」と語っている。



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