鶏卵肉情報 進化するブランド

2022年12月25日号

◎(株)GAC(北海道七飯町)
シリーズ進化するブランド185
平飼いなど7つのこだわりの「ななエッグ」
臭みがないのにコクがある特徴的な味わい


北海道の南部、駒ヶ岳を望む七飯町(ななえちょう)で「ななエッグ」を生産している(株)GAC(山根基広社長)には、「7つのこだわり」がある。

1つ目は、卵黄が大きく、卵かけご飯に最適な純国産鶏、岡崎おうはんを飼養していること。2つ目は、10羽に1羽の割合で雄鶏を飼育し生命力の強い有精卵にしていること。3つ目は、飼料に貝化石を配合、カルシウムやミネラル分を補い、卵臭さがなく、食べやすい卵にしていること。4つ目は、ストレスフリーな平飼いの状態で育てていること。5つ目は、初生雛から導入し、品質向上のための努力を重ねていること。6つ目は、横津岳のおいしい湧き水を使用するなど、地元の環境を生かした養鶏を行っていること。7つ目は、いつでも新鮮な卵を出荷していること。

飼料には北海道産の米ぬか、飼料用米、小麦クズを配合し、一度煮て消化吸収を高めてから給与している。逆に、0〜5日齢は敢えて消化のよくない青米と水だけで育て砂肝を鍛えることで、成鶏になってから餌食いが良くなり、いい卵を生むという。

アニマルウェルフェアについては、「ストレスフリーな環境で育てば鶏も良い卵を生むはず」とし、「きっと良い卵は、元気で健康な鶏からしか生まれない」と考えている。

こうした飼養管理から生まれる「ななエッグ」は、黄身だけでなく白身もおいしいと感じられる卵になっており、山根氏は「お客様からは、臭みがないのにコクがある特徴的な味わいと言われている」と話す。



2022年11月25日号

◎さかもと養鶏(株)(奈良県五條市)
シリーズ進化するブランド184
きっとまた、食べたくなる「白鳳卵」
奈良県鶏卵品評会で最優秀賞を受賞


さかもと養鶏(株)(奈良県五條市、阪本未優社長)の「白鳳卵」はコクと甘みたっぷりのブランド卵で、奈良県鶏卵品評会で最優秀賞を受賞したほか、「にっぽんの宝物 奈良大会2020」素材・調理部門で「審査員特別賞」を受賞している。

飼料には動物性タンパク質を多く配合しているが、管理で重視しているのは「弱者と強者をつくらないこと」(未優氏)。栄養士でもある未優氏が日齢ごとに100羽ずつを抽出し、餌と水と換気を整えて健康な腸をつくるのはもちろん、体重の揃いを厳しくチェックし、食下量の過不足による品質のバラツキが出ないよう飼育管理を徹底している。

同社の法人化は2016年。未優氏と姉で現在は専務取締役の雅氏が「祖父の代からつながってきた養鶏を続けて、みんなが幸せな生活を送れるように」と、お客様や地域とのつながりを大切にしながら、毎日元気でおいしい卵づくりを続けている。

ホームページの「お客様の声」には「卵なんて味変わらないと昔は思っていたけど、こちらの卵を食べた時、その考えは間違いと気付きました」「通常、買っているタマゴと比べてみても全然味が違う」といった手書きの感想が掲載されており、「白鳳卵」が「みんなの幸せな生活」につながっている日常がうかがえる。



2022年10月25日号

◎自然放牧場お多福たまご(鹿児島県湧水町)
シリーズ進化するブランド183
自然放牧、自家発酵飼料の「お多福たまご」
農薬不使用の穀物と野菜、天然魚を厳選


「さあ、今日ここで伝説を作るのは誰だ。第28回湧水チキンダービー、200頭態勢が整った! さあスタート! 続々と飛び出した!」という、およそ養鶏場のものとはとは思えない公式プロモーションビデオをホームページトップで配信しているのは、自然放牧場お多福たまご(鹿児島県湧水町)。しかし、「走る鶏の卵」はウケ狙いというだけではない。

代表の福重氏は「鶏のために極力自然に近い環境で飼いたいという思いから徐々に広い放牧場を開拓し、エサをやる場所を平飼い鶏舎から少しずつ遠ざけていったら、エサを追いかける形で鶏が走るようになった。今は朝のエサやりのタイミングで鶏舎のドアを開けた瞬間に放牧場を目指して防鳥ネットのトンネルを走り出し、夕方になると鶏舎に戻って来る」という。

飼料原料の野菜や穀物は南九州産の農薬・化学肥料・除草剤不使用のもので、魚粉は使わず、魚屋で刺身を取った後のアジ、サバ、シイラ、カツオといった天然魚のアラを薪窯で煮て、竹パウダーや米ぬかなどを加え一週間ほどかけて発酵させる。穀物は自然栽培や有機栽培の農家から購入する規格外の米と麦。自身の畑で自生する野草や野菜も緑餌として給与している。

お多福たまごを購入した人からは、「臭みがない」「おじいちゃんおばあちゃんが飼っていた頃のような昔の卵の味がする」と言われるという。福重氏は「卵黄色の調整をしていないので、ナチュラルなレモンイエローの見た目や懐かしい思い出が喜ばれているのではないか」と話している。



2022年9月25日号

◎(株)たなべたたらの里(島根県雲南市吉田町)
シリーズ進化するブランド182
コクのある卵黄と強い白身の「彩り天佑卵」
広々とした平飼いと発酵飼料で濃厚な卵に


奥出雲の地で約550年前から、たたら製鉄を開始した(株)たなべたたらの里(島根県雲南市吉田町)。江戸時代には日本の鉄の約8割がこの地でつくられたというが、明治に入ると安価な洋鉄の輸入が始まり大正期にはたたらの灯火が途絶え、同社も現在は山林事業や養鶏事業などを展開している。しかし、全国の山と地域の活力が失われている今、山から砂鉄を取り鉄をつくってきた伝統を受け継ぎ、山の再生と農業や観光、飲食、宿泊や芸術など、総合的な里づくりを目指す「たたらの里づくりプロジェクト」がスタートした。

「特産事業」と位置付けられている「たなべ森の鶏舎」では、ブランド卵「彩り天佑卵」と地鶏の「山王軍鶏(やまおうしゃも)」を生産している。

彩り天佑卵は広々とした開放鶏舎での平飼いで、飼料はnon–GMOのトウモロコシ、島根県産の飼料用米、おからのほか、山の恵みである腐葉土や舞茸・椎茸菌床、高麗人参、宍道湖産のしじみの殻などを配合し、乳酸菌で発酵させた「極みのお食事」。水も森林が蓄えた豊富な地下水を、地下約100メートルから汲み上げている。

「家族のように愛情を注いだ鶏さん達」が産む彩り天佑卵は濃厚でコクのある卵黄と力強く盛り上がった白身が特徴で、生臭さがないという。販路は百貨店や高級スーパーが中心で、6〜7割は関東で販売されている。



2022年8月25日号

◎百鶏園(山梨県北斗市)
シリーズ進化するブランド181
「日本一幸せな鶏たち」が生む「百鶏卵」
3種の純国産鶏を365日24時間放牧に


「良いたまごは、美しい鶏から」を理念に、日々鶏の幸せを追求しながら飼育・生産しているという百鶏園(山梨県北斗市)の小沢燿氏。ホームページでは自身を「見た目はチンピラ」と自虐し、YouTubeチャンネルでは突き抜けた独特なキャラを通しているが、根は「鶏をこよなく愛し、全力で卵作りに励んでいる」という心優しい28歳だ。

小沢氏はフェンスと防鳥ネットで覆った「ティピ型遊牧場」を自分たちでつくり、365日24時間放牧を実現。3種の純国産鶏が伸び伸びと暮らせる環境を整備した。

また、飼料にはnon–GMOでポストハーベストフリー(PHF)のトウモロコシと大豆粕を中心に、山梨県産米の米ぬかや地元・北斗市のシイタケの菌床廃(オガ粉)、山の腐葉土などをオガ粉に加え発酵処理をかけてオガ粉発酵飼料とし、季節や鶏の日齢に合わせて自家配合している。

こうした環境で生まれる「百鶏卵」は、臭みがまったくなく、あっさりとしたレモンイエローの黄身と力強い白身が特徴になっている。



2022年7月25日号

◎(有)鈴木養鶏場(大分県日出町)
シリーズ進化するブランド180
大分生まれのAW飼い有精卵「豊の米卵」
油分が少なくしつこさのない食べやすさ


大分生まれのAW(アニマルウェルフェア)飼い有精卵「豊の米卵」を生産しているのは(有)鈴木養鶏場(大分県日出町、鈴木智久CEO)。

飼料用米は10〜20%ほどの配合が一般的だが、「豊の米卵」は大分県産飼料用米を籾で40%配合している。「かつては収穫後の11〜12月には40%でも、ほかの時期には20〜30%ほどということもあった。しかし、今は飼料用米が十分に確保できるようになったことから、一年を通じて40%配合している」(鈴木氏)という。

「豊の米卵」は①大分県産飼料用米を使用②EU基準に準拠したアニマルウェルフェア③こだわりの有精卵――が特徴で、40%の籾米を給与したことで「トウモロコシと比べて油分が少ないため、しつこさがなく食べやすい卵」になっている。「今は一日2個の卵を食べようという『たまニコ』運動が盛り上がっているが、豊の米卵なら3個でも4個でも飽きが来ない」。

鈴木養鶏場は直売所「すずらん食品館」で自社製のプリンやロールケーキといった加工品や、近隣農家が作った産直野菜などを販売している。鈴木氏は「加工品の種類が増えてきたが、ラインナップは卵の味がわかるものが中心で、直売はあくまでも卵を売るため。卵屋なのだから卵を売らなければ意味がない」と話す。



2022年6月25日号

◎合同会社薄羽養鶏場(栃木県益子町)
シリーズ進化するブランド179
酵母を与えた「益子うまれの元気たまご」
「食べチョクアワード」畜産物で1位に


産直通販サイト「食べチョク」の「食べチョクアワード2020」で畜産物カテゴリ1位、21年に同2位を受賞した合同会社薄羽養鶏場(栃木県益子町、薄羽哲哉代表)。食べチョクは登録生産者数が6100軒を超える大手サイトだが、その中で1位、2位になった理由について、薄羽氏は「やはり味が評価されたのではないか」と話す。

同社は①こだわりの飼育②プロフェッショナル③井戸水④ブレンド飼料⑤栄養補助という「5つのこだわり」を大切にしている。飼養管理にはデータを駆使し、夏場は「鶏に早寝早起きしてもらい」涼しい時間に給餌することで食下量を確保。平飼いの「益子うまれの元気たまご」には酵母を、ケージ飼いの「益子うまれの赤たまご」には枯草菌を配合。季節や日齢に合わせて牡蠣殻やビタミンを給与するなど、鶏の健康管理にも万全を期している。

別のサイトで購入した人からは「酵母卵は、濃厚で手土産で持って行くととても喜ばれます」「枯草菌育ちの卵は、生でも加熱料理でも最高です」「とにかく美味しい玉子です」などの評価が並んでいる。



2022年5月25日号

◎(株)藤橋商店(兵庫県姫路市)
シリーズ進化するブランド178
紅に近い卵黄色と濃厚な味わいの「夢王」
たまごかけごはん祭りでグランプリ受賞


(株)藤橋商店(兵庫県姫路市、藤橋拓志社長)の「夢王」が第2回、3回の「たまごかけごはん祭り」でグランプリを連続受賞した。「夢王」はカラーファン(CF)18という紅に近い鮮やかな黄身の色が最大の特徴になっている。

新型コロナウイルスの感染が始まる前に、取引先から「卵黄色の濃い卵が欲しい」と依頼されたのをきっかけに開発に着手。コロナ禍に入って飲食店の経営が苦しくなると今までにない特殊な卵が求められるようになり、濃厚な黄身の卵の本格的な開発に乗り出した。

同社は飼料問屋として創業100年を超える老舗で、現在は育雛・育成から成鶏までの一貫した飼育管理をグループ会社で行っており、その歴史の中で培った技術と経験が「夢王」にも生かされている。「世間にはCFが高くても品質は今一つという卵もあるため、試験を繰り返した」(営業部の堀田紘佑部長)結果、飼料にはニンニクや唐辛子、桑枝葉粉末、パプリカ、緑茶、梅酢、地養素などを配合することで、生臭さのない濃厚な味わいを実現した。葉酸とビタミンも豊富に含まれており、雑味のない味わいになっている。



2022年4月25日号

◎おはよう農園(千葉県我孫子市)
シリーズ進化するブランド177
ゆったりとした環境の「光と風のたまご」
初生雛から育てすべて国産の飼料で平飼い


光と風をゆったりと感じることができる、木造の開放鶏舎の環境で自由に過ごしている鶏が生む「光と風のたまご」。生産する「おはよう農園」(千葉県我孫子市、農園主:恒川京士氏)は2019年7月にスタートし、夏野菜を中心に農薬や化学肥料を使わずに露地栽培しているほか、2021年春からは平飼い卵の販売を開始した。

同園では「日中に活動して夜は寝るという人と同じ生活サイクル」を目指し、夕方には鶏の食べ具合や水の飲み方などをチェックして、日没には完食できるよう翌日のエサの量などを決めている。

雛は農園の環境に適応できるよう、孵化場から初生雛で導入。「雛にストレスがないように」(恒川氏)、幼い時に食べたものが体を作るという思いで手間ひまかけて育てている。さらに、初生雛から育てることで「食べる人に卵が生まれるまでのストーリーを知ってもらいたい」という思いもある。



2022年3月25日号

◎(有)相卵土(沖縄県糸満市)
シリーズ進化するブランド176
独自の優良発酵飼料でつくる「はっこう卵」
鶏が健康でないと美味しい卵は生まれない


上原養鶏場を運営する(有)相卵土(あいらんど。沖縄県糸満市、上原肇社長)は、独自の優良発酵飼料で「はっこう卵」を生産・販売している。余分な脂肪のない健康な内臓を持った鶏が生む卵は人間にとっても安全で体に良いとして、「鶏が健康でないと美味しい卵は生まれない」を掲げている。

トウモロコシと大豆の吸収力を上げるため、地域のおから、ふすま、デンプンなどを乳酸菌やさまざまな酵母で発酵させた飼料を給与することで鶏の体内環境を改善し、健康で丈夫な鶏にしている。さらに「季節によって鶏の状態も変わるため」(上原陽氏)、飼料の配合は年に10〜20回も微調整を繰り返している。

飼料、飼育、研究・改良のすべてが手間ひまかかる方法で、上原氏も「ビジネスのことを考えると非効率なことをしている」と苦笑するが、「元気で健康な鶏を見ると嬉しいし、好きだからこそできている」と話す。

優良発酵飼料で育って健康な鶏が生む「はっこう卵」は生臭さがなく、「味は淡泊だが、食べ続けているとコクを感じるようになる」という。



2022年2月25日号

◎(有)グリーンファームソーゴ(京都府福知山市)
シリーズ進化するブランド175
卵の赤みと濃厚なコクの「卵どすえ」
鮮やかに透き通った卵黄の「黄味自慢」


いかにも京都らしい、はんなりとしたブランド名の「卵どすえ」を製造・販売するのは(有)グリーンファームソーゴ(京都府福知山、阿部勝之社長)。

「卵どすえ」は、大手外食チェーンとの協議を経て飼料に魚粉と赤パプリカを多く配合し、濃厚な旨みとコクに加えて、味の深みを目で見て感じる赤みの卵黄が料理を一層引き立てるという。阿部氏は「料理は五感で味わうものなので見た目の色も重要」として、カラーファンは15以上に設定。もう一つのブランド卵「黄味自慢」は、マリーゴールドの花弁粉末を配合することで、加熱時に黄身が鮮やかな黄色になる。

「お客様が目指すメニューに合わせて、例えばあたたかな色彩を大切にするなら『卵どすえ』、オムライスなど黄身の色がはっきりわかる料理には『黄味自慢』など、それぞれの個性に合った卵を選んでいただきたい」という思いが込められている。

また、同社は京都府の「京のこだわり畜産物生産農場」をはじめ、近畿圏の採卵養鶏場では初となる農場HACCP認証とJGAP家畜・畜産物認証を取得。GPセンターではISO22000認証を取得するなど、独自の食品安全方針を定め、安全・安心への取り組みを積極的に進めている。



2022年1月25日号

◎旭商事(株)(徳島県鳴門市)
シリーズ進化するブランド174
有機JAS認定の「オーガニックたまご」
低密度の平飼いをさらにブラッシュアップ


密度の低い開放型の平飼いで「オーガニックたまご」を生産・販売する旭商事(株)(徳島県鳴門市、山根浩敬社長)。オーガニック卵とは、遺伝子組み換え技術を使用しない、化学物質に頼らない、鶏本来の運動性を担保する動物福祉を重要なポイントとして、厳正なJAS基準に適合した卵のこと。

同社が徳島県吉野川市の山川農場で平飼いを始めたのは1994年。その後、有機畜産物の日本農林規格を読み込み、生協からの働きかけもあって環境整備を進め、2018年、日本で三番目となる有機JAS(オーガニック)卵の認証を取得した。

飼料はIPハンドリングに基づいたPHF/non–GMO/HQC(ハイクオリティコーン)を主体に、休耕田を再活用した飼料用米や、廃棄物とされてきたおからなども配合している。

地鶏の半分程度と極めて密度の低い平飼いでたっぷり運動した鶏が有機飼料をたくさん食べることで、「オーガニックたまご」は「味が濃く、味覚分析ではうま味成分が突出していた」(山根氏)。販売サイトにも、「ほんのり優しい味わい」「子どももいるので、オーガニックは安心」といった感想が寄せられている。



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