月刊HACCP シリーズ伸びる企業の安全確保・品質管理

■鶏卵肉情報センター > 月刊HACCPトップ > シリーズ 伸びる企業の安全確保・品質管理 > 現在地

2016年12月号

◎丸西産業(株)
日量2万パックのカットフルーツで産地と消費者を結ぶ
HACCPに基づく現場パトロールの徹底で継続的改善

創業明治10年(1877年)、肥料、農薬、飼料の販売、農産物流通、さらにはカットフルーツ工場を運営する丸西産業(株)(本社・長野県飯田市、山下大輔社長)。平成10年に開設したカットフルーツ工場「TASPASS」(タスパス)は、大手青果流通会社の指定工場で、「味、新鮮、共生」にこだわり、HACCPに基づく衛生管理体制を構築、現場パトロールなどを徹底し、安全性の確保、品質の向上に努めている。

飼肥料、農薬の販売からレタスなどの農産物の流通など幅広く事業展開する丸西産業(株)が平成10年に開設したカットフルーツ工場「TASPASS」(タスパス)は長野県下伊那郡高森町に位置し、以前、漬物工場だったところを改築し、2013年3月から現在の場所で操業。商品は関東、中京、関西、北陸のスーパーなど広範囲に販売されている。一方、タスパスを指定工場とした大手青果流通会社は生産地でのGAP(適正農業規範)や加工場でのHACCPシステムの実践で長年の経験を有し、国内において生産委託をする場合には、これらの規範、システムの導入・運用を要求している。

大手青果流通会社はタスパスに対して、まずは一般的衛生管理プログラム、いわゆるPRPの整理を行ってもらうことにし、すでに場内で実施されている衛生に関する作業ルールはどんなものがあって、それはどこに位置づけられるのかクリアにした。その次に危害要因分析を実施。カットパイナップルなどの工程はシンプルで、受け入れた原材料のパイナップルを殺菌してカットし、容器に詰めてラベルを貼り、金属探知機を通して保管、出荷するという流れだが、その中で原料の洗浄や金属探知機、ラベルの管理などをCCPに設定し、是正措置などを決めた。

丸西産業ではもともと取引先の要請や指導もあって詳細なチェックシートをもとにしたパトロール(管理巡回)が実施され、指摘箇所はその都度修正されることで製造現場の衛生レベルを維持されていた。そのため青果流通会社は、そのパトロールの結果を月ごとにまとめ、どこにルール違反や基準レベルからの逸脱があったのかを明らかにしてもらうことにした。そしてこれを半年振り返って、繰り返されるルール違反や逸脱はないかを確認してもらい、半年ごとのまとめとして、関係者で問題を明らかにし、どうしたら繰り返されないようになるか知恵を絞ってもらったという。

タスパスで加工するパイナップルなどは大手青果流通会社を通じて納入されるが、スイカなどは地元や九州などの契約農家で生産されている。加工される青果物は果物を中心に約20種類。最近ではきゅうりを生産する地元の契約農家がその施設を使って生産しているベビーリーフも流通させている。手作業が非常に多い中で、作業効率をより高めるため、ラインごとにチームを編成し、どの商品をどれくらいの時間で完成させるかを事前に決めて作業を行うようにしている。

従業員の通常労働時間は6〜15時で、日量約2万パックを生産し、商品は関東一円から関西地区、中部・東海地区、北陸地区のスーパーやコンビニに供給されている。かつて企業給食や関東の病院給食などにも供給していたが、スーパーやコンビニとの取引が増加するにつれ、配送が煩雑になってきたため、3年前に現在の場所に工場を移転した段階で給食向けは止め、スーパーやコンビニに特化しているという。

丸西産業の関連会社である(株)フレック丸西では農産センター(長野県飯田市清水松尾)を運営、農業生産法人を組織し、レタスの栽培などを行い、生産された野菜の出荷・販売を行っている。農産センターでは生産農家の高齢化もあり、農場経営の管理も行っている。生産された野菜は、フレック丸西、生産者、百貨店に入っている青果会社、国による出資で2015年10月から稼働しているカット野菜工場にも供給されている。

タスパスから排出される果物の皮などの残さは、先述のように地元でブランド豚「幻豚」を飼育している養豚農家などに引き取られており、養豚場から出る堆肥は丸西産業の肥料部門が買い取り販売。その堆肥を使うことで、味、品質の優れた野菜や果物が生産されるという。見事な循環型農業のスタイルが確立されていることも特筆すべき点である。


2016年12月号のお申し込み・お問い合せはこちらから

<<BACK  

2016年11月号

◎(株)南日本フーズ(鹿児島県)
工場移転計画を機に旧工場でFSSC 22000を自主運用、新工場で認証取得
〜旧工場でFSSC 22000の運用経験を蓄積、規格の「実効性のある運用」を指向したカット野菜工場〜

(株)南日本フーズ(所在地・鹿児島市谷山港、小川邦夫社長)は、平成9年にカット野菜の製造・販売を主業務(主にゴボウの加工)とする会社として、鹿児島市紫原で設立された(当時の社名は(有)南日本フーズ)。その後、平成17年に鹿児島市中山町に本社並びに社屋を移転。さらに、昨年11月にはFSSC 22000の認証取得を視野に、現住所である鹿児島市谷山港の新社屋に移転した。原料となるゴボウは地元・鹿児島県を中心に鹿児島経済連や農協、生産法人と連携し、平成19年からは契約栽培を行っている。

同社は本年6月30日、FSSC 22000認証を取得した(認証登録の範囲は「カット野菜の製造」で、洗いゴボウ専用のカット工場としては世界初の認証取得事例といわれている。審査登録機関は(株)日本環境認証機構(JACO))。同社の小川邦夫社長はISO 22000やFSSC 22000に取り組んだ背景について「当社のゴボウは、おおよそ業務用が4割、小売用(一般消費者向け)が6割の比率となっています。小売用を大手スーパーなどに信頼して買っていただくには、工程管理や品質管理の考え方を取り入れた管理をしていることを説明できなければなりません。また、九州では最近、地場スーパーに統合などの動きが見られていますが、こうしたスーパー側の変化への対応を考えた時、『FSSC 22000などの国際規格を取得していることは、営業ツールの一つとして有効ではないか』と期待しました」と語る。

同社では、新工場への移転計画が立ち上がった時点で、FSSC 22000の認証取得を目指すことを決断。しかしながら、「きちんとFSSC 22000を運用できる状態で、新工場を動かしたい」という考えから、すでに移転が決まっていた鹿児島市中山町の工場(以下、旧工場)において、FSSC 22000の構築・運用・維持管理をスタートさせた。その後、昨年11月に鹿児島市谷山港の工場(以下、新工場)に移転後、改めて「新工場のハード・ソフトに即したFSSC 22000」を再構築。実際に新工場でのFSSC 22000の運用期間を経て、このたびの認証取得に至った。

新工場でのFSSC 22000構築時の苦労として、品質管理室の橋口和博部長は「(旧工場でもFSSC 22000の仕組みを構築していたが)新工場への移転後、旧工場で作成した見取り図や動線図、一つひとつの作業マニュアルなど、すべてを作り直さなければなりませんでした。場合によっては、管理基準の見直しもしなければなりませんでした。そうした意味では、旧工場と新工場でそれぞれFSSC 22000を構築したともいえるので、二重の苦労はありました」、小川竜一副社長は「日常の作業と並行してFSSC 22000の構築・運用を進めなければならなかったので、従業員への水平展開、落とし込みには苦労しました」と振り返る。

今後の新古工場でのFSSC 22000の運用について、小川竜一副社長は「ISO 22000やFSSC 22000の認証を取得することが目的ではありません。大切なことは規格の『本質』を理解することです。その点を肝に銘じておかなければ、継続的改善を重ねるにつれて『システム』と『現場(現場の改善)』がうまくかみ合わなくなってきて、やがてはシステムがうまく機能しなくなってくる恐れがあります」と指摘する。また、小川邦夫社長は「これからFSSC 22000を運用していく中で、さまざまな苦労に直面するかもしれません。しかし、その一方で従業員には『国際規格の認証を取得した』『国際規格を運用している』という自信や誇りも芽生えてくることでしょう。『FSSC 22000認証を取得したから、今年は売上が伸びる』という安直な考えはありませんが、運用を続けていく過程で認証取得の効果が徐々にあらわれてくればよいと思っています」と語った。


2016年11月号のお申し込み・お問い合せはこちらから

<<BACK  

2016年10月号

◎西日本ベストパッカー(株)(鹿児島県)
衛生管理と生産性を追求した最新鋭のと畜・食肉加工施設でFSSC22000を運用
〜安全・安心・高品質の豚肉を提供、
≪鹿児島ブランド≫の価値をさらに高めたい!〜

西日本ベストパッカー(株)(鹿児島県いちき串木野市、辻真二社長)は、1990年にプリマハム(株)鹿児島工場(と場併設)の加工処理部門を分社化する形で「九州ベストパッカー(株)」として設立。その後、2001年に四国ベストパッカー(株)と合併した際に、現在の社名(西日本ベストパッカー(株))に変更。操業開始から55周年を迎えた2015年4月に係留場・と畜場・食肉処理加工場(肉豚のと畜・カット)で構成される新工場を竣工した。

新工場では、生産能力や生産性の向上が図られるとともに、衛生管理や環境対策の面でも最大限の配慮を払った設計思想が取り入れられた。新工場の基本コンセプトとしては、主に(1) 衛生度の高い施設・設備の実現、(2) 生産性が高く効率的なシステムの導入、(3) 動物福祉を考慮した設備の導入、(4) 積極的な環境対策――の4点が掲げられている。

同社の代表取締役社長の辻真二社長はFSSC22000の認証取得に取り組んだきっかけについて「『食の安全・安心』に対する社会の要求が高まってきたことを受けて、取引先からの要求も厳しくなってきていることもあり、HACCP認証の取得に取り組むことは自然な流れでした。また、プリマハムグループとしても、すでにいくつかの工場がFSSC22000に取り組んでいます(ISO22000からFSSC22000に移行した工場もあります)。そうした状況も考慮に入れた結果、当社としても、新工場の稼働を契機にFSSC22000認証取得を目指すことにしました」と振り返る。

また、FSSC22000の構築の経緯について、川畑利法工場長は「新工場は、各作業室が隔壁で区切られており、各作業室の温度管理も徹底されています。また、必要に応じて差圧管理もされるなど、HACCPの運用がしやすい設計になっています。人や物の動線も、交差汚染が起こりにくいように構築されています。さらに加えて、以前の向上において、SOPやSSOPもある程度は構築できていましたし、AIBシステムを参考にした衛生管理も推進していました。5S委員会を中心に、以前から5Sパトロールの取り組みも実施していました。そうした背景があるので、FSSC22000の構築に際しては『今やっている活動や、既存の文書や記録などを、ISO22000やISO/TS2202-1の規格要求事項に当てはめていく』という形で進めることができました」と語る。その一方で、「ただし、ラインの人にとってはISOで使っている用語に馴染みがありませんでした。難しい専門用語も使わなくてはならないので、はじめのうちは戸惑いもありました。そうした意味では、教育の部分で苦労はありました。また、『どこをCCPやOPRPにするか?』という点については、かなりの議論がありました」と、構築時の苦労についても語った。

今後の課題や抱負について、辻社長は「これまでの当社は『食肉をカットするだけの工場』でした。しかし、できれば『もうひと手間かけた新しい商品』を出せるようになっていきたいです。その一つとして『産地パック』(スライスした肉などを、ガス置換包装や真空包装し、チルドや冷凍で出荷する商品)という商品にトライしています」「オリジナルブランドの商品にも取り組んでいきたいです。例えば、鹿児島県には『鹿児島黒豚』や『鹿児島もち豚』『ハーフバークシャー』といったユニークな豚を取り扱うこともできます。こうしたユニークな豚の可能性を生かすことで、当社の価値を高めることはもちろん、『畜産県としての鹿児島』の価値も高めたい――という思いも持っています」と語った。


2016年10月号のお申し込み・お問い合せはこちらから

<<BACK  

2016年9月号

◎ハナマル食品(株)(大分県)
過疎化に悩む国東半島を「豊後の姫はも」で活性化!
〜工場従業員7人の小規模企業が、工場稼働から1年弱でFSSC22000認証取得〜

大分県沿岸の周防灘や伊予灘は「良質のハモの宝庫」として知られる地域で、中津市から佐伯市に至るほぼ県内全域で水揚げされている。

その「大分のハモ」をプロトン凍結機と呼ばれる急速冷凍システムを用いて、鮮度を落とすことなく提供しているのが、ハナマル食品(株)である。ちなみに、プロトン凍結機とは「磁束」「電磁波」「冷気」の3つを組み合わせることで氷の結晶を小さくし、食品の細胞破壊を防ぐ凍結技術で、これにより解凍時のドリップが大幅に抑えられ、食材のうま味もしっかりと維持することができる。なお、同社が提供するハモは「姫はも」ブランドと命名されている。

同社は本年3月、(一財)日本規格協会(通称JSA)よりFSSC22000認証登録を授与された。工場の実働従業員数は花畑社長を含めて7人という少人数で、しかも工場の稼働開始当時は従業員も「食品工場の初心者」「水産加工の初心者」「食品衛生の初心者」しかいなかった。しかし、社長の強力なリーダーシップと全従業員が一丸となった努力により、取り組み開始から1年弱で認証取得を実現した。

大分県の国東地域は現在、過疎化が進行している地域として、国土交通省の半島振興対策実施地域として指定されている。ハナマル食品は県の誘致企業として、約2年前に設立され、約1年前から工場を稼働させた。同社のFSSC22000認証取得までの経緯について、花畑祐二社長は「会社を設立した時点で、何らかの第三者認証の取得を目指すことは決めていました。しかし、私も含めて社員は、誰も食品工場で勤務した経験がなく、いわば『食品加工の素人』『水産加工の素人』の集まりでした。そこで、食品業界の関係者に話をうかがったところ、『国際的に信頼性のある第三者認証を取得することで、取引先からの信頼度が上がるので、営業力の向上にもつながる』『今のところ水産加工分野でFSSC22000認証を取得している企業は、全国的に見ても少ないし、九州では初の取り組みになるかもしれない』ということでした。そこで、工場を竣工する前にはFSSC22000に取り組むことを決めました」と振り返る。また、その一方で、「将来的には工場の従業員は20〜30人規模に増やしたいと考えています。しかし、人数が多い状態で教育・訓練をするのは、なかなか大変なことです。それならば『人数が少ないうちに、まずは万全の仕組みを構築した方がよいのではないか』といったことも考えました」と将来設計も語っている。

また、同氏はFSSC22000の今後の課題について、「維持管理において緊張感が緩んでしまうのが最も危険です。認証を取得したことによる達成感は感じていません。今後も緊張感を切らすことなく、改善をやり続けることが重要です」と継続的改善の重要性を強調。その上で「衛生管理のレベルアップ」と「生産性の向上」の両立を目指すこと、「姫はも」ブランドの浸透を含めた地域振興に貢献したい意向なども語ってくれた。

厚生労働省による将来的なHACCP義務化を見据えた施策が展開されている状況下、少人数の呼工場がFSSC22000認証をベースに「食の安全・安心」を追求している取り組み事例は、多くの食品工場の参考になるのではないだろうか。


2016年9月号のお申し込み・お問い合せはこちらから

<<BACK  

2016年8月号

◎(株)江戸清・横浜本社工場(神奈川県)
食肉加工・中華総菜メーカーがISO22000認証取得
〜創業明治27年、横浜中華街で人気の「元祖・ブタまん」メーカーの挑戦〜

横浜中華街で高い人気を誇る「元祖・ブタまん」などで知られる(株)江戸清(本社・神奈川県横浜市、高橋伸昌社長)は、2013年に横浜本社工場、翌年には千葉工場においてISO22000認証を取得した(審査登録機関は(株)日本環境認証機構(通称JACO))。ちなみに、同社ではISO22000に取り組む以前に、すでに2006年に環境マネジメントシステム規格であるISO14001認証を取得している(本年6月に2015年版に更新)。直営店舗として、中華街に「中華街本店」「中華街大通り店」「中華街関帝廟通り店」「江戸清・りーろん中華街市場通り店」の4店舗を運営しているが、これらの店舗でもISO14001認証を取得している。

同社の高橋伸昌社長は「当社は、以前から大手の食肉加工メーカーと取引をしているので、HACCPへの取り組みは、早い時期から考えていました。また、昭和40年代から製パン業界との取引があり、当時から(製パン業界の)品質管理や衛生管理の手法は見せてもらっていました。製パン業界では、当時から金属異物の混入を予防するために金属検出機を導入しています。当時、食肉の一次加工業者の間では『豚肉では抗生物質を注射する際、折れた注射針が残ることがある。豚肉に注射針が残存するのは一般的なことなので、(豚肉に)金属検出機をかけても意味はない』といった認識がありました。今でこそ食肉加工工場が金属検出機を設置するのは当たり前のようになっていますが、当社は業界に先駆けて、いち早く金属検出機を設置しました。異物対策には非常に敏感に取り組んでおり、すでにX線異物検出機も導入しています」と振り返る。

ISO22000構築時の苦労について、品質保証部の本多一弘部長は「長い会社の歴史がある中で、HACCPの土台となる一般衛生管理の部分はかなりできあがっていました。ただ、そうした既存の取り組みを、ISO22000という規格に沿って体系立てて構築する作業は必要でした。そのため、ISO22000の構築に際して重要視したのは、(ハード面よりも)むしろ『継続的に運用できる仕組みとして定着を図ること』でした」と語る。また、ISO222000に取り組んだメリットについて、本多氏は「第三者の審査があるので、客観的な評価をしてもらえます。自分たちが『普段からきちんと管理している』と思っていても、『気づかないうちに“風景化”してしまっている』ということはあり得ます。それらを不適合として指摘してもらうことは、我々にとって重要な“気づき”でもあります。不適合をもらうことは、決して“管理の失敗”という意味ではありません。むしろ『これで会社がさらに良くなる』『会社がさらに発展するための基盤となる』と前向きに捉えています」とも語っている。

高橋社長は将来に向けて「製品のクオリティを上げるには、社員のレベルアップが欠かせません。私は、モノ作りにおいて最も大切なこととして『倫理』と『道徳』があると考えています。食品安全や衛生管理においても、倫理・道徳が問われる場面はあります。今後の課題の一つとして、倫理・道徳を身につけるための教育をすること、そして一人ひとりが正しい倫理・道徳に基づいて『正しい行い』を実行できるよう後押しをすることが挙げられると思います」と語った。


2016年8月号のお申し込み・お問い合せはこちらから

<<BACK  

2016年7月号

◎(株)今村商店・千歳工場(北海道)
炭酸飲料・果汁飲料の製造工場が
北海道HACCP認証をベースにFSSC22000へステップアップ

(株)今村商店(今村孝夫代表、本社所在地・神戸市灘区大石南町、1949年創業)は、飲料水事業や一升瓶を中心に新瓶洗瓶など容器の販売を主業務とする会社である。今村商店・千歳工場(工場所在地・北海道千歳市上長都)は1990年6月に操業を開始。複数の大手飲料メーカーの受託製造を請け負っており、現在はPETボトルの炭酸飲料、リターナブル瓶の果汁飲料などを製造している。

同社は2014年12月に「北海道HACCP自主衛生管理認証制度」(以下「北海道HACCP」)の認証を取得(北海道HACCPについては別項参照)。さらに、2015年9月にはFSSC22000認証を取得した。審査登録機関は(株)日本環境認証機構(JACO)。

同社・品質管理課の郷路正隆課長は、北海道HACCPの認証取得に取り組んだきっかけについて「当時、当工場が第三者に示すことができる認証はJAS認証しかありませんでした。そのため、『何らかの第三者認証があれば、自信を持って、客観的に安全・安心を説明できるのに』という思いはありました。また、第三者認証に取り組むことは、(安全・安心の確保だけでなく)自社の取り組みを対外的にPRしたり、品質の向上や従業員の衛生意識の向上など、工場のレベルアップにもつながるのではないか――という期待もありました。そうした状況下、『自分たちにも取得できそうな認証はないか?』と検討したところ、北海道HACCP認証がよいのではないかという結論に至りました」と振り返る。

その後、北海道HACCP認証をベースにFSSC22000認証取得に取り組んだが、その経緯について岡田範正工場長は「北海道HACCP認証を取得できたので、その勢いでISO22000にも挑戦することを検討しましたが、そうした矢先、あるブランドメーカーから『できればFSSC22000の取得をお願いしたい』という相談がありました。詳しくお話を聞くと、そのブランドメーカーの受託製造工場では、すでに8割近くがFSSC22000認証を取得しているということでした。検討を重ねた結果、『ISO22000ではなく、FSSC22000認証に取り組む』という決断をしました。社内では『ISO9001にもISO22000にも取り組んでいないのに、いきなりFSSC22000に取り組むのは無謀ではないか?』という意見もありましが、全員の協力の下でFSSC22000の構築に取り組みました」と語る。前出の郷路氏は「北海道HACCPというベースがなければ、FSSC22000の取り組みはもっと時間がかかっていたと思います」と述べている。

今後の取り組みについて、郷路氏は「FSSC22000認証を取得したことで、『安全・安心・品質』の向上を目指すための仕組みの基礎ができつつあると思います。今後もPDCAサイクルを回して継続的改善に努めることで、顧客からの大きな信頼の醸成につながるよう、北海道HACCPとFSSC22000のスパイラルアップに努めていきたいと考えています」と語っている。


2016年7月号のお申し込み・お問い合せはこちらから

<<BACK  

2016年6月号

◎札幌バルナバフーズ(株)空弁・水産事業本部(北海道)
北海道初、空弁・水産メーカーがISO22000認証取得
〜業界の先駆けとして「食品メーカー」のさらなる進化を目指す〜

弁当(主に空港などで販売される、いわゆる「空弁」など)、水産加工品、食肉加工品(ハム、ソーセージ、ベーコンなど)の製造・販売を主業務とする札幌バルナバフーズ(株)は本年4月22日、空弁・水産事業本部(工場所在地:千歳市柏台南)においてISO22000認証を取得した。審査登録機関は(株)日本環境認証機構(略称「JACO」)。

同社の空弁事業では、道内外の美味しい食材にこだわった「美食千歳」ブランドを展開。新千歳空港内の売店や、全国各地で開催される「駅弁・空弁大会」などの他、ブランド名を掲げる空港内の自社店舗では、「出来たて・作りたて」をコンセプトにした「実演弁当」を提供し、大人気となっている。水産事業は、お中元やお歳暮などの贈答品を中心にオリジナリティあふれる商品を取り揃え、好評を博している。

空弁・水産事業本部製造部の蛯沢一之部長は、ISO22000認証取得に取り組んだきっかけについて「近年、食品に関する事故や事件の報道が相次いだことで、食品を取り巻く『消費者の目』は年々厳しさを増しており、それに追従する形で、当社の帳合先(卸業者など)の要望や基準も厳しいものとなってきている。弁当業界では、本州のスーパーマーケットや百貨店などで『駅弁・空弁大会』などのイベントが開催されるが、そうした催事に弁当を出荷するためには、高いレベルの品質管理や衛生管理をクリアしなければなりらない。当社の弁当事業は、設立当初から本州への発送業務を一つの柱としていたため、以前から大量調理施設衛生管理マニュアルやHACCPシステムに準じた衛生管理手法を取り入れていた。また、帳合先の監査なども受けるので、食品の安全性確保や衛生管理への取り組みは重視していた。そうしたことを背景に、HACCP関連の認証取得については、以前から検討していたが、最近になって行政から将来的にHACCPを義務化する方針が打ち出された。義務化については、2020年が一つの努力目標といわれているので、いよいよ『何らかのHACCP認証取得に取り組まなければならない』と思うようになった」と語る。また、「水産事業(弁当工場と同じ建物内にある水産工場)では、将来的には輸出も見据えた事業展開も視野に入れている。海外の取引先と話をすると、よく『ISO認証は取得していますか?』と聞かれる。海外輸出をする上でISO認証が必須要件になりつつあることも、このたびISO22000認証の取得を決断した要因の一つとなっている」と説明する。

また、ISO22000の今後の運用・維持管理については「審査員の方々からは、初動審査の時から一貫して『会社を良くするためにISO22000を取り入れ、経営に活かしてほしい』と言われていた。このことは非常に印象に残っている。今後もPDCAサイクルを回して継続的改善を繰り返すことで、(ISO22000の)効果が実感できるようになることを一つの目標にしたいと思う。ただし、単に(ISOの規格要求事項に)取り組むだけでは意味がない。規格要求事項の意図をきちんと理解し、『ISO22000の本質』を理解した上で、継続していくことが重要だと思う」「当社の経営理念の一つに『美味しいものを作る』というフレーズがある。しかし、必ずしも『美味しい≒安全・安心』とは限らない。『美味しさ』と『安全・安心』の両立を追い求める挑戦を続け、個々の力量の向上に努めながら、今後も『食で社会に貢献できる企業』を目指していきたい」と語っている。

本号では、ISO22000認証取得に至るまでの経緯や苦労、認証取得がもたらした効果などを紹介している。


2016年6月号のお申し込み・お問い合せはこちらから

<<BACK  

2016年5月号

◎農林水産省食料産業局
特別解説
「農林水産省におけるHACCPの普及・推進のための取り組み」

農業・食料関連産業の国内生産額(平成24年度)は約95兆2000億円といわれ、全経済活動の10.5%を占めている。そのうち、農林漁業が約11兆3000億円、食品産業が約78兆900億円となっている。後者(食品産業)のうち、食品工業が約34兆1000億円、飲食店が約20兆5000億円、および関連流通業が約24兆3000億円となっている。農林水産省では、こうした農業・食料関連産業を成長分野とみており、さまざまな施策(輸出促進も含む)を講じているところである。

本稿は本誌編集部が2015年12月17日に東京・板橋区の板橋区立文化会館で開催した「月刊HACCP創刊20周年記念『HACCPテクニカルセミナー』」において、農林水産省食料産業局食品製造課食品企業行動室の横田美香室長が行った講演要旨の一部である。講演では、日本の食品産業をめぐる最近の情勢や、食品安全に係る農林水産省の施策、さらには「食料産業における国際標準戦略検討会」による活動として最近注目を集めている「日本発の食品安全マネジメントに関する規格・認証スキームの構築」への取り組み状況など、幅広いテーマで最新情報が提供された。

本講演録では、食料産業の競争力強化に係る課題として、

  1. 食品安全対策に係る2つの課題
    1. 食品安全対策の向上
    2. 食品安全対策の伝達
  2. 食品安全管理に係る3つの課題
    1. 日本国内の食料産業全体の安全・信頼対策の向上と監査コストの最適化が必要
    2. 日本の農林水産物・食品の輸出や海外展開を促進させるためには食品安全管理を容易に確認できる環境整備が必要
    3. 世界への和食と和食に使われる産品の普及・展開への寄与、世界での食品安全の向上への寄与をしていくことが必要
  3. 食品安全の向上には「3つの原則+α」
    3つの原則=
    1. 科学的アプローチ
    2. 工程管理
    3. フードチェーンアプローチ
    +α=文化的アプローチ
  4. HACCPに対する誤解
  5. HACCP導入の実態
  6. 6次産業化における食品安全の重要性

――などを挙げ、各課題の解消に向けたアプローチについても解説している。

また、農林水産省による食品安全・品質管理関連の施策として、HACCP支援法やフード・コミュニケーション・プロジェクト(FCP)、人材育成のための支援の取り組み、消費者への普及啓発の取り組み、「食料産業における国際標準戦略検討会」の活動などを紹介するとともに、「日本発の食品安全管理規格」のイメージについても言及している。


2016年5月号のお申し込み・お問い合せはこちらから

<<BACK  

2016年4月号

◎サトウ産業(株)(新潟県)
総菜製造企業における食品安全システム構築の取り組み
〜日本惣菜協会のHACCP認証「JmHACCP」取得までの道のり〜

サトウ産業(株)(新潟県魚沼市十日町、佐藤総一郎社長)は、新潟・魚沼の地で1964年(昭和39年)に佐藤産業(株)として創業(1985年に現社名に変更)。現在はサラダ、和惣菜、練サラダ、生野菜サラダ、カットフルーツ、天ぷら材料キット、寒天デザート、業務用カット野菜の製造・販売を主業務としており、主な取引先は新潟県内および関東圏のスーパーマーケットおよびコンビニエンスストア(県内外の売上比は県内55%、県外45%)。

同社がHACCP導入を本格的に検討するきっかけになったのは、2008年に発生した中国製冷凍餃子における農薬混入であった。この事件を境に、取引先からの視察の回数が急増したり、「取引先によって基準が違う」という状況に遭遇した。また、「自社内の管理基準や判断基準に不透明な部分があるのではないか?」と感じるようになってきた。さらに加えて、当時の社屋は竣工から20年近くが経過しており、老朽化している箇所も見られていた(2004年の中越地震で被ったダメージもあった)。すでに新社屋の構想も立ち上がっていたことから、社内では「(新社屋では)HACCP導入を前提にしよう」という議論もされていた。

そこで、2013年に(一社)日本惣菜協会のHACCP認証(惣菜製造管理認定事業、通称「JmHACCP」)の取得を目指してキックオフ宣言を発表。その後、日本HACCPトレーニングセンターの浦上弘理事長(新潟薬科大学教授)による社員向けの勉強会を1年間にわたり受講するとともに、現場での衛生管理の課題の抽出と解決も支援してもらった(同社のHACCP構築に際しては、農林水産省の平成26年度補助事業「食品産業品質管理・信頼性向上支援事業」のうち「HACCP低コスト導入手法の普及に関する指導者等の専門家活用支援」を活用した)。

本稿では、現場において抽出された課題の中から、

  1. 手順書と実際のオペレーションが異なるところがあった、
  2. 区分けはできているが、食品の移動に逆流があった、
  3. 清浄区であるべき場所が、準清浄区レベルとなっていた、
  4. 冷却速度が十分でない製品があった、
  5. 撹拌機でのアレルゲンの交差汚染が懸念された、
  6. 工場内部の査察において前提条件プログラムでいくつかの不備が認められた、
  7. 400種を超える製造品目があり、全製品について「1製品(1ライン)につき1計画のHACCP」では対処できない

――という7項目を取り上げて、同社における具体的なHACCP構築に向けての取り組み(課題解決への取り組み)を紹介する。

同社製造課の八島満課長は「2015年にJmHACCPの認証を取得した。現在もHACCPチームを中心に継続的改善に取り組んでいるが、工場には外国人労働者や派遣社員など、さまざまな立場の人が勤務しているので、『HACCPの浸透度』という点では今後も注力していかなければならないと思う。今後もHACCPが『システム』として動いていくように、記録づけや検証、従業員教育、HACCPチームの活動などを体系化していく必要があると考えている。そうした活動を通じて、今後も、より完成度の高いHACCP計画を含む食品安全システムの構築を目指していきたいと思う」と語っている。


2016年4月号のお申し込み・お問い合せはこちらから

<<BACK  

2016年3月号

◎(株)銀河高原ビール(岩手県)
徹底した品質管理・衛生管理で《本場のドイツビール》を広める!
〜ATP検査を効果的に活用、「世界一きれいな工場」を目指して意識改革!〜

(株)銀河高原ビール(岩手県和賀郡、横川一雄代表取締役社長、日本ハウスホールディングス・グループ)では、「ヴァイツェン」「小麦のビール」をはじめとする麦芽100%、天然水仕込みの「ドイツビール」の製造・販売を主業務としている。

同社では、ここ数年で急速に工場内の衛生管理水準の向上を実現した。その背景には、工場の全員が一丸となった品質管理・衛生管理の改善に対する情熱、ATPふき取り検査などを活用した衛生意識の改革などがあった。ATPふき取り検査とはATP(アデノシン3リン酸)を指標としたふき取り検査法。検査結果が10秒程度で数値化されることから、食品取扱い施設では製造・加工環境や調理環境の清浄度(汚染度)のチェックの用途で普及している。最近では病院などにおける環境由来の感染症対策など、さまざまな用途で活用されるようになっている。

ATPふき取り検査(以下、ATP検査)を導入したきっかけについて坂進工場長は「最大の理由は『日々の清掃活動がしっかりできているか』『洗浄後に汚れが残っていないか』を『目に見える数値』で示したい、という点でした」と振り返る。「ビールのタンクや配管はCIP洗浄を行うので、きれいな状態を維持しやすい構造です。しかし、それ以外の場所では、衛生レベルには大いに問題がありました。そこで、衛生管理のやり方を抜本的に変えようとしたのですが、『昔のやり方』に慣れている人は『新しいやり方に変更しても、本当に衛生的になるのかわからない』という不満を抱えるものです。例えば、『タンクのCIP洗浄は、時間を短縮しても問題ない』と説明したところで、科学的根拠のあるデータを『見える化』『数値化』して示さなければ、相手は納得してくれません。そこで、ATP検査の活用が効果的であると考えました。現在は検査箇所や検査頻度を決めてありますが、最初は『何でもかんでも』というくらいにATP検査を実施しました。しかし、その取り組みが功を奏して、少しずつですが、現場の衛生意識は確実に変化しました。コストはかかりましたが、それ以上の効果があったことは間違いありません」(坂氏)。

同社が取り扱う「無濾過ビール」は、麦芽や酵母、水源の状態など、さまざまな自然の要因によって、味や香りが微妙に変化するため、「品質の安定化」が非常に難しいという性質がある。同氏は「私は『品質管理とは、半分は原材料や設備などの管理、残りの半分は人間管理』と考えています。どれだけ口先で『最高品質です』と謳ったところで、製造環境や人間がしっかりしていなければ、自信を持って『一流の工場です』と言うことはできません。地ビールブームは、これまで何度か到来していますが、そのたびに品質のバラツキや衛生管理の不十分さなどの理由で、撤退した会社はありました。今、生き残っている地ビール会社は『品質管理や衛生管理を徹底しなければ、取引先からの信頼を得られない』ということを、身をもって体験しています。今は商品力だけでは市場には受け入れてもらえない時代です。『衛生管理にコストをかけても、利益に直結するわけではない』と言われますが、当社では衛生管理にかなりの投資を行ったことが、品質面に大きな効果をもたらしました」と、衛生管理水準の向上が品質管理にもたらした相乗効果について語っている。

その一方で、同社の工場は竣工から、すでに約20年が経過している。それでも工場内は衛生的な環境が維持されている。坂氏は「私がとりわけ強調しているのは、『古い』と『汚い』は別問題ということです。施設や設備は必ず経年劣化します。しかし、『古いから汚い』ではないし、『新しいからきれい』ではありません。古くなっても、丁寧なメンテナンスを徹底することで、きれいな状態を維持できるものです。このことは毎日のように現場で言い続けています」と、一般衛生管理や5Sに取り組む重要性を語っている。


2016年3月号のお申し込み・お問い合せはこちらから

<<BACK  

2016年2月号

◎伊賀越(株)(三重県伊賀市)
伝統製法守り醤油・味噌の品質管理徹底、海外にも販路拡大
ハラール認証取得、FSSC22000で安全性さらに裏打ち

明治6年創業、140年以上にわたり伝統の味を守り続ける伊賀越(株)(三重県伊賀市ゆめが丘、本城和寿社長)。醤油や味噌の多くは、加熱熟成させる早造りの製法で造られているが、同社ではじっくりと醗酵、熟成させる昔ながらの天然醸造の製法を守り続けている。老舗の醤油や玉味噌、漬物はさらに品質管理を徹底すべく、平成15年にはJAS認定とともにISO9001の認証を取得。2016年3月にはFSSC22000の認証を取得する予定で(予定審査登録機関:(株)日本環境認証機構(JACO))、安全性確保にも一層の力点を置いている。さらに平成27年3月にはハラールの認証を取得し(認証機関:NPO法人日本ハラール協会)、海外市場への進出にも積極的だ。

忍者の里として全国的に有名な三重県伊賀市。「伊賀の郷」では昔から、夏に畑で白瓜を採り、種を抜き取り、 しそやしその実、しょうが、大根などを刻み詰め、自家製の伊賀特産の玉味噌に漬け込んだ漬物が人々に愛されてきた。その代表的なブランドが「伊賀越漬」。「伊賀越漬」に使う瓜などの原料は今も地元の農家が栽培したもので、その他の漬物の原料もすべて国内産というこだわりだ。

本社工場では国産丸大豆を使った醤油の製造、第2工場では醤油加工用の大豆を使った醤油の大量生産を行っており、ISO9001の認証は第2工場で取得したが、「その仕組みを水平展開し、本社工場でも同じ内容の管理を行い、本社工場でも内部監査を行っている」と5代目社長、本城和寿氏は全社体制で品質管理の強化を進めてきた。

第2工場は建築当初から衛生管理面を重視してきたが、さらに増改築を行い、HACCPに対応できる工場に仕上げてきた。本社工場も改築を重ね、いわゆるHACCP対応の工場へと進化させている。

「これまでの製造工程を洗い出し、生産効率と同時に加熱工程の妥当性確認、科学的根拠の明確化、モニタリングの頻度の検討なども行いました」。本城氏は、安全性をより高度に担保すべく、ハード面のみならずソフト面も見直してきた。現在、製品の種類は約250種類。醤油では、「卵にかけるだし醤油」や刺身醤油なども開発したが、水分活性などの点で保存性が低いものもあり、それらの商品は厳密な安全性・品質管理が必要になる。

「しかも最近は3年ほど前から輸出が結構増えてきて、衛生管理を強化しHACCPを実行しないと、企画書の段階ではねられます」。海外の大手流通企業との取引も増え、シビアな要求にも対応している。米国市場などの需要拡大を見込んで、小麦粉不使用の「グルテンフリーの丸大豆醤」の販売を開始した。

「大手メーカーの醤油は酵母を入れてアルコール発酵を促し5カ月ほどで完成するが、当社の天然醸造の商品は最終製品にアルコールを添加しないものを製造。麹づくりを第一に、大豆と小麦に麹菌を培養し、あとは自然のタンクの中で1年以上かけて発酵させます。伝統の製法により旨み成分も増します。いずれにしても、大手さんと同じような作り方していると価格競争に巻き込まれるだけで、ある程度、提供価格を下げる努力をしつつ、大手メーカーの商品とは対極的な商品を提供していかなければなりません」

海外の展示会などでは大手メーカーにはまねのできない天然醸造を全面的にPRし、中国、アメリカ、マレーシアなどでの人気も徐々に高まり、今後さらに輸出を拡大できるだろうという見通しの中で、HACCPを柱とした安全性確保の規格であるFSSC22000認証取得の意志を固め、平成28年3月には、FSSC22000の認証を取得する予定(予定審査登録機関:(株)日本環境認証機構(JACO))。「FSSC22000についても、その他の工場などを対象に水平展開していきます」と本城氏。に海外市場、とりわけマレーシアなどのイスラム教圏での市場拡大も目指し、平成27年3月にはハラール認証を取得した。


2016年2月号のお申し込み・お問い合せはこちらから

<<BACK  

2016年1月号

◎日本クッカリー(株)(伊丹工場)(兵庫県)
微生物検査・ATPふき取り検査を効果的に活用し、
飛躍的な品質管理の向上を実現!

大手コンビニエンスストアチェーン向けの食品(弁当、おにぎり、寿司、麺、惣菜など)の製造および販売を主業務とする日本クッカリー(株)(本社所在地・東京都品川区東五反田、金子照明代表取締役社長)は、1998年に日本水産(株)の100%出資子会社として設立。現在は、関東3工場、北陸・東海3工場、関西1工場、沖縄1工場の計8工場を生産拠点として有している。

本号では、8工場の中で兵庫県伊丹市にある日本クッカリー・伊丹工場における衛生管理の取り組みについて、同工場品質管理課の板井政規課長にうかがった。同工場では近年、衛生管理・品質管理の改善に取り組んだ。その取り組みの成果は、取引先のコンビニエンスストアチェーンからも高い評価を受けている。

改善活動に取り組んだ契機について、板井氏は「我々は外部(公的機関・取引先)より随時、複数の項目(衛生度、仕様遵守度など)に対して抜き取り調査が行われ、数値化された評価を受けています。また、HACCPの考え方に基づく独自の規格基準を設けており、その規格の遵守が行われているかについても監査が年数回行われます。食品企業として継続的に衛生管理レベルを改善・向上しなければならなく、また会社の『現状の管理状況からさらに強固な品質管理体制を構築するように』との方針もあり、衛生管理や品質管理について抜本的な改革に乗り出すことにしました」と振り返る。

しかし、「改革に着手した最初のうちは、なかなか手応えは感じられなかった」という。「1年くらいかけて、微生物検査やATPふき取り検査など、現場でさまざまなデータを収集・検証し、それらのデータを基に改善活動を展開しました。特に、適切な洗浄を徹底することが、品質管理においてはきわめて重要なことです。現在では外部検査結果でも良好な数値を維持できており、改善の成果があらわれたと考えています。ちなみに、この改革の期間を経て、私が強く感じたことは『品質管理部門も現場も言いたいことがあれば、お互いに我慢せずに意見をぶつけるべき』ということでした。品質管理は、自分が妥協したり、誰かに妥協を強いたりするようでは、うまく続かないと感じました」(板井氏)。

改革が成功したポイントについて、同氏は「ポイントの一つ目は、洗浄手順の標準化と遵守できるよう、意識づけや教育に配慮したことです。ハード面(製造機器など)の更新を検討していた時期でもあったので、改革に着手しやすい環境ではありましたが、ハード面を新しくするだけでは、衛生度の維持管理はできません。やはり大切なのは『現場の意識』です」「ポイントの二つ目は、経営者の理解が得られたことです。例えばATP検査ではかなりの数の試薬を使うので、コスト的には負担が軽くはありません。しかし、その検査を活用した管理スキームに、工場長が常に理解する姿勢を明確に伝えてくれたことで、工場一丸となって団結することができ、定着できたと考えています」と語ってくれた。

しかし、衛生管理・品質管理の取り組みに「ゴール」はない。常に継続的改善に努めていかなければならない。今後について、板井氏は「弁当や総菜という分野は、どうしても全自動化が難しい、手作業が多い業態です。人手を介すれば、それだけ食中毒を起こすリスクが高まります。しかし、我々は手作りをお客様に届けることができることを強みにした業態であると常に考えています。『お客様への安全・安心をいかに提供し続けるか』は我々の使命と銘じ、今後も微生物検査やATP検査の結果などを効果的に活用し、現場と一緒になって妥協せずに品質管理に努めていきたいと思います」と強調した。


2016年1月号のお申し込み・お問い合せはこちらから

<<BACK  
  TOP   月刊HACCP   月刊養豚情報   鶏卵肉情報   書籍案内   リンク   事業概要