2013年12月25日号

◎(有)井上養鶏場
ナチュラル&リッチの「さがみっこ」
本来のあり方を守り続け、伝え続ける


「ナチュラル&リッチ」を掲げ、鶏本来の姿を追求して生まれたブランド有精卵「さがみっこ」。生産する(有)井上養鶏場(神奈川県相模原市)は「四季の自然を肌で感じながら暮らすことで心身ともに健康な鶏に育つ」と、昔ながらの開放鶏舎で平飼いにしている。

鶏の健康が第一という井上茂樹社長は、「鶏が本来の姿でいられる環境」を求め雌雄を混飼。さらにビタミンなどの栄養強化を敢えてせず、「ありのままの姿を守り続ける事」を大切にしている。

飼料には乳酸アミノやゴマ粕、牡蠣ガラなど9種類を配合しているが、井上氏は「いいエサを使っていますというのは、当たり前のこと。卵は鶏が食べた物がダイレクトに反映されるので、エサをどう食べているのか、鶏がエサの栄養をすべて吸収できているのかが大切」と力説する。

こうして生まれたさがみっこの味は、「これまでに1500種類以上のたまごを食べた」というたまご博物館の高木伸一館長が著書「たまご大事典」の中で「おすすめたまごベスト30」の一つとして取り上げるなど、折り紙つきだ。

さがみっこを使用する店舗も増え続けている。その各店を、井上養鶏場では「パートナーショップ」と呼んでいる。「うちが儲かるだけではダメ。卵の良さをわかってくれるお店に感謝しながら、お互いに協力していきたい」と、ホームページで「その店の雰囲気が伝わるように」紹介している。

今年はさらに、「やわらかな白身の中にトロトロの黄身がたっぷり詰まった」トッピングエッグ「トロタマサガミッコ」を発売した。井上氏は「個人的に温泉卵はダシをつけて食べるイメージがあって、そうするとどうしても水っぽくなってしまう。茹でる温度や時間を調整することでさがみっこの卵白の強さを生かすと共に黄身のトロみを追求し、ありそうでなかった食感にした」という。




2013年11月25日号

◎松本米穀精麦(株)
GPセンターHACCP第一号認証を取得
「彩たまご」が優良ブランド認定10周年


埼玉県の農産物ブランド推進品目に認定されている「彩たまご」を取り扱う松本米穀精麦(株)(埼玉県熊谷市)が10月、一般社団法人日本卵業協会(羽井紀行会長)が今年立ち上げたGPセンターHACCPの第一号認証を取得した。

同社は安永元年(1772年)創業という、老舗中の老舗。GPセンターHACCPの第一号認証を取得したのは、「世界標準のHACCPに基づいた食品安全マネジメントが必要」(松本邦義社長)という考えから。

彩たまごは埼玉県と埼玉県物産振興協会が優れた県産品として推奨する「彩の国 優良ブランド品」と、埼玉県農林部の「埼玉農産物ブランド推進品目」に認定されているほか、県が畜産食品の安全・安心を高めるための「彩の国畜産物生産ガイドライン」に基づき、農場段階でHACCPの考え方を用いた管理を行っている。また、今年2月に改修したGPセンターは技術力や環境面で優れている工場を知事が豊かな彩の国づくりの協力者(パートナー)として指定する「彩の国工場」に指定されるなど、もともとHACCPに基づいた管理を行ってきた。

しかし、その松本氏でも「HACCPに取り組み始めた頃は苦労した」という。今では「実際に回してみると今までルーチンワークとして行ってきた日常業務の中にいかにムダが多いかがわかったし、私も含めて社員のレベルが向上したことも実感している。世界標準の衛生管理を行うことでお客様の信頼も向上するだろうし、経営コストの削減にもつながっている」と、その効果を実感している。

今年は彩たまごが「彩の国優良ブランド品」に認定されて十周年になるのを記念して、「たまごのせレシピコンテスト のせてごラン」と題したキャンペーンを展開しているほか、県のキャラクター「コバトン」のPRで地元貢献、日卵協のタマリエで消費拡大など、地元貢献や協会副会長としての活動も精力的に行っている。

松本氏が代表幹事を務める日卵協ヤングミーティングは今年、卵の消費拡大のための運動「たまごニコニコ大作戦!!」を大々的に展開。業界関係者が全国を自転車で縦断し、10月に愛知県豊橋市で無事ゴールしたが、全国の関係者に「これで終わりではない。せっかくできた絆を今後につなげていこう」と呼び掛けた。




2013年10月25日号

◎神奈川中央養鶏農業協同組合
丹沢の水と緑がくれた「kuretama」
ゴマとアスタキサンチンで栄養機能を強化


丹沢山系の清冽な地下水とNON-GMOの飼料で「相模の赤玉子」や「お米たまご」などの特殊卵を生産してきた神奈川中央養鶏農業協同組合(神奈川県愛川町、彦坂茂組合長)が今年夏、飼料にゴマとビタミンE、アスタキサンチンを取り入れた新たなブランド卵「kuretama(くれたま)」を発表した。

6個パックで350円という強気の価格設定にも関わらず、卵の消費拡大を目指して全国の関係者が展開している「たまごニコニコ大作戦!!」の神奈川県のイベントでは3日間の期間中、用意した100パックを毎日すべて売り切るなど、洗練されたパッケージデザインとともに消費者の注目を集めている。

今は1ロットでの生産だが、昨年4月に「うみたてたまご卵菓屋(らんかや)」としてリニューアルした直売所での販売などで、「将来的には生産と販売の量を増やしていきたい」と考えている。

昭和32年に養鶏組合を設立して以来、常に最新の飼養管理技術を取り入れて時代の先端を行く神奈川中央養鶏は、卵のブランド化と6次産業化にもいち早く取り組んでいる。現在は農林水産省の6次産業化認定を受け、ロールケーキやカステラなどの加工品も製造・販売。さまざまな工夫と仕掛けをみせる彦坂組合長は「特殊卵も6次産業化も、組合の卵のファンをつくるため。この厳しい時代に生産者が生き残っていくためには、高い品質の製品に基づいた販売戦略が欠かせない」として、これからも時代の先端を走り続けていく構えだ。




2013年9月25日号

◎(株)ホクリヨウ
医食同源に基づいた「PG卵モーニング」
発売30周年迎えさらなる認知度の向上図る


赤玉ブランド卵「PG卵モーニング」は、正しい食生活が健康づくりの基本という医食同源の考え方に基づき、ビタミンやヨードなどの栄養素を総合的に高めている。

生産する(株)ホクリヨウ(札幌市、米山大介社長)の福島尚樹取締役営業本部長は「今年で発売30周年になるのを記念して、これから来春にかけてパッケージデザインの一新などでキャンペーンを行う」として、さらなる認知度の向上を図る構えだ。

同社ではさらに、「あっさりめの卵がホクリヨウのウリ」(福島氏)という特徴を活かし、「生産者の顔の見えるたまご」としてパックに生産農場の写真をデザインした「雛の巣」、飼料中に動物性タンパク質を一切使用しない「サラダ気分」など、多彩なブランド卵を揃えている。

これらのブランド卵もスーパーのPB(プライベートブランド)品も、飼料には独自開発のオリジナル飼料を使用。プレミックスを添加した専用飼料は「強健な母鶏からの清浄卵の生産」というコンセプトを反映したもの。ヒナも、独自の飼料と飼育技術に基づき、初生雛を導入している。

現在はGPセンターを5カ所に設置し、道内各地へ6〜10時間以内に新鮮な卵を供給する体制を整えている。

同社は徹底した衛生管理でも知られている。リスク分散の考え方から農場を6カ所に設置。2002年にはマクドナルドHACCP認証を取得、09年には札幌GPセンターでISO22000認証を取得し、現在は全GPで同認証を取得している。

トレーサビリティによる情報公開も同社の特徴の一つ。卵の一つひとつに賞味期限と5桁の記号(Uコード)を印字し、生産履歴や使用している飼料原料などもすべて認識できるようにしている。

これらはすべて「品質管理を徹底的に追求し、世の中に安心して食べていただける製品を提供する」という経営理念に基づいたもの。同社ではその理念通り、独自スペックの成鶏舎や鳥インフルエンザ対策、サルモネラ対策など、徹底した安全対策を講じている。




2013年8月25日号

◎アクアファーム秩父
1個500円のトップブランド「彩美卵 輝」
厳選した飼料と品種改良で“最高級の卵”に


1個500円という、おそらく日本で一番高価な卵「彩美卵 輝(さいびらん かがやき)」。生産するアクアファーム秩父(埼玉県秩父市)の新井照久氏は、埼玉県の地鶏「タマシャモ」をベースに5年に渡って品種改良を重ね、「F5まできてようやく納得できる卵になった」という。

もちろん、高いのには理由がある。1000坪の広大な土地の農場に、鶏は1500羽しかいない。その中でも、輝を生むF5はわずか150羽ほど。放し飼いで、日産卵量も良くて「7割程度」しかない。

飼料にも、徹底的に手を掛ける。採算性を考えれば効率が悪いとしか思えないが、新井氏は「そんなことは百も承知の上で、手間を掛けておいしい卵づくりに取り組んでいる」と、気にもかけない。こうした工夫があってこそ、カラーファン17の鮮やかなオレンジ色に「輝く」卵黄があり、生臭さがなく濃厚で、コクのある味に仕上がっている。

開発当初は1年間まったく何の音沙汰なしだったが、テレビで紹介されると途端に人気に火が付いた。

テレビではその味と価格にばかり関心が集まるが、新井氏がもっとも強い思い入れを抱いているのは、値段の付け方だ。「売り先にペコペコして価格を下げられるなどというのはおかしな話で、本来、生産者は卵を買っていただいて、買う側は卵を使わせていただくという、対等の関係であるはずだ。生産者は自分で作った物にプライドを持って、自分で値段を付けられるようにしないと」と、1個500円の価格にも自信をみせる。

直売所は道案内の看板を一つしか出していない上、交通の便も決して良くはないが、わざわざ来てくれる人はことのほか大切にする。「ちゃんと話をして、なんでこの値段なのかを丁寧に説明すればわかる人にはわかってもらえるし、納得して買ってもらった方がこちらもありがたい」という。そして、話をした人の多くは常連になり、今度は新しい客を連れてくる。「中にはお土産を持って来たりお中元を贈ってくれる人までいて、こっちは買ってもらう側なのに」と恐縮するが、自信のある卵を売っているという自負があるからこそ、このやり方を貫いている。




2013年7月25日号

◎(株)田中農場
カラーファン16の濃厚な「特選赤い卵」
地養素を加えて甘みの強い味わいに


(株)田中農場(埼玉県深谷市)のトップブランドは「特選赤い卵」と「特選白い卵」。飼料に地養素を添加することで卵特有の生臭さを消し、甘味を強くしている。カラーファンが15.5〜16という卵黄色の濃さも自慢の一つだ。

田中稔社長は「『おいしい』と『安全』だけを追求してきた」という技術畑一筋に歩んできた生産者だけに「農場側の苦労や努力というのは本来、消費者に伝えるようなものではなく、結果だけを評価していただくものだと思っていた」が、最近、「生産者の顔が見えることで、消費者にとっては生産過程や流通の透明化、なにより安心につながるのかもしれない」と、考えを改めた。そのきっかけになったのは娘婿の拓也氏の存在。同氏が就農したのは2年前。畑違いからの就農だったが、「いざやってみるとこの業界にはまだまだ可能性があると感じた」という。ウェブ担当としてホームページの制作や通販、ブログなどのほか、県内各地の直売所を回るなど、生産だけでなく、営業活動にも幅広く携わっている。

また、日本卵業協会ヤングミーティングの“たまごニコニコ大作戦”では、埼玉県のリーダーとしても活動。異分野からの転職という慣れない日々に加えて県リーダーとして多忙を極める毎日だが、「たまニコのお陰で多くの先輩方の話を聞けるし、それが自分の経営にとっても参考になる」と、前向きに活動している。「経営者なら休みなしでも何の問題もないし、今はいろいろ挑戦できることが楽しい」と週7日労働を実践する体育会系・疲れ知らずの後継者は、これからも「思い立ったら突き進む」勢いだ。




2013年6月25日号

◎小林養鶏場
単味でなければ良し悪しはわからない
「いい卵作り」のために続ける自家配合


「単味でなければ飼料の本当の良し悪しはわからない」と、自家配合を続ける小林養鶏場(茨城県水戸市)。代表の小林清一氏は「トウモロコシが粉砕された後では酸化が進むし、夾雑物の除去が難しい」と、丸粒を自社で粉砕し続けている。

以前は「完全な絶食ではなくトウモロコシだけによる換羽もしていた」というが、「換羽後の卵はどうしても質が落ちるし、そんなものをお客さんには売りたくない」と、強制換羽はせず、早ければ450日齢で淘汰している。

開放鶏舎で1段1羽という薄飼いで「夏場の暑さによる死亡率が、2羽飼いの頃から比べると10分の1程度になった。鶏も健康になってにおいも少なくなったし、いいことづくめ」。

売上げのほとんどは、農場入口にある自動販売機が占めており、直射日光が当たらないように、西側には壁面を当て、南側には木を植えている。

「暑い場所に置いて冷房を入れるのは、手間もコストもエネルギーも、ムダ以外の何物でもない。自然を活かしてできるだけそれに近い環境を整えれば、おのずと理想的な環境に整っていく」という考え方は、卵作りにもつながっている。「開放鶏舎で自然の風を取り込み、鶏舎の脇にも植樹をしている。また、真夏でも水温の低い井戸水を使っているので、暑くても人工的な換気が必要ない。どうしてもという時だけ井戸水を鶏舎周りに撒いているが、それだけでも打ち水効果で涼しくなる」

米農家でもある実家で、26歳に就農。しかし、「オヤジと大ゲンカをして」間もなく離農した経験も。その後「営業の仕事がしたい」と就職した先の会長から「雇ってはやるが、長男なんだから2年勉強したら実家に戻れ」と言われたことが転機になった。

小林氏は「農家を継いで10数年。『自分で決めたからにはすべて自分の責任』で何があっても他人のせいにはできない環境だが、今は横のつながりもできて楽しく生きるのが幸せ」と、農家ライフを満喫している。




2013年5月25日号

◎(有)杉山養鶏場
安全・安心・愛情一杯の「さくら玉子」
耕種農家との連携で循環型農業を実践


「安全・安心・愛情一杯」を掲げ、ゴトウさくらの卵殻色をイメージした看板が目にも鮮やかな直売所「さくら玉子」。農場に隣接する倉庫を改造して始めた店で、これ以上はない新鮮な卵を直売している。

昭和23年の創業以来、純国産鶏・ゴトウ一筋の(有)杉山養鶏場(静岡県御殿場市)は、1万羽という規模ながら全量を直販に切り換え、地元特産の野菜も販売、発酵処理した鶏ふん堆肥は耕種農家からも評判を呼んでいる。その独自の経営手法が評価され、平成13年には全国優良畜産経営管理技術発表会の中小畜産部門で優秀賞を受賞した。

看板商品と同じ店名の「さくら」にちなみ、卵のサイズによって小玉を「三分咲き」、中玉を「五分咲き」、大玉を「八分咲き」と命名、味付卵は「黄身の瞳」、温泉卵は「湯上りの黄身」などと、遊び心をくすぐるユニークなネーミングもリピーターを呼ぶきっかけになっている。

「売上げが少ないと余剰卵が出てしまうため、産卵成績が落ちていなくても早ければ8カ月で淘汰しなければならない」という羽数調整の難しさも抱えているが、平成2年に法人化して以後、恵まれた立地を活かし、野菜と合わせ年商は1.4億円にまで成長した。

また、鶏ふんは密閉型の処理施設で一次発酵処理した後に切返し、特殊肥料にして耕種農家に販売するなど、循環型農業の実践にも取り組んでいる。

ケージフィーダーの導入や自動販売機の設置、みどり会の立ち上げなど、現在の経営の基礎を築いたのは杉山哲朗社長だったが、長男の道洋氏が税理士事務所勤務を経て就農した1年後の平成12年、良き師でもある哲朗氏が病に倒れてしまう。「その時に支えになったのは「仲間たち」。生産農家仲間には鶏の飼養法を学び、レストランを経営する義理の兄にはスイーツを開発してもらった」(道洋氏)。その後、哲朗氏は順調に回復。富士山麓の地下水による飼養法や売れ筋商品のプリンなど、当時の経験は今にしっかり生きている。




2013年4月25日号

◎(農)会田共同養鶏組合
ゴトウさくらにモミ米20%の「米たまご」
国産のエサ米で食料自給率の向上を図る


「自分でエサまで作らないとほんとうに健康な鶏にはならない」という考えに基づき、昭和56年から第一種承認飼料工場で自家配合を続けている会田共同養鶏組合(長野県松本市)。

その工場内に掲げられている中島学会長の理念「遺伝子組換え原料を拒否した純粋なエサを使います」「国産のエサ米で自給率向上を目指す」の通り、NON-GMOとポストハーベストフリーの飼料原料を使用し、平成20年からは飼料米の利活用の実証試験を開始、23年にはモミ米を20%配合した「あいだの米たまご」を発表した。

中島会長は「荒れ地になっている所を本来の美しい水田の姿に戻すことで食料自給率が上がれば素晴らしいし、鶏の健康にも卵の品質にもいい」とその取り組みを説明する。

飼料米の導入に当たっては「耕畜連携で循環型社会をつくるため」、納入先である生活クラブ生協や生産農家とも勉強会を重ねて、さまざまな試験も行った。

組合からは米農家に1ヘクタール当たり450キログラムの鶏ふんを無償で提供、その肥料を使ったモミ米で育った国産鶏・ゴトウさくらが卵を生むという型は、まさに「再生可能な循環型農業を確立する」という創業の精神を現実化したもので、現代のアニマルウェルフェアの考え方とも合致する。

飼料米専用サイロの新設や飼料設計システムの組み替えなど、手間とコストも掛かったが、その結果として生まれた米たまごは、各種の科学分析でオレイン酸やビタミンEを多く含むことが証明され、「お客さんからもおいしくなったと言われる」と、今や「平飼いたまご」と並ぶ看板商品になっている。

その平飼いたまごは、飼料に乳酸菌とオリゴ糖、カキ殻などをバランス良く組み合わせて配合するなど、鶏の健康に配慮した飼養法を続けている。さらに牧草を使った「牧草たまご」や「健やか」など多くのブランド卵をそろえるが、飼料はそれぞれ異なる設計がされており、自家配合の強みを生かしている。こうした中でも現在、特に力を入れているのが飼料米だ。

中島会長は飼料米の利用促進に向けた今後の取り組みについて「米たまごの良さが広まることで飼料米の良さも広まって、将来的には反収1トンの多収穫米など専用種の開発につながっていけば」と期待を寄せている。

卵かけご飯を食べてほしい

昨年11月には農場HACCP認証を取得。「組合組織に特有の苦労もあった」が、「絶えず改善していこうという姿勢が生まれてきたのはプラス」と前向きにとらえている。

こうしたこれまでの品質や生産性、衛生管理面への取り組みに加えて、今春は安曇野市に直売所をオープンさせる。これは「利益率が低い生産の1次産業だけではなく、加工や販売まで含めた6次産業化によって農業を発展させたい」という思いから。昨年は農水省の6次産業化法で総合化事業計画の認定を受け、親鶏の加工処理施設もつくった。

直売所では親鶏を使った300グラム入りの「味付け肉」のほか、地元農家が生産した野菜も販売する。さらに「卵かけご飯はぜひ食べてもらいたい」と試食コーナーを設けて、新たなファン層の開拓も図る。 「直売所で加工品の手応えをつかんで、ゆくゆくは新しい事業の柱にしたい」という中島会長の目は、常に前を向いている。




2013年3月25日号

◎(株)モトキ
「じゅんちゃん」のさらなる用途拡大へ
“うずらの伝道師”が新たな使用法を提案


「餅は餅屋、うずらはうずら屋」を掲げ、「本木うずら園」として昭和31年に創業した(株)モトキ(埼玉県所沢市)は現在、日高市の農場で20万羽を飼養、ブランド卵「じゅんちゃん」など16万個/日を生産している。農場では微生物(バチルス菌)を混ぜて床を作り飼料に添加。これは「環境(場)の力を向上させて健康な母体にすることでおいしい卵を作る」という本木裕一朗社長の考えによるもの。防疫のためにも施設内に散布しているという。卵の成分の70%を占める水にも着目し、特殊な装置による浄水をミネラル化して飲水に加えるための最新設備も導入している。

卵の売り上げのうち7割は生卵という同社だが、加工卵にも力を入れる。半熟卵をダシ醤油に漬け込んだ「プチとろ」、主力の水煮チルドのほかに「うずらニンニク卵黄」や「極上うずらの生カステラ」、「うずらの串フライ」などラインナップは幅広い。

本木社長は「うずらの最大の特徴はその小ささと、豊富な鉄分やビタミンA、Bなどの栄養価の高さ。お子さんや高齢者など量を食べられない人でも少量で十分なタンパク質を摂取できるし、健康と美容にも良い」と、その良さを伝えるために「うずらの魅力伝道師」を名乗り、卵だけでなく、フレンチレストランなどに精肉も販売している。

2003年にはフランスから「シャントゥ・カィユ」の種卵を日本で初めて導入し、4000羽を自社農場で育雛、育成している。さらに、08年には本社敷地内にうずら専門カフェ&ショップ「うずら屋」もオープンさせた。

「価格競争では自分の首を絞めるだけ。今は全体のパイを広げることに全力を挙げている」という本木社長の目は、さらなる消費拡大に向かっている。

2013年2月、さいたまスーパーアリーナで行われた「食と農の展示会・商談会2013」には従来の醤油ベースに加えて、バーニャカウダやカレー、シチュー、トマトなどの漬け卵を出品し、来場者の注目を集めた。

モトキは今後も、バイヤーや消費者に向けて多彩な情報を発信し、うずらの普及促進を図っていく方針だ。




2013年2月25日号

◎(株)ホソヤ
加熱しても退色しない卵黄色とコクのある味
「静岡産まれ」が食のセレクション認証を取得


加熱しても退色しない卵黄色とコクのある味が地元スーパーや消費者、シェフの間で評判を呼び、大手カステラメーカーや地元の洋菓子店などで着実に売上げを伸ばしている「静岡産まれ」。昨年開通した新東名高速道路のサービスエリアでも「地産地消」の一翼を担い、地元産の卵が多くの店舗で使われている。

実験農場と位置付ける家禽研究所でこれまで数々の最新機械設備を開発し、その多くが国内外で広く採用されているホソヤが特殊卵市場に乗り出したのは、「健全な鶏卵取引のため」(細谷泰社長)でもある。

細谷社長は「売上がどんなに頑張っても相場に左右されるだけで見返りがないのなら、社員たちの給料もボーナスも正当な評価はできないし、それでは彼ら彼女たちが気持ち的にも頑張りようがない。相場云々を余り気にすることなく、良い商品をそれに見合った価格でお客様に提供できることができれば、社員たちのモチベーションにもつながると思う」という。

2008年には安全・安心の「しずおか農林水産物認証」を取得、12年には静岡県産茶葉とマリーゴールドを添加した飼料を給与した卵として「しずおか食セレクション」も受けた。茶葉の効能で卵に特有のにおいが少なくなり、マリーゴールド添加で卵黄色がきれいになった。カラーファンは12〜13に設定、加熱しても退色はほとんどない。

生産効率向上へ新技術を導入

1960年の会社設立以来、原点である自動給餌システムをはじめとする機械設備の開発、販売と共に、採卵養鶏場も経営してきたホソヤは、2003年には業界に先駆けてISO9001:2000認証を取得。現在はHACCP手法を取り入れた衛生管理体制の構築に向けてISO22000に準じたマニュアルを策定し、生産現場に落とし込むための勉強会を重ねるなど、「顧客のニーズにいつでも応えられるよう」備えを万全にしている。

2010年には代理店契約を結んだ独・ヘルマン社の直立ケージシステム(ウインドウレス10段)をモデル施設として自ら導入。陰圧式のトンネル換気システムのノウハウを蓄積している。

さらに、これらの品質向上や衛生管理対策に続いて生産性向上と経営改善を図るために、エッグフローシステムも独自開発した。各鶏舎からGPセンターに送られてくる鶏卵の量を毎時一定に保つことで、汚卵や破卵のリスクを軽減し、自社試験では「規格外率が2%改善した」。

機械設備と鶏卵生産の両面で新製品を次々に開発し続ける背景には、「今の鶏卵業界は、設備投資をして生産効率を上げるか、それができなければ事業そのものを縮小、最悪やめるかという厳しい選択を迫られている」という細谷社長の思いがある。その思いのもとに、既存の設備更新やGPセンターの新設も視野に入れる。

設備開発と自社農場経営での最新技術のシナジーを生かした「オンリーワン企業」を目指すホソヤは、これからも走り続けていく。



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