秋を迎え、今年も「食」のイベントや展示会が多く開催された。バイヤーなど関係者を対象としたもの、一般来場者が参加可能なものなど形態は様々だが、全国各地の農畜産物をPR する機会にもつながり、また一般来場者にとっては畜産や農業を身近に感じることができる機会ともなっている。本稿では、全国で行われたイベントならびに展示会のほんの一部を紹介する。(編集部)
一般社団法人東京食肉市場協会主催の「東京食肉市場まつり2019」が10月19〜20日に、東京・港区の東京都中央卸売市場食肉市場で開催され、会期中に2万3,000人を超える来場者が訪れた。
38回目の開催となる同イベントは、国内産の牛肉・豚肉の消費拡大そして市場の存在についての認知と役割の理解促進などを目的に、年に1度だけ市場を特別解放し催される。場内では、市場棟とセンタービルの2カ所で国内産牛肉・豚肉、食肉加工品の販売が行われたほか、革製品・革小物の販売、今回の銘柄推奨牛となった「いわて牛」の試食提供や生産地である岩手県の物産販売などが行われた。さらに、特設ステージではヒーローショーやミニライブも行われて市場まつりを盛り上げた。
第33回岐阜県農業フェスティバルが10月26日、27日の2日間、岐阜県庁周辺で開催された。この催しは、県農業の現状や将来の方向性を広く県民にPRし、県産農畜水産物や県産加工品の消費拡大などを通して、本県農業の一層の活性化を図るために実施されているもの。岐阜県庁前公園、隣接する OKBぎふ清流アリーナおよびアリーナ駐車場を会場として、257ブースが出展し、岐阜県産を中心とした農畜産物や海産物、各種加工品などが販売・展示された。
26日、フェスティバル開場に先立って行われた開会式では、岐阜県知事の古田肇氏、東海農政局局長の富田育稔氏らが登壇。古田氏は開会あいさつとして、イベントが今年も開催できたことの喜びを伝えるとともに、「スマート農業ということで、最先端の農業機械の展示、また世界農業遺産マルシェとして清流長良川の鮎という岐阜の誇る世界農業遺産に加え、全国各地の農業遺産のご紹介も行っている」と見所を紹介した。
また、2018年9月に県内で発生した豚コレラについても触れ、「10月25日より、いよいよワクチン接種が開始された。岐阜県ではこれまでに約7万頭、60%の豚を殺処分してきたが、一方で瑞浪ボーノポークが生産を再開するなど、徐々に復活の動きがある。アリーナの北側に、岐阜県が誇る豚肉の試食やお買い求めいただくコーナーを設けている。是非そちらにも足を運んでいただき、岐阜の農業・畜産について応援していただければと思う。この2日間、このフェスティバルを堪能していただき、また岐阜の農業を盛り上げていきたい」と力強くあいさつした。
東日本電信電話(株)(NTT 東日本)神奈川事業部(中西裕信 神奈川事業部長)は、一般社団法人神奈川県養豚協会(山口昌興理事長)、神奈川県畜産技術センターと連携し、IoTを活用した効率的かつ省力的に豚を飼育するための飼養環境監視システムの確立に向けた実証実験を行っている。
神奈川県内の養豚農家戸数が減少傾向にある一方で、1戸当たり飼養頭数は1,000頭以上に増加(神奈川県「豚の統計(平成28年度)」)しており、効率的な豚の飼育が課題となっている。
豚の飼育においては豚舎環境の管理が非常に重要で、豚の体調に影響する温湿度は季節や時間により変動し、豚の発育ステージにより至適環境も異なるため、きめ細かい対応が求められる。多くの農家が豚の体調管理のために、温湿度をこまめに確認し、変化に合わせてカーテンの開閉や換気を行っているが、豚舎への頻繁な出入りは疾病被害のリスクを高める恐れがある。また人手不足も深刻化する中、こうした問題を解決するためにICT(情報伝達技術)やIoT(モノのインターネット)を活用した養豚管理システムも開発が進められているが、大規模なシステムの導入や豚舎の建て替えなどが必要なケースも多い。
そこでNTT東日本は、神奈川県養豚協会、神奈川県畜産技術センターと連携し、既存設備へ導入が容易なIoTを活用したシステムを構築し、「飼養環境の見える化」(温湿度データや豚の飼養環境などの監視)の実現に取り組むこととした。この実証実験は昨年12月に内覧会が行われたばかりの神奈川県畜産技術センターの環境制御型養豚施設で行われており、2020年3月まで継続される予定。
豚舎の中でも床面は劣化損傷の激しい場所である。特に肥育豚舎の場合、ほとんどの農場でスノコ、土間ともにコンクリート製で、豚の蹄や糞尿などにより激しく腐食・損傷しているケースが頻繁に見受けられる。
この問題を解決するのが、東興商事(株)(本社:東京都墨田区両国、檜山高之代表取締役社長)の「ビニルエステル樹脂塗装」で、本誌2016年8月号で詳細が紹介された後、全国各地の養豚場から施工依頼が増えている。
東興商事は昭和15年の創業以来続く化学品の卸売業を主業とし、20年以上前から機能性樹脂塗料による防食塗装事業、工場廃棄物の処理の事業を展開。6年ほど前、食品工場から排出される食品加工残さ処理について、リキッド飼料メーカーから床面の腐食の問題を説明されたのをきっかけに、これまでの技術を使い、豚舎の床面塗装を行う新規事業を開始した。
同社が防食塗装に使用するビニルエステル樹脂は、エポキシ樹脂とアクリル酸エステル樹脂の共重合体で、それぞれの樹脂の良いところを兼ね備えた特徴がある。特に強酸性に対して耐性があり、FRPタンク(耐薬品性タンク) に使用されるなど、耐酸性、耐アルカリ性に優れている。そのため、酸性度の高い(pHの低い)リキッド飼料にも耐えられる。またアクリル酸エステル樹脂の特徴でもある速乾性にも優れ、硬化剤を添加する二液タイプの樹脂塗料のため極めて短時間で硬化が進み、施工後約3時間で歩行が可能な状態となる。
第14回「アグリフードEXPO 東京2019」(主催:(株)日本政策金融公庫)が8月21 〜 22 日の2 日間、東京・江東区の東京ビッグサイト南展示棟で開催された。
アグリフードEXPO は国産にこだわり「農」と「食」をつなぐ、プロ農業者たちの国産農産物・展示商談会――今回も全国各地の稲作、野菜、果樹、畜産などの農業者や食品加工業者など669 社が、北海道〜九州・沖縄まで地域ブロック別(地域別出展者数:北海道28 社、東北83 社、関東126 社、北陸・信越50社、中部37 社、近畿75 社、中国54 社、四国63 社、九州・沖縄159 社)に配置され出展した。
豚肉・豚肉加工品関連の出展ブースではブランドポークや食肉加工品が展示され、試食提供などPR が行われた。
全国13工房の国産生ハムが軽井沢に集結――イタリアの「パルマハム」やスペインの「ハモン・セラーノ」などヨーロッパの著名ブランドに匹敵するような品質の長期熟成生ハムが日本国内でも生産され始めている。その多くが小規模な工房であることから、国内の製造者同士の交流と生ハムのマーケット拡大を目的にした「国産生ハムフェスティバル」が7月7日、長野県軽井沢町の農産物直売施設「軽井沢発地市庭(ほっちいちば)」イベントホールおよび中庭で開催された。一昨年と昨年に秋田県仙北市で開催されたのに続いて、今回が3回目。
主催したのは国産長期熟成生ハムの普及活動や正しい知識の啓蒙活動を通じて生ハム市場を拡大させようと2012年に設立された国産生ハム普及協会(野崎美江会長)。同協会は2017年2月に一般社団法人に改組し、①国内に点在する国産生ハム生産者ネットワークの構築と情報発信②国産生ハムの普及セミナー・イベント事業③国産生ハムの認証事業④国産生ハムを活用した地域活性事業⑤国産生ハムと国産農産物の消費拡大を目指し、販売ネットワークの構築、などの事業を行っている。
養豚のフローリングシステムメーカーとして長年の実績を持つ「NOOYEN」(ノーエン社、本社:オランダ)の営業部長であるローレンス・ヴァン・フック氏がこのほど来日し、業務提携を行っている(株)フロンティアインターナショナル(本社:神奈川県川崎市、渡邉典夫社長)の代表取締役会長である大貫勝彦氏と同社のヤキン・ワン氏に同席いただき、フローリングシステムに関連する世界の養豚事情などをうかがった。(編集部)
ノーエン社は、長きにわたり独自の優れた養豚のフローリングシステムを開発し世界に供給してきた。同社は1978年、6人の兄弟が自分たちの経営する養豚場で使用するスノコを作り始めたが、間もなく彼らのスノコは他の養豚農家の間で評判となり、スノコ製造業の道に進むことになった。 ノーエン社は現在、国外にも製造拠点を持ち、世界中の養豚農場に鉄、鋳物、スーパーコート、プラスチックスノコなどを含むフローリングシステムを提供するとともに、養豚経営を続けている。
ノーエン社のフローリングシステムの中でも近年特に注目されているのが、「バランスフレーム」(Super CoatedBalance Frame)。「バランスフレーム」は「可動式の母豚床材」で、分娩柵に取り付けられた柔らかい素材のスイッチにより、母豚が横たわると、母豚部分のスノコの高さは自動的に子豚のスノコの高さまで下がり、母豚が立ち上がると母豚のスノコは安全な高さまで上がる。母豚の立ち位置を上下させることで、圧死による子豚の死亡率を劇的に減少させることができる。また「バランスフレーム」を使用することで、分娩舎の担当者は長時間にわたり舎内を見回る必要もなくなり、子豚の生存率向上とともに分娩舎での省力化につながる。
アジア最大級の食品・飲料専門展示会である「FOODEX JAPAN /国際食品・飲料展」が3月5〜8日まで、千葉・千葉市の幕張メッセで開催された。44回目を迎えた今回は、海外出展ゾーンと国内出展ゾーンなどにわかれ、世界94カ国・地域から、食品・飲料メーカー、商社など3,316社(4,554ブース)が出展。国内外から多くの食品バイヤーや購買担当者らが訪れ、4日間で昨年を上回る8万426人が来場した。
国内出展ゾーンの畜産コーナーには、津軽の米を食べて育ったブランド豚肉「つがる豚」を生産する(株)木村牧場や、「お米で育てた畜産物」をPRした一般社団法人日本養豚協会(JPPA)など養豚・豚肉関連を含む11社・団体が出展。安全・安心な日本産畜産物に関する情報発信とPR を行った。
米活用畜産物等全国展開事業としてお米で育てた畜産物の普及推進を図っているJPPAは昨年に引き続き、今回も「国産飼料用米で育った畜産物(豚肉、鶏肉、鶏卵、牛肉など)」の普及促進のため、同展示会にお米で育った畜産物を取り扱う生産者らとともに共同出展を行った。
フードエンジニアリング分野にも注力
VNUエキシビション・アジアパシフィック社とVNUエキシビションヨーロッパ主催によるアジア太平洋地域最大規模の畜産展示会「VIVアジア2019」が3月13〜15日にタイ・バンコクのインターナショナル・トレード・アンド・エグジビション・センター(BITEC)で開催された。
2年に1度開催されるVIVアジアは毎回、畜産の器具・機材、飼料、飼料添加物、薬剤、ワクチンなど世界各国の畜産関連資材や技術が多数出展されるが、今回はこの展示会が始まって33回目を迎え、飼料から食品までを網羅する展示内容で一気に世界60カ国・1,250社に拡大。出展スペースはBITCE全ホールを使用したため、前回より3割増の約3万 m2となり、日本企業も過去最多の出展となった。また16回目となる「フードエンジニアリング」も拡大し、世界各国から食肉処理、食材、添加物、調味料、マリネ機器、冷却/冷凍、包装、物流および保管、食品安全管理、デジタル技術を用いたIT、衛生、排水処理、エネルギー管理関連企業100社以上が出展した。関連セミナーも多数開催され、今回は特にアフリカ豚コレラが中国を中心の猛威を振るっていることから、その関連講演が多く行われた。
「第11回全日本大学対抗ミートジャッジング競技会」(Japan IntercollegiateMeat Judging:日本ICMJ、河原聡実行委員長)が3月6 〜 8日の3日間、東京・港区の東京食肉市場など都内会場で開催され、今年は畜産系13大学から60人の学生が参加して熱戦を繰り広げた。
同競技会は、大学で畜産学などを学ぶ学生を対象に、食肉格付の理論と体験学習の機会を提供するとともに、食肉産業界、大学および学生間の交流を促進し、日本の畜産・食肉産業界の将来を担う人材の養成に資することを目的に2009年度より開催されており、未来の食肉業界を担う若者を支援し続けている。
競技は牛枝肉部門、豚枝肉部門および部分肉・精肉部門など部門ごとに行われ、部門別および総合の成績で順位を競う。成績を個人、大学別に集計し、各部門優秀成績者上位3人、総合優秀成績者 5人ならびに大学チーム部門上位3大学を決定する。また、開催期間中には、食肉産業に対する現状や認識、将来像を学んでもらい、食肉産業への理解と造詣を深めてもらおうと特別講演や食肉に関するグループディスカッションも行われた。
伊勢湾を望む三重県津市の丘陵地にある(株)大里畜産は、本社農場をはじめとする県内5農場で養豚生産を展開しており、2012年には、消費者に安心・安全な豚肉を消費者に届けることを目的にISO22000を認証取得した。同社が生産する銘柄豚「伊勢美稲豚(いせうまいねぶた)」は、三重県産の飼料米を配合したオリジナルブランド飼料を用いて生産され、地元三重県をはじめ東海3県などで流通・販売されている。同社代表取締役の木戸利信氏、また獣医師であり品質保証部顧問および家畜診療所長の杉山明氏に銘柄豚生産の取り組みやISO22000認証取得の経緯についてうかがった。(編集部)
伊勢美稲豚は、甘みの濃い脂身とさっぱりとした後味が特徴の豚肉。思わず口に出して読みたくなる印象的な銘柄名だが、これはかつて三重県が伊勢の国と呼ばれていたことに由来し、県産のお米を食べさせて作ったおいしい豚というイメージでつけられた。そのおいしさと高レベルの安全性が評価され、2016年5月に三重県志摩市で開催された伊勢志摩サミットではプレスセンターでの食材に選定された実績も持つ。この豚肉は東海3県を中心に東海コープおよび傘下の生協で販売されているほか、三重県内のスーパーでも購入が可能だ。
maXipig はスペインIUL S.A. 社より発売されている豚精子の活性化を図る装置です。maXipig は精液保管庫のような形状で、この装置にAI に使用する直前の精液を入れ、30 分間独特のパターンで照射される赤色LED 光を当てます。庫内温度は17 °Cに保たれており、赤色LED 光照射以外には、精液に対して加温を行うなどの物理的作用は一切ありません。日本での発売前に国内養豚場での交配試験を行う機会がありましたので、その成績を報告いたします。
maXipig を使用した精液を用いて人工授精を行うことにより、受胎率の改善が認められました。これはControl 区と比較して年間を通して認められ、夏季においても有用であることから、ヒートストレスによる繁殖成績の低下に対しても一定の効果があるものと考えられます。また、分娩成績も総産子数、生存産子数共にControl 区と比べて高い値が認められ、この点においてもmaXipigの有効性があるものと考えられます。さらに卵巣で持続的に起こる排卵の時期に合っていない交配に対しても産子数のバラツキが少なくなっていることから、効果があるものと考えられます。
maXipig は、豚精液に特定パターンの赤色LED 光を照射することで精子の活性化を図る装置です。養豚場などで人工授精を行う前に、maXipig を用いて精子を活性化することで、受胎率および子豚産子数を高めることができます。2017年初旬に上市され、欧州を中心にすでに約100 台が納入され、その高い効果が今注目を集めています。
同製品は、養豚業の盛んなスペインにおいて、バルセロナを拠点とするIULS.A. 社 (以下IUL)によって開発されました。IUL はバルセロナ大学とオックスフォード大学との共同で、赤色LED 光による光刺激と豚精子の機能向上の関連性についての研究を数年前に開始しました。幾つかのパターンの赤色LED光を精子に照射し各機能に及ぼす効果を検証した結果、ある特定パターンの光を照射するとき、精子の運動性や生存率等の機能を最も効果的に向上させることを発見しました。
その後、さらなる検証をすべく、スペイン国内の養豚場10 カ所でプロトタイプのmaXipig を用いて評価を実施しました。評価頭数が飛躍的に上昇し、統計学的にも有意と判定される好結果となりました(下記スペイン国内10 カ所での結果)。なお、統計分析はジローナ大学で実施され、この結果をアイルランドで開催された獣医学会(IPVS)に公表しています。
昨年11 月10 〜 11 日、東京・日比谷公園で開催された「第9 回ファーマーズ&キッズフェスタ」(ファーマーズ&キッズフェスタ実行委員会、構成団体:公益社団法人日本農業法人協会)に出展する形で、一般社団法人日本養豚協会(JPPA、香川雅彦会長)青年部会(橋本晋栄部会長)の通算第12 回目となる国産豚肉消費拡大イベント「俺たちの豚肉を食ってくれ! 2018」(俺豚)が開催された。2007 年に新宿アルタ前広場でスタートし、今回が12 回目を迎える俺豚においても、日頃、豚肉生産に汗を流す日本の若手養豚生産者たちが全国各地から大集結し、自ら生産した国産ブランド豚肉をその場でしゃぶしゃぶや焼肉に調理し試食提供した。
初日に行われた開会式では、橋本青年部会長のあいさつに続き、JPPA の松村昌雄会長代行、農林水産省生産局畜産部の富田育稔畜産部長よりあいさつが行われ、イベントは盛大にスタート。橋本青年部会長は「自分たち生産者が自らの手で消費者の方々にPR するマーケティングの一つだと思う。こういう活動は地方ごとにはやっているかもしれないが、全国のみんなが集まって、直接みんなで一致団結してやるというのは本当に少ない稀な活動。この機会を通じて、消費者の皆さんに自分たちの生産物を普及してほしい」と参加者に呼びかけた。
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