2010年3月25日号
◎JA全農たまご(株)
健康、食育、環境―社会貢献コンセプトに
ブランド卵の新たな機能・可能性を求めて
出口の見えない消費不況が続く中、鶏卵販売最大手のJA全農たまご(株)(本社東京、都能正紀社長)が自社ブランドの商品力向上と、新製品の開発・普及に取り組んでいる。同社は2008年9月に、基幹商品『しんたまご』のリニューアルを発表。2009年5月には売上の一部が自然保護NGOの活動に使われる『みんなの環』、9月には食育を前面に打ち出した栄養強化卵『アンパンマンたまご』を相次いで発売し、社会貢献をコンセプトに、ブランド卵の新たな可能性を追求している。
『しんたまご』は、発売開始以来のおいしさと、安全・安心・品質をそのままに、ビタミンB群の一種である葉酸を強化し、リニューアルを図った。葉酸は細胞の組成や造血に関わる重要な役割を果たすとされ、特に胎児の新しい細胞が作られる妊娠初期や授乳中の女性にとっては必須の栄養素。ほうれんそう、ブロッコリーなどの緑黄色野菜、レバー、豆類などに多く含まれるが、水溶性ビタミンのため調理過程で損失しやすく、不足しがちになる。
日本は葉酸の摂取率が先進国の中では最も低く、胎児の先天性異常である神経管閉鎖障害の発症率が高い。妊娠中の女性が摂取する葉酸量が充実すれば発症リスクは約7割低下するといわれる。『しんたまご』には、この葉酸が可食部100グラム当たり80マイクログラム(一般卵43マイクログラム)含まれている。しかも「鶏卵に含まれる葉酸は加熱調理をしても残存率が高いのが特長で、生のままでも調理をしても、効率的に葉酸が摂取できる」という。
昨年9月発売の『アンパンマンたまご』は、人気アニメ番組「それいけ!アンパンマン」のキャラクターをパックラベルや豆シールに配したJA全農たまごのナショナルブランド。単なるキャラクター商品ではなく、子どもに親しみ深いアンパンマンが登場することで、「栄養価が高く手軽に摂取できる鶏卵を子どものうちから好きになってもらいたい」との願いを込めて商品化した。
『アンパンマンたまご』は、カルシウムの吸収を促進し、骨格形成を助けるビタミンDを可食部100グラム当たり4.5マイクログラム(一般卵0.9マイクログラム)含んでおり、カルシウムが豊富な牛乳・乳製品との相性も抜群。専用ホームページにアクセスし、パッケージの生産者紹介コードを入力すると、生産農場、GPセンターが確認できる。
全農グループが経営理念の一つに掲げる地球環境保全への積極的な取り組み≠、鶏卵を通じて具体的な形にしたのが、2009年5月に新発売した『みんなの環』。消費者が1パック10個入りの同製品(オープン価格)を購入するごとに2円が世界最大の自然保護NGO、WWF(世界自然保護基金)ネットワークの日本事務局であるWWFジャパンへ寄付され、自然保護活動に活用される。パックには化石資源の節約や地球温暖化防止に役立つ植物原料由来のバイオマスプラスチックを採用。鶏ふん処理はもちろん、環境保全に十分配慮した国内の優良産地数カ所が生産を担っている。寄付金の管理はJA全農たまごが『みんなの環』の生産者に代行して行う仕組みで、寄付金額の合計は同社のホームページで確認できる(毎月1回月末に更新)。
「消費者の反応は悪くない。先日出展したスーパーマーケット・トレードショーでも、今までにない商品であると、バイヤーの皆さんは予想以上の興味を持たれていた。すべてのお客様がこの商品を選ぶとは思わないが、一部の人でも興味を持ち、手に取ってもらえれば成功ではないか」と東日本営業本部営業企画部の入澤和弘課長は話している。
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