2009年12月25日号

◎和食のたまご本舗(株)
醤油に合う、卵かけご飯に最も適した味を
決め手は光合成細菌と17種類以上の副原料


インターネットで偶然見つけた「和食のたまご本舗」のホームページに惹きつけられた。和食≠フコンセプトを明確に打ち出し、一般消費者やプロユーザー向けに会社の履歴や基本理念、ブランド開発の経緯、卵かけご飯へのこだわりなどを独自の視点からわかりやすく紹介。鶏卵業界の数あるホームページの中ではかなりレベルが高く、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌など一般メディアへの登場頻度も高いようである。

店主のブログのタイトルには「醤油と卵の探究をする鬼」とある。どんな鬼社長なのかと興味津津、取材を申し込んだところ、久間社長から直々に快諾の返事があり、当日は宿泊先のホテルまでわざわざ迎えに来ていただいた。直営農場へと向かう車中、いきなり「交通事故でここ(頭部)に穴が開きまして」と言われたのには驚いたが、相当の変人奇人では…との勝手な思い込みとは裏腹に、ご本人は物腰の柔らかい,ソフトな若手経営者の印象であった。

もちろん、卵と醤油に寄せる思いは人一倍強く、とりわけ醤油に対する造詣の深さと探求心は並大抵ではない。某週刊誌から「お取り寄せしたい、おいしい醤油ベストテン」のコメント取材を受けるほど、その道に精通している。「卵ではなく醤油でコメントを求められるところが私らしい。実際、卵より醤油の方が詳しいかもしれない。ラジオの公開放送に出た時も本業の卵についてはほとんど喋らずに、醤油のことばかり喋っていた」と久間社長は笑う。

和食のたまご本舗(株)は今から43年前の1966年、先代の父親が久間飼料店として創業。2009年10月1日、4年前から併記していた企業ブランド「和食のたまご本舗」に社名変更したばかりである。

主力ブランドである『和食のたまご』の基本コンセプトは、久間社長のこだわりを文字通り体現した「醤油(和食)に合う卵」だが、商品開発そのものは1993年、鶏の健康を増進し、飼育環境を改善する光合成細菌との出会いから始まった。この光合成細菌を人為的にコントロールできれば地球環境問題さえも解決可能といわれ、養鶏への応用では、(1)産卵量の増加(2)疾病予防(3)悪臭・ハエの発生低減(4)卵質改善などに加え、アミノ酸を豊富に含む光合成細菌によって卵本来のコクとおいしさを引き出すことに成功している。

6年前に経営を引き継いでからは「卵かけご飯専用の日本一の卵を作りたい」と、トウモロコシを主成分とした飼料に加える副原料の研究を繰り返し、『和食のたまご』は日々進化を遂げた。飼料には地元の八女茶、ニンニク、ヨモギ、唐辛子、竹炭、木酢液など17種類以上の副原料を配合。鶏が飲む水には、御影石を液化して抽出したミネラル液を添加している。今回の社名変更に当たっては「副原料をさらに見直し、今までの後味のあっさり感から、中間時のコク味をより立体的に、より高品質に進化させた」という。

『和食のたまご』は現在、九州北部4県の中堅スーパー、生協、病院給食やホテル・レストラン、洋菓子店などに納入。地元のレストランチェーン「パスタの王様」は看板メニューの卵かけパスタに『和食のたまご』をいち早く採用したほか、広島の卵かけご飯専門店「たま一」でもそのおいしさが人気を博している。




 

2009年11月25日号

◎(有)高橋養鶏
おいしさと鮮度にこだわった『旬たまご』
有名パティシエ辻口氏との共同企画商品も


70年以上の歴史を持つ(有)高橋養鶏(本社豊橋、高橋英嘉社長)。創業時の飼養羽数は1〜2万羽と当時としては比較的大規模で養鶏を営んでいた。昭和50年の農場移転とともに法人化し現在に至る。成鶏飼養羽数は12万羽。

同社が10年前から販売するブランド卵『旬たまご』の一番の特徴は30週齢から50週齢の鶏から産まれた卵しか使用しないということである。採卵期間を限定することによって高いハウユニットが維持され、新鮮な印象を消費者に与えることに成功している。「元々特殊卵については、会社としてそれほど力を入れて販売しているわけではなかったが、口コミで評判が広がり販売が拡大していった」(高橋賢次常務)

旬たまご開発のコンセプトは「生で食べても臭みがなく食べやすい卵」「加熱した際に色落ちをしない卵」。臭みに関しては生菌剤等を使用し、鶏をできるだけ健康な状態にすることで卵の独特の臭みを低減することに成功している。また、飼料にマリーゴールドを添加し、カラーファンは13を基準とし、洋菓子などに使用しても非常にきれいな色に仕上がるという。

顧客からの評判は上々のようで「卵が嫌いな子供が高橋養鶏場の卵だけは食べることができる」「高橋養鶏場の卵しか食べない」などの感想が寄せられており、高橋常務は「そういう声を聞くと、旬たまご開発の方向性としては間違っていなかったのではないかと思う」と語った。

同社では、有名パティシエの辻口博啓氏率いるFORTISSIMO H(フォルテシモ・アッシュ)という洋菓子店とのコラボレート企画「TSUJIGUCHI'S BAUM×名古屋コーチン卵」の販売を11月より開始した。

元々はFORTISSIMO Hから名古屋コーチンの卵を100%使用したバウムクーヘンの販売のみという企画だったが、先方からの「生産農農場からも是非PRと販売を」という依頼のもと、高橋養鶏からの卵とのセット販売が実現した。この商品でこれまでとは違った層の消費者に直接農場から働きかけるきっかけづくりとして展開していく。

高橋常務は「名古屋コーチンを扱い始めたのは2年前から。名古屋コーチンブランドというものは、それだけで特殊卵として成立するほど大きな付加価値を持っている。農場として安定的に高値で販売できる商材を作るために導入に踏み切った。洋菓子と卵のセット販売というのは全国的に見てもかなり珍しいと思う。正直なところ今後の展開が読めない部分が大きい。おもしろい企画だとは思うし、辻口氏と名古屋コーチンのネームバリューもある。どちらかといえば贈答用としての需要を見込んでいる。愛知県を代表するような贈答品にしていきたい」と力強く語った。




 

2009年10月25日号

◎(有)徳井養鶏場
地元で好評博す『しんちゃんたまご』―
non‐GM飼料にこだわり、安全性を最優先


徳井養鶏場(本社・滋賀県蒲生郡)は昭和37年創業。100羽の庭先養鶏から始まり、昭和39年には3000羽に規模を拡大。その後昭和55年に土地改良事業の事前換地を受けて現在地へ移転、約7000平方メートルの敷地で、成鶏約1万羽の採卵養鶏を継続し、平成13年10月から会社組織として活動を始めた。

同社のブランド卵『しんちゃんたまご』は創業者、新造の『しん』と、新鮮・親切・信用モットーの『しん』をから命名され、飼料にはハーブ・ミネラル・乳酸菌・オリゴ糖・ガーリック等を添加した指定配合飼料を給与。また、抗生物質は一切使用せず、サルモネラ検査などは定期的に、滋賀県家畜保健衛生所で実施している。

良好な環境と衛生管理のいきとどいた農場で、遺伝子組み換えや、ポストハーベストの穀物を一切使わないこだわり飼料での生産を続けている。徳井社長は「確かに飼料代は高くつくが、それ以上にこだわりの卵として付加価値をつけて売れることの方が重要。ブランド卵として売り出してからの一番のメリットは2Lなどの格外卵に価格をつけて売れるようになったこと。意外に大玉の方が消費者の評判はよいようだ。他の卵では満足できないと話す消費者も多い」と語る。

100%自家育成で更新は現在年3回。初産後12カ月でオールアウトしている。「人手が足りない中で自家育成を行っていると、入雛後3日間はほとんど寝ることもできないほど忙しくなるが、それでも設備がまだ使える間は続けていきたい」と語り、また「小規模経営なので大雛導入した場合のコスト面でのリスクを考えると、現状が一番よい方法なのではないか」とも語る。

「現在作業のほとんどを、私1人でやっている状態なのであまり販売に力を入れることができないのが現状。販売専門に増員するほどの規模でもないため、1人でもできる範囲での販売活動をしている。その点『アグリの郷栗東』では弊社専用の冷蔵庫を確保してもらい納品の頻度も無理がない。さらにすべて委託販売ではなく、買い取りという形態をとらせてもらっており非常に助かっている。現在自社での小売りは全体の3分の1程度。この割合を逆転させて3分の2程度は直売という形にしたいと思っている。この地域独特のものかもしれないが、鶏卵には法事などの時の進物品としての需要がある。鶏舎のそばに設置した自動販売機も、1日平均1回転はしている。直接農場へ買いにこられるお客さんからは『体に気をつけてがんばって下さい』などと励まされることもあり、こういった方々に支えられていることを実感する。そういった固定客とのつながりを大切にして今後もやっていきたい」と徳井社長は話す。




 

2009年9月25日号

◎(株)のだ初
うちの卵はあえて美味しさで勝負します
五感にうったえる直売店「うぶこっこ家」


岡山県倉敷市にある(株)のだ初は県内スーパーへの直納を中心に鶏卵を販売展開してきたが、平成17年に直売店「うぶこっこ家」を開店。以後毎年、順調に売り上げを伸ばす中で、殻付卵の販売比率を開店当初の5%から現在は18〜20%にまで伸ばしている。

メインブランドは卵かけごはん専用「あっぱれたまご」。鶏卵部を統括する野田裕一朗専務が、「意外に誰もやらない美味しさを前面に出したブランド卵」として開発した。卵の場合、果物の糖度のような誰にもわかる基準がない。「最初は相場に振り回されて価格決定権を持てない卵の世界に違和感を持ったのがスタートだった。ブランドの特徴を考えたとき美味しさを売りにしたブランド卵は無理といわれて、それならうちは美味しさを追求しようと思った。『しめしめ』ってね」と笑いながら語った。

たしかに卵の美味しさを数値で測ることは無理かもしれないが、お客様に美味しいと感じていただくために五感に訴える戦術だ。まずベースとして水にこだわり、鶏の環境にこだわった。そして卵かけごはんに最も適した味を追求、コクと甘味を出すために飼料メーカーとの共同開発できな粉成分を添加してみたところ食べてすぐ違いがわかるほど甘味が増した。さらに温かいご飯にかけるという前提で臭味を排除するために植物性飼料に切り替えた。味覚(コクと甘味)・嗅覚(臭味なし)・視覚(新鮮さ)・触覚(健康でしっかりした卵殻)に、「うぶこっこ家」の口コミも手伝って美味しいという評判が拡がり、聴覚(情報による美味しいという期待)が加わった。

野田専務のブランド化の方向性は、ビタミンなど栄養添加を基本だとは考えていない。しっかりしたものを作って、それをお客様にしっかり伝えてあげることが基本だという。「卵はそれ自体が非常に良いもの。しかし、以前はスーパーからの要望で栄養添加などもしてきたけれど、今後はそういう提案は一切しない。むしろ最近は、ビタミンがほしければ野菜コーナーはあちらですよというPOPを作ってあげますよって言っています」。

2年前、「たまごニコニコ大作戦」で全国を縦断した経験からも「まず自分の身の回りからの卵消費促進が大切だ」と語る。現在は、商品のブランド化から発展して会社のブランド化を目指している。「農場って人が集まらなくて困っているでしょう。養鶏場スタッフ募集で人が集まらなくても、『うぶこっこ家』なら入りたいって人が結構いる。だったら卵のこと知ってなきゃいけないから、まず農場で勉強してきてねって。自分自身が養鶏場を継ぎたくないのがスタートだったから、その気持ちがよくわかる。だから地元を元気にすることもして、この会社おもしろいな、普通じゃないなって注目してもらう。そうして養鶏ってかっこいいと言われるようにしなければいけない」。夢を語る野田専務の目は、もう次の目標をはっきりと見定めていた。




 

2009年8月25日号

◎伊藤忠飼料(株)
食料自給率向上へ、できる事から始めたい 
国産飼料米を10%配合した『稲穂の恵み』


伊藤忠飼料(株)(本社東京、能登章友社長)が国産飼料米の取り組みを開始したのは約2年前。大手飼料メーカーが飼料米の生産と利用に目を向けること自体、つい最近までは考えられなかったことだが、総合商社の伊藤忠商事(株)を親会社に持ち、米国のトウモロコシ畑から日本国内での配合飼料の製造と素畜の供給、畜水産物の生産・販売、さらには消費者の食卓までをつなぐ縦型のインテグレーションを展開、国内外の食料事情に精通した同社だからこそ、「あえてやらねばならなかった」との説明はリアリティがある。

国産飼料米の生産が実質スタートしたのは2008年春から。飼料営業本部(端坊充央本部長)東北・北海道支店が中心となり、JAみやぎ登米、JAいわて花巻、松島町、鹿沼市など東北隣県の稲作農家、農協、自治体と連携し、昨年度は玄米ベースで約450トンを収穫した。契約農家が栽培した飼料米は、同社が東北エリアで展開する飼料工場2カ所(八戸、石巻)で現在はSPF豚の肥育用に5%、採卵用には10%を配合している。

こうした取り組みの中で、国産飼料米10%配合のブランド卵『稲穂の恵み』が誕生した。商品コンセプトは、(1)食料食料自給率アップ(2)休耕田の有効活用(3)食育(4)環境保全への貢献など。宮城県下の生協を中心に「消費者の確かな支持を得ており、8月中には東北エリアの一般量販店でも商品が並ぶようになる」(伊藤忠飼料(株)鶏卵食品部・深沢晃部長)という。また、通販ルートを活用した全国販売も模索中である。地元の小中学校で学校給食の食材として活用されるなど、現状は食育、地産地消の側面が強い。「消費者の反応を見極め、東北以外の地域でも同様の取り組みが可能かどうかを検討したい」と深沢部長は語る。

深沢部長は「当社の差別化卵、こだわり卵には大きくわけて3つの柱がある。一つは国産飼料米を給与した『稲穂の恵み』に代表される自給率向上や食育、環境保全を謳った取り組みとしてのブランド卵。二つ目の柱は、20年前に開発した『鉄ビタD卵』の流れを汲む機能性を前面に打ち出した栄養強化卵。もう一つは、全国どこで買っても同じ品質、規格の製品が容易に手に入る伊藤忠飼料グループとしての統一ブランドの構築である」と説明する。

このうち、機能性の分野で新発売したのが、酵母由来のコエンザイムQ10を強化した『プラスQ10たまご』だ。ターゲットは30代後半の子育て世代の女性と高齢男性。加齢とともに体内から減少するコエンザイムQ10を、吸収率がサプリメントよりも20〜30倍高い鶏卵(卵黄)に移行させることによって、毎日の食生活の中で、無理なく自然に摂取してもらおうというのが開発コンセプトである。販売エリアは同社が東北・関東圏を、(株)籠谷(本社高砂、籠谷啓一社長)が関西圏を担当。東北エリアではテレビCMの放映を予定しているほか、売場などで流すイメージソングも現在制作中であるという。




 

2009年7月25日号

国際養鶏養豚総合展2009成功裡に終わる
延べ1万5900名超が参加、次回は3年後


国際養鶏養豚総合展「IPPS JAPAN2009」(農林水産省、愛知県、名古屋市後援、JA全農ほか養鶏・養豚関係11団体協賛)が7月8日〜10日の3日間、愛知県名古屋市の国際展示場(ポートメッセなごや)で開かれた。同展示会は前回の2001年以来8年ぶり。国内外における悪性伝染病の発生などを受け、延期・中止を余儀なくされた経緯がある。主催者の同展運営協議会(中嶋君忠会長)によると、最終的な出展者数は116企業・団体。会期中の入場登録者数は7112名(前回6352名)、出展関係者を含む延べ入場者数は1万5900名超で、前回の1万1974名を大幅に上回るなど大盛況であった。

8日午前8時45分から挙行されたオープニングセレモニーでは、中嶋会長が「昨年春は世界的な穀物価格の高騰によって平成の畜産危機といわれ、秋からは百年に一度といわれる大不況。主催者としてもどのようなことになるのかと大変心配したが、今回は今までも増して各社とも積極的に出展をしていただいた。最後には小間がなくなり、お断りをするのに苦労するほどの盛況ぶりであった。この勢いをそのまま各社のビジネスに結びつけたい。我々の業界が将来ともに発展することを祈念する」とあいさつ。農林水産省東海農政局の釘田博文次長、(社)日本養鶏協会の島田英幸専務、(社)日本養豚協会の南波利昭副会長、(社)中央畜産会の菱沼毅副会長、運営協議会の中嶋会長、村田良樹副会長、吉田擴副会長、坂本伸明副会長によるテープカットが行われた。

展示会場入口には、昨今の新型インフルエンザへの配慮と、鳥インフルエンザや口蹄疫などの家畜防疫に万全を期すため、事務局員の立会いの下、入場者全員に靴底、手指の消毒、エアシャワーによる埃などの除去が義務づけられた。入場登録者数は初日から3000名超と順調な出足を見せ、出展各社は予想以上の盛況ぶりに戸惑いつつも、商談、自社製品のアピールに余念がなかった。ポートメッセなごや交流センターで開かれた養鶏・養豚特別講演会、出展各社のプレゼンテーションも好評で、会場の外まで受講希望者があふれるプログラムもあった。

今回も“国際”の冠に相応しく、出展関係者以外にも中国、韓国、タイ、インドネシア、中南米、豪州など海外からの参加者も少なくなかったようだ。運営協議会では3年後を目途に次回のIPPSを開催したい意向である。




 

2009年6月25日号

◎(株)太田商店
極上の飼料でおいしさと安全を両立
鮮度にこだわる『ランニングエッグ』


愛知県岡崎市で40年以上の長きにわたり配合飼料を販売してきた(株)太田商店(太田直樹社長)が2000年、満を持して発売したブランド卵『ランニングエッグ』。

『ランニングエッグ』の最大の特徴は厳選された極上の飼料にある。トウモロコシは遺伝子組み換えをしていないものに限定し、大豆粕だけでなく、きな粉を配合した。マリーゴールドを添加し黄身の鮮やかさを加え、カラーファンは13〜13.5。さらにEM菌を添加することで卵独特の臭みを低減させている。

また、鮮度管理も非常に充実しており、同社の原専務は「直売所で販売しているものが新鮮なのは当然だが、仕入れ先のスーパーや飲食店での鮮度にまでこだわっているのが特徴だ。スーパーに納品する際も、我々の手で陳列できるところとだけ、お付き合いをさせていただいている。大手スーパーでもバックヤードに納品することを希望されるところとは一切取引していない。バックヤードは基本的にまったく温度管理がされておらず、いつ売場に出るのかもわからない。そういった卵の管理ではうちの卵のお取り引きは一切出来ませんとお断りしている。いつでも新鮮な物が置いてあるということを続けることで、最後には信頼を得られるのではないかと思う」と語り、「産卵日の管理もしっかりと行われているが、まだパッケージに表示する段階までにはいたっていない。多くの養鶏場が午前中のみの集卵という中で、ランニングエッグ生産農場は夕方までキッチリ集卵し、採卵日を明確に記録している。基本的には採卵の翌日には店頭に並ぶような体制を作っている。農商工連携の支援を活用して今後は、消費者に対して効果的な表示ができるよう取り組んでいきたい」とも語った。

平成18年にオープンした直売所「らんパーク」ではランニングエッグの量り売りなどとともに同社の鶏ふん堆肥を使用している農家から仕入れた新鮮な野菜や果物なども販売している。直売所におけるランニングエッグの販売割合は全体の30%〜50%。その他にも同社オリジナルの卵かけごはん専用醤油「御馳走たまかけ・だし醤油」やオリジナルロゴ入りの箸、Tシャツなどランニングエッグブランド商品が数多く販売されている。




 

2009年5月25日号

◎(有)松永養鶏場
養老の自噴水が育む『養老の地玉子』
自分で食べたいと思う良質な卵を供給』


創業当初より『自分が食べたいと思う玉子を作る』ということをモットーに養鶏業を営む(有)松永養鶏場。

同社が販売する『養老の地玉子』は岐阜県養老町大場の緑豊かな恵まれた自然の中、後藤孵卵場の純国産鶏「もみじ」と「さくら」を使って生産されている。

『養老の地玉子』最大の特徴は、鶏を飼養する上で重要とされる水にある。ミネラルを多く含む養老町の自噴水(地下水)を鶏に与えることで鶏を健康にし、良い卵を産む環境を整える。

飼養羽数は28000羽。以前は育雛からの一貫経営だったが「直売開始後は販売に手を取られるので、とても育雛まではできない」ということで現在は大雛導入に切り換えている。

また、飼料は自家配合飼料だったのだが良質な魚ふんを手に入れることが年々難しくなってきたため、現在は指定配合飼料を使用。カラーファンは14以上を基準にしており、大塚社長曰く「卵を割った人が『おっ』と思うような色を目指した」。

直売場には卵だけでなく『養老の地玉子』を使った洋菓子やその他養老特産品など豊富な品数が販売されており、大塚社長は「卵を使った加工品も豊富で当初は洋菓子店が弊社の卵を材料として買いたいという話からはじまり、そのうちせっかくだから直売場でも販売したいということで洋菓子なども扱うようになった」とし、「鶏卵以外の商品も扱わなければ売上げが厳しい。なぜか新しいことを始めると、タイミングよくテレビ等の取材があるため宣伝費が非常に助かっている」と語った。

養老町には、「養老天命反転地」、「養老の滝」、「養老公園」等、さまざまな観光スポットがあり、大型連休中などの繁忙期はほぼすべての卵が完売するという。

また、農場入り口には直売開始当初に1台のたまご自動販売機を設置したところ、手軽さと新鮮度の高さが周辺住民にとても喜ばれ、現在では9台設置してあり、売上げも非常に好調だ。

今後の展開について大塚社長は「直売率を現在の3〜4割から少しでもアップさせることが当面の目標。これからも卵の質を落とさずにより良いこだわりの卵を作っていきたい」と力強く語る。




 

2009年4月25日号

◎(株)栗駒ファーム
地域と共に歩み、豊かな食生活に貢献―
自社栽培の季節の作物を与えた『四季彩卵』


卵にも季節感を――。自社生産の有機肥料「ハイコンユーキ」をふんだんに使い、季節ごとに不足しがちな栄養成分を補う作物を自ら無農薬栽培し、親鶏の飼料に加えた『四季彩卵』。東北、関東で採卵鶏約100万羽、原種豚からの養豚一貫生産に取り組む(株)栗駒ファーム(本社栗原市、田村正四郎社長)が、この画期的なコンセプトのブランド卵を開発・商品化したのは3年以上前、2005年11月のことである。

飼料価格が高騰する中、2008年からは「ハイコンユーキ米」の応用バージョンが続いているが、折からの飼料米ブームも追い風となって、今年からは地元の稲作農家や自治体、農協(JA栗っこ)と連携し、飼料米の生産・利用を核に地域循環の仕組み作りを目指す検討も始まった。計画通り進めば合計30町歩、年間300トンの飼料米生産が可能になるという。

現在、飼料米は20反歩ほどを自家生産している段階だが、前述の計画が軌道に乗れば、同社が企業理念に掲げる地域における耕畜連携、有機肥料(ハイコンユーキ)を活用した循環型農業への取り組みは大きく前進する。同社の場合、初めに飼料米ありきではなかったのである。

「自社開発のハイコンユーキを地元の農家さんにたくさん使っていただくのが、米作りを始めた一番の目的だった。せっかく収穫した米を食用で出荷するだけではもったいない、飼料原料に使えないかと考えた。鶏に米を食べさせて大丈夫なのかとよく聞かれたが、我々の試験ではまったく問題なかった。これからは一般の農家も含めた取り組みになるわけだが、いきなり300トンとはいわず、できるところから徐々に、お互いに経済的に無理のない形で進めたい」と、『四季彩卵』の開発者でもある岩島誠管理本部長は語る。

栗駒ファームは、東北地方の中心に位置する宮城県栗駒山麓の緑豊かな自然環境の下、「人間と農業の関わりは、自然の循環の中にこそ理想がある。地域で育まれた農産物が最も安心できる食材である」との企業理念を一貫して掲げ、自然の生態系の生命循環を応用したエコロジーリサイクルシステムの確立を目指し、実践を重ねてきた。鶏の健康と消費者の安全・安心・自然志向に応えた、多くのこだわり商品を開発し、マーケットに定着させてきた。今回紹介した『四季彩卵』(赤玉六個)もこれらの商品群を土台に開発されており、数量限定ながら生協、量販店、ターミナル駅内の食品スーパーなどで好評発売中である。




 

2009年3月25日号

◎奈良県養鶏農業協同組合
奈良県地産ブランド『大和なでしこ卵』
大和茶を飼料に添加し、臭みのない卵に


奈良県養鶏農業協同組合(大和郡山市、吉本文孝代表理事組合長)が2008年10月25日より奈良県ブランド卵として販売を開始した『大和なでしこ卵(らん)』。

『大和なでしこ卵』は県内5カ所の養鶏場による統一ブランドで、親鶏を14カ月齢以下と制限し、同一の指定配合飼料による差別化が行われている。飼料には奈良県の特産品である「大和茶」を添加しており、同組合GPセンター事業部の辻吉洋所長は「茶を添加することによって卵の臭みが消え、また鶏の健康状態も良くなった。もともと茶は人間にとっても整腸作用や動脈硬化の指標値減少などの効果があり、鶏の健康にも良いだろうと考え添加を決定した」と語る。

さらに魚油を加えることで、コクとDHAを卵に移行させている。DHA含有量は250〜280ミリグラムと通常卵の約2・5倍。生臭さを茶を添加することによって抑え、非常にバランスの良い卵に仕上がっている。

「大和なでしこ卵」のブランド名は2008年6月に一般公募し、719点という多数の候補の中から選ばれて決まった。この名称に決定した理由として、(1)若い親鶏が産んだ美しい卵と美しい日本女性の代名詞“大和なでしこ”のイメージが一致する、(2)植物の撫子は白、ピンク、赤と卵の色のバリエーションに一致する、(3)奈良の地名を表す“大和”で県産をアピールすることができる――の3点を挙げている。

加工品では温泉卵が3月下旬から惣菜宅配業者での取り扱いが決定している。パッケージは大阪芸大の現役学生のデザインで、商品名部分が奈良県在住の書道家の筆によるバージョンも近日公開予定である。

パッケージには生産農家名の表示もあり、辻所長は「生産農家としてもパッケージに自分の農場の名前が印字されているので、GPセンターに原卵としてひとまとめで出すのではなく、こういう形で一つのブランドとして誇りを持って売り出すということは、やはりいいかげんなこともできない。いろいろな意味で良い影響があるのではないかと思っている。『大和なでしこ卵』の知名度が上がり、奈良県下の養鶏場が十分な利益を得られるようなブランド卵に成長することを期待し、今後もPRを続けていきたい」と力強く語った。




 

2009年2月25日号

◎フードトラスト食味選定委員会
国産飼料米で育てた鶏の卵をネット通販―
『こめたま』プロジェクトが本格スタート


フードトラスト食味選定委員会は、食の安全や環境に配慮した農業や地域の取り組みを応援し、農産物や食品を認定するフードトラスト協会と、安全な水を提供するグランドデュークスのコラボレーションで3年前に発足した。安全の定義が明確で、環境への配慮が具体的な生産者が作る「本当に安全で美味な食材」を、同委員会の構成メンバーである和洋中の一流シェフ・料理人が厳選。料理と味のプロが太鼓判を押した特選食材の美味しさを最大限に生かすプロのレシピを毎月紹介し、家庭での調理に必要な食材をインターネット通販で提供している。

フードトラスト協会が提唱する『こめたま』プロジェクトは、毎日の食卓に欠かせない――安価で栄養価に優れた身近な基礎食品である鶏卵を通じて、日本の食のあり方をもう一度見直そうというもの。『こめたま』とは文字通り、国産の飼料米を食べて育った鶏が産んだ卵で、従来の卵に比べて色が淡いレモンイエローの黄身が特徴である。長年、輸入穀物に頼ってきた採卵用飼料の主原料を国産の飼料米に切り替えることで、生産者、消費者の双方に大きなメリットが期待できるという。


こめたま(上)、地鶏の卵(右)と特殊卵

生産者は青森県藤崎町の常盤村養鶏農業協同組合(フードトラスト岩木川)。第1期プロジェクトは、2007年に2ヘクタールの休耕田で飼料米を栽培、400羽の採卵鶏を試験飼育するところから始まった。2008年は作付面積を10倍の20ヘクタールに拡大、現在4000羽の鶏(岡崎おうはん)を平飼いで飼育している。今年はさらに10倍の200ヘクタール、4万羽規模に拡大する計画だ。次のステップでは――青森県下にある2万ヘクタールの休耕田で飼料米を生産すると、県内で飼育されている約400万羽の採卵鶏の主原料をすべて賄うことができ、日本全体の食料自給率も1%上昇すると試算している。

『こめたま』の飼料自給率は現在75%。飼料米(べこごのみ、むつほまれ)のほか、県産リンゴの搾り粕、醤油の搾り粕などを活用することで自給率100%を目指す。フードトラスト協会の徳江倫明代表によると、『こめたま』のブランド名はすでに商標登録済み。「今後は飼料米の配合割合を最低50%以上とするなど、名称使用の基準作りが必要になるのではないか」としている。

日本で最も高価なブランド鶏卵と注目を集める『こめたま』。飼料米給与は今後、日本の養鶏生産のスタンダードとしてレギュラー規格へと移行していくのかもしれない。




 

2009年1月25日号

◎(有)篠原養鶏場(埼玉県東松山市)
最高級ブランド『昔翁ありき』『鹿鳴館』―
一番大事なのは“お客の差別化”を図ることだ


昭和50年代後半、埼玉県東松山市の養鶏家が自ら“まぼろし”の冠を付けて商品化した最高級ブランド鶏卵『昔翁ありき』『鹿鳴館』。1パック10個入り600円(農場売価は同420円)は、当時も今も破格の値段だが、発売開始から25年以上が経過した現在も、そのおいしさに魅了されたリピーター客は後を絶たない。不況風が日毎厳しさを増す中、(有)篠原養鶏場(篠原一郎社長)の年末年始は例年通りの大忙しである。

卵は作品――。再生モウルドパックを開けると、純国産鶏“もみじ”の褐色卵10個が鎮座し、〈餌は卵の原料/何をどう組み合わせるかで味がきまります/鶏の栄養や卵の味の片寄りを無くすため/沢山の天然飼料を配合します/大麦、小麦、とうもろこし、米、胡麻、そば、ふすま、米糠のそうこう類をもとに/魚介、海草、牧草で味をつけ/最後に臭みをとる為に/パプリカ、ターメリックなどの香辛料を加えます/安全性、栄養価は無論のこと/「昔の卵はうまかった」と頑なに思っている方に/こだわりの逸品です〉のメッセージが添えられている。

日本人がおいしいと感じる卵の味は昭和20年代から30年代に形成されたと、篠原氏は言う。穀類50%、そうこう類35%、タンパク原料は魚粕中心に15%、粗灰分と緑餌を与えるTDN63%(ME2583キロカロリー)の飼料がベースにならなければならないと、自分だけの贅沢のつもりで、種々の配合を試み、ダシを利かせた卵の食味テストを繰り返した。ある年の暮れ、取引先の業者が「年明け相場でなければ買わない」と言い出したことに激怒し、これからは全量自分で売ると宣言。その日のうちに看板を作り、農場での直売を始めた。昔の味を再現した『まぼろしの卵/昔翁ありき』の誕生である。

「一番大事なのは、差別化を図ること。私が考える差別化とは、お客の差別化。つまりターゲットを決めるということです。これは誰かの受け売りですが、瀬戸物屋は30万人の商圏がないと回らない。趣味の陶器屋だと3万人、骨董品屋は旦那が20人もいれば商売できる。20人のお客に取り入るにはどうすればいいか。お客と友だちになることです。業界の方々にも提唱しましたが、入口の“友だち客”を作ることが一番難しいというのが大部分の反応だった」と篠原氏は話している。



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